表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/230

過去のことを思い出した私は兄姉を巻き込まないと心に決めました

 私はお母様に手を引かれて追っ手から必死に逃げていた。

 でも、私はあまり速く走れない。


「駄目だわ。ユリア、私がここであいつを叩くからあなたは一人で逃げなさい!」

 お母様が私に命じた。

「嫌よ! ならお母様と一緒にいる!」

 私は駄々をこねた。


「ダメよ、お願いだから逃げて!」

 お母様はそう叫ぶと、私を強く押してくれたのだ。

「お母様!」

「逃げて! ユリア! お願いだから!」

 お母様が私を見て頼んできた。

 私は躊躇した。

「さあ、早く、早く行くのです!」

 お母様の瞳は涙が溢れていた。


「やっと追いついたぞ」

 そこに現れた血まみれの男がにかっと笑ってくれたのだ。

 悪魔だった。

 そう、赤い悪魔だった。


 赤い悪魔がそのままお母様に斬りかかったのだ。

 お母様は私を庇ってその剣を前で受けてくれた。

 その時、その悪魔がニタリと笑ってくれたのだ。


 そして、鬼は剣を横殴りに振ってくれた。

「キャーーーー」

 悲鳴を上げてお母様がざっくりと斬られて血が吹き出した。

「お母様!」

 私はそれを見て大声で泣き叫んでいた。


「ユリア、ユリア!」

 大きな声で私は揺すられた。

「お兄様!」

 私ははっとした。

「お兄様!」

 私は思いっきりお兄様に抱きついた。

 目からは涙が大量にあふれていた。

「大丈夫だ、大丈夫だから」

 お兄様は固い胸板で私を抱き締めてくれた。

 暖かい!

 昔からよく私を包んでくれたお兄様の腕のなかだ。

 私はほっとした。

「お兄様!」

 私はそれでも強くお兄様に抱きついたのだ。

 思いっきり抱き締められたい気分だった。


 私は今まで記憶の底に蓋をしていた事を思い出していたのだ。

 お母様との思い出も、お父様との思い出も、そして、赤い悪魔がお父様とお母様を殺してくれたとこも全て思い出していた。


「お兄様、お母様が、お母様が斬られたの! 赤い悪魔に。悪魔に斬られたのよ」

「すまん、ユリア」

 何故かお兄様が謝ってくれた。

「お兄様は何も悪くないわ」

 私はお兄様を見上げて首を振った。

「いや、しかし、父が間に合わなかったと、もっと早くに行っていれば助けられたと言っていた」

「ううん。お父様も悪くない。私を命をかけて助けてくれたわ」

 私はお兄様を見上げたのだ。

「あのままだったら私も殺されていた」

 私はお父様にも感謝の言葉しか無かった。


「悪いのはあの赤い悪魔よ。それとそれを命じた皇帝よ。それとそいつらに負けた私だわ」

「無茶を言うな。ユリア。前はその時にまだ三歳にもなっていなかったじゃ無いか」

 お兄様が私の瞳を見つめて諭してくれた。

「でも、その時に私に力さえあればあいつらにお父様もお母様も殺させなかったのに!」

 私は歯がみした。

「それを言うなら俺がユリアに会った時は七歳だったぞ。でもその時は到底叶わなかっただろう」

「たった七歳じゃない! 七歳の子供が赤い悪魔に勝てるわけなんてないわ」

「何言っているんだ。ユリアより余程大きかったんだぞ。それでも戦ったら赤い悪魔には絶対に太刀打ちできなかったぞ」

 お兄様はそう言って私を慰めてくれた。


 私は許せなかった。お父様とお母様を殺した赤い悪魔とそれを命じた皇帝は絶対に許せない。


 でも、公爵家の跡継ぎのお兄様の前でそんなことを言うことは出来なかった。

 皇帝に逆らうってことはすなわち反逆するって事だ。

 公爵家の跡取りのお兄様をそんなことに巻き込むなんて出来なかった。


「お兄様。私は強くなりたい!」

 代わりに私は希望を述べた。


 自分が強かったら、赤い悪魔に両親を殺されることも無かった。

 私の両親を殺しておきながら、赤い悪魔と皇帝がのほほんと生きている事が許せなかった。


「そうか、ユリアも強くなりたいのか。俺も強くなりたい!」

 お兄様が頷いてくれた。

「そして、強くなってユリアを泣かせた奴らを俺は叩き潰す!」

 お兄様が威勢の良い言葉を吐き出してくれたんだけど……いや、待って!

 私を泣かせた赤い悪魔と皇帝を叩き潰したら確実に反逆罪だから。


 私をここまで育ててくれたホフマン家の人々をこれ以上やっかいごとに巻き込むのは違うと思う。

 これ以上お兄様と話すとのっぴき無いならないことを約束してくれそうだった。

 それだけは避けなければ……

 ここは話題を変えるべきだった。


 私の命の恩人のお父様とその家族をこれ以上私の事情に巻き込むのは良くないと私は思った。


「ありがとう、お兄様。そう言ってくれるだけで私はとても嬉しいわ」

 私はそう言うとお兄様に抱きついたのだ。


「ユリア!」

 お兄様は私をきつく抱きしめ返してくれた。

 そして、背中を撫でてくれた。

 泣き疲れた私はいつの間にかお兄様の胸の中ですやすや寝ていた。


「ユリア、お前を泣かせた赤い悪魔も皇帝も俺は絶対に許さない!」

 だからお兄様の決意の籠もったこの言葉は聞いていなかったのだ。


ここまで読んでいただいて有難うございました。

過去を思い出したユリアと決意するお兄様でした。

帝国の力は強大で二人の力はまだまだ微々たるものでした。

続きは明日です。

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

新作

『モブですらない小さい聖女に転生したので、小説の世界を堪能しようとしたら、何故かヒロインになっていました』https://ncode.syosetu.com/n4848kz/


私の今一番熱い人気の作品はこちら

『【電子書籍化】王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』https://ncode.syosetu.com/n9991iq/


表紙画像
1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■【3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
2巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/

3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

アルファポリスのレジーナブックスにて

【書籍化】

しました!
2023年6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク

■楽天ブックスへのリンク

■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

なろうの掲載ページ『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

第一部は書籍化の規約上3分の1残して後は他者視点で繋いでいます
「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


私の

3番人気の作品はこちら

『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』https://ncode.syosetu.com/n8311hq/

私の

4番人気で100万文字の大作の作品はこちら

『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』https://ncode.syosetu.com/n8911gf/



最新の短編作品はこちら

『婚約破棄されやけ酒飲んでると軽い男が声かけてきたので張り倒したら、何故か執着されました』https://ncode.syosetu.com/n2191kg/

このお話の前の話

『悪役令嬢に転生させられた地味令嬢ですが、ヒロインの方が強くて虐められているんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n7240kb/

新作

『恋に破れた転生王女はツアコンを目指します』https://ncode.syosetu.com/n7707kp/


この前の作品はこちら

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ