皇帝視点 生き残った娘を処分しようと決意しました
俺様の名前はヴィクトリア、現在はこの帝国の皇帝陛下だ。
帝国の領土はこの大陸の過半を占めている。
そして、残りの国も大半は帝国の属国だ。
すなわちこの大陸全土を支配している支配者だった。
俺様は元々由緒正しい皇帝陛下ではない。
元々女好きの皇弟が侍女か何かに生ませた皇弟の第二皇子だった。
出自は決して誇れたものではなかった。
そんな俺が皇弟の後継者となれた時から俺様に幸運が巡ってきた。
もっとも、それも俺様が兄を毒殺出来たから拾えた幸運だったが……
煩い正妃も事故に見せかけて抹殺した。
父である皇弟も煩い正妃が邪魔だったみたいで、最近入れた若い側室を即座に正妃にしていた。
そんな俺に皇太子がいちゃもんをつけてきた。
第一皇子を毒殺したのはお前が怪しいと!
俺は否定したが、皇太子の陰が何かと探ってくれているようだ。
俺は側近達を使って陰を始末しつつ、皇太子との争いをなんとか、凌いだ。
その過程で皇太子を毒殺することになってしまったが……
丁度その頃、父が皇帝の最愛の愛人に手を出していた。火遊びだけならまだ良かったかもしれないが、 父達はのっぴきならない関係になってしまったらしい。
これがばれれば下手したら皇弟と言えども謹慎、最悪は処刑だ。
俺は父と愛人を脅した。
ここまで来れば皇帝を亡き者にするしかない。
最初は抵抗していた二人だが、皇帝の愛妻に手を出した歴代の皇族がどうなったか話してやると、二人は観念したようだ。
愛人があっさりと皇帝に毒を盛ったのだ。
皇太子以外に子供のいなかった皇位継承権はあっさりと父のものになった。
でも、事はそう簡単に終わる訳はない。この件に関して怪しいと2公爵家と3侯爵家が連合して異議を唱えてきたのだ。
俺は皇宮に怒鳴り込んできた公爵達を四天王を中心とした側近共を使って瞬時に殺害した。
国家反逆罪でそのまま兵を5家に入れて子供まで尽く処刑したのだ。
貴族達は戦慄してくれた。大半の貴族達は何も言わなくなった。
隠れて色々と画策しようとした貴族達もいた。
俺は皇太子として軍の全権を握って、そういった反対派を次々と粛清したのだ。
俺は陰も掌握し怪しい貴族を次々に摘発させていった。
そんな中で3年前に護衛騎士と失跡した元皇女のクラウディアがハンブルク王国に潜伏しているのを掴んだ。
前皇帝の血筋は全て抹殺したい。俺様は赤い悪魔と呼ばれているアーベルを派遣した。
しかし、アーベルは皇女とその護衛騎士は抹殺したが、その娘を取り逃がしたというのだ。
俺は舌打ちしたくなった。
アーベルの今までの貢献を考えなければ許さなかったところだ。
しかし、まあ、所詮、ガキが一人だ。属国の公爵家に何が出来よう。
その家には異母弟の娘が世話になったこともある。俺は取りあえず見逃すことにした。
俺は何故か異母弟とは気があった。
いつも兄に一緒に虐められていたからかもしれない。
やつが大人しかったからと言うのもある。
その娘がそのホフマン家の嫡男に気があると聞いた。
四天王も少し年を取った。その後釜という点でもその嫡男と弟の娘を婚姻させるのも良いのかもしれない。
丁度ハンブルクに聖女が現れたという事もあったし、ハンブルクに対する締め付けという点からも俺は弟の娘をその嫡男と娶せるために属国に留学させた。
ついでに陰どもに生き残った娘の情報を調べさせた。
しかし、その結果は散々だった。
うまくいけば生き残ったその娘を殺せと陰共には指示していたが、陰は所詮陰だ。
尽く失敗してくれた。
挙げ句の果てには弟の娘を謹慎処分にせねばならなくなった。
そして、それよりも、なんとその嫡男と生き残りの娘がいい仲だというのだ。
さすがにハンブルクの公爵家の息子と結婚させるのは俺としては避けたかった。
「良いではありませんか。辺境の地で根を張るというのならば」
そういう側近共もいたが、後顧の憂いは絶っておきたかった。
俺は娘を帝国の学園に召喚することにしたのだ。
身近に置いておけば良いはずだ。息子達の誰かと結婚させても良いし、俺の愛人にしても良い。
それとも処分するか?
来てから決めようと思ったのだ。
俺は責任を取らす意味でもアーベルを派遣した。
アーベルは娘を連れてくることは出来たが、敵対するのは良くないと言い出す始末だ。
そろそろ引退をさせた方が良いのかもしれない。
小生意気な小娘など帝国の学園に入れば、貴族達からの洗礼を受けて井の中の蛙であったことを身をもって知れば良い気味だと俺は思っていた。
しかし、何とホフマン家は5人の兄妹全員で乗り込んできてくれた。
どこの国の貴族が5兄妹全員をこの由緒正しき帝国の学園に送り込んでくるのだ?
全員を嫌みを兼ねてEクラスに入れるように指示をしたのだが、今度はEクラスの中で存在感を出すようになってきた。
帝国の学園の秩序が乱され出したのだ。
我が息子達も良いようにあしらわれて、決闘したら四天王の息子達もボコボコにされる始末だ。
特に生き残った小娘が存在感を出しているそうだ。
それに小娘は目の覚めるような銀髪で亡き皇女そっくりだそうだ。
既に学園の教師の中でも噂になりだしているそうだ。
送り込んだ黒い死神は古傷の膝を痛めて帰って来る体たらくだ。
本当に頼りにならなかった。
「仕方がない。余が顔を出そう」
俺は決断した。
「学園に行かれるのですか?」
黒い死神が驚いて聞いてきたが、貴様たちが頼りにならないからだと叫びたかった。
まあ良かろう。今まで散々殺してきたのだ。小娘一人更に殺したところでどうということはない。
学園の生徒達が驚くかもしれないが、学生のうちからその心に恐怖心を抱かせておく事は、今後の統治に役立つだろう。
ハンブルク王国が黙っているかどうかは判らないが、反抗すれば獣人王国のように制圧すればすむ話だ。
俺は決心して学園に向かったのだ。
ユリアーナ最大の危機が到来。
果たしてどうなるユリアーナ。
続きは明日です。








