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真の聖女だと自称する緑頭の登場にため息をついていたら、友人が緊急事態だと私を呼びに来てくれました

「あああら、怖いわ。転入してきた早々、下級貴族を跪かせているなんて」

 私達の後ろから甲高い耳障りな声がした。


「パウリーネ!」

 忌々しそうなゲオルクの声がして、

「「「聖女様!」」」

 コローナ達は救世主が来たとばかりに目を輝かせた。


 聖女ってピンク頭が来たの? 

 私が慌てて振り返ると、そこには青々とした新緑の葉の色をまとった髪をたなびかせた、大きなつぶらな青い目の少女がいた。

 聖女ってピンク頭以外にもいるの?

 でも、今度は緑頭だ。緑の髪の色も珍しい。聖女って変わった髪の色の者しかなれないんだろうか?

 私は下らないことを考えて自分を誤魔化していた。心の奥底ではエックお兄様の紙をよく読まなかったことをとても後悔していたのだ。情報がなさ過ぎた……


「聖女様、お聞き下さい。このハンブルク王国から来た転校生の女がいきなり私達に跪けと矯正してきたのです」

 自分に都合の良いようにコローナは説明してくれた。鬼の首を取ったように話す様は、今まで私に青い顔をして跪いていた面影はどこにも無かった。

「まあ、なんてことなの。ハンブルクのような田舎の学園ならいざ知らず、この帝国の由緒ある本学園では全ての生徒が平等であるはずですのに」

「そうなのです。この女は学園長のお言葉にあったように建前と本音を使い分けろと私達に迫ってくれたのです」

 ちょっと、待ってよ!

 それってあなたたちが私に言ってきたことじゃないの!

 私はむっとして女達を睨み付けた。


「キャー!」

「パウリーネ様、睨み付けられました」

「お助け下さい」

 女達が緑頭の後ろに隠れて、緑頭が庇うように前に出てきた。


「ゲオルク、誰なの、この女?」

「まあ、パウリーネ様を知らないの?」

「さすが属国の出の者は無知ね」

「仕方がないわよ。田舎には情報が伝わるのが10年くらい遅れるから」

 私の言葉に女達がこれ幸いと好き勝手に言ってくれたんだけど……


 めちゃくちゃ失礼ね! それはハンブルクは帝都に比べたら田舎かもしれないけれど情報伝達に10年もかからないわよ!


「最近認定された聖女です」

「まあ、教会はピンク頭以外に聖女を作ったの?」

 私がゲオルクに再度聞くと、

「はい。教会の総本山がハンブルクに聖女がいるならば帝国にもいるはずだと必死に探し出して、この四月に彼女を聖女認定して学園に入れてきたのです」

 何故かゲオルクは苦々しそうに話してくれた。

「ちょっと、そこのあなた。何を言ってくれているの」

 緑頭は顎を上につんと逸らしてゲオルクを睨み付けた。

「ハンブルクのような田舎にいる者が聖女な訳はないでしょう。真の聖女は私よ」

 両手を腰において顎を振り上げて高々と宣言してくれたのだ。

 やっぱり聖女って変な者しかなれないんだ!

 私は理解した。


「さようでございますわ」

「パウリーネ様こそ真の聖女様」

「ハンブルクの偽聖女と比べるなんてなんて畏れ多いことでしょう」

 女達が緑頭についてくれたけれど……

 私は大きくため息をついた。

 でも、それが取り巻き達を怒らせたのだ。


「ちょっとそこのあなた。何ため息ついているの!」

 目を怒らせて緑頭が睨み付けてきた。

「本当よ」

「なんて生意気なの」

「本当に不敬よ!」

 女達が好きに言い募ってくれるんだけど、不敬って普通は皇族に使うのでは無いんだろうか?


「まあまあ、皆さん。良いのよ。田舎者は世間知らずなんだから許してあげましょう」

 緑頭が鷹揚に私に言ってくれたんだけど、私も平民出だから人のことは言えないけれど、どこの馬の骨とも判らないあなたに許してもらう必要なんて無いわよ!

 私が言い返そうとした時だ。


「ユリア! それとコローナさんも何しているのよ! 担任が教室に来て、あなたたちがいないってカンカンよ」

 そこにベティが息を切らせて駆けてきてくれた。

「ベティーナ様。担任ってあの平民の根暗女でしょ」

 コローナが馬鹿にしたように吐き捨てた。

「平民風情のためにあくせくするなんて、ベティーナ様は相変わらずお優しいのね」

 その横から緑頭が嫌みを言ったみたいだ。


「パウリーネ様!」

 そこに緑頭がいるのを初めて知ったみたいで、ベティは目を見開いた。

 何故か手が拳を握っていて白くなってブルブル震えているんだけど……


「そんなことだからブルクハルト様にも愛想を尽かされるのよ」

「何ですって!」

 二人が睨み合ってくれた。一触即発の状態だ。

 でも、今はそれどころでは無いはずじゃないの?


「ベティ、それより、先生が怒っているんじゃ無いの?」

 私が横からベティに聞いていた。

「そうだったわ。もうカンカンよ」

 ベティは自分の要件を思い出してくれたみたいだ。

「だから平民の女なんて怒らせておけば良いのよ」

 コローナは先生に尊敬のかけらも無いようだった。

「何言っているのよ。あの先生はここではこれ以上続けられないと辞められたそうよ。新しい担任はめちゃくちゃ厳しいのよ」

「ふんっ、どのみちまた平民でしょ。どうとでもなるわよ」

 コローナは平然としていた。

「そう思うのなら勝手にしていなさいよ。どうなっても知らないから。それよりもユリア、行くわよ」

 ベティは私の手を引っ張ってかけだしてくれたのだ。

「えっ、ベティ!」

 私は引きずられて駆け出していた。

「ちょっと、私はまだ話が終わっていないわよ」

 緑頭が何か言っているが、私は無視した。


 前の平民の担任が辞めた?

 新しい担任が来たって?

 その先生は厳しい?

 それって新しい担任は……


 私の心の中で警報が鳴リ響いていた。

 そんなことはあっては嫌だと心に祈りながら。

 でも、教室に入った途端。私の希望は無残にも崩れ去ったのだった。



ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ユリアの担任は誰でしょう?

続きは今夜です。

お楽しみに!

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
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