皇帝視点 帝国四天王の二人が負けた報告を受けましたが、そのまま鉱山に向かうことにしました
「申し上げます。ドネツ鉱山にユリアーナとその一味が現れて、ドネツ鉱山を占拠した模様でございます」
伝令が俺様に報告してきた。
「な、なんと、奴らは隠れ家から出て参ったのか」
エグモントは不機嫌そうに報告者を睨んでいた。
「まあ、良いではないか、エグモント。その方が戦いやすい。獣人の隠れ里は何かとやっかいだ」
俺はエグモントをなだめた。
何回か四天王を含めて獣人の隠れ里は襲撃しているのだが、そのたびに逃げられていたのだ。
それに比べれば何もないところの方が戦いやすいし、逃げられる心配がない。
まあ、もっとも今回見つけた獣人の隠れ里が古の伝説の洞窟の傍の隠れ里ならば、俺も長を脅して伝説の武器を取り上げたいという希望はあった。
獣人の持つその武器はその者の能力を格段に上げるのだとか。
初代皇帝と聖女がその武器の恩恵を受けたという事だ。
帝国建国に大きな力を発した金の剣は皇帝の死とともにその洞窟に返ったそうだ。
その剣が手に入れば我が軍は更に強くなるだろう。
四天王達に持たせれば落ちてきた力を復活させられるし、次代の者達に持たされば、四天王が八天王とかに増やせられるかもしれない。
取りあえず、集めた全軍を率いてドネツに行くしかあるまい。
ドネツまでは10日もかからないはずだ。
俺は全軍にドネツ炭鉱に向かうように指示を出した。
その翌日だ。
「陛下、大変でございます」
陰の責任者のエグモントが転がるように俺の前に出てきた。
「どうしたのだ。そのように慌てて」
「はっ、ホフマンのガキ共をおった四天王のグレーテル様がお亡くなりになったと連絡が入りました」
「なんじゃと、グレーテルが死んだと申すか?」
あの撫斬りにされようが、爆裂魔術の直撃を受けようがびくともしなかったグレーテルが死んだなんて俺には信じられなかった。
「誰にやられたのだ?」
「ホフマンの次男エックハルトに殺されたと、這々の体で逃げ出した陰が今報告に参りました」
エグモントが言うにはエックハルトがやられたように見せた偽装に気付かずにエックハルトに刺し殺されたという。一緒に向かった帝国の騎士も大半が殺されたとのことだった。
「なんと油断して殺されるなど、愚かなことじゃな」
この忙しい時に俺は舌打ちしたくなった。
「直ちに、エルネスタにエックハルトを撃つように伝えよ」
俺は派遣したもう一人の四天王をそちらにも回すように伝えた。
「それが陛下、そのエルネスタも連絡が取れなくなっておりまして」
済まなさそうにエグモントが報告してくれた。エルネスタは竜遣いだ。9匹の竜を駆使する様は芸術的とも言えた。
ただ、竜と共にしているのでそのスピードは伝令よりも速く、他のものがついて行く訳にも行かないので、連絡不能になることも多々あった。
「ちっ、また、奴と連絡が取れないのか」
俺は不機嫌になった。
今から反逆者の兄妹を血祭りに上げるために北上しているのだ。
この中から戦力を裂く訳にも行くまい。
俺はどうしたものかと考えを巡らせた時だ。
「も、申し上げます」
またしても陰の報告者がやってきた。
「何事だ? 陛下の御前であるぞ」
「も、申し訳ありません」
「構わん、話せ」
また、エルネスタがどこぞで余計な事をしてしまったという報告なのだろう。奴の古代竜は凶器以外の何物でもなく、大聖堂を破壊してしまったとか、軍の兵舎を壊してしまったとか日常茶飯事だった。
「帝都の皇宮が10匹ほどの竜に攻撃されて占拠されてしまいました」
「な、何だと! それは本当か?」
俺は思わず取り乱してしまった。
「竜達を誰が指揮したのだ。まさか、エルネスタが裏切ったのか?」
「裏切ったかどうかは不確かですが、竜達はホフマン家の三男フランツが指揮しておりました」
「何だと、フランツがだと? 彼奴には竜遣いの特技があったのか?」
俺は驚いて確認していた。
「陛下。そのような報告は聞いておりませんぞ」
エグモントが否定してくれた。
「皇宮で目撃したものの報告では、フランツの後ろに黄金流の子供がいて、その者が指示していたようにも見えたとのことでございますが」
「黄金竜の子供か? そう言えばユリアーナとかいう小娘が黄金竜の子供をペットにしているとかいう報告を受けたことがあったが」
俺は記憶をたどってみた。
「しかし、陛下、黄金竜とはいえまだ、子供。他の成竜が言う事などきかなと思いますが」
エグモントが当然の事を話してくれた。幾ら黄金竜とはいえ高々子竜、他の成竜が言う事を聞くなど到底信じられなかった。
「とするとフランツとか申す者が竜遣いという事になるぞ」
俺は頭を抱えたくなった。
それでなくても四天王の一人のグレーテルが殺されたと聞いた所なのだ。この上エルネスタまでいなくなったとあっては帝国軍の動きが制約されることになる。
信頼して完全に任せられる部下はそんなに多くはなかった。
「陛下、いかがいたしますか? 何でしたらエルネスタとグレーテルの仇は私が取って参りますが」
アーベルが申し出てくれた。
「うーん、そうじゃの」
俺は考えた。
ユリアーナとアルトマイアーはまだ四天王の域には達していないという報告は受けていたが、伸び盛りであるのも事実だ。あまり戦力を減らしたくない。そもそも今回の件は前々皇帝の血を引いているユリアーナさえ倒してしまえば反乱は収束するしかないはずだ。
「取りあえず、諸悪の根源のユリアーナの首を取る。ユリアーナさえ倒してしまえば反乱軍は降伏するしかなくなろう」
俺は部下達を見回してそう命じていた。
「判りました。このまま更新を続けます」
エグモント達が頷いてくれた。
ユリアレーナさえ殺せば皇宮など即座に取り戻せるだろう。
俺は全軍をそのまま進めることにしたのだ。
皇帝は戦力の分散を嫌いました。
その皇帝軍を果たしてユリアーナ達は迎え撃てるのか?
続きは今夜です。
お楽しみに








