三年生の巨体を吹っ飛ばしたら、敵地だと思っていたのに盛大な声援を受けました。
夜更新できませんでした
すみません。
皆、唖然としてフェンスにぶつかってへしゃげた皇太子を見ていた。
「これは絶対にまずいわ」
お姉様がブツブツ言っているけれど、お兄様が私を側室にするとふざけた事を言ってくれた皇太子を弾き飛ばししてくれて私はとても嬉しかった。
あんな軟弱で上から目線の皇太子の側室になるなんて絶対に嫌だ。
「お兄様!」
私が手を振るとお兄様は私に手を振り返してくれた。
帝国の四天王に対してはまだまだだけど、まあ、学生ではお兄様は敵無しだった。
育ち盛りのお兄様はいずれは四天王と同等の力をもつと思えたけれど、今現在では到底太刀打ち出来ない。
子供の喧嘩に親が出てくるのが好きな四天王のことだ。また、出てきて強制しないとも限らない。
私は少し不安だった。
もっともっと訓練して実力をつけないと……
私はそう思った。
次はフランツお兄様とクラウスの三年E組だった。
相手は六年A組。さすがに六年生は体格もでかくて強かったけれど、副将のクラウスが3人倒して勝っていた。
「クラウス様、頑張って!」
「キャー、素敵!」
「勝ったらこの体を捧げますわ」
「あなた、クラウス様の婚約者でも何でもないんだから、何言っているのよ」
お姉様とピンク頭がいがみ合っていた。お姉様はクラウスの前では静かで、散々ピンク頭にやられていたけれど、クラウスが傍にいないと普通にピンク頭とやり合っていた。
クラウスの前でも普通にすれば良いのに!
「ユリアーナ!」
クラウスがこちらに向かって手を上げてくれた。
「ちょっとなんでユリアなのよ」
「本当よ。あんたこそ、クラウス様の何なの? 本人はブラコンのくせに」
お姉様とピンク頭に睨まれたんだけど……
この二人対クラウスになるといがみ合うのに、共通の敵に対してはタッグを組まないでよ。
クラウスのせいでお姉様達に睨まれたじゃない!
何してくれているのよ!
私はクラウスに少しむっとした。
エックお兄様の四年E組が六年E組なんかに負ける訳はなく、ベスト4が決まった。
お兄様の五年E組とエックお兄様の四年E組、フランツお兄様とクラウスの三年E組と私の一年E組だ。勉強できない、低位貴族の塊のE組ばかりが残った感じだ。
何かハンブルク王国の剣術競技の時を思い出したんだけど……
あの時のベスト4と形上は同じだ。個人と団体の違いはあるけれど。
私は不吉な予感がしたのだ。
その予感通りに次の対戦相手は三年E組になってしまった。
三年と一年の戦いでは体格の問題が大きかった。どうしても一年生から三年生の間に大きくなるものが多いのだ。フランツお兄様とクラウスは抜け目なくピンク頭に真の聖女様とかなんとかおだて上げてヒールさせていて、戦力は通常通りになっていた。とすると我がクラスは圧倒的に不利だ。
オットー、エアハルト、フィリベルトが三年の体格のデカイ先鋒に三たてを喰らっていた。
グレゴールが唯一一矢を報いてくれたが、次の次鋒にあっさりと負けてくれた。
そして、大将の私の出番だ。
「ゲルルフ様!」
「頑張って!」
「そんな女一撃で倒してください!」
ここは帝国だ。圧倒的に相手の応援が多い。
「いよーー! 銀髪の女の子」
「頑張れよ! ちびっ子」
でも、そんな中、私にも少し歓声があった。
まあ、三年生に負ける訳はないと思っていたが、歓声が沸いて私は少しやる気になった。
そっちに手を振る。
「貴様、余裕だな」
三年の大柄な青髪の男が睨み付けてきた。
「まあ、俺様が一瞬で地面に叩きつけてやるが」
「ゲルルフ、油断するなよ。ユリアーナは俺よりも強いぞ」
後ろからクラウスが叫んでいた。
「はんっ、何を言っているんだ。貴様が油断したんだろうが」
男は全くクラウスの言葉を聞いていなかった。
「違う、瞬殺されるぞ」
「ふんっ、俺様が瞬殺してやるよ」
男はニタリと笑ってくれた。
「始め!」
教師の合図があった。
男が思いっきり打ち込んできた。
私はそれを受ける。
ガキン!
凄まじい音がする。
まあ、お兄様に比べたら全然だ。フランツお兄様に比べてもまだまだだ。
「ほおおおお、少しはやるのか」
男はまだ余裕だった。
ガキン!
ガキン!
二度三度打ち込んでくる。
私はそれを受けていた。
ガキン!
ガキン!
男は何回か全力で打ち込んでくるが、私は全て受ける。
「おのれ!」
男は必死に打ち込んできた。
いい加減に飽きてきた私はそれをさっと横に避けた。
多々良を踏んで男が止まろうとした後ろに回ってその尻を蹴り飛ばしたのだ。
「ギャッ」
男は地面に激突していた。
これで勝ったと思って戻ろうとした時だ。
「まだまだ」
審判が言ってくれたんだけど……
ええええ! 地面に激突させたから勝ちじゃないの?
私は一瞬きょとんとした。
「剣で叩いていないから無効だ」
教師が教えてくれた。
「キャーー」
「「「後ろ!」」」
クラスメートが叫んでくれた。
「よくも、ウォーーーー」
後ろから憤怒の形相の男が私に斬りかかってきたのだ。
仕方がない。
私はさっと躱すと自分の剣を横殴りに振るったのだ。
バシン
「ギャッ」
ドカーーーン!
男は一瞬で特設会場のフェンスに激突していた。
ちょっと強くしすぎたかもしれない。手加減出来なかった……
私が少し反省した時だ。
「「「わああああああ!」」」
凄まじい歓声が沸いたのだ。
「小さいの凄いぞ!」
「銀髪の女、凄いぞ!」
「ユリア、良くやった!」
「ユリアーナちゃん凄い!」
私は敵地の帝国でこれほど声援を受けるとは思ってもいなかった。
少し嬉しくなって全員に手を振っていたのだ。
敵地にもかかわらず、ここまで好き勝手にしているユリア達でした。
次回皇帝の登場です。
どうなるユリア?
今夜更新予定です。