魔王の攻撃でボロボロになった私は兄の胸の中で眠りにつきました
皇帝が成り下がった、と言うか、成り上がった魔王はさすがに魔王というだけあって、強大だった。
でも、乙女ゲームに魔王なんて出てきたんかだろうか? と言うか皇帝が魔王になるなんて、あり得るの?
まあ、私が皇女って言う設定自体がバグだと言われたらその通りなんだけど……ピンク頭にはそう言われそうだし……
私はゲームなんてやってもいないから全くわからなかったけど……
私はとっさにお兄様にかばってもらって直撃は受けなかったけれど、お兄様と一緒に弾き飛ばされていた。そして地面に激突したのだ。お兄様が守ろうとしてくれたけど、空中でお兄様とバラバラになっていた。とっさに障壁を張ったけれど、ショックの全ては、吸収してくれなかった。
「ギャッ」
私は地面と激突した。
また、お腹から、血が流れ出した。
「ゆ、ユリア!」
お兄様が慌てて、駆け寄ってくれた。
「大丈夫か?」
「私は、大丈夫よ、お兄様こそ大丈夫なの?」
お兄様は血だらけだった。
「ふんっ、こんなのはかすり傷だ」
お兄様は強がりを言ってくれたが、魔王の闇の魔術の直撃を受けたと思うから、結構酷い傷をおっているはずだ。
「はっはっはっは、まだ生きていたのか?」
魔王がこちらに向かって歩いてきた。
「ふんっ、こんなのは大したことはない」
お兄様はきっとして立ち上がると魔王を睨み付けてくれた。
「そうか、その強がりがいつまで続くかな」
魔王はそう言うと、手を前に付き出した。
「死ね!」
魔王の手から真っ黒な闇の一撃が飛び出した。黒い禍々しい奔流がお兄様を直撃する。
お兄様は剣で弾こうとしたが、弾き飛ばされていた。
ドカーン!
地面に激突する。
「グワッ」
お兄様が口から血を吹き出すのが見えた。
「お兄様!」
私は思わず叫んでいた。
「兄を心配している余裕などあるのか?」
魔王が私の後ろに現れた。
私は杖を握った。このままではやられる。
でも、私は魔王に対抗する力を持っていなかった……どうしよう?
絶体絶命のピンチだ。
よし、こうなったら光だ。魔王は闇の帝王だ。私は金の杖がある。光の魔力で攻撃すれば何とかなるはず。
私は深く考えずに、フラッシュで攻撃した。
「光れ!」
杖がピカッと光った。
「ギャッ」
思わず、魔王がたじろいだ。
目を押えている。
よし、今だ。
「行っけーーーー!」
私はお腹から血が噴き出すのも気にせずに最後の力を振り絞って雷撃した。
金の杖は爆発するように光って、大容量の雷撃が魔王を襲った。
ピカピカドカーーーーン!
よし、いけたか!
もう私は立っているのがやっとだった。
攻撃したあたりの爆煙がゆっくりと晴れていく。
「えっ!」
しかし、そこには全く変わっていない魔王が立っていたのだ。
「はっはっはっは! どうした小娘。それで終わりか?」
馬鹿にしたように魔王は大口を開けて笑ってくれた。
どうしよう? もう何もない……
私は絶望にとらわれた。
「そのようなちゃちな攻撃で余が傷つく訳はなかろう」
魔王は余裕みたいだった。
そして、ゆっくりと私目がけて歩き始めてくれた。
そして、魔王が私に向けて手を差し出してくれた。
終わりだ!
私が観念した時だ。
「死ね!」
魔王がまさに攻撃しようとしてくれた時だ。
「喰らえ!」
いきなりその魔王の前にお兄様が転移してきてくれたのだ。
「お兄様!」
私はほっとした。
そして、渾身の力で金の剣を振り下ろしてくれた。
魔王は斬られろ!
私が祈った時だ。
ガキン!
お兄様の剣は魔王の張った障壁で止められてしまった。
「はっはっはっは!」
魔王は大口を開けて高笑いしてくれた。
「ふんっ、死ね!」
魔王の手から闇の一撃が放たれていた。
真っ黒な奔流がお兄様を襲う!
お兄様が私目がけて飛んで来た。
お兄様が私を抱きしめて次の瞬間二人して飛ばされた。
「ユリア!」
お兄様がぎゅっと抱きしめてくれる。
次の瞬間二人して吹っ飛ばされていた。
空中を木の葉のように翻弄されて飛ばされた。
でも、お兄様がしっかりと私を抱きしめてくれている。
でも、次の瞬間地面に激突した。
凄まじいショックが私を襲った。
お兄様が必死に庇ってくれたけれど、私の体は凄まじい衝撃を受けた。
また、血が大量に流れたと思う。
このまま死ぬのかもしれない。
私はふと、そう思った。
まあ、でも、お兄様の胸の中で死ぬのなら仕方がないかもしれない。
元々、赤い悪魔に勝てるなんて思ってもいなかったのだ。
お母様とお父様を直接殺した奴は倒した。
それを命じた皇帝を倒せなかったのは残念だけど、皇帝は魔王になっていた。
人間ではなくなったのだ。
これから魔物の王が世界を支配していくことになるだろう。
また、いつか、金の剣と銀の杖を持った騎士と聖女がこの魔王を倒してくれるだろう。
私とお兄様では勝てなかったという事だ。
残念だけど。
なんかとても眠くなってきた。
「おい、ユリア!」
お兄様が私に声をかけてきた。
でもとても眠い。
目をなんとか開けたら見目麗しいお兄様の顔が見えた。
「お兄様、ありがとう」
私はお兄様にそうお礼を言った。
お兄様には感謝の言葉しか無かった。
そして、私は眠りについたのだった。
「ユリア!」
お兄様の叫び声がしたような気がしたけれど、私はもう目を開けられなかった……
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
続きは今夜です。








