皇子と聖女がやってきたけど、今日は大丈夫だと思っていたのに、また二人は濡れ鼠になってしまいました
本日2話目です
翌日、私は私に濡れ衣を着せていた犯人も判って、久しぶりに元気に登校したのだ。
「ユリア、どうしたの? 今日は元気そうじゃない!」
ベティが声をかけてくれた。
「そうなのよ……」
私が元気に理由を述べようとしたら、
「どのみちろくな理由じゃないわよ」
「本当に、毎日毎日、皇子殿下と聖女様に不敬な事をして、それで許されるのは学園内だからよ!」
「帝国に目をつけられたら、この国には居られないわよ」
コローナ達が何か叫んでいるけれど、私は無視することにしたのだ。
別に帝国なんかに居たくないし、私はさっさとハンブルク王国に帰りたいくらいだった。
皇帝が来いって言うから来ただけなのだ。
それにフランツお兄様は二度としないとお兄様と約束してくれたし、これで私が皇子達に水をかけることもなくなったから。これ以上に目をつけられることは無いだろう。
「何があったのよ?」
ベティもコローナ達を無視して聞いてくれた。
「私に隠れて殿下達に水魔術をぶっかけていた犯人が判ったのよ」
「えっ、あれって本当にあなたがしていたことではないの?」
ベティは目を見開いて聞いてくれたが、
「当然じゃない! 私きやった時は素直に認めるわよ。謝るかどうかは別だけど。
やっていないなんて絶対に言わないわ!」
「はん、好きなことを言わないで! じゃあ、犯人は誰なのよ?」
「そうよ! 犯人が判ったのなら言いなさいよ」
コローナ達が言ってくれるが、
「その人にはお兄様が鉄拳を食らわせて、顔が歪んでしまったから、もう許してあげようと思って!」
私が事実を100倍くらい大きくして言ってあげた。
あれだけお兄様に殴られたのに、今日もピンピンしてフランツお兄様は出てきたのだ。
「あなたのお兄様って、あのアルトマイアー様でしょ」
「鉄拳攻撃って、その子、ただじゃすまなかったんじゃないの?」
「そう、だから仕方が無いから許してあげることにしたの」
私が言うと、
「何か信じられないわ。あなたが適当に選んだ犠牲者じゃないの?」
「そうよ。実のお兄様に嘘をついて濡れ衣を着せて犯人をねつ造したんじゃ無いの?」
二人の言いがかりに、
「何を、言っているのよ。何で私がそんなことしなければいけないのよ。やるなら私自身がやるわよ」
「そうだ。お前らはユリアーナ様の怖さを知らないからそんなこと言うんだ」
「そうだぞ。剣術に自信のあった俺ですら瞬殺されたんだ。そもそもボブ様ですら、全く相手にならなかったんだぞ」
私に弾き飛ばされたエアハルトとフィリベルトが横から援護をしてくれた。
「でもボブ様は油断していたそうじゃない」
「そうよ、そもそもユリアーナさんがボブ様に勝てる訳無いわよ」
コローナ達が言ってくれるが、
「ボブ先輩の事はどうでも良いけれど、決闘して負けたのに、未だに聖女とイチャイチャしている殿下は許されないわ。そもそも決闘以前に婚約者がいるにもかかわらず、他の女と仲良くなるなんて学園内の風紀を乱す元よ」
私が声高に言うと、
「ユリアーナさん。それは婚約者の辺境伯令嬢が魅力が無いからではなくて」
コローナが言いだしてくれた。
ベティの顔が陰る。
余計な事を言ってしまった。ここは何としてもカバーせねば。
「何言っているのよ。あの聖女の魅力って胸がでかいだけじゃない。
私に胸が無いって見せびらかすように殿下に押しつけちゃって。そもそもコローナ、あなたも私と一緒で胸が無いでしょ。何を他人ごと宜しく見ているのよ。あの女はあなたにも胸が無いって見せびらかせているのよ」
「そんなこと無いはずよ」
コローナの声が少し小さくなった。
「そう言えばあなたの婚約者のビルだっけ」
「ビルゲイツ様よ。間違わないで」
「そうそのビルなんちゃらが聖女と楽しそうに話していたわよ」
「えっ、嘘?」
「そうよ。ああいう奴は女の敵なのよ。あなたもいつ何時婚約者を取られるか判らないわよ」
「そんなこと無いわよ」
私がそう教えてやるとコローナは急に静かになったのだ。
「貴方たちもそうよ。あの聖女は男を引きつけるホルモンを出しているのよ。油断しているとあっという間に婚約者を取られてしまうわよ。何しろ聖女は身分は平民なんだからね。準男爵の男でも引っかけたら玉の輿になるんだから」
「聖女様はそんなことされないわ」
急に静かになったコローナに変わってベルタが声を上げた。
「まあ、良いわ。直に判るから」
私が首を振った時だ。
「田舎者。今日こそ謝る気になったか」
そこで噂をしていた皇子が聖女に胸を押しつけられて現れたのだ。
その後ろに取り巻きを連れているが、その中の一人がコローナの婚約者のビルなんちゃらだ。
それを見てコローナの顔が少し引きつった。
「本当に、ユリアーナさんもいつまで私達に水をかけていれば気が済むの? 殿下が大人だから、この件は皇帝陛下に報告されていないのよ」
「何を言っているのよ。そもそも皆の見本にならなくてはいけない帝国の皇子殿下が、あろうことか婚約者のある身でありながら淫乱聖女に胸を押しつけられて歩いているなんて外聞の悪いことを報告できる訳ないでしょう」
私は殿下に言ってやったのだ。
「な、何だとユリアーナ、聞いていれば調子に乗りおって」
「私は臣下の身で諌言しているに過ぎませんわ」
私はブルに言い返したのだ。
「ええい、胸無し! 貴様幾らパウリーネのような豊満な胸が無いからって、適当な言いがかりは止めてもらおうか」
「な、何ですって」
私はブルの言葉にぷっつんキレたのだ。
しかし、ここでなんとか踏みとどまった。
こいつは馬鹿だから構うな、こいつは馬鹿だから構うな。
心の中で必死に呪文を唱えて耐えていたのだ。
しかしだ、次の瞬間
ダアーーーン
という音とともに、大量の水が皇子と緑頭の頭の上から降り注いだのだった。
ちょっと待ってよ!
ここにはフランツお兄様は居ないわよ。
誰がやったのよ?
私が唖然とした時だ。
「ユリアーナさん。これはどういう事ですか?」
そこには怒髪天のマイヤー先生が立って居たのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
今日から通常運転です。
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