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皇帝視点 想い人と見間違えた娘を処断することにしました 

「ク、クラウディア!」

 俺様はクラウディアの忘れ形見のユリアーナを初めて競技場で見て、思わず声に出していた。

 それほど今は亡きクラウディアに似ていたのだ。

 俺が王宮で初めてクラウディアを見たのが丁度この娘の頃だった。

 クラウディアは剣を構えてなどいなかったが……俺はクラウディアを一目見た時から恋に落ちてしまった。

 その俺がクラウディアと見間違うほどこの娘はクラウディアに似ていた。



 死に損ないの娘は、属国のハンブルク王国のホフマン公爵が引き取ったと聞いていた。

 ハンブルク王国など我が帝国の十分の一ほどの大きさの国だ。戦力的にも大したことはあるまい。

 その陪臣の男などどれほどのものがあろう。 

 まあ、元々皇弟だった男がその始祖だ。多少は力も持っていると思われたが、我が四天王で取りかかれば潰すのも容易かろう。何しろあの最強を誇った獣人王国ですら蹂躙して、今は跡形も無いのだ。


 まあ、見目良い娘に育っているとのことだったので、我が息子達の愛人にしても良かろうと俺は思っていた。

 墓の中の皇帝やクラウディアが知れば泣いて喜ぶだろう……化けて出てくるかもしれん。

 それでも良かったが……

 俺は俺を振ってくれたクラウディアのことを思い出していた。


 クラウディアは俺様が気があると知っていたにもかかわらず、その護衛騎士と二人で出奔してくれたのだ。せっかく色々と根回しまでしたのにだ。


 クラウディアは目の覚めるような銀の髪をしており、帝国の血筋が濃く出ていた。


 元々初代皇帝は黄金の髪をたなびかせて、銀の髪の聖女と一緒にこの帝国の元となる国を作ったのだ。

 以来、銀髪の皇女は重宝された。兄とクラウディアという話があったのだが、兄を内々に殺すことによって俺にお鉢が回ってきたのだ。俺はあのクラウディアと結婚できると喜々としていたのに、クラウディアは失跡した。

 それを聞いて俺は荒れ狂った。


 父が帝位を継いだ後でクラウディアの所在を知った俺は、出来たらクラウディアは生きたまま、連れてこいと陰共に命じていた。

 俺様の妻にすれば、帝国も盤石になると思っていた。

 陰共が失敗するとは思ってもいなかった。


 まさか、クラウディアが自ら死を選ぶとは想像だにしなかったのだ。


 その娘など眼中になかったが、俺はその姿を見て驚いた。

 まだ十二歳か、後5年もすれば絶世の美女になっているだろう。

 息子の嫁というよりも俺様の愛人にすれば良いのではないか?

 ふと俺はそう思った。


 だが、このユリアーナはクラウディアと同じで騎士と仲が良いみたいだった。

 『お兄様』と金髪の騎士の男に手を振っていた。


 クラウディアの出奔の件は未だに俺様の心の中に大きな傷跡を残していた。

 相手のイルクーナ子爵家は皇族の護衛騎士を代々輩出していたが、さすがに護衛騎士を辞退。俺様が皇帝になった時には準男爵家に落としてやった。

 あやつらを皆殺しにすれば良かったのかもしれん。

 まあ、相手の男は赤い悪魔が惨殺したと聞いていたが……


「あの男は誰だ?」

 俺が後ろにいた陰の長のエグモントに尋ねると

「ハンブルクのホフマン公爵家の嫡男ですな。名前は確かアルトマイアーだったかと」

「ふん、母娘揃って騎士に執着しておるのか」

 俺が不機嫌そうに言うと

「護衛騎士というよりは兄妹とという感じですな。ホフマン公爵は分け隔て無く兄妹として育てたみたいですから」

「ふんっ、気に入らんな」

 俺が鼻を鳴らすと

「陛下。ユリアーナは色々と男を既にたらし込んでいるみたいですわ。例えば今度対戦する相手の中にハンブルクの王太子がおりますが、彼は婚約者で姉のリーゼロッテよりも妹のユリアーナに惹かれているとか」

 四天王の一人のグレーテル・ロンバートが聞きたくないことを教えてくれた。

 クラウディアもそうだが、そのユリアーナも魔性の女らしい。よく見ればクラスの男どもは皆ユリアーナを熱の籠もった目で見ていた。


「女の魅力で周りの男どもをたらし込むなど、クラウディア様と同じですな」

「陛下、私が懲らしめて差し上げますわ」

 不気味な笑みを浮かべてグレーテルが申し出てくれた。

 此奴等はユリアーナを傷つけることを俺様が望んでいると思っているらしい。

 まあ、今まではそうだったが、一目見て考えが変わったとは言い出せなかった。

 昔なら即座に言えたが、さすがにこの年になると多少は俺様も考えるようになっていた。


 グレーテルが一心不乱に瞑想を始めてくれた。

 それと同時にユリアーナの相手の属国の王太子が目を見開いてギラギラした欲望まみれの視線で、ユリアーナをなめ回し始めたのだ。


 俺様はそれが気に入らなかった。ユリアーナをいやらしい目で見るな!

 そう叫びたくなった。


 だが、男は欲望を解放したせいか、打ち込む力も上がったようだ。

 いつ見てもグレーテルの技は目を見開くものがあったが、ユリアーナを追い詰めていったのだ。


 しかし、次の瞬間だ。

「キャッ!」

 思わずグレーテルが悲鳴を上げていた。

 その瞬間、王太子は一撃でユリアーナに吹っ飛ばされていたのだ。


 その剣筋は将来性があった。昔アーベルやクレーメンスと出会った時と同じ予感がした。

 ユリアーナはグレーテルの精神魔術をその剣で断ち切ってきたのだ。


「陛下。ユリアーナは中々脅威であると存じました。宜しければ次のアルトマイアー共々処分いたしましょう」

 頭を振りながら起き上がったグレーテルが進言してきた。


「そうじゃな。それが良かろうて」

 陰の長も頷いてくれた。

 いきなり処断するのか?

 俺様は少し惜しいと思った。

 しかし、俺はアーベルを見たが、アーベルは反対しなかった。

 クレーメンスもだ。

 誰一人俺様に味方しそうになかった。


 グレーテルが不気味な目を爛々と光らせていた。


 俺は止めたかったが、長が首を振ってきた。

 それだけ周りの者がユリアーナの力に不安を感じたのも事実だ。


 こうなれば仕方があるまい。

 グレーテルに任せるしかなかろう。


 俺様は少しユリアーナに未練があったが、その未練を四天王達は一顧だにせずに断ち切ってくれたのだ。

 可哀相だが、仕方があるまい。俺は頷いたのだった。


単細胞のお兄様とユリアーナ。

果たしてグレーテルの精神攻撃の前になすすべも無くやられるのか?

続きは明日です。

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