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戦いの前日、お父様と最後の挨拶をしました。

 平原が黒焦げの廃墟になっていた。

 私を攻撃するために男達は私の怒りの一撃を食らって完全に消滅していた。


「何じゃ、もう終わってしまったのか? 我が獣人一族の力を見るためじゃと申しておったが、いかがであった?」

 長には嫌みを言われるし、

「ユリアーナ様。あれほど、全力を出してはいけないと前もって申し上げましたのに」

 ギルベルトにも言われてしまった。

「まあ、ギルベルト、そう言うな。あれは敵の豚将軍が悪い。ユリアの母をあそこまで侮辱するとは。ユリアがやらねば俺が天誅を下しておったわ」

 怒られると思っていたのに、お兄様が私を庇ってくれたんだけど……

 暴発してしまった私が悪かった。


「す、凄い」

「せ、聖女様の怒りが爆発した」

「天罰が下ったのだ」

 戦闘の終わった後、私は獣人達に畏敬の念で見られていた。

 怒らすと何をしでかすか判らない恐怖の存在として映っているのではないかと思うとうんざりする。

 長のくれたこの杖、能力が高すぎるんじゃないだろうか?


「ほっほっほっほ、ユリアーナよ。その杖は貴様の能力を極限まで高める効果があるのじゃよ。それくらい高くないと儂のありがたみがないであろうが……」

 長はそう言ってくれたけれど、まあ、確かに。

 でも、道具に頼るのは嫌だ。

 弘法は筆を選ばずと言うじゃない!

 私はどの剣を使っても勝ちたいのよ。


「ふんっ、我が儘な小娘者の。取りあえずその杖を使っておけ。ほっておいてもいずれは四天王を超えると思うが、今は杖を使ってもまだ互角じゃぞ」

 長はそう言って笑ってくれた。

 そうか、一応互角になれたのか。

 長の言葉は今までの言動からあんまり信用できないけれど……


「小娘。その方また、儂のことを心の中で貶したな」

「そんな訳はありませんわ。長には感謝しております」

 私は慌てて首を振ったのだ。

「ふんっ、どうだか。それよりも何か来ておるぞ」

 長が私の後ろを振り返ってくれた。


「私、この近くのドキュメント伯爵家当主でございます。ユリアーナ皇女殿下に是非ともお目通り賜りたくまかり越しました」

 鉱山の入り口に大男が立って叫んでいた。

 それがこの戦いが終わって最初にやってきた貴族だった。

 近くで戦いの様子を見ていて、私の攻撃を見て、志願してきたという。

 皇帝に逆らって良いのかと聞いたら、反逆者に従う訳には参りませんと、今まで従っていたのに、こういうことを言うなんて……力は全てだと言っていたエックお兄様の言葉が判った。

「正当な帝位継承者のユリアーナ殿下の参加に入ることをお許しください」

 ドキュメント伯爵は私に跪いてきたのだった。


 この戦いの様子が近隣諸侯に伝わると同時にあっという間に我が軍にはせ参じたいという貴族達が押し寄せてきた。

 その数はあっという間に1万人を超えた。


 鉱山の周りに3万もの兵士達が集まってきて、あっという間に小さい街が出来ていた。

 その中には商人達も入り込んできた。お兄様や長はその中からいろんな情報を仕入れていた。

 帝国の主力が早急に迫っているという情報も商人達から得たのだ。

 その商人達の中には当然帝国の影も潜り込んでいたから敵にも情報は筒抜けだと思われたが……


そんな中、お兄様と私達は混成軍の練度を少しでも上げるために、訓練にせいを出していたのだった。


「兄上!」

そんな中、いきなり、訓練場にエックお兄様の大きな顔が現れたのだ。

「おお、エックか、懐かしいな」

お兄様はそう言って返したが、私は何故エックお兄様の顔がでかでかと現れたか判らなかった。前世のテレビ電話みたいな物なんだけど、何故あるの?

私には判らなかった。なんでもベティの実家の辺境伯の所にあった家宝の魔道具で、遠距離と通信できる物らしい。今はこれ一台しか残っていないそうだ。


「懐かしいではありません。いきなりユリアと姿を消して、俺達がどれだけ心配したか判っているのですか?」

エックお兄様は怒っていた。

「何を言うか。『先立つ不孝をお許しください』というユリアの伝言を単なる冗談だと笑って済ませたそうではないか。ギルベルトから聞いているぞ」

お兄様は言い返したかが、

「あんな冗談っぽいもの送られてもユリアが帰るのが嫌になったから送ってきたと思うでしょう」

「酷いエックお兄様。皇帝に取られたら嫌だから暗号にしたのに」

「あんな暗号が判るか!」

私の必死に考えた暗号はエックお兄様の一言で否定されてしまった……信じられない! もう少し考えてくれても良いじゃない。何が買えるが嫌になったからよ。

そんなんじゃないわよ!

私が言い返そうとした時だ。

「ユリア、アルト! 俺は絶対に何があっても我慢しろと言ったよな」

怒り狂ったお父様が横から現れた。

やばい、これはお説教だ。


「いや」

「それは……」

私とお兄様が口ごもった。


「貴様らな! 俺がどれだけ心配したと思っているんだ!」

お父様の怒声が訓練場中に響き渡った。

それから5分くらい怒られた。


「まあ、父上、その辺で。そろそろ終わりの時間です」

エックお兄様が止めてくれなかったら延々お説教だけで終わるところだった。何でも、この魔道具は1週間に10分くらいしか使えないらしい。

「そうか、メンデルスゾーン辺境伯と俺達ホフマン連合軍は現在国境から五十キロの所を進軍中だ。これより一路帝都に向かう」

お父様達は国境を越えたらしい。辺境伯と一緒という事は辺境伯も味方に付いてくれたんだ。

「帝都はどうなっているんですか」

「帝都はフランツがピーちゃんと一緒に制圧したらしい」

「えっ、フランツお兄様が」

私には信じられなかった。

「出来れば皇帝と戦いたかったが、お前らの方が一戦交えるのは早そうだ。ユリア、勝てよ!」

「頑張るわ」

私はお父様に返事をした。

「アルトどんなことがあってもユリアを頼むぞ」

「まかせてくれ。親父。その代わりユリアとのことよろしく頼むぞ」

お兄様が胸を叩いてくれたけれど、その自身満々なのは良いけれど、私との事って何だろう?

「それは全てが終わってからだ」

「お父様。今までありがとう」

私はこれで最後になるかもしれないと思ってそうお礼を言った。

「そこはこれからもよろしくお願いしますだぞ」

お父様がそう言うと画面が切れたのだった。

まあ、確かに、そうだ。ここで負ける訳にはいかない。

でも、敵は帝国四天王、そう簡単に勝てるとは私は到底思えなかったのだ。




次は決戦です

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