礼儀作法の先生に頬を張られて、見捨てられ、私は罰を受けることになりました
ついに、やってしまった!
皇子と聖女の行いに完全にぷっつんキレて叩きのめしてしまった。
それも完璧にだ。
聖女も皇子も顔をパンパンに張らしていた。
これはさすがにまずいかもしれない!
少し冷静になった私が危惧した時だ。
騒動を聞き付けて、マイヤー先生が慌てて飛んで来た。
先生は皇子の様子を見て慌てふためいていた。
「ブルクハルト様、大丈夫ですか?」
マイヤー先生は皇子に駆け寄った。本当にとても取り乱していたのだ。
マイヤー先生がヒステリーを起こすのは良くあるが、これだけ取り乱すのを私は初めて見た。
そして、返す刀でずんずん私の所に歩いてきた。
パシンッ!
次の瞬間、私の頬をマイヤー先生が張っていた。
「えっ?」
私は唖然とした。
今までマイヤー先生に頬を張られたことなど一度もなかった。
クラウスに対して今までどんな酷い目に合わせてもマイヤー先生は私に手を上げたことはなかった。
それなのにいきなり頬を張られて、私は唖然とした。
「何をしているのですか、ユリアーナさん!」
「……」
私はあまりのことに驚いて言葉が出なかった。
呆然とした私をマイヤー先生は別室に連れて行った。
そこで延々と怒られた。
自分が如何に私を守っているか延々と諭されたんだけど、確かにマイヤー先生には色々と庇ってもらっているとは思ったけれど、何故か先生の皇子に対する態度と他の者に対する態度が違ったように見えたのは私の気のせいだろうか?
前から思っていたけれど、皇子に対する叱責と緑頭に対する叱責が全然違うのよ。
緑頭に対しては本当に塩対応だった。
確かに私から見ても女の武器というか胸を全面的に押し出して男に迫る緑頭は本当にむかつくけれど……あそこまで態度が違うのはどうかと思った。
というか、世の中の聖女って、皆このような行いをする者なんだろうか?
ピンク頭もそうだったし、ゲームの設定上、聖女と呼ばれると胸を武器にして男に迫る仕組みになっているんだろうか?
でも、私は他人の心配している場合ではなかった。
「ユリアーナさん。あなたは判っているのですか? 何度も言いますが、帝国の皇帝陛下はとてもお厳しい方です。政変の歴史はあなたも習ったでしょう? もっと自重してくれないと私では庇いきれませんよ」
そうだった。お父様からも厳重に注意するように言われていたのだ。
せっかくクラスがE組で皇子達とは関わらないと思っていたのに、何故か関わっているし、本当は皇子と関わりたくないんだけど、そもそも第三皇子のブルは友人のベティの婚約者だ。あんな碌でもないのとは婚約破棄すれば良いのにと思わないでもなかったが、凶悪な皇帝に対して婚約破棄なんて言い出せないんだろうなとは想像できる。
そもそも私は他国の人間だし、帝国の問題に口出しできない。
これがハンブルクのことならなんとでも出来るけど……
あいにく帝国の事だ。
「でも、マイヤー先生、グレゴールはなぜ、退学なのですか? グレゴールが退学なら、殿下に対してもっとひどいことをしている私も当然退学にならないとおかしいと思うんです」
私はマイヤー先生に反論した。決して頬を張られたから逆らった訳ではない。
「しかし、ユリアーナさん、帝国の貴族とハンブルク王国のあなたでは扱いは違って当然で……」
「先生、それはおかしいです! 学園内では全ての生徒は平等であるという初代皇帝陛下のお言葉があります。グレゴールを退学にするなら、私も当然、同じ退学にして下さい!」
私はマイヤー先生にそう主張した。
「ユリアーナさん。何を言うのです。そんなことをすればますますあなたの立場が悪くなるのですよ。私が今まで庇っていたことが……」
「先生。不公平は良くないです。王立学園の校則にも、生徒を身分やその出身地で差別してはいけないとあります」
「しかし、あなたの事は公爵様からはっきりと頼まれていて……」
「グレゴールが止めるならば私も辞めます」
私はマイヤー先生の言葉を途中でぶった斬った。
「ユリアーナさん、どうなっても知りませんよ」
「構いません。差別されて私だけ罪が軽くなるのは嫌です。そんなことをすれば後で皆に後ろ指を指されます。私はお父様からも身分を振りかざして有利な条件を引き出してはいけないと釘を刺されていますから」
必死に私を翻意させようというマイヤー先生の顔を見返して私ははっきりと言い張った。
「判りました。もう勝手にしなさい!」
そう叫ぶとマイヤー先生は足音も激しく部屋から出て行った。
バシン
大きな音がして扉が閉まった。
私はマイヤー先生にも見捨てられたのが判った。
でも、自分だけ優遇されるのは嫌だ。
罰を受けるなら皆、平等にしてほしい。
ついでにフランツお兄様も罰してほしいけれど、これ以上ホフマン家が皇帝の顰蹙を買うのは良くないだろう。ここは私一人が罰を受ければ良い。
私はそう思った。
でも、私は帝国の皇帝の恐さについて本当の意味で理解していなかった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
次はユリアーナの罰です。
果たしてユリアーナはどうなる?
続きは明日です。
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