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とある将軍の独り言 今まで実戦全てお任せだったホフマンの連中がいなくなって魔物で領都が壊滅しました

「大変だ! クンツェ将軍、一大事です!」

 廊下から副官の声が響いてきた。


「何事なのだ」

 俺は早朝から副官のクッツに起されて不機嫌だった。

 ベッドから起き上がると、

「魔物が砦に襲いかかったとのことです」

「そんなのはホフマンの連中に任せておけば良いだろう」

 クッツの言葉に俺は不機嫌になった。

 魔物などホフマンの連中に任せておけばよいのだ。

 何のために行き場の無い奴らを拾ってやったと思っているのだ。


 俺はゴットフリート・クンツェ将軍だ。

 この帝国北部の辺境の地を守っている、北部辺境軍一万の総司令官だ。

 皇帝陛下の命令で8年前からこの地の警備に当たっているが、魔物など、今まではホフマン家から出向している連中が命じもしないのに勝手に皆で競争して倒していたのだ。

 奴らは何かあるとすぐに駆けつけて魔物をどれだけ倒したか自慢することしかできない脳筋の集団だ。

 その親玉の辺境の属国の公爵か何かが皇帝陛下のご機嫌を損ねたとかで、帝都から追われて行くところの無かった奴らを俺が引き取ってやったのだ。我が軍の5割はその脳筋の連中だった。

 以来、魔物の領都への出現率はゼロに近くなっているそうで、俺は皇帝陛下から褒美を賜っていた。

 その便利な奴らに任せておけば良かろう。

 何故この早朝にたたき起こされなければならない!

 俺は副官のクッツを睨み付けた。


「それがその、脳筋のホフマンの連中がどこにも居りませんで」

「はああああ! どこにもいないとはどういう事だ?」

 俺はクッツを再度見た。

「何でも、昨夜、直属の上司達に一斉に退職届を出して逐電したそうで……」

「な、何だと、俺の了承もなしにか!」

「それが閣下は常日頃からホフマンの奴らにはいつでもやめさせて良いぞとおっしゃっていらっしゃいましたから、奴らの上司もそう思っていたみたいで……」

 クッツが言いにくそうに報告してくれたが、

「愚か者! それはたとえ話だ。奴らが全員いなくなってみろ。誰が魔物を討伐するのだ。今までホフマンの連中が大半の魔物を討伐していたのであろうが! 他の奴らはほとんど魔物討伐の実績も無いのではないか!」

 俺は切れていた。

「はあ、そこはまあ……」

「何がそこはまあだ。直ちに、ホフマンの連中を呼び戻せ、どんなことをしても構わん」

「しかし、どこにいるか判りません」

「まだ近くに居ろう、なんとしても見つけ出すのだ。それまでは全戦力を投入して、どんなことがあっても魔物を砦からこちらに通さすな」

 俺はクッツに命じていた。


「伝令!」

 そこに慌てた伝令兵が飛び込んできた。

「砦は壊滅。魔物の大軍がこちらの領都の方に進軍中です」

 俺はそれを聞いて血の気が引いた。

 ホフマンの連中を邪険にしすぎたか?

 もう少し役職も給与も上げてやれば良かったのか?

 半数の最強の戦力がいなくなったのだぞ。

 俺はどうすれば良いのだ?

 俺は慌てたが、やることなんてもうほとんど残されていなかった。


「非常事態宣言を発令しろ」

 俺は叫んでいた。

「前領都の成人の男性全てに剣を持たせろ。魔物からこの領都を守るのだ」

「はっ、判りました」

 副官のクッツが飛び出していった。


「全員直ちに戦闘配置だ。魔物を討伐する」

 俺は慌てて鎧を着ようとした。

 でも、中々すぐには鎧が着れなかった。

 鎧を着るのも久々だった。

 俺たちはこの町の守りの大半をホフマンの連中に任せていたのだ。

 そのつけが回ってきた。

 すぐに鎧なんて着れるわけは無かった。


 カランコロンカランコロン!

 その時にやっと非常事態を示す鐘が鳴った。


「な、何事だ?」

「どうしたのだ?」

 各地で兵士達の慌てた声がした。


「何をしている。直ちに全員戦闘配置につけ!」

 なんとか侍従に手伝ってもらって鎧を着た俺は、そう叫ぶと慌てて領都の城壁に向かった。


 クッツが鐘を鳴らした後に追いついてきた。

 俺の周りには10名くらいの騎士が続いた。完全に少ない。

 他の奴らは何をしているのだ。

 少し怠けすぎたか? 訓練が足りない!

 俺は反省した。

 これからはもう少しきちんと皆にさせよう。


 しかし、領都の城壁の屋上に上がった時だ。

 俺はそれが遅かったのを知ったのだ。


 ドシーーーーーン

 大きな音がして、城壁が震えた。


 その方を見るとなんとサラマンダーが城門に体当たりをしていた。


「直ちに弓で攻撃しろ」

「はっ」

 騎士達は弓兵に合図した。

 弓兵が弓をつがえて矢を放つが、大半は外れたし、当たっても全くサラマンダーは堪えていなかった。

 こいつらは本当に役に立たない。

 ホフマンの連中ならば今頃は剣を片手にサラマンダーに斬りかかっていただろう。

 こいつらは遠望から役に立たない攻撃をするのみだった。


「将軍、魔物が続々と現れました」

 サラマンダーの後には次々と魔物達がやってきた。

 俺は青くなった。


 ドシーーーーン!

 また、大きな振動が城壁を揺るがした。

 保つのか城壁は……

 俺が白くなった時だ。


 ドシーーーーン

 3回目の体当たりが終わった時だ。


 メリメリメリメリ、ドカーーーーン

 城門が押し倒された瞬間だった。


 俺の目の前で魔物の大軍が領都に侵入していった。


「ギャーーーー」

「キャーーーーー」

 屋敷の外で悲鳴が上がった。


 唖然としている俺の前が暗くなった。

 俺の目の前には棍棒を振りかぶったオーガがいたのだ。


 次の瞬間俺の頭はオーガにかち割られていた。

 この日、北部の辺境師団が壊滅したのと同時に領都が魔物に占拠されてしまったのだった。



ここまで読んで頂いて有難うございます。

実戦部隊のホフマン騎士達がいなくなった帝国辺境の地はボロボロです。

そして、竜に襲われた皇宮はいかに?

続きは今夜です

お楽しみに

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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