またしても謹慎になりましたが、帝都で初代皇帝と聖女の幽霊と噂されているようで次兄から大人しく屋敷にいるように言い渡されました
あちゃーー、またやってしまった!
ピクピク震える金色の魔女を見ながら私は後悔した。
もっとも、勝手にお守りが発動しただけだし、私が犬にされなくて本当に良かったと思うけれど……
それからまた大変だった。
お守りが発動したので、授業中にもかかわらず、お兄様が転移してきたし、血相変えたマイヤー先生が飛んで来てお説教が始まったし……
結局、私はその日一週間ぶりに学校に出てきたところなのに、謹慎処分をまた科せられてしまったのだ。
三回目だ。
前世なら退学だった。
私としては帝国の学園から退学になってハンブルクに帰れた方が余程良かったんだけど……
何故かお兄様も一緒に謹慎になってしまった。
お守りを作ったのが、お兄様だという理由らしい。
いや、違う。お兄様がマイヤー先生に強引にそう主張したのだ。
「ユリアが謹慎なら俺も謹慎です」と。
「ユリア、あれほど学園では問題を起こすなと言ったではないか!」
帰りの馬車の中でエックお兄様が愚痴愚痴注意してくれた。
「そんなこと言ったってお守りが勝手に発動したんだもの」
私が悪い訳じゃない!
「何故魔術実技の授業にお守りをつけていたんだ。発動するのは当たり前だろう」
「だって、金色の魔女が着替えなくて教室でいきなり授業を始めたんだもの。そんなの忘れていたわよ」
私がそう言うとエックお兄様は頭を抱えていた。
「精神干渉の魔術よね? どのみち金色の魔女に犬かゴリラにされて遊ばれていたんでしょう。ユリアも喜んで犬役をしていれば良かったのに」
「本当だ」
何かお姉様がとんでもないことを言ってくれて、エックお兄様が相づちを打ち、フランツお兄様が頷いてくれたんだけど……
「ちょっと、それは酷くない!」
「そうだぞ。ユリアを犬にするなど言語道断だ!」
私が三人に反論するとお兄様も応援してくれた。
「兄上、良いですか? ユリアが犬になって周りから笑われても笑いたい奴は笑わせておけば良いのです」
「そんな、エックお兄様酷い!」
「何が酷くあるものか」
「そうだぞ、エック、そんなことは俺は許せん」
「帝国に目をつけられるよりも余程ましでしょう」
「それはそうかもしれないけれど……」
「帝国の四天王に対処出来る手段が無い今はできる限り大人しくしておくに限るんだ」
エックお兄様の言葉に私は反論する言葉を失っていた。
確かに帝国の四天王には勝てない。
「うん? でも、金色の魔女は倒したわよ」
私が少し喜んで言うと、
「お前は馬鹿か? 金色の魔女が一対一の戦いをお前に求めてくる訳はないだろう。今回は金色の魔女が完全に油断していたからこんな手に引っかかったんだ。普通は奴は陰から手を伸ばしてきて知らない間に繰られているんだよ」
「それはそうかもしれないけれど……」
「単細胞なユリアは知らない間に繰られていて俺達を攻撃していることになるんだよ」
エックお兄様は断言してくれたけれど、
「そんなことないもん」
私は口を尖らせた。
「そうだ。ユリアはそこまで単純じゃない」
嬉しい事にお兄様が援護してくれた。
「兄上、兄上こそ、この前金色の魔女に繰られていましたよね」
「あれはユリアをエックに取られると思わされてだな」
「そんな手に引っかかってどうするんですか? 我が家で最強の兄上が繰られたら終わりでしょう。それでなくても四天王に相手にされていないのに、俺達勝てませんよ」
「いや、しかしだな……」
「しかしも糞もありません。俺は危うく兄上に殺されるところだったんですからね」
確かにあのお兄様の初撃は凄かった。エックお兄様も避けていないと死んでいたと思う。
「いや、すまん」
お兄様は謝ることしか出来なかった。
お兄様がエックお兄様に言い負かされる事なんて初めて見た。
お兄様と一緒のお休みか……お姉様達からは休みじゃなくて謹慎だと訂正されたけれど……
また、訓練するしかないか……でも、帝都近辺のダンジョンはほとんど制覇し尽くしたし……
「それと兄上とユリアに言っておくことがあるんだが……」
エックお兄様が言い出してくれた。
何だろう?
碌な事がないような気がする。
「このお休みの間は二人でダンジョン制圧なんて止めてくださいよ」
「何故だ。エック。訓練には最適だろう」
「何言っているんですか? 7日間で7つもの大きなダンジョン潰してどうするんですか? 冒険者ギルドからお二人にクレームが入っています」
「ええええ、そうなの?」
私は知らなかった。
「なんでエックが知っているんだ?」
お兄様の言葉に頷くと
「何でって、バレるに決まっているでしょう。森の兄妹なんて馬鹿な名前つけて暴れているからでしょう。そもそも登録住所がここになってたじゃないですか」
そうだった。馬鹿正直に住所をここにしていた。
「しばらく活動停止要請が来ています」
エックお兄様が冒険者ギルドからの要望書を見せてくれた。
「そもそも冒険者達はダンジョンで魔物狩って生活しているんです。その生活の場をほとんど潰してしまつてどうするんですか?」
「「……」」
エックお兄様の言葉に私達は反論しようもなかった。
確かに帝都のほとんどのダンジョンを考え無しに潰していた。
「やることがないのならば我が軍にでも編入するか?」
お兄様の言葉に私はそれ良いかもと思ってしまった。
でも、それは間違いだった。
「兄上! それでなくても帝国から目をつけられているんですよ。反乱するつもりかと言われたらどうするんですか?」
エックお兄様の言う事も一理あった。
「それでなくても初代皇帝様と聖女様の英霊が現れたと噂になっているのに」
金髪のお兄様と銀髪の私が冒険者やっていたのでそんな噂になっているらしい。
初代皇帝様と聖女様が皇帝のやり方に文句があるから出てきたとかいう噂もあるみたいで、エックお兄様はピリピリしていた。
「絶対に謹慎期間中は屋敷で大人しくしておいてくださいよ。良いですね」
「「はい」」
エックお兄様の言葉に私達は大人しく頷いたのだった。
果たして1週間も二人は静かにしていられるのか?
続きは今夜です