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お兄様視点 ユリアが殺されたので闇堕ちして魔王になりました

 ユリアが俺の腕の中でこてんと首を垂れたのだ。

「えっ、ユリア!」

 俺はユリアを揺すってみた。

 でも、ユリアはびくともしなかった。

 そんな、馬鹿な……

「ユリア!」

 その瞬間俺は絶叫した!



 ユリアは俺にとって天使だった。


 母が死んでから、俺たち兄妹はどこかギスギスしていた。

 俺はエックとフランツを鍛えるのに必死で、リーゼはリーゼで母がいなくなって一人寂しく過ごしていることも多かった。

 そんな中にやってきたのがユリアだった。

 すわ、親父の隠し子だ!

 と騒ぎ立てる者もいたが、ユリアは母上と同じ銀髪だったし、なんとなく母上に似ていた。


 俺は父に少し面倒を見てやってほしいと頼まれたから仕方なしに本を読んでやった。

 その子はその絵本に書かれている騎士様と俺がそっくりだと言いだした。


「ユリアもお姫様と同じ銀の髪だな」

「あっ、本当だ。この御本、私とお兄様みたいね」

 ユリアはニコニコ笑っていた。

「何だったら俺がお前の騎士になってやろうか」

「えっ、本当によいの? じゃあ、ユリアもお兄様のお姫様になる」

 ユリアは事もなげに言ってくれた。


 俺は当時はこの絵本が帝国の建国物語だとは知らなかった。

 そして、ユリアが本当の皇女様だったなんてことも教えてもらっていなかった!


 帝国に皇帝から呼び出されて行く前に、父からそれを聞いたときは俺は本当に驚いた。


 帝国ではできる限り目立たぬようにと父が言っていたが、それは俺やユリアには中々難しいことだった。俺はエックと話し合って最悪の事態に備えて動くようにしたのだ。


 結局俺たちは獣人を助けることになり、それが結果的に皇帝に逆らうことになった。

 思うに俺がユリアに出会ったときからこうなることは運命だったんだろうと思う。


 こうなったら予定通り最後の手段だ。俺たちは正当な帝位継承者であるユリアを皇帝位につけるために動き出したのだ。

 元々、俺たちは最悪の事態を想定していろいろ手配していた。皇帝に睨まれている貴族達に根回しもしたし、帝国の演劇界に両親を殺された正統な血筋の王女様が悪逆非道な逆臣を苦節10年で討ち果たして女王になる物語を流行らせたりもした。

 全てはこの時のためだった。


 そんな中、帝国建国当時から生きていると自称する獣人の長から初代皇帝と聖女様が持っていた剣と杖を授けられて、ユリアを皇帝にするために俺がユリアの騎士となって戦うことになったのだ。


 俺はこの日のために準備していたホフマン家の騎士達と合流し、獣人の奴隷を解放して三万の軍勢を作り上げた。



 その戦力をもって赤い悪魔と黒い死神を倒すのは簡単だった。

 金の剣の切れ味は最高だったし、ユリアの金の杖の力も凄かった。

 俺はこの二人を倒せたから皇帝を倒すのも時間の問題だと思ってしまったのだ。

 それが間違いだった。


 皇帝は奥の手を準備していた。

 俺たちの前に影武者を出して、俺とユリアの二人だけで自分を追わせた。

 そして、初代皇帝が魔王を退治した山に自分が魔王になるための魔方陣を起動させていたのだ。

 皇帝が魔王になるために何万人もの犠牲者が必要だったらしい。

 それを自分の騎士団を突撃させることによって皇帝は犠牲者を作り出していた。

 まあ、それに俺たちも貢献していたのだが……


 魔王復活の最後の駒に皇帝は実の母のマイヤーを当てたのだ。

 こいつは人間では無かった。

 だから自らが魔王になろうとしたと言えばそうなのだが。


 魔王になった皇帝の力は凄まじかった。

 俺の金の剣もユリアの金の杖も皇帝には通用しなかった。


 そして、俺の目の前でユリアが倒された。

 俺のユリアが死んでしまった……

 俺は、生きるすべをなくしてしまった……


「ユリア!」

 俺は再度絶叫した。


「ははははは! 所詮金の剣と金の杖などまがい物。魔王様の敵では無いわ」

 横で魔王風情がなんか叫んでいた。


「そのユリアとか言う小娘はあっさり死んだのか? つまらんの。生皮を一枚一枚はいでやっても良かったのに! その目の前で貴様をなぶり殺しにしてやった方が良かったかの? そうか、貴様が見ている前で魔物共に襲わせてもよかったかの」

 魔王は嬉しそうに話してくれた。


「黙れ!」

 俺は魔王に叫んでいた。

 体の底からふつふつと怒りがわいてきた。

 体が熱を持ち、絶対に許せなかった。



「黙れだと。誰に向かって言っておる」

 魔王は俺を睨み付けて来た。


 しかし、俺の心の底にも黒い物が湧き出てていた。

 これは闇の力かもしれない。

 何故か、空には再び大きな魔方陣ができていた。


 本来闇の力なんか使ってはいけない。

 これは小さい時から散々言われていたことだ。

 でも、それがどうした?

 もう、ユリアはいない。

 俺はユリアを殺した魔王を見過ごすことはできなかった。

「魔王を殺せ、魔王を殺すのだ」 

俺の心の奥底からしわがれ声が聞こえていた。


「ユリアをやった奴は許さん」

 俺は剣を横殴りに払っていた。


 その瞬間だ。


 ダシーーーーーン!

 魔王は俺の剣で吹っ飛ばされていた。

 今まで全く効力を持たなかった金の剣が真っ黒な剣に変貌して魔王にを弾き飛ばしてくれたのだ。


「ギャーーーーー」

 魔王の悲鳴が聞こえた。


 なんか俺の周りを黒いモヤモヤが覆っていた。

 闇の力は良くない?

 ふんっ!

 俺はもうどうでも良かった。

 俺の心の奥底から

「殺せ! 殺すのじゃ」

 というしわがれ声が聞こえていた。


 俺はその声に則って、ゆっくりと魔王に向かって歩いて行った。


「な、何をする。俺は魔王様だぞ!」

 なんか魔王が叫んでいるがそれがどうしたのだ?

 俺はもう一度魔王を今度は蹴り飛ばしていた。


 ユリアを殺した魔王は許さん!

 俺の心はどす黒く変色していた。


「ギャーーーーー」

 魔王は悲鳴を上げて倒れていた。

 俺は近付いて、その体を持ち上げる。

「き、貴様、ギャーーーーー」

 俺は何か話そうとする魔王を思いっきり張り倒していた。

 一発、二発、三発。


 魔王は途中から悲鳴も上げなくなった。


「頼む、助けてくれ!」

 魔王が俺に命乞いしてきた。


「ふざけるな。貴様、自分の母親ですら殺したでは無いか! 俺の愛するユリアを殺した罪を地獄で懺悔するがよい!」

 ブスリと俺は金の剣で魔王を貫いたのだ。


「ギャーーーー」

 魔王は断末魔の声を上げてくれた。


 俺は心から嬉しくなった。

 殺せ!、皆を殺せ!

 ユリアを殺した皆を殺せ!

 俺の心の中から声が聞こえていた。


 俺はいつの間にか真っ黒な雲で覆われていたのだ。


ここまで読んで頂いてありがとうございます

ついにお兄様は魔王になってしまいました。

続きは明朝です

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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