皇子達にやってもいないのに水をかけたと礼儀作法の先生に延々と怒られました
その後私達は職員室に連れて行かれて、マイヤー先生に延々怒られた。
「そもそも殿下。殿下にはベティーナさんという婚約者がいるのです。婚約者がいるにもかかわらず、女性に胸を押しつけられて公衆の面前で喜んでいるなど風紀を乱す元です」
「しかし、マイヤー、俺はベティーナなどどうも思って……」
「殿下! 皇子たるもの例え心の中でどう思っていようとそれを公衆の面前で晒してはいけません。今までどういう教育を受けていらっしゃったのですか?」
ブルの言葉を途中でぶった斬ってマイヤー先生が叱責した。本当にブルは失礼な奴だ。公衆の面前で婚約者を嫌いだなど言おうとするなんて。次にやったら確実に私が水をぶっかけてやろうと私は決意したのだ。
ベティもなんかとても下を見て唇を噛んでいた。
「パウリーネさん。あなたは聖女様なのです。聖女様が婚約者のいる男性に胸を押しつける破廉恥な行動をするなんてどういう事ですか?」
「破廉恥って私は殿下が好かない婚約者といるのが嫌だと言われるので、そのお心をお慰めしただけで」
「パウリーネさん。貴族には貴族の矜持があるのです。婚約者のいる男性にあなたが単独で話しかけるのは止めた方が良いでしょう。あなたにはまだ難しいかもしれませんが、聖女様として、皆に敬われたいのならばそのような破廉恥な行動はすぐにお止めなさい」
「でも、」
「そうですか? どうしても判らないのならば教会の責任者をお呼びするしかありませんね」
マイヤーはニコリとした。悪魔の笑みだ。
「えっ、いえ、努力します」
慌てて緑頭は言い直した。
マイヤー先生は呆れたように緑頭を見たけれど、取りあえず呼び出しは止めたみたいだ。
マイヤー先生でも教会の教皇を呼び出すのは難しいのだろうか?
「側近のあなた方も何をしているのですか? 殿下が他の女達から言い寄られたら、彼女たちから殿下を庇うのがあなた方の仕事です」
「いや、しかし、殿下のお望みを我々がお止めするのは」
「いい加減にしなさい! 外聞というものがあります。殿下はこの帝国の第三皇子殿下です。第三皇子殿下が婚約者以外の女性に胸を押しつけられて喜んでいるなどいう噂が流れるなど帝国の恥です。それをお止めするのが側近のお役目でしょう」
「帝国の恥……」
ブルはさすがにそう言われて堪えたようだ。
でも、その後、マイヤー先生を睨み付けていた。
ということは反省はしていないみたいだ。
「まあ、あなた方は後でお父様と一緒に側近の心得をじっくりとお話ししましょう」
三人の側近は蒼白になっていた。
いい気味だ。
私が他人ごと宜しく心の中で笑った時だ。
「ユリアーナさん。あなたもです。どうして殿下とパウリーネさんに水をかけたのですか」
マイヤー先生が私を睨み付けてきたんだけど、
「マイヤー先生、私は殿下に水魔術はかけておりません」
私は必死に反論したのだ。今回は誰か知らないけれど私の前に魔術をぶっかけてくれたのだ。やってもいないことで怒られるのは嫌だった。
「まあ、往生際が悪いですわ。ここまで来て言い逃れしようとするなど」
「パウリーネさんは黙っていなさい」
緑頭が私に濡れ衣をきせようとしてくれたが、マイヤー先生が黙らせてくれた。
緑頭は不満そうな顔になる。顔は高々教師風情がと言いたそうだが、マイヤー先生の眉が上ったのを見て慌てて視線をそらせた。
「ユリアーナさん。あなたは蔑ろにされるベティーナさんの心を慮ったのかもしれませんが、やっていないと嘘をつくのは良くありません」
「いえ、マイヤー先生、私は嘘なんてついていません。本当にやっていないんです」
私は必死に言い訳したのだ。
「まあ、あくまでもしていないというのですか?」
「はい!」
私は元気かよく言い切ったのだ。
「そんな訳無いでしょ!」
怒り狂ったマイヤー先生がそれから怒濤の如く私の前期の王立学園での行動を元に叱責してくれたのだ。
誰に対してしたのかはオブラートに包んでくれたけれど、マイヤー先生によると帝国の皇子殿下に水をかけるなどと言う恐れ多いことが出来るのは私以外はいないというのだ。
いや、私以外にもお兄様なら出来ると余程言おうとしたけれど、これ以上ややこしくなると怒られる時間が倍以上になるから止めた。それにお兄様がやったのなら自らすすんで申告してくれるはずだ。
結局私はやっていないけれど、やったことにされてしまったのだ。
私はそのまま、皇子の側近達の親たちが来るまで怒られ続けたのだ。
私が職員室から解放された時はもう日が暮れようとしていた。
私はとてもムカムカしていた。それは確かに皇子に水をぶっかけようとしたけれど、私はしなかったのだ。やろうとして罪になるならいざ知らず、やってもいないのに、怒られるなんて絶対に許せなかった。
「絶対に犯人は見つけてやるんだから!」
私は心に決めたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
果たして皇子達に水魔術をかけたのは誰なのか?
続きは今夜です
お楽しみに








