魔王視点 雑魚共を始末したら古代竜が現れて蹴飛ばされました
俺は驚いた。
あまりのことにヘルカ等が接近してくるのに気付かなかったのだ。
「魔王、誰が山姥だって?」
山姥そのままの格好のヘルカが文句を言ってきた。
「ふん、見た目がそのまま山姥であろうが」
バシーーーーーん
「誰が山姥よ!」
この山姥は口より先に手が出るらしい。
いや昔からそうだった。
俺は二回目の張り手を頬に喰らっていた。
ドシーーーーン
地面に激突する。
「貴様、二回も俺様を張り倒すとは良い根性をしているな」
「ふんっ、せっかく封印してやっていたのに、やっぱりお前だね。ヴィクトールに変なことを教えていたのは! 余計な事をせずに封印されておけば良い物を」
ヘルカは激怒していた。
「それよりも、貴様。元々のご主人様を張り倒すとはどういう事だ?」
俺は切れていた。
魔王様である俺様が封印されたのは、この山姥ヘルカが裏切って金の騎士と銀の聖女それと黄金竜を俺様が寝ている時に魔王城へ招き入れたのが悪いのだ。
俺様は寝ている間に奴らによって封印されてしまった。寝ている間に封印するとは卑怯以外の何物でもないだろう!
何が金の騎士様だ!
何が銀の聖女様だ!
何が黄金竜様だ!
卑怯者以外の何物でもないではないか!
俺は怒りの視線を山姥に向けた。
「ヘルカよ。死ね!」
俺様は闇の一撃をヘルカに向かって放ったのだ。
ドカーーーーン!
ヘルカのいたところで大規模な爆発が起こった。
これでヘルカも死んだだろう!
俺様が喜んでそちらを見た時だ。
黒煙が去った後には何も被害を受けていないヘルカがそこに佇んでいた。
「な、何故だ? 何故俺様の攻撃を受けてどうもないのだ?」
俺は目を見開いてヘルカを見た。
おかしい。絶対に今ので殺せたと思えたのに!
「あっはっはっはっは! 魔王もいつの話をしているんだい。私も力をつけたんじゃよ。いつまでもお前に負けていられないさ」
ヘルカが大見得を切ってくれた。
「ふんっ、そうか、ヘルカ、貴様は随分と良い身分になったのだな」
俺はにやりと笑ってやった。
「な、なんじゃと」
ヘルカは少しうろたえた。
「ご都合主義の貴様のその腐りきった脳みそに、本来の我が姿を見せてやろう」
俺はそう言うと自らのリミッターを外した。
「な、なんだこれは?」
「凄まじい気だぞ」
「何がいるんだ?」
こちらにやってきた騎士達が叫んでくれた。
「その方、まだこれだけの力を残しておったのか?」
ヘルカも青くなっていた。
「俺様の本当の力を見せてやろう」
俺様は力を解き放った。
俺の周りに暗黒の渦が巻きそれが四方へ爆発したように広がったのだ。
黒い奔流はヘルカや騎士達等に向かって襲いかかった。
「「「ギャーーーーー」」」
闇の魔力の奔流に俺様に近付こうとした騎士やヘルカ達は吹っ飛ばされていた。
またしても頂上に立っているのは俺様だけになった。
そのまま俺様はゆっくりと転がり落ちていったヘルカを追った。
そして傷ついて倒れているヘルカの襟首を握って持ち上げたのだ。
「ヘルカ、貴様は俺様を裏切って金の騎士達を我が魔王城に入れた。その罪は万死に値する」
俺様はそう言うと、ヘルカの腹を蹴飛ばしていた。
「グゥオ!」
ヘルカが叫んで、転がり落ちる。
「最後に何か言うことがあるか」
俺は地べたに這いつくばったヘルカを踏みつけて聞いてやった。
「ふんっ、獣人と人間のためにやむを得ずしたまでじゃ。私は後悔はしておらんよ」
なんとこいつはまだそういう事を言うのだ。
俺は激怒した。
「そうか、では死ね!」
俺はそう叫ぶと最大出力にした闇の一撃をヘルカに放出した。
ズカーーーーーン
ヘルカが吹っ飛んでいった。
裏切り者は処分した。
清々した俺はその傍にここまで爆風で飛んで来ていた、妹を見つけた。
こいつはまだ死んでいなかったようだ。
かすかに息がある。
しぶとい奴だ。
兄はこの妹を心の底から愛していた……愛など俺様が一番嫌いな物だ。虫唾が走る。
この兄に最後に殺させるのが良かろう。
最愛の妹を自分が殺したという事実を知った時に兄は壊れるかもしれない。
それはそれでとても楽しめそうだ。
その事実を知り後悔して狂気で狂ってくれたら、見ている方はとても楽しいだろう。
俺様はそれを思い描いて高笑いした。
「小娘よ。今までご苦労であった。あの世でこの兄を恨むが良い」
ズキューーーーン!
俺様は闇の一撃でその小娘を弾き飛ばしたのだ。
娘は空高く舞っていた。
高く高く、そして、当然落ちてきた。
ずんずんと
これで終わりだ。
俺がそう思った時だ。
「ギャオーーーー」
どこからか鳴き声が聞こえた。
この声は古代竜?
俺はいやなことを思い出していた。
まさかな。
黄金の古代竜は皇宮にいたはずだ。
俺が気のせいだと首を振ろうとした時だ。
俺様の視界の端に金色に光る物が見えた。
それはぐんぐん大きくなってきた。
それは紛れもない古代竜だった。
古代竜は闇の魔術の奔流の中に入ってくれたのだ。
一瞬で闇の魔術が消えた。
そして、空を舞っていた小娘を背にキャッチしてくれたのだ。
「おのれ。金の竜か?」
俺が黄金竜と対峙しようとした時だ。
次の瞬間、古代竜が消えた。
やはり幻だったのか?
俺様がそう思った時だ。
「ギャオーーーーー」
「ギャーーーー」
俺の目の前にいきなりその古代竜の足が現れて俺様は思いっきり蹴飛ばされていたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます
今週中に完結です。
次は明日です。








