公爵家三男の叫び 妹の竜に脅されて皇宮を占領してしまいました
そのまま、俺は先頭に立って、皇宮に行進させられたのだ。
弾よけならぬ攻撃目標としてだ。
本当に死ぬ思いだった。
火の玉はどんどん飛んでくるし、矢も同じだ。
俺はそれを必死に剣と障壁で防いだ。
まあ、兄上の死の特訓比べればまだましだったが……
敵の攻撃は熾烈を極めた。
「ピーーーー」
俺が苦戦する様子を見て仕方なさそうにピーちゃんは黒竜と赤竜に何か合図してくれた。
「「ギャオーーーーー」」
その瞬間だ2匹の古代竜が咆哮したのだ。
帝都がそれで震撼した。
俺たちに攻撃していた魔術師達が慌てて耳を塞いだ。
そして、次の瞬間だ。
「ギャオーーーーー」
黒竜と赤竜がもう一度咆哮した後だ。
口から火を噴いたのだ。
それは魔術師と騎士団に命中した。
周りは火で包まれた。
「「「ギャーーーーー」」」
その場にいた魔術師や騎士達が火だるまになった。
「「ギャオーーーーー」」
咆哮すると2匹の古代竜が残りの騎士や魔術師達を蹴飛ばしたのだ。
もう周りは大混乱に陥っていた。
生き残った魔術師や騎士達は這々の体で逃げていった。
その第一陣を潰走させた後は、皇宮まで直線上に敵騎士の姿は見えなくなった。
変だ? 何故、四天王が出てこない?
俺は不審に思った。
「ピー」
ピーちゃんが皇宮を指さした。
俺は歩き出すしか無かった。
周りから見ると俺がピーちゃんと竜達を引き連れて歩いているように見えたのかもしれない。
現実は俺がピーちゃんに脅されて、行進させられていたのだが……
「素晴らしいです。フランツ様。憎っくきかの皇帝の居城を竜達に命じて攻撃させるなんて、歴史に名を残しますぞ」
セバスは感激して言ってくれたが、それは皇宮についた時に四天王に俺が殺されなかった時のことだ。
四天王に俺が殺されたら単なる馬鹿では無いか!
俺はそう叫びたかった。
そのまま俺達は皇宮の正門にたどり着いた。
俺に何か話せってピーちゃんが合図するんだけど……
「えっ、俺が話すの?」
ピーちゃんを振り返ると、
「ピーーーー」
ピーちゃんは俺に頷いてくれたのだ。
どっちがペットかわかった物ではないではないか!
どう考えても俺がピーちゃんのペットだ。
でも、ピーちゃんに命じられたら俺が逆らえるわけはなかった。
どうやら降伏勧告をしろと言っているらしかったけれど、そんなのあの冷徹皇帝がするわけないだろう!
決裂するに違いないのに、何故俺がこんなことしなればいけないんだよ。
と思いつつ、俺は拡声の魔道具を手に取った。
「城内のものに継ぐ。私は初代皇帝陛下の弟君の起したホフマン公爵家の三男フランツ・ホフマンである。初代皇帝陛下の意思に逆らい、皇帝一族に反逆した反逆者共に継ぐ。ここに皇家の剣を自任する我がホフマン家のフランツの前に直ちに降伏せよ」
俺は史上初めて帝国の皇宮に対して降伏勧告した男になった。
「私は皇帝陛下の近侍を務めるガーブリエル・グートシュタイン侯爵である。
辺境の属国の公爵家の三男風情が何をほざいている。今の皇帝陛下はヴィクトール陛下である。貴様こそ皇家に逆らう反逆者であろうが」
城壁に上がったガーブリエル・グートシュタイン侯爵が拡声魔術具で反論してきた。
「ピーーーー」
不満そうにピーちゃんが鳴いた。
横で古代竜達も不満そうだ。
「グシュタインに継ぐ。初代皇帝陛下と帝国全土を統一した黄金竜様もご不満を漏らしておられる。直ちに降伏しない場合は貴様を血祭りに上げて皇宮を破壊すると仰せだ」
「わっはっはっはっは。何を言っている。何が黄金竜様だ。そのような子竜に何ができるというのだ」
グートシュタイン侯爵は笑ってくれた。
こいつは馬鹿だ。ピーちゃんに逆らって笑うなんて!
俺はグートシュタインの為に言ってやったのに……
次の瞬間だ。
ピーちゃんが巨大化して
「ギャオーーーーー」
と咆哮したのだ。
その咆哮はグートシュタインを直撃した。
「ギャーーーー」
グートシュタインは吹っ飛んでいた。
ドカーーーーン
そのまま皇宮の壁に突き刺さった。
「ピーーーー」
ピーちゃんは次の瞬間小さくなっていたが、黒竜と赤竜に合図していた。
「「ギャオーーーー」」
2匹は叫ぶと火を噴いたのだ。
ドカーーーーン
一撃で巨大な城門が門構えもろとも弾き飛ばされていた。
「ギャーーーー」
「逃げろ」
「このままでは殺されるぞ」
城壁に登っていた騎士達が慌てて逃げ出した。
「ピーーーー」
ドカーーーーン
次のピーちゃんの合図で残りの8匹の竜が城壁に激突していた。
前面に激突する巨大な古代竜達は凄まじい迫力があった。
城壁がゆっくりと後に倒れだした。
ダシーーーーン!
次の瞬間、前面の大半の城壁は内側に倒されていたのだ。
巨大な皇宮の塀が無くなったのだ。
「「「ギャオーーーーー」」」
古代竜達が咆哮した次の瞬間だ。裏門から兵士や騎士達が逃亡を始めた。
四天王はどうしたんだろう?
俺が確認する間もなく、皇宮の塔の上に白旗が掲げられていた。
「えっ、嘘⁈」
俺は心ならずも帝国の皇宮を落とした史上初めての男になった瞬間だった。
ここまで読んで頂いて有難うございます
皇帝不在の間にその居城を落としたフランツでした。
しかし、皇帝と四天王の二人はまだ健在です。
フランツの運命やいかに?
続きは明日です








