友人の従者が退学の危機に陥いり泣きだした友人を慰めました
ええええ!
何で、何で、皇子達がずぶ濡れなの?
フランツお兄様はここに居ないし、遠隔魔術で攻撃なんて出来るだろうか?
いや、あり得ない。ここまでピンポイントには絶対に出来ないはずだ。
「ユリアーナさん。説明しなさい!」
「説明しろって言われも、私も何が何だか判らないんですけど」
私は正直にマイヤー先生に話した。
「何を言っているんだ。また貴様が俺達に水魔術をぶっ放しただけだろう」
「お言葉ですが、私はしておりません」
皇子の言葉に私はいつものようにはっきり否定したのだ。
今まで認められたこと無かったけれど……
でも、ここにはフランツお兄様が居ない。
ということはフランツお兄様以外にも皇子相手に魔術をぶっ放す者がいるという事?
まあ、この馬鹿皇子では恨まれても仕方が無いと思うけれど……
帝国の皇子がこんな馬鹿で良いのか?
私が前から思っていたことだ。
「私がやりました」
私はその声を聞いて目を見開いた。
「グレゴール!」
私はベティの悲鳴を聞いた。
「嘘でしょう! 嘘だと言って!」
「お嬢様、事実です」
取り乱したベティにグレゴールは首を振ったのだ。
「そんな、あなた、なんでそんなことをしたの?」
「ベティ様を蔑ろにされる殿下に我慢できなかったのです」
ベティにグレゴールは目を怒らせて皇子を睨んだ。
「何だと、貴様、その睨み付けるような視線は何だ。皇子である俺様にこんな事をしても許されると思うのか? 貴様、ベティの取り巻きだな! ベティにそうするように示唆されたのか?」
「いいえ、私の一存です。そもそも皇子殿下であらせられる殿下こそ、婚約者を蔑ろにされるのは外聞に悪かろうと思われます」
二人はにらみ合ったのだ。
「二人ともおやめなさい。殿下、パウリーネさん、グレゴールさん、貴方たちは職員室に来なさい」
マイヤー先生は三人を連れて職員室に行った。
私は生まれて初めて、マイヤー先生に呼ばれないで済んで本当にほっとした。
こんな日が来るなんて……少し感動こそしていた。
でも、ベティが暗い顔をしていた。
礼儀作法の授業は補講になったので、出されたプリントを適当にやり上げて私はベティを慰めるために二人で中庭のガゼボに行ったのだ。
「ユリア、どうしよう?」
ベティが目を赤くして私に相談してきた。
「ベティ、落ち着いて。ガミガミ言われている時間が苦痛だけれど、マイヤー先生の叱責なんて右から左に流せばすぐよ」
いつも怒られ慣れている私はその極意をベティに教えた。
「後は反省文だけだし、そんなの適当に謝罪とマイヤー先生が如何に素晴らしいか適当に混ぜてかいておけば、通るわよ」
私は自信を持って言い切った。
「あの、ユリア、普通の生徒は職員室に呼び出される事なんて無いのよ」
私を諭すような口調でベティが教えてくれた。
「まあ、一学年に付き1回位よね」
「普通はゼロ回よ」
「でも、コローナ達も親同伴で呼ばれたじゃ無い」
あれは2回になるんだろうか?
でも反省文は1回だったからやはり一回か。
私の回数にはまだまだ足りないけれど、でも、ちょっと待てよ。
私は考えたのだ。
そう言えば皇子は私と同じくらい呼ばれているはずだ。このまま行けば下手したら最高記録は皇子が更新してくれる?
皇子は馬鹿だから何かやってくれそうだし……そうか今度はコローナを焚きつけて皇子と一緒にいる聖女に水魔術をぶっかけるように示唆したらどうだろう?
私が下らないことを考えていた。
「彼女らのは、まだ、遅刻したとか授業態度が悪いとか普通の叱責だから問題はないけれど、グレゴールは殿下に対して水魔術で攻撃したのよ。完全に不敬だし、下手したら反逆罪に問われるわよ」
「ええええ! 水魔術くらいで?」
私は驚いた。だって散々皇子と緑頭には水魔術で攻撃したと濡れ衣かけられていたのだ。
「じゃあ、私も反逆罪に取られるの?」
「あなたはマイヤー先生のお気に入りだし、ハンブルク王国の侯爵家令嬢じゃない」
「はああああ? ユリアナに言っているのよ! 私がマイヤー先生のお気に入りな訳無いでしょう? 最近毎日職員室で叱責されて反省文を書かされているのよ」
私がベティに反論すると、
「昔からの付き合いあるかも知れないけれど、あなたを見守るマイヤー先生は時たまとても優しい視線であなたを見ているのを知らないでしょう?」
「私じゃ無くて殿下を見ているんじゃないの?」
私はお姉様と違ってマイヤー先生に優しくされたことなど無いのだ。
マイヤー先生は王族の居る各クラスと我が兄弟の居る5クラスを担当しているんだけど、いつも私に対するあたりだけがきついのだ。
「グレゴールは下手したら退学になると思うわ」
「ええええ! 高々水魔術ぶっ放したくらいで退学になるの?」
私なんてハンブルク王国の時に何回クラウスを攻撃したことか……でも、そんな話一度も聞いたことが無かった。学園長とかお父様がもみ消してくれたんだろうか?
というか、こんな事で退学になれるなら私は退学になりたい。元々好きで来た学園じゃないし……
「ユリア、私、グレゴールがいたからここまで頑張って来れたの。グレゴールがいなくなったらどうやって学園でやって行けばいいの?」
泣きだしたベティに
「大丈夫よ。こんな事で退学になんてならないわ。いざとなったら私が抗議してあげるから」
私はベティを抱きしめて慰めたのだ。
もし、グレゴールが退学になるのなら私も同罪だと言い張る気満々だった。
こんな帝国の学園なんてさっさと辞めてハンブルクに帰ってやるのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ユリアの希望通り退学になれるのか?
続きは今夜です
お楽しみに