公爵家三男の叫び 襲撃してきた帝国四天王から妹のペットが助けてくれました
俺は絶体絶命のピンチに立っていた。
こんな時に限って生意気なユリアや兄上もいなかった。
つけられたのが、ピーちゃんだけなんて!
最悪だ!
その肝心のピーちゃんなんだが、さすがユリアのペットというか、ユリア並みに図太いのか、こんな状況にもかかわらず、こちらを無視してむしゃむしゃとクッキー食べているんだけど……
瓦礫かなんかは全くピーちゃんにかかっていなかった。
俺の視線に気付いたのか、そうかこんな状況になっているにもかかわらず、こちらを無視してひたすらクッキーを食べているピーちゃんが気になっているのか、エルネスタはピーちゃんを見た。
「おい、そこのお前!」
エルネスタはピーちゃんに呼びかけた。
むしゃむしゃ
ピーちゃんはエルネスタに呼びかけられても全く無視した。
こいつはそういう奴だ。
食べ物を食べている時は誰に話しかけられてもいつも無視している。
唯一ユリアーナに呼びかけられた時だけは自分の食べ物を取られると危機を感じるのか、呼ばれた瞬間に自分の食器を必死に隠していた。
そんな奴だから、こいつに呼ばれても当然無視していた。
我が家ではいつものことだと通用したかもしれないが、こいつは帝国四天王だ。
そんな我が家の常識が通用するわけはなかった。
「おい!」
エルネスタは切れたのか、つかつかとピーちゃんに近づいていったのだ。
「逃げろ!」
思わず俺は声を出していた。
でも、ピーちゃんは平気で無視しているんだけど……
「おい!」
自棄になったのかエルネスタはピーちゃんからクッキーの袋を取り上げようとしたのだ。
俺なら絶対にそんなことはしなかっただろう。
一度やって死にかけたことがあった。
その瞬間だ。
ドカーン!
大音響と共にエルネスタが頭からかろうじて残っていた壁に激突していた。
そして、壁ごと崩れ落ちる。
ピーちゃんが足でエルネスタを蹴飛ばしていたのだ。
本当にエルネスタもアホだ。
食いものをピーちゃんから取り上げようとするなんて、ユリアの目の前からデザートを取り上げようとするようなものだ。
俺は小さい頃それをやってユリアに半殺しにされたことがあった。
それ以来ユリアの食べ物をくすねようとしたことはない。
あいつは食い意地だけは張っているのだ。
ペットも飼い主に似るというがピーちゃんも同じだったらしい。
でもまさか、四天王よりも強いとは思ってもいなかった。
さすがエック兄上。ピーちゃんがここまで強いって知ってて俺につけてくれたんだ。
俺は感激した。
でも、四天王はそれだけではやられなかった。
頭を振って立ち上がってくれた。
「おのれ、金の化け物め! もう許さん! やれ!」
エルネスタは自分では勝てないと思ったのか黒竜にやるように命じたのだ。
黒竜は古代竜だ。ピーちゃんは金の古代竜の子供ではあるが、相手も古代竜だ。絶対に敵わないと俺は青くなった。
「ギャオーーーーー」
古代竜はドシンドシンと足音を立ててピーちゃんに迫った。
「ピーちゃん逃げろ!」
俺は叫んだ。
でも、食い意地の張ったピーちゃんは無視してむしゃむしゃとクッキーを食べていた。
どこまで食い意地が張っているんだよ!
俺はあきれ果てていた。
「ギャオーーーーー」
全く無視されて更に黒竜は怒り狂った。
もう終わりだ。これまでだ。
俺は黒竜にやられるピーちゃんの姿が目に浮かんだ。
「ギャオーーーーー」
黒竜がまさにピーちゃんに襲いかかろうとした時だ。
ピーちゃんが振り返ったのだ。
怒りの形相で!
「ギャオーーーーー」
そしてその瞬間そこに巨大な黄金の古代竜が出現していた。
「ゲッ!」
俺は黒竜がそう叫んだように聞こえた。
固まった黒竜は次の瞬間肢体を投げ出したのだ。
頭を下げてピーちゃんに絶対服従の格好をしていた。
さすが古代竜の頂点に立つ金の黄金竜だ。
姿を現しただけで黒竜は服従の姿勢を示した。
それは周りにいた竜達も同じだった。
10匹以上の竜が同じ姿勢を取っていたのだ。
その姿は圧巻だった。
いつの間にか元の子供に戻ったピーちゃんはその様子を見て頷くやまた、クッキーを食べ出したんだけど……
どれだけ食い意地が張っているんだよ。
俺は呆れてしまった。
「おい、何をしている。すぐにその金の化け物をやっつけろ!」
竜遣いのエルネスタが力を使って叫んでいた。
だが、黒竜達は全く動かなかった。
竜遣いの力も古代竜の頂点に立つ黄金竜の前には全く効かないみたいだった。
「おのれ、化け物め!」
エルネスタは剣を抜いてピーちゃんに向かった。
その剣は竜も斬れるといわれるドラゴンスレイヤーみたいだった。
「ピーちゃん、危ない!」
俺が折角注意してやったのに、ピーちゃんは全く無視してくれた。
ガキン!
エルネスタは思いっきり上段からピーちゃんに斬りつけていた。
ポキン!
でも、ドラゴンスレーヤーはピーちゃんには全く通用せずに打ち付けたところからポキリと折れてしまったのだ。
「な、何だと」
エルネスタが唖然としていた。
バシン!
次の瞬間だ。
ピーちゃんは腕でエルネスタを弾き飛ばしていた。
エルネスタは黒竜の目の前に落ちた。
「ピー!」
ピーちゃんが黒竜達に何か指示した。
「ギャー、やめろ、やめてくれ! ギャーーーーーーーーーー」
エルネスタは竜達に食べられていた。
いつも拷問した相手を竜達に食べさせていたそうだが、今日は逆に竜に食われてしまったのだ。
ピーちゃんは我関せずという感じでクッキーをむさぼり食べていたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ピーちゃんは無敵でした。
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続きは明日です。
久々にユリア視点に戻ります。
お楽しみに!








