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皇帝が臨席して、その傍の女から禍々しい狂気のようなものを叩きつけられたので、剣で一閃しました

 その時だ。

 会場内がざわめいたのだ。

「どうかしたの?」

 私が周りを見渡した時だ。


「皇帝陛下よ」

「皇帝陛下がいらっしゃったわ」


 観客席の人間が次々に跪いていた。

 その真ん中を歩いている集団がいた。

 赤い悪魔や黒い死神がいる。

 その真ん中にでっぷりとした中年の男が歩いていた。

 一番偉そうだ。おそらくあれが皇帝なんだろう。


 私をこの地に呼んだ、元凶だ。

 あまり良い噂はない。

 前々皇帝陛下を毒殺したという真しやかな噂まである。

 賢君かと言われると反対の悪逆非道な暴君だと言われる方が多いだろう。

 この皇帝のために何十という貴族の家が没落して、何百人という者が処刑された。

 帝国内の貴族達を恐怖のどん底に叩き落としたともいわれていた。その手先になって動いたのが、赤い悪魔を始めとする帝国四天王だ。


 私はお父様にもお姉様にもくれぐれも十二分に注意するようにと釘を刺されていた。


「でも、何故皇帝陛下がこのようなところにいらっしゃったの?」

「確か、今まで学園の催し物に足を運ばれたことはなかったと思うわ」

「皇太子殿下も第三皇子殿下も敗退されているわよ」

「まさか、息子達を負かせた者達に罰を与えるためとか?」

「しーーーー」

 生徒達は皆静かになった。

 それは十分にあり得る。

 私の呼吸が少し浅くなった。


 えっ?


 ブルブル


 一瞬、私は背筋が寒くなった。

 寒い訳はないのに! まだ、残暑が続く時候だ。

 風邪の兆候はないのに、寒気がするなんて変だ。風邪なんてほとんど引いたことはなかったし……


 悪意のある何かが皇帝の周囲から私に向かって放たれていた。

 それはとても気持ちの悪いものだった。

 私からは赤い悪魔が大きく見えた。

 夢の中で髪を振り乱して私を追ってきた赤い悪魔だ。

 私の大切な何かを奪った赤い悪魔!

 私は再度ぞくりと背筋が凍った時だ。


「三年E組、ハーゲン、前に」


 教師の合図で三鋒の茶髪の男が前に出てきた。

 私は皇帝の方を見るのを止めようとした。


 私はその時、一瞬皇帝と目が合ったように感じたのだ。

 皇帝は私を試すように睨み付けてきたように思った。

 でも、今は皇帝のことを考える時間では無い。

 私は目の前の男に集中しようとした。


 ハーゲンと呼ばれた男は父が帝国の騎士団に所属していて茶髪のがっしりした体格だった。

 この男に集中しなければ……

 でも、どうしても視線は皇帝とその周りの四天王に向けられた。


「貴様、俺様を見もしないのか」

 ハーゲンがむっとした。

「ふん。俺はゲルルフほど簡単にはやられぬぞ」 

 男はきっとして私を睨み付けてきた。


 でも、私は皇帝の視線が、いや違う。その横の赤い悪魔の視線がとても気になったのだ。


「始め!」

「うおおおおおお!」

 教師の合図とともに、ハーゲンは怒濤の打ち込みをしてきたのだ。

 私はそれを剣で受けた。


 カンカンカンカン!


 ハーゲンは必死に打ち込んでくる。

 私はそれを必死に剣で受けたのだ。


 でも、私は少し精彩に欠けていた。

 皇帝がいきなり現れて心が動揺していた。

 と言うか、赤い悪魔を見て、何故かとても動揺していた。


 夏休みにハンブルクで会って、実際にお兄様との対戦を見たし、お兄様が斬られて、我を忘れた私は全力の攻撃を赤い悪魔に仕掛けていた。見慣れた姿のはずなのに!


 なのに、何故、今、動揺しているのか判らなかった。


 黒い死神と対戦した後に見た夢が原因なんだろうか?

 子供の頃のトラウマが呼び起こされたのだろうか?

 体が動かない私はハーゲンの攻撃の前に徐々に下がっていた。


 体が重い。

 私の言う事を聞かない……

 私は焦った。


 ハーゲンの打ち込みが私の手を震えさせる。

 何回も打ち込まれたら、さすがにまずい。


「ユリア! 何をしている。いつも通りやれ!」

 その時だ。お兄様の怒声が会場中に響き渡った。

 何故か私の前で拡大されて、怒声として殺到した。


 パリン!


 その時だ。何かが割れたのだ。


 真っ黒な悪意のようなものが私を取り囲んでいたそれが一瞬でお兄様の罵声によって吹き飛ばされていた。


 ムン!


 私は腕に力を入れた。


 瞬間だ。


 パリン!


「えっ?」

 ハーゲンの剣が根元から折れていた。


「そんな馬鹿な」

 ハーゲンは唖然としていた。

「ん?」

 何かまた黒いものが私を襲おうとしているのを感じた。


「たああああ」

 私は剣でその禍々しいものを横殴りに払ったのだ。


 バシン!

「ギャーーーー」

 次の瞬間、剣はハーゲンをも巻き込んで弾き飛ばしていた。


 ハーゲンはそのまま特設会場のフェンスに直撃していた。


 ドシーン!

 大音響が響く!


 その瞬間、私は皇帝の横にいた金髪の女が私を睨み付けているのに気付いた。

 その女から禍々しい何かを感じた。


 一瞬のことだった。


 女は次の瞬間には私から視線を逸らして黒い死神と何か話していた。

 私はとても不吉なものを感じたのだった。


皇帝の傍の女は何者?

話はそろそろ佳境に向けて突き進みます

続きは明日です。

お楽しみに

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