友人を怒らせてしまって唖然としていたら地元の友人と聖女が留学してきました
結局、マイヤー先生は授業時間中、私の必死に書かされた皇帝よいしょ作文を生徒達に交替で読ませてくれた……
私はその間中、恥辱のあまり頭を抱えてのたうち回っていた。
その公開処刑の時間を終えた後、私はふ抜けたように力を失っていた……
「ユリア、どうしたの? あんな作文書いて」
ベティが私を白い目で見てきた。
いや、それ以上に何か怒りに満ちていた……
「エックお兄様にひたすら皇帝ヨイショ作文を書けって強制されたのよ」
私が仕方が無かったというと、
「でも、あそこまで書く必要は無かったんじゃないの! 私の家の事まで書いて!」
まなじりを決してベティが叫ぶように言ってきた。
「えっ、いや、それは……」
そう言えば私は反省文の中で題材が無くなったので、粛正された家のことも書いたのだ。
前々皇帝派であったベティの家のことまで書いていた……
政敵を倒すたるには政敵の味方だった貴族に罪を与えて、辺境の地に飛ばすのは素晴らしい考えです……みたいなことをオブラートに包んで書いていた。まさかマイヤー先生が、それをクラスメイトを前にして読んでくれるとは思ってもいなかった……私はそれ以上言い訳できなかった。
「あなたは友達だと思っていたわ。でも、間違いだった。じゃあ」
「ちょっと、ベティ!」
私の言葉を振り切ってベティは外に飛び出していったのだ。
「ベティーナ様!」
それを慌てて退学が取り消しになったグレゴールが追いかけていった。
「ああ、怒って行っちゃったわね」
私の後ろから聞き慣れた声がした。
「マリア!」
私はその声に慌てて振り返った。
そこには王国の時の友人のマリアンネ・フルート子爵家令嬢がいた。
「良かった。留学してくれたんだ」
「本当に留学手続きが大変だったけれど、やっと申請が通ったのよ」
少し顔をゆがめてマリアが遅れて留学してきた理由を説明してくれた。
なんでも、書面審査でハンブルクからの留学生が多すぎると引っかかってしまったのだとか。
それを王立学園の学園長がコネを使いまくってなんとかしてくれたらしい。
「本当に大変だったんだから」
マリアの言葉には実感がこもっていた。
「最ももう一人いるけれどね」
嫌そうにマリアは横を見た。
「あああら、さすが悪役令嬢のユリアーナね。悲劇の辺境伯令嬢をあそこまで貶めるなんて!」
そこにはピンク頭がいたのだ。
「何故、あなたがいるのよ?」
私は驚いてピンク頭を見た。
「何故って決まっているじゃない。帝国に偽聖女が出たって言うから、真の聖女様の力を見せつける為に来たのよ。帝国の民に本当の聖女の力を見せつけてやるわ。今まで偽聖女の力に騙されていた帝国の民は真の聖女様の力を見て私の前にひれ伏すのよ。あはあは、はっはっはっは」
大口を開けて笑い出したんだけど……
「ちょっと、マリア、何でこんなの連れてきたのよ」
「私が連れてきたんじゃ無いわよ。教皇猊下に呼ばれてみたいよ」
「何で帝国に聖女がいるのに、教皇が新たな聖女を呼ぶのよ」
「そんなの知らないわよ」
私達が勝手に笑っているピンク頭を無視して小声で話し合っていると、
「ちょっと貴方たち、人の話聞きなさいよ」
ピンク頭がまなじりを決して叫んだ時だ。
「人の話を聞いてほしいのは私だが」
教壇から怒った声がした。
「「「えっ?」」」
そちらを見ると次の歴史のベルツ先生が来ていたのだ。他の生徒達はとっくに席に着いていた。ちょっと、誰か教えてよ!
私は前のベティの席を見たらベティは席に戻っていなかった。
「さっさと席に着きなさい」
「「「はいっ」」」
私達は慌てて席に着いた。
それからの1時間はベルツ先生に徹底的に歴史についてしごかれたのだった。
結局午前中、ベティは帰ってこなかった。
「そらあ、友達だと思っていたユリアにあんな酷いこと書かれたら、ベティーナ様も怒るわよ」
当然の如くマリアに呆れられた。
「私も余裕なかったのよ。何しろ100枚も皇帝ヨイショ作文書かないといけないから。本当に何一つ褒めることしていないんだから、あの皇帝は」
「しっ、ユリア声が大きい」
私はマリアに注意されてしまった。
慌てて周りを見るが皆食事に夢中だし、私の周りには誰もいなかった。
そう、遠巻きにされていた私に付いてくれたベティも今はいないし。
「いくらなんでも、ベティーナ様の家のことを書くのはまずかったんじゃないの」
「でも、書くまではデザート食べさせてくれないってエックお兄様とお姉様に取り上げられたのよ」
私がむっとして言うと、
「あなたのお兄様に泣き込めば良かったじゃない」
「そんなこと言ったって『この件は兄上は黙っていてください』ってエックお兄様とお姉様がお兄様を近付けなかったのよ。お兄様もこういうことが得意なのは二人だって判っているから任せきりだし……」
やっと書いた後はお兄様の膝の上でデザートをお兄様の分まで食べさせてくれたけれど、書くまでが大変だったのだ。
「本当にあなたって食い意地しか無いのね」
「そんなこと無いわよ」
「そう言いながら人の二倍くらい食べているけれど」
私の大盛りのお皿を見ながらマリアが呆れてくれた。
私のお皿には何度もお代わりするのも悪かろうと食堂のおばちゃんがいつも山盛りに食べ物を入れてくれていた。
「マリア、なんとかならないから」
「そう簡単になる訳無いでしょ。授業もサボったんだからベティーナ様は相当怒っているわよ」
「そうよね」
私は落ち込んだ。
まあ、自業自得だ……
「まあ、やれるだけやってみるわ」
「ありがとう、マリア!」
私はマリアの声を聞いてマリアに抱きついた。
「もう、痛い、痛いから」
私の腕を引き剥がすとマリアがハアハア言っていた。
「でも、そんなに期待しないでね」
「ううん、もうマリアだけが頼りだから、お願いね」
私が目をうるうるしてマリアに近付くと
「判った、やるから、馬鹿力で抱きつかないで!」
マリアは必死に叫んできた。
後はマリアに任せようと私はマリアの働きに期待した。
ここまで読んで頂いてありがとうございました
すみません。剣術授業に行きませんでした。
次こそいきます
お楽しみに








