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皇帝賛歌の反省文を読んで感涙に咽ぶ礼儀作法の先生は、授業中にその反省文を読ませてくれました

 1週間の謹慎期間が解けた。


 その間、私は必死に皇帝に対するよいしょ作文を、エックお兄様とお姉様の徹底的な添削を受けて書き上げた。

 原稿用紙100枚だ。

 本当に疲れた。

 普通は原稿用紙100枚も褒め続ける事なんて出来ない。

 どんな素晴らしい人でも100枚も褒め続けられない。

 褒める題材が無くなるのだ。


 それをやり続けるには、前皇帝陛下の代からの政策を引っ張り出して全て褒めあげた。

 でも、その皇帝が行った政策はその前の皇帝陛下の政策の否定と自分に味方した貴族達の権益を守るための政策で、前世の自由な日本で育てられた私には到底認められない政策も多々あった。

 現皇帝は本当に調べれば調べるほど最低の屑皇帝だということが判った。


 例えば人格者の前々皇帝は獣人の奴隷制の完全禁止令を発令して、多少いた獣人奴隷を完全に解放していた。

 それに対して前皇帝、実質支配者は当時の皇太子、今の皇帝がその禁止令を廃止、属国の獣人王国を四天王を中心とする軍で侵攻して制圧。大量の獣人を捕虜にして、鉱山送りにしていたのだ。


「こんなの褒めろられる訳ないでしょ!」

 私が叫ぶと、

「ユリア、ここは一時の我慢だ。

『強力な力を持つ獣人達の反乱を防ぐために、奴隷制を復活されたのは慧眼です。普通の人間では絶対に出来ないでしょう。皇帝陛下になるためには、時には血も涙も無くさなければいけないのだとよく判りました』くらい書いておけ!」

 エックお兄様に言われてその通りに書いたけれど、これって褒めていることになるんだろうか?

 逆に見れば皇帝陛下は血も涙も無い人間なんですねって取られないのか? と思わないでも無かったが、それで良いと言われて、書いたけれど……


 このような私の血と涙と誤魔化しの作文を片手に、いや、両手で持って私は職員室に行ったのだ。


「失礼します」

私は職員室の前で礼をすると職員室の扉を開けて、その作文を持ってマイヤー先生の所に行った。


「ゆ。ユリアーナさん」

「は、はい!」

私はぎくりとした。

私はマイヤー先生からマイヤー先生を褒めるところが少なすぎると叱責される者だと思っていた。前の挨拶文の大半はマイヤー先生賛歌だったし……

「あなたがこのように素晴らしい考えになるとは私は感激しました」

マイヤー先生は私の文章を読んで感涙して泣きだしたんだけど……ええええ! あんないい加減な作文読んで泣きだすの?

私は開いた口が塞がらなかった。

「マイヤー君。何を泣いているのだね」

学園長がいぶかしそうに聞いた。

「先生、これを、私はユリアーナさんが心を入れ替えてくれると信じていたのです」

感涙にむせびながらマイヤー先生が学園長に私の反省文を渡すのを見て、さすがの私も良心の呵責に苛まれた。

「ふん、ユリアーナ君が反省などする訳が……」

しかし、学園長はじろりとマイヤー先生に睨まれて黙った。

「えっ?」

そして、私の反省文を読んで口を大きく開けていた。


「ユリアーナさん。あなたの心はよく判りました。皇帝陛下には確かにこの作文をお届けしましょう」

マイヤー先生は呆然としている学園長そっちのけではっきりと宣言してくれたのだ。


私はほっとした。


しかし、この後が最悪だったのだ。


次はホームルームの時間だった。


マイヤー先生が喜々としてやってきたのだ。

私は不吉な予感しかしなかった……


「皆さん、1週間の停学が解けた、ユリアーナさんとグレゴールさんが今日から学園に復帰してきました。私はこの一週間の謹慎期間で二人が心を入れ替えて、学園生活を送ってくれるように祈っていたのです。まあ、グレゴールさんはまだまだですが、ユリアーナさんは心の底から反省してくれたみたいです」

「えっ、あのユリアーナが?」

「嘘でしょう?」

「あり得ない!」

コローナ達が騒ぎ出した。


「静粛に!」

きっとして、マイヤー先生はコローナ達を睨み付けたのだ。

「まあ、よく判っていない方もいるようなので、ユリアーナさん。あなたがこの反省文を読んでくださいますか」

「先生、そんなの恥ずかしくて無理です」

私は否定した。と言うかそんなよいしょ作文、持ってこないでほしい!

私は止めてと大声で叫びたかった。


「まあ、そうですね。自分で読むのは恥ずかしいかもしれません。では信じられないコローナさん」

「えっ、私ですか?」

コローナは指されて唖然として立ち上った。

「この文章を読んでください」

ええええ!

止めて、原稿用紙100枚あるから100分かかるから、絶対に止めて!

私は心の底から叫んだのだ。

でも、マイヤー先生は聞く耳を持たなかったのだ。

「では、コローナさん」

「はいっ、えっ」

コローナは私の原稿を見て固まっているんだけど……

「どうしたのですか? コローナさん」

「あの、本当にこれをユリアーナさんが書いたのですか?」

「それは確かにユリアーナさんの筆跡です。子供の頃から見ている私が保証します」

「わかりました。『大いなる太陽であらせられる皇帝陛下並びに皇族の皆様方。及び学園長先生を始めマイヤー先生や先生方。私、ユリアーナ・ホフマンは今まで大きな勘違いをしておりました…………』」

コローナは読み出したが、どんどん声が小さくなっていった……

「どうしたのですか? コローナさん」

「あのう、私、文字がよく判らなくて……」

「どこですか?」

マイヤー先生が行かなくてもいいのに、側に行って

「『ブルクハルト殿下は右も左も判らない聖女様をエスコートされて素晴らしいと思います』と書かれているだけでは無いですか?」

マイヤー先生が大きな声で読んでくれた。

「えっ?」

「嘘だろう?」

「今まで淫乱聖女とか婚約者のいるにもかかわらず他の女を連れ回して喜んでいる屑皇子とか言っていたのに」

外野がざわざわした。

「皆さん、静粛に! ユリアーナさんはこの一週間で更生したのです。判りましたね!」

そう言うマイヤー先生に他の生徒達は不満そうだったが、そのまま読まなくても良いのに読んでくれたのだ。

私は耳を塞いで、この地獄のような授業が一刻も早く終わってくれることを祈っていた。

そして、こんな事をさせたエックお兄様とお姉様の事をこれほど恨んだことは無かったのだ。




ここまで読んで頂いてありがとうございます。

お忙しい中誤字脱字報告、感想、いいね等して頂いてありがとうございます。

ブックマーク、評価等して頂けた方には感謝の言葉もございません。


皆の白い目に泣きだしたいユリアーナでした。

次は帝国からの刺客に新しく剣術の先生が就任してきます。

果たしてユリアーナは大丈夫なのか?

続きは明日です。


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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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