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獣人の長からお兄様は金色に輝く無名剣を私は金色の無名杖を授かりました

「えっ⁉」

 私とお兄様は長が口ほどになく黒焦げになったので驚いた。

 だから言わないことじゃない!


 黒焦げになった長はピクリとも動かないんだけど……


「「「長!」」」

「大丈夫ですか?」

 見ていた獣人達が慌てて駆け寄る。

「ヒール!」

 慌ててアリーサが癒し魔術をかけた。


 金色の光に包まれた瞬間、パチリと長は目を開いた。

「長、大丈夫でしたか?」

 アリーサはほっとした。


「儂がこのようなちゃちな攻撃でびくともするものか!」

 むっとして長は立ち上がった。


「アルト、ユリア、貴様等のボールを曲げるとは卑怯ではないか?」

「「えっ?」」

 私とお兄様は驚いた。

「長のボールも曲がってましたけれど……」

 私がむっとして呟くと、

「何を申しておる。曲げる時は前もって曲げると宣言するものだ」

 ええええ!

 そんなの長にされたことないけど!

 長は理不尽だ!


「えっ、長、自分の時はそんなの言ってなかったのに!」

「しっ」

「アダ! そこは黙っているのよ」

「えっ、そうなの?」

 周りに怒られてアダは黙ったが、不満そうだ。


「ふんっ、まあ良いわ。儂に勝ったことは事実じゃ。儂から貴様等二人に褒美をやろう!」

「褒美?」

「何をくれるの? それって美味しいの?」

 私はよだれを垂らしてそうになって聞いていた。


「何を言っておる。食いものではないわ! 愚か者!」

「ユリア、お前な……」

 長とお兄様に呆れられたんだけど……


「お姉ちゃん、食い意地が張りすぎ!」

 アダにまで馬鹿にされてしまった……


 でも、褒美と言えばデザートしか思いつかないのは、お兄様がいつもデザートを褒美に賭けてくれるからお兄様のせいだと思うのに!


 理不尽だ!

 私はむっとした。


 でも、私の怒りは無視して、長は私達を連れて裏山に向かおうとした。

「私は食い意地は張っていないのに……」

 ブツブツ文句を言う私を無視して……

「お姉ちゃん、クッキー用意して待っているから。頑張って!」

「えっ、そうなの!」

 クッキーあるなら頑張って行くか!

 私はたちまちやる気になった。


「お前な!」

 お兄様に呆れられていたけれど……


 私達一行は剣を掴んで裏山に入った。

 獣人の隠里には魔物は出てこないが、裏山に行くといるのだ。

 まあ、大半は出た瞬間に獣人達が矢で射て退治していたが……

 今日は魔物のステーキみたいだ。


 私は嬉しくなった。


「ほんにその方は食い意地が張っておるの!」

 長には呆れられた。

「次の支配者がこのような食い意地の塊で果たして良いのかの?」

 長の呟きは私には聞こえなかった。



 裏山の麓には大きな洞窟があった。


 どうやらこの中に入っていくようだ。


 ここからは私達三人になるらしい。


「ギャオーーーーー」

中に入るといきなり巨大なフェンリルが現れた。

「喰らえ!」

お兄様がそう叫んで飛び上がると剣で叩き斬った。


「ギャーーーーー」

バタリとフェンリルが倒された。


それからも次々にオーガ、ゴブリンキングとか巨大な魔物が次々に現れたが、お兄様の敵ではなかった。


「ステーキ! 魔物ステーキ!」

 私は超ご機嫌だった。


 倒す度にお兄様が入り口に転移で飛ばしてくれた。


 魔物の血のにおいを嗅いで魔物達が襲ってきて入り口に残った獣人達は大変だったらしい。

「まあ、奴らも良い訓練になったじゃろう」

 長は平気な顔で話していたが……


 そして、最奥の間に到達した。

だだっ広い空間が広がっていた。

そして、そのおくに金に光っている小さな山があって、剣や槍などいろんな物が突き刺さっているのが見えた。


「アルト、まずお前が進んで好きなものを一つ取ってくるが良い」

「判りました」

長の言葉にお兄様は頷いてゆっくりと歩みだした。


そのお兄様の前に巨大なサラマンダーが現れたのだ。

サラマンダーはいきなり火を噴いた。

お兄様はそれを軽く躱すとサラマンダーに飛びかかったのだ。

そして、一撃で巨大サラマンダーを斬り倒していた。

そのままお兄様は金の山に向かうと無造作に金の巨大剣を引き抜いたのだ。


そして、スタスタと戻って来た。

「ふむ。無名剣を持ってきたか」

「これは無名剣と言うのか?」

「単に名前がないだけじゃ。その方が好きにつけて良いぞ」

長は興味なさそうにお兄様に言ってくれた。


「次は私ね」

「食いものはないからな」

「判っているわよ」

長の言葉にむっとして私は中に入ったのだ。


そして、歩み出した途端に

「ギャオーーーーー」

雄叫びを上げて黒竜が現れたのだ。


食いものあるじゃない!


私がよだれを飲み込んで剣を構えた途端だ。


「ギャーーーーー」

黒竜は悲鳴を上げると天井めがけて一目散で逃走を始めたのだ。


「えっ、私のステーキが!」

私が慌てて追いかけようとした時だ。

「待て、ユリア! 逃げる奴などどうでも良かろう」

「えっ?」

私が一瞬躊躇した時だ。

天井に開いた穴に黒竜は飛び込んでいた。

「ああん、私のステーキが!」

「ステーキなどもうたくさんあるであろうが! それよりも早く物を取って参れ!」

長に叱られて私は仕方なく何の魅力も感じない金の山に向かった。


そこには見たこともない金の剣や槍などいろんな武器があった。


「うーん、どれにしようかな」

金の斧は大きすぎるし、金の弓矢も命中させるのが難しそうだ。

そんな中で、長が持っている杖よりも立派な金の杖があったのだ。

その横に銀の杖もあったけれど金の方が立派に見える。

私はその金色の杖を金の山から引き抜いた。

抵抗はあるかと思ったんだけど杖はあっさりと引き抜けた。


「その方は無名杖を持ってきたのか」

なんか呆れたように長が私を見てきた。

長よりも立派に見えるかもしれないと思った私の浅ましい心を読まれたように感じて私は赤くなった。


「まあ、良かろう、どれでも大した違いはあるまい」

長は首を振って私を再度見てくれたんだけど……私は長の期待には添えなかったらしい……


そう言えば建国神話にはこのように書かれていた。

「大魔術師より、初代皇帝陛下は金の剣を、初代聖女様は銀の杖を賜りました」と


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

金ぴかの杖を持ってきた成金趣味のユリアでした。

続きは今夜です。

ユリアとお兄様がいなくなって混乱する兄姉のお話です。

お楽しみに!


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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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