私は一撃で黒い死神の息子を弾き飛ばし、お兄様も赤い悪魔の息子を弾き飛ばしました。
ピンク頭が緑頭をその癒やし能力で圧倒した瞬間だった。
帝国の聖女様はここまで屈辱を受けたことは無かったのだろう。
陰険さはピンク頭とどっこいどっこいだからこれからピンク頭に色々仕掛けてくると思うけれど、まあ、ピンク頭は図太いから問題ないような気がした……
そして、私の出番になった。
「小娘、待っておったぞ!」
ボブが怒りにまかせた表情で私に向かって吠えてきた。
「貴様のせいで、子供の喧嘩に親を呼んだと散々皆に馬鹿にされたわ」
ボブが怒っているけれど、
「ええええ! だって、実際に出てきたし事実じゃない」
私が平然と言い返すと
「違うわ! 俺は父上に一度も来てほしいとは頼んでなんていないぞ!」
「でも、お父様には『息子が世話になったそうだな』って言われてから、私を気絶させるまで打たれたのよ。こんなか弱い子にあんな冷酷な父親を向けるなんて、ボブさんはなんて酷いんだろうって思ったもの」
私が大げさに悲しがると、
「まあ、ボブ様って酷いわ」
「負けたからって、親呼んできて、こんな可愛い子にそこまでするなんて酷いな」
「許せない!」
「ボブ、見損なったぞ!」
観客席からブーイングが飛んだ。
「いや、だから、それは……」
ボブの顔に動揺が走った。
いい気味だ。
やる時は敵が動揺した時に限る。
「ボブ、頑張れよ。そんな田舎娘に今度は負けるなよ」
「そうよ。ボブ様。その娘をめちゃくちゃにして!」
皇子と緑頭が何か叫んでいる。
「殿下も何か酷い事言っていないか?」
「そうだよな。親呼んできたボブの味方するなんて」
「そう言えば決闘申し込みながら、ボブにさせていたよな」
「皇子殿下としてそれはどうなの?」
「聖女様もなんかイメージが悪くなったわ」
「何か目も怖いし」
皇子らの応援は更に周りからひんしゅくを買っていた。
そんな時だ。
「始め!」
教師の合図があった。
動揺している間に叩くのが一番だ。
その瞬間私は強化魔術をかけると一気にボブに迫った。
「えっ?」
動揺していたボブは対処が遅れた。
私は剣を一閃したのだ。
ズコン!
ダーン!
大音響と共にボブは観客席、皇子と聖女目がけて真っ逆さまに飛んで行ったのだ。
そのまま巨体を二人に激突する。
「「ギャッ!」」
二人の悲鳴が聞こえた。
3人とも看護室送りになったのは言うまでもなかった。
「ユリアーナさん!」
マイヤー先生の叱責の声を残して……
「やったー!」
「ユリアーナ様!」
「ベスト四です!」
クラス一同喜びに溢れた。
「凄い!」
「良いぞ!」
「ユリアーナちゃん!」
私は大歓声を浴びていた。
調子に乗って私はVサインしていたら、
「ユリア、目立ちすぎ!」
お姉様に怒られてしまった。
「もう少し目立つのを抑えなさいよ」
「うん。頑張る」
私はお姉様の言葉を右から左に流した。
「ユリア!」
お姉様が目をつり上げた時だ。
「あっ、次はお兄様のクラスね」
私は見るために客席の前の方に向かった。
「もう、ユリアったら!」
お姉様は注意をしてくれたけれど、皇族と付き合わないようにしているのに、皇子が向こうから絡んでくるのよ。私のせいではないわと私は思った。
次はお兄様の五年E組と五年A組だ。
お兄様の方はずらりと騎士志望が並んでいた。
当然お兄様が大将だ。
一方のA組は偉そうにしている黒髪がいるんだけど、誰だろう?
「アレクサンダー皇太子殿下よ」
私の疑問にマリアが答えてくれた。
「えっ、なんで帝国の皇子って皆偉そうなの?」
私が小声でマリアに聞くと
「それはこの世で一番偉いからじゃない?」
マリアにあっさりと言われてしまった。
なるほど確かに皇帝の息子の皇太子だから2番目に偉いのだろう。
でも、我が国のクラウスは偉そうじゃないけれど……
「それはあなたがいつも踏み潰しているからじゃない」
「失礼ね。私はクラウスを足蹴になんてしていないわよ」
「呼び捨てにするところからして違うわよね」
マリアに白い目で見られたけれど、
「学園の皆の意見としては王太子殿下よりもユリアの方が百倍強いと皆言っているわよ」
「まあ、剣術ではそうだけど」
「そこは殿下を持ち上げてそんな事は無いわくらい言いなさいよ」
マリアに注意されてしまった。確かにそうだ。
五年生のA組とE組は結構互角の戦いだった。
A組の副将が勝ったので、ついにE組の大将、すなわちお兄様が出てきたのだ。
さすが帝国ではお兄様の歓声は出なかった。
「アヒム様!」
「素敵!」
「後一人です!」
女達の黄色い悲鳴が聞こえる。
赤い悪魔の息子だ。
「お兄様! 頑張って!」
仕方がないから私が大声で応援してあげた。
「おお!」
お兄様がこちらに剣を振ってくれた。
まあ、楽勝だと思うけれど……
「始め!」
二人は剣を抜いて睨み合う間もなかった。
お兄様がその瞬間剣を横殴りに振ったのだ。
可哀相に赤い悪魔の息子は一瞬でお兄様の剣に吹っ飛ばされていた。
そして、アヒムに黄色い悲鳴を上げていた女達の前に吹っ飛ばしていた。
フェンスに当たってそのまま地面に叩きつけられていた。
皆唖然としていた。
「勝者、アルトマイアー!」
教師が判定する。
「……」
皆唖然としたままだった。
「お兄様!」
私が一人で大きな声を上げると、お兄様が軽く手を上げてくれた。
私のお兄様が息子なんかに負ける訳はなかった。
お兄様と二人で四天王の息子の二人を吹っ飛ばしたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
次は皇太子か?
皇太子までお兄様が吹っ飛ばす?
それとも忖度するのか?
続きは明日です。
お楽しみに