獣人の長に言われて長を攻撃したら黒焦げになってしまいました
それから私とお兄様は毎日、長に訓練してもらった。
でも、私達は中々成長しなかった。
お兄様は三方向からの私はやっと二方向からの攻撃になんとか耐えられるようになっただけだった。
そんな私は遠くから見ている獣人達が青くなっているのを知らなかった。
「おい、あのアルトとか言う野郎、長の三方向からの攻撃に耐えてるぞ!」
「ってことは帝国を作ったあの無敵の初代皇帝陛下も越えたんじゃないのか?」
「あの野郎もそうだけど、隣のユリアって子も二方向に耐えているんだけど、凄かねえか?」
「俺なんて長の一発ごとの攻撃ですら防ぐことも出来ないのに」
「あの長の連続攻撃に耐えているんだぜ」
「信じられないよな」
男達は口を開けていたそうだ。
「ちょっとあんた達、失礼だよ。あのアルトって方は皇位継承権もあるんだろ」
「それにあのユリアってお方は皇女殿下だよ。長の攻撃に耐えられるってことは下手したら下手するよ」
一同ゴクリとつばを飲み込んだのだった。
長の訓練に耐えた初代皇帝が帝国を建てて、長の育てた四天王を配下にした皇弟の息子が皇帝位についたのだ。そして、皇弟の息子が帝位に就いた以降の自らの国獣人王国の扱いに切れている長がこの二人を育てているのだ。いずれは崇高な地位につくのではないかと思われた。
そんな話がされているとは知らなかった私は、長の攻撃を食らって倒れていた。
そろそろ限界かもしれない。
「ヒール」
それを見計らってアリーサがヒールをかけてくれた。
「お姉ちゃん、お菓子持ってきたよ」
そのタイミングで、私が助けたアダがお盆いっぱいに作ったクッキーを持ってきてくれた。
「ありがとう」
甘いものがほしくなってきた私はアダのお盆に手を伸ばした。
「美味しい!」
獣人の作ったクッキーは絶品なのだ。
「はい、お兄ちゃんも」
アダはお兄様にもお盆を差し出していた。
「おう、一つもらおうか」
お兄様も一つ食べていた。
「お姉ちゃんもお兄ちゃんも大分上達したんじゃない」
アダが素直に褒めてくれたけれど、
「うーん、そうかな、まだまだだと思うけれど」
「でも、長の攻撃を二方向から受けて耐えられるなんて人を見たことはないよ」
「でも、お兄様は三方向から受けているよ」
私がお兄様の方を見ると
「それは化け物クラスだよね」
アダは呆れていた。
「おいおい化け物は無いんじゃないのか」
お兄様が少し不機嫌そうにアダを見る。
「そうじゃぞ、アダ。その若造はまだまだじゃ。アーベルなんざ八方向からの攻撃を耐えておったからの」
長が横から口を出してきてくれたが、この前は四方向って言っていたような気がするけれど、私の聞き間違いだったっけ?
私がぽかんと長を見ていたら、
「あれれれ、おばあちゃん、この前は四方向っていってなかったっけ?」
アダが代わりに指摘してくれた。
「そうじゃったかの? 年寄りは物忘れが激しくての!」
長は笑ってそう言い訳したけれど、長は都合の悪くなった時だけ物忘れが激しくなるんじゃ無いだろうか?
そう思ったのは私だけで無いみたいで、疑い深そうにアダも長を見つめていた。
「なんじゃ、その白い目は。八方向は避けられないと思うのか? ではできることを証明してやろう。アルトとユリアや。儂に向けて儂と同じように攻撃して参れ。儂が全て避けて見せようぞ」
長が提案してくれたんだけど……
「えっ? 長を攻撃するの?」
「大丈夫なんですか?」
私とお兄様が心配そうに聞くと
「何を躊躇しておる。儂は帝国最強と言われておる初代皇帝も指導してやったのじゃぞ。貴様等のようなひよっこにやられるわけは無かろうて」
長が馬鹿にしたように言ってくれた。
「いやでも」
「ふんっ、つべこべ言わずにさっさとやれ」
そこまで言われたらには仕方がなかった。
私とお兄様は目を合わせたのだ。
「では、長、行きますよ」
「さっさとせよ」
長の言葉にお兄様が頷いた。
お兄様が魔力の塊の赤いボールを一つ出す。
私も手を掲げて赤いボールを一つ出した。
「何じゃ、一つばかりか」
長が馬鹿にしてくれた。
お兄様がゆっくりとボールを長の方に向かわせる。
私もゆっくりと向かわせた。
「ふんっ、そんなへなちょこスピードでは届きもせんぞ」
長が余裕で話してくれた。
ゆっくりと私とお兄様のボールが長の横を通過した。
「当たりもせんのか」
吐き捨てるように長が言ってくれた時だ。
私は赤い球を急遽曲げて長に向かわせたのだ。
「ふんっ甘いわ」
長がそう言って避けようとした時だ。
ドカーン!
お兄様のボールが長の後に回り込んで爆発したのだ。
そして、私のボールが正面から突っ込んだ。
ドカーン!
爆発の終わった後には黒焦げになった長の姿があった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます
口は災いの元、油断大敵、豚に真珠?
続きは明日です。
お楽しみに!








