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公爵家三男の独り言 ユリアの送ってきた文章を書き間違いだと軽く考えてしまいました

「な、何だ? これは?」

 俺はエック兄上が奇声を上げるのを聞いて驚いた。

 エック兄上の広げる紙にはユリアの走り書きで、こう書かれていたのだ。

『お父様、お兄様、お姉様、先立つ不幸をお許しください』と…………



 俺はフランツ・ホフマン、ホフマン公爵家の三男だ。

 兄は戦闘に超特化次期ハンブルク王国の騎士団長は確実だ。次兄のエック兄上は戦闘と勉学両方できて騎士としても文官としても領主としても将来は有望だ。

 将来有望な二人の兄がいるんだから俺は剣術なんて出来なくても良いだろうと、魔物博士めざしして邁進していたのに、一番下の義理の妹が帝国の皇帝に目をつけられて、帝国の学園に留学させられたので、仕方なしに付いてきてやったのだ。

 まあ、一番下の妹はこの家に来た最初から生意気だったけれど……


 一番上の兄上のお気に入りになったからか、兄である俺様に対して失礼な態度を取ってくれるのだ。

 そもそも上の兄に剣術で勝つか?

 普通は対面を考えて負けろよ!

 それでなくても俺は剣術はいい加減にしているんだから……

 お前に負けたら兄上達に怒られるだろう!

「私より強くなれれば良いじゃん!」 

 俺がそう文句を言ったのに、ユリアはそう簡単に流してくれたのだ。

 公爵家の試験で子供とはいえ、金色の古代竜と対戦するような奴に俺様が勝てる訳無いだろう!

 挙げ句の果てにユリアはその古代竜の子供をペットにしているし、世界広しといえども、竜をペットにしたなんてこいつくらいだ。いや、帝国の初代皇帝陛下と聖女様も古代竜を飼っていたそうだ。とするとこいつで二人目か?


 それにユリアは食欲旺盛で、食べ物の恨みは怖い。二言目には俺のデザートを取ろうとするし、本当に最悪の妹だった。


 まあ、しかし、そんな妹にも良いところがあって、ペットの古代竜の世話をたまに俺に任せてくれる事があるのだ。

 まあ、自分がやりたくないから俺に任せているというのもあるかもしれないが、魔物博士を目指す俺としては、世界の魔物達のトップに立つ黄金竜の子供を間近で見られるという、まれに見る幸運に恵まれていた。魔物学の世界的な権威のフラーケン先生にもうらやましがられるくらいだ。


 もっとも妹曰くのピーちゃんは魔物というよりはミニユリアっていう感じだが……

 我が儘だし、食べるのはほとんどユリアと同じ。

 挙げ句の果てにはすぐに俺のデザートまで食べようとするのも同じだ。

 まあ、機嫌をとるためにたまにはデザートをやって餌付けしているんだが……


 フラーケン先生は金色の古代竜は魔の森の竜の谷のダンジョンに住んでいて、竜達を支配しているはずだと言うんだけど。じゃあここにいる金色の竜は何なんだろう?


 初代皇帝陛下を皇帝に押し上げたのはこの金色の竜だって言うんだけど……

 まあ、先生は古代竜が人間に慣れることはないって言うんだけど、この竜は夜はユリアに抱かれて寝ているし、ユリアの言う事は本当によくきく。

 普通はあり得ないそうだ。

 過去にそうなったのは前述の初代皇帝陛下と聖女様だけだったという話で、それが事実なら、ユリアが次の皇帝陛下か聖女様になることになるんだけど、そこは信じられなかった。

 がさつなユリアは癒やし魔術なんて全然出来ないし、こんなのが皇帝陛下になったらこの世は崩壊するに違いない。

 聖女達がそのあり得ない点を付いてユリアが竜を薬物や魔術で繰っているに違いないというんだけど、金色の竜がそんなもので繰れる訳は無いのだ。そんなことしようとしたら金色の魔女でも一瞬で精神が崩壊してしまうだろう。



 そんな問題児のユリアと我が家のもう一人の問題児の兄上が、夜になっても帰って来なかった。


「あれだけダンジョンに潜ってはいけないと釘を刺したのに!」

ニーナから二人が転移でダンジョンに冒険に行ったと聞いた時に、エック兄上はキレていた。


二人が帰ってくる代わりに

『お父様、お兄様、お姉様、先立つ不幸をお許しください』

とユリアによって書かれた紙が帰ってきたんだけど……


「えっ、お兄様とユリアが心中を図ったってこと?」

その文章を読んでリーゼの素っ頓狂な声が屋敷内に響いた。


「あの二人が心中なんてするとおもうか?」

「あり得ないでしょう」

「幾らユリアでも食い物に釣られても心中はしないと思う」

俺達3人の意見は一致した。


「皇帝の召還令にいい加減に嫌になったんじゃないかな」

「マイヤー先生に怒られるのが嫌でこんなの書いたんじゃ無いの?」

「フランツがユリアにデザートをやらないから切れたんじゃ無いのか」

皆がそれぞれこんな文章を書いてきたユリアの理由を考えた。


「そもそも漢字自体不孝を不幸って間違えて書いている点からしてユリアらしいけれど」

「絶対に意味を取り違えているよね」

「何と間違えたんだろう? まあユリアが抜けているのは昔からだから」

俺達三人は顔を見合わせた。


「本当に人騒がせな二人よね」

ということで俺達三人の中ではあっという間に二人の無理心中説は無くなった。


どのみち誰かに怒られるのが嫌で二人してダンジョン破りの旅に出たと言うことで片付いてしまったのだ。

俺達はユリアと兄上が帝国に反逆したなんて夢にも思っていなかったのだ。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ここから物語は佳境に突入です。

反逆者は絶対に許さない帝国の前にユリアは生き残れるのか?

続きは明日です。

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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