聖女が友人の婚約者の皇子に胸を押しつけていたので、水をぶっかけてやろうとしたら他の者にやられました
マイヤー先生が激怒して、コローナ達の親が呼ばれて一緒に説教されていた。
親たちはマイヤー先生を見た瞬間蒼白になっていたそうだ。
元々マイヤー先生は帝国で先生もしていたそうだ。親の世代も教え子ってどこまでそうなんだろう?
皇帝陛下にも謁見できるということは皇帝陛下も絶対に教え子なはずだ。
私は改めてマイヤー先生には逆らわないようにしようと思った。
本来は始業式の後のホームルームでいろいろな取り決めや説明があるはずが、いきなり礼儀作法の授業になってもう最悪だった。
その後注意事項とか延々されていた。
「判っていますね、皆さん! 前任の担任の先生はお優しい先生でしたが、私は授業に遅刻することはもちろん、授業中の私語、立ち歩きなどはもっての他です。私が注意しても聞かない時は保護者を呼び出しますからそのつもりで。判りましたね、コローナさん!」
「はいっ」
マイヤー先生の叱責に泣いていたコローナはしゃくり上げながら返事をしていた。
そんなこんなで午前中の早い段階で終わるはずが、ホームルームが終わったのは時はお昼をとっくに過ぎていた……
「じゃあ、ベティ、また」
私はベティと馬車留まりで別れて、自分の馬車に乗ったのだ。
これは帰るのは一人かなと思っていたら皆残ってくれていた。
そのままお兄様の膝の上に座らされたんだけど……
もう慣れになっていた……
「どうだった、帝国の学園は? あなたのクラスは結構大変じゃないの?」
お姉様が聞いてくれた。
「本当に大変よ。担任がマイヤー先生だったし」
「えっ、そうなの? あなたのクラスは荒れていると聞いたけれど」
「授業するのも大変なんだろう?」
「そんなに有名なの?」
クラスが荒れているのが結構他のクラスの話題になっていたみたいだ。フランツお兄様まで聞いてくれた。
「ユリア、俺の情報に載せておいてやっただろうが!」
エックお兄様が白い目で見てくれた。
そうか、エックお兄様のところまで聞こえるくらいだったんだ。
私は泣いていたコローナ達を思い出した。確かに少し頭が抜けている感じがしたけれど、学級崩壊って前世の日本じゃないんだから……私は呆れていた。
「でも、一番荒れていたのは先生よ。授業に遅れてきた生徒がいて、先生が激怒したのよ」
私が遅刻した事は棚に上げて私は説明した。
「ユリアも遅刻していただろう」
フランツお兄様が余計な事を言いつけていくれたんだけど……
「何で知っているのよ?」
私が驚いて聞くと
「先生の手伝いでプリント持っていく時にお前が女達に囲まれているのを見たんだよ」
フランツお兄様が得意そうに言ってくれるけれど、
「見たら助けてよね」
私が文句を言ったら
「何だ、ユリア? お前虐められているのか? 俺が顔を出そうか?」
私を膝に乗せていたお兄様が口出してきた。
「大丈夫よ。マイヤー先生の激怒を受けてその子ら泣いていたから。あれっくらいで泣くなんて本当に可愛いものよ」
「まあ、ユリアの激怒の方が怖いよな」
私の言葉にフランツお兄様が更に余計な一言を言ってくれるんだけど……
「フランツお兄様、何か言った?」
私が睨み付けると、
「別に」
と慌てて視線を逸らしてくれたけれど……これはお昼のデザートゲットかな?
「それよりもエックお兄様。帝国にも聖女がいるの?」
「お前な。俺の資料を本当に見ていないんだな」
エックお兄様はお冠だった。
「だってマイヤー先生がいるの書いていなかったでしょ」
「はああああ? 最後のページに載せておいただろう。お前、本当に見ていないんだな。お前のために載せておいてやったのに! ユリアの担任になる可能性は大だって書いておいてやったろう!」
エックお兄様が激怒しているけど、そうか、そんな情報あったのか! 本当に読めば良かった。
それ以上怒らせたら、今後必要な情報を教えてくれそうになかったので、私は家に帰ったら即座に端から端までお兄様の情報を読んだのだ。
その中の聖女の情報で出身は帝都の孤児院。両親は不明。名前はパウリーネ。クラスは1年A組。ブルクハルトにご執心と書かれていた。
えっ、ぶ、ブル、ブルク、ブルクハルトってどこかで聞いた名前だ。帝国は覚える名前が多すぎるのだ。
ブルブルブルブル……
翌日はマイヤー先生が激怒した手前、本当にスムーズに授業が進行していた。
先生達も入った瞬間全員が席に着いているのを見て驚いていた。
授業中、私語をしないのでそれにも驚いていたようだ。
私語したら保護者呼び出しの恐怖に全員戦々恐々としていたのだ。
特に昨日散々保護者諸共怒られたであろうコローナ達は大人しかった。風の噂では先生に怒られるの2時間。帰ってから両親から怒られるの3時間の経験を積んだのだそうだ。
特に保護者達は次は皇帝陛下に報告します、の一言に震え上がったらしい。
今の皇帝は先の政変で逆らった貴族達を四天王を中心とする者達に子供達も含めて根絶やしにさせたりするほど厳しいのだそうだ。
親たちは本当に戦々恐々としていた。
そして、お昼休みだ。
私はベティ達と食堂に向かったのだ。
そして、そこで、私は聖女の緑頭が見た目麗しい男に抱きついて、腕にその豊かな胸を押しつけて連れているのを見たのだ。
「まあ、聖女様よ」
「お相手はブルクハルト殿下よ」
女達が噂していた。
ブルって王族だったんだ。
それも第三皇子だったはずで、それは確か、ベティの婚約者だったはずでは……
私は慌てて隣のベティを見ると両手を握りしめて何かを必死に耐えているようだった。
友達をこんな目に合わせるなんて!
私はむかっとした。
これだけ離れていたら水をぶっかけてもバレないだろう。
友人を怒らせる奴は皇子といえども許さない!
私が水魔術を発動しようとした時だ。
いきなり皇子と緑頭の上から水が落ちてきたのだ。
二人はずぶ濡れになっていた。








