私を嵌めていた犯人がすぐ上の兄であることが判明しました
「田舎者、今日こそ、謝れ!」
「本当ですわ。面の皮が厚すぎませんこと」
皇子が緑頭と一緒に腕を組んでやって来た。
これ見よがしに緑頭は皇子にデカイ胸を押し付けている。
そう毎日のように絡んでくるのだ。
頼むから私の側に来ないで!
私は叫びたかった。
皇子の婚約者のベティはその度に悲しそうな顔をしてくれた。
「謝るって、殿下が、婚約者のベティに謝られる方が先でしょう」
「俺は真実の愛に出会ったのだ」
「そうです。ベティさんがいい加減に自ら婚約解消を願出でれば良いのですわ」
「はああああ! 何を言っているの? 皇帝陛下が決めた婚約に家臣が異をとなえるわけにいかないでしょ!」
「陛下も考えてくれるわよ」
考えるわけないだろうが!
私は余程叫びたかった。
それからも、そういうことは続いたのだ。もう、本当に信じられなかった。
「ふん、あなたも私みたいな豊かな胸が無いから妬いているんでしょ!」
「ほんとうだな、胸無し」
こいつらは学修効果がないのか?
一瞬で私が切れようとしたときだ。
ドバーーーーと水が頭の上から降ってくるのだ。
「ユリアーナさん!」
マイヤー先生に怒られるまでがパターンだった。
「どう思う、お兄様! 絶対に変よ! 何で私がやらないのに私がやろうとしたタイミングで二人はずぶ濡れになるの? お陰で私はやってもいないのにマイヤー先生からいつも怒られているのよ」
「それは大変だな」
私の愚痴にお兄様が慰めてくれた。
「でも、ユリアは二人に水をぶっかけようとしたんでしょ。じゃあ同罪じゃないの?」
「何言っているのよ、お姉様! 私はやっていないのよ!」
「でも、やろうとしたんでしょ! 最終的に手を下したのが他の人なだけで、あなたもそんなに変わらないんじゃないの?」
「何言っているのよ。やって怒られるのはまだ許せるわ。でも、やりもしないのに濡れ衣着せられて怒られるのは納得いかないわよ!」
私は切れていた。
「悪いことしたことないから良く判らないわ」
そんなわけ無いでしょう!
クラウスに最近言い寄る貴族令嬢達の家に不正が見つかったり、イナゴの大群が襲いかかったり、良くするようになったのだ。絶対にお姉様が陰で手を引いているにちがいないのに!
それに周りからはあの皇帝の息子に何度も攻撃するなんて、命知らずの田舎者だと呆れられる始末だ。
「ユリア、あんまり、私のためにやると本当に命が危ないわよ」
ベティにまで言われる始末だ。
だから、私はやっていないんだってば!
いくらやっていないと、私が言い張っても誰も信じてくれないんだけど。
絶対に犯人を捕まえてやるんだから!
「エックお兄様。頼むから犯人を捕まえるのを手伝ってよ。お願い!」
私は兄姉の中で一番頭の良いエックお兄様に頼み込んだのだ。
「えっ? お前、まだ、誰が犯人かも判らないのか?」
「えっ、エックお兄様は判っているの?」
私は驚いてお兄様を見た。
「そんなの消去法で考えたらすぐに判るだろう!」
「えっ? 緑頭かな?」
私が少し考えて言うと、
「何で自分からずぶ濡れになる必要があるんだよ!」
エックお兄様は呆れてくれた。
「誤魔化すためじゃないの?」
「あいつがそんなために自ら濡れるようなやつに見えるか?」
私は首を振った。あれだけギャアギャア文句を言ってくれるのだ。本人ならもう少し静かなはずだ。
「お前に濡れ衣着せて嬉しいやつか、あるいは着せても平然と出来るやつだ。クラスで一番強いと認識されたユリアに逆らう勇気がある奴だぞ」
そんなものはなかなかいないと思う。クラスの面々でもコローではそもそも魔力量が足りない。
エックお兄様は消去法で考えたと言っていた。でも、
私は良くわからなかったのだ。
そんな時だ。回りを良く見ろと言われて、誰がいるか、回りを気にするようになったのだ。
グレゴールは必ずいる。でも、彼が魔術を使った気配はなかった。あとはコローナ達は必ずいるが奴らも使っていない。
エアハルト達もいるが、こいつらはどちらかと言うと私を応援していた。それにこいつらならやれば私に申告するはずだ。
フランツお兄様もいた。ベティが、気になるんだろうか?
でも、待てよ?
フランツお兄様なら、私にひどいことをされるのは訓練の時とか普通にあるから、なれている。私にちょっかいを出すのは良くあることだ。余計一言をいつも言って、私の顰蹙を買っている。
私に仕返しのためにやってくれたな?
でも、本当なんだろうか?
私はフランツお兄様を信じる気持ちがまだ、あった。
でも、皇子達が余計なことを言ったとき、私は皇子を見るようで横目でフランツお兄様を見ていたのだ。
そうしたら、お兄様の口が微かに動くのを見たのだ。水魔術の詠唱をするのを!
次回、ユリアの怒りがフランツに炸裂する?
続きは明日です。お楽しみに








