剣術大会目指して訓練しました
「ベティ、お昼に」
「ごめんなさい。ユリアーナさん。先約がありまして」
せっかくベティとお昼に行こうと誘ったのに、ベティからは冷たく断られてしまった。一緒にいたグレゴールは申し訳なさそうにしていたが、ベティはグレゴールを連れてさっさと行ってしまった。
あれ以来、ベティとはほとんど別行動だった。何回か謝ろうとしたのだけれど、ベティは頑なだった。
「あはははは、あっさりとベティに振られてしまったわね」
後ろからピンク頭が笑ってくれた。
「煩いわね」
私はピンク頭を睨み付けていた。
「なかなか、ベティーナ嬢の怒りは解けないんじゃ無いかな」
「あんな酷い事を反省文に書くから仕方が無いんじゃないの。さすが悪役令嬢よね。お友達はほとんどいないみたいだし」
女達の大半は未だに私の事を遠巻きにしているし、今まで一緒だったベティまで私から離れていって、私は新たに留学してきたマリアとそれと何故かピンク頭と食事を取る羽目になっていたのだ。
「あんたも友達いないのは一緒でしょ」
私がむっとして反論すると、
「ふんっ、帝国の女どもは私の偉大さがまだ判っていないのよ。私の方があの緑頭よりも聖女としての能力は上なのに!」
来て早々緑頭と皆の前で喧嘩したと噂になっていたピンク頭は緑頭の信者の多いクラスの女どもからも相手にされていなかった。
そんな中、マリアと私の間に強引に入ってきたのだった。
何故か3人で食事をすることになっていて、なんか最悪なんだけど……
「何であなたがここにいるのよ」
私は最初にピンク頭が私達に付いてきた時に驚いた。
「良いじゃ無い。減るものでもないし。教会が敵視するユリアーナの事を調べるのも、大切な役割なのよ」
ピンク頭がスパイをするって広言してきたんだけど。
「あなたね」
私がむっとして言うと
「良いじゃ無い。ユリア。アグネスさんがあなたの傍にいれば余計な事をしてくれなくてすむから」
マリアはそう言ってくれるが、
「ユリアーナの傍にいればクラウス様が寄ってくれるかもしれないし」
さらりとピンク頭はとんでもないことを言ってくれたが、
「何でクラウスが私の所に来るのよ?」
私は訳が判らなくて聞くと
「本当に、あなたは鈍いのね」
馬鹿にされた。
「まあ、ユリアが鈍いのは昔からだから」
マリアにまで言われてしまったんだけど……
「私に雷撃とかする前に自分に雷撃すれば良いのに」
「何で私が自分に雷撃しなければならないのよ」
「それだけ酷い事をしているからでしょ」
「何言っているのよ」
私はピンク頭が言う事が全然理解できなかったのだ。
「ユリアーナ様」
そんな時だ。遠巻きに見ていた男達の中から、エアハルトとフィリベルトがやってきた。
この2人は私に弾き飛ばされてから結構私に従順だ。この前の黒い死神の時も共闘したし。
「今度のクラス対抗剣術競技ですけれど、ユリアーナ様に最後の大将をお任せしていいですか?」
「それは別に良いけど、皆はそれで良いの?」
私が確認すると
「ユリアーナ様がそうして頂ければ鬼に金棒です」
「凄いユリアーナ。鬼に例えられている」
ピンク頭が余計な一言を言ってくれた。
「いえ、これは例えで」
「そうだ。そこのあばずれ女は煩いぞ」
「あ、バズれ女ですって!」
エアハルトに言われてピンク頭は切れたけれど、事実だ。
「あなた、そんなことを言っていたら、怪我しても治してやらないわよ」
「ふんっ、俺は正当な聖女様に治してもらうから良いぞ」
「その言葉覚えていなさいよ」
ぷっつんキレたピンク頭はエアハルトを指さして睨み付けていた。
「心に刻んでおこう」
エアハルトは全く動じていないんだけど、おそらく緑頭よりもピンク頭の方が能力は高いし、緑頭は癒やし使える回数も少ないはずだ。
最悪、怪我したエアハルトは強引にピンク頭に治させようと私は決めたのだ。
その放課後、私はクラス対抗剣術大会のクラス代表と顔合わせをした。
先鋒は父が騎士のオットーで、エアハルト、フィリベルトと続き、副将がグレゴールだった。
まあまあの面々だった。
まあ、四天王の息子とかお兄様にあたらなければそこそこ出来るはずだ。
今回の試合は勝ち抜き式で、全員負けても最後の大将たる私が負けなければ勝ち抜ける。
敵はお兄様の5年E組か、エックお兄様の4年E組だ。
帝国に強い者達がいると期待してきたのに、お兄様以上に強い者は四天王以外はいなかった。
勝負もハンブルク王国のように参ったと言うまでやるのではなくて、前世の剣道のように一本決まればそれまでだ。基本的に相手を弾き飛ばせば問題ないので私は言う事は無い。
それから一週間、私は徹底的にクラスの面々を鍛え上げたのだ。
グレゴールを応援するベティとは会えたが、相変わらず、ベティは私には塩対応で、私がグレゴールを弾き飛ばす度に
「鬼! 卑怯者! グレゴール、手加減する必要は無いわよ」
とかめちゃくちゃ言われていたのだ。
私は少し悲しかった。
そして、ついにクラス対抗剣術大会当日を迎えた。