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お兄様を正気に戻すために公衆の面前でキスしたら、お兄様が溺愛してきました

 準決勝のもう一試合はお兄様の五年E組とエックお兄様の四年E組だった。

 試合はほとんど互角だった。

 四年E組は善戦した。

 しかし、一学年の違いは五年生に体格と腕力に一日の長があり三鋒の生徒が副将までを倒してしまった。

 後は大将のエックお兄様しか残っていない。


 でも、ここからはエックお兄様の独断場で、五年E組の三鋒と副将をほとんど一撃で倒していた。



 そして、ついに大将戦だ。

 事実上の決勝戦でもある。

 おそらく……

 自分で言うのもなんだけど、我が一年E組はくじ運だけで決勝に残ったと思うし……


 私以外の面々は頑張っているとは言っても、所詮一年生だ。

 まあ、私もそうなんだけど……体格の小ささは大量の魔力でなんとか対応しているのが現状だ。

 そもそもお兄様と戦っても絶対に勝てないし……

 それに比べればエックお兄様の方が少しは戦えるはずだ。


 私はそう思っていたのだ。

 でも、それは間違っていた。


 お兄様は最初から何故か怒りまくっていた。

 少し怖いくらいだった。


「お兄様!」

 私が心配して声掛けてもちらっとこちらを見たくらいだった。

 何か怒り狂っていて私を全く見ていない。

 どうしたんだろう?


「エックお兄様、気をつけて! お兄様は少し変よ」

 私の悲鳴にエックお兄様が軽く手を上げてくれた。


 でも、私の声がお兄様の怒りに更に火をつけたみたいだ。


「ウォーーーーー!」

 試合が始まると、激怒したお兄様の凄まじい斬撃がエックお兄様に襲いかかったのだ。

 まさに一瞬だった。

 お兄様の怒りの剣をエックお兄様が間一髪で避ける。

 絶対にエックお兄様でもその斬撃を受けていたらとんでもないことになっていたと思う。

 しかしだ。お兄様はそのまま横に剣を振り払ったのだ。


 バシンッ

「グッ!」

 次の瞬間、エックお兄様が吹っ飛んでいた。

 フェンスに激突する。


「エックお兄様!」

 私が慌ててエックお兄様に駆け寄ると

「大丈夫だ」

 エックお兄様が手を上げてくれた。


「本当に?」

 私が様子を見ると、

「ああ」

 エックお兄様は両手を振ってくれた。

 体はなんともないみたいだ。


「それよりも兄上が変だぞ」

 エックお兄様がお兄様を見ると目を怒らせて私を睨み付けているんだけど……

 こんな視線で見られたのは初めてだった。

 私の敵に対してお兄様が対する時と同じ視線だ。

 私、お兄様に敵認定されたの?

 私はとても悲しくなった。


「四天王の金色の魔女が何かしている」

 エックお兄様の声に金色の魔女を見ると、何か詠唱しているようだった。

 おのれ、あの魔女、私のお兄様に何か術をかけたのか?

 私は切れかけた。


「ユリア、抑えるんだ」

 エックお兄様が私の両手を掴んで注意してきた。

「でも、エックお兄様、お兄様が魔術かけられているのよ!」

 私が怒って言うと、

「ユリアが兄上にキスしてくれば良い」

「はい? 何を言い出すのよ!」

 私はエックお兄様の声に真っ赤になっていた。


「親愛のキスでも何で間も良い。兄上を正気に戻させないととんでもないことになるぞ」

 エックお兄様にそう言われたけど、私はとてもと戸惑った。


「そんな、こんな人前で出来る訳無いじゃない!」

 私が文句を言った時だ。

「二人でこそこそ何をしている!」

 そこに怒り狂ったお兄様がやってきた。


 とても怖いんだけど……私を見る目が敵を見る目だ。

 私はこんなお兄様にキスなんて到底出来なかった。

 さあと目で合図してきたエックお兄様に首を振る。

 それを見ていたお兄様の目が更に釣り上がった。


「何を二人して企んでいるんだ?」

「何も企んでなんかいませんよ」

 エックお兄様がしらっと言ってくれるけれど、お兄様にキスしろって私を諭すのは企むっていうことではないの?

 私が白い目でエックお兄様を見た時だ。


「誰がなんと言おうと俺のユリアは渡さないぞ」

 お兄様が私を前にして言ってくれるんだけど……


「えっ、俺のユリア?」

 俺のユリアってどこに私以外のユリアがいるんだろう?

 私がきょとんとしてお兄様を見ると、


「どうした、女?」

 ええええ! お兄様は私が誰か判っていないの?

 私は更に混乱した。

「精神干渉だ」

 エックお兄様が小声で呟いてくれた。

 あの女! 私のお兄様になんて事を!

 それにしても私の事を忘れるお兄様もお兄様よ!

 私はむっとした。


 ぎろりとお兄様を睨む。

「な、なんだ女!」

「私がお兄様の妹のユリアですけど」

 お兄様に本当のことをプリプリしながら説明すると

「何を言っている。俺のユリアーナはもっと可愛くておしとやかだぞ」

 お兄様の言葉に思わずエックお兄様が吹き出してくれた。

 な、何ですって! 私はそれで完全にキレてしまったのだ。


 お兄様の弁慶の泣き所を足を思いっきり蹴り上げたのだ。

「ギャーーーー」

 思わずお兄様が悲鳴を上げて足を押さえでうずくまった。


「な、何をしやがる!」

 怒り狂って私を見たお兄様の顔を見て

「おしとやかでなくて悪かったわね」

 そのままお兄様の瞳を覗き込んだ。

「えっ?」

 お兄様がとても戸惑った顔をした。

 良かった。少しは戻ったみたい。

「さあ」

 エックお兄様の声が私を促してくれた。

 まあ、エックお兄様の言う通りすれば良いのは経験上判っているけれど、こんな人前で……

 まあ、勢いだ。


 私は諦めて、そのままお兄様の顔に両手を伸ばしてお兄様の端正な顔を抱き寄せるとお兄様の唇に

 チュッ

 とキスをしたのだ。


 お兄様が驚愕した顔をした。


「えっ」

「ええええ!」

「あの女、アルトマイアー様にキスしたわ」

「嘘!」

 周りが騒然とした。


 私は真っ赤になっていた。

 そして、慌てて下がろうとした。


「ユリア!」

 でも、逆に今度は感極まったお兄様が抱きついてきたんだけど

「良かった、ユリアだ。ユリア、もう絶対に離さないぞ」

 お兄様が壊れたように私を思いっきり抱きついてきたんだけど……

 ちょっと、お兄様、皆見てるから、見てるからもうやめて!

 私の叫びはお兄様には届かなかったのだ……





ここまで読んで頂いてありがとうございました

お兄様への精神干渉をキスで壊したユリアでした。

でも、公衆の面前でキスして抱き合っている二人はどうなる?

続きは今夜です。

お楽しみに


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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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