私達の馬車を襲ってきた山賊達を退治しました。
襲撃って、帝国に入ってすぐに襲撃されるってどういう事?
帝国から情報が漏れた?
と思わないでもなかったけれど……
「エックハルト、行くぞ!」
お兄様が叫んであっという間に飛び出していった。
「お前らはここにいろ」
エックお兄様もそう言うと続く。
二人は身体強化すると後ろに向けて駆けていった。
どうやら、後ろから敵は襲いかかってきたらしい。
窓から後ろを見ると騎馬の群れが見えた。山賊みたいだ。服はバラバラだし、騎乗の仕方もまちまちだ。
そう言えば一番後ろの荷馬車に襲いかかったみたいだけど、後ろは私の専属侍女のニーナが荷物と一緒に乗っていたはずだ。
「えっ、ニーナ」
私は驚いた。短剣を構えて馬車の上でニーナが戦いだしたのが見えたのだ。
「ニーナはほっておいても大丈夫だよ」
「何言っているのよ。ニーナは私の侍女よ」
私が他人ごとのフランツお兄様にむっとした。
それはホフマン公爵家の騎士が強いのは知っているけれど、侍女は騎士とは違うのだ。
「ニーナに任せておけば大丈夫だって」
「そんな訳ないでしょ」
そう言う私の見るところで、ニーナに襲いかかった男がニーナに一刀で斬り捨てられていた。
まあ、ニーナの剣技もまあまあだけど……もう一人斬られるのが見えた。
その時、横に来たお兄様が爆裂魔術を放つ。その後ろにいた10騎ほどの騎馬が吹っ飛んでいた。
そこに身体強化したエックお兄様が突っ込む。
「ホフマン公爵家の馬車を襲撃するって、馬鹿な山賊よね」
お姉様も他人ごとのように言ってくれた。
余裕だった。
まあ、確かに。ハンブルク王国の中だったらホフマン公爵家の馬車を襲撃するような馬鹿はいない。
乗っている馭者も半分騎士のような者だし、ホフマン家の騎士は多いのだ。それに、怒り狂ったお兄様達に国の果てまで追い詰められるに違いない。もっとも最近は山賊の話もめったに聞いたことはなかったけど……
存在が知られると喜々としたお兄様が練習台だと言って私達を連れて討伐に向かうのだ。
怒り狂ったお兄様の前に実験台のように斬り捨てられる山賊達はもうかわいそう以外の何物でもなかった。
この馬車群も見た目は騎士が護衛していないように見えるが、最終兵器のお兄様が乗っているのだ。帝国の一個騎士団が攻めてきても大丈夫だ。赤い悪魔以外は。
赤い悪魔並みに強い奴は幾ら帝国でもゴロゴロいないだろう。
本当にドジな山賊だと思う。ホフマン公爵家のマークを私達の馬車は掲げているのに、見えなかったんだろうか?
まあ、退治されるのは時間の問題だろう。
そう私が思った時だ。
前方でも騒ぎが起こった。
向くと前の馬車の馭者に矢が刺さっているのが見えた。
そして、前方から襲いかかる騎馬の群れが……
「ベティーナ!」
驚いたことにフランツお兄様がそう叫んで飛び出していったのだ。
いつもは面倒くさいと言って絶対に最後まで馬車に残っているフランツお兄様が、私を行かさずに自分が飛び出して行くなんて……あり得なかった。
あっという間に一人の騎馬の男を斬り倒していた。
でも、騎馬が前から前から突っ込んでくる。
どうやら敵の目的はベティーナみたいだった。
「ピーちゃん。お姉様のことは頼んだわよ」
「ぴーーーー」
ピーちゃんは少し不満そうに鳴いてくれた。
「ちょっと、ユリア、あなたか弱い私を一人で残すの」
お姉様の驚いた声が聞こえたが、
「お姉様なら大丈夫だって」
私はそう言うと馬車を飛び出したのだ。
いざとなったらお姉様は強いはずだ……おそらく……
まあ、武の公爵家、幾らお兄様の死の特訓は受けていないと言えども護身術は学んでいるはずだった。
ベティーナの馬車は山賊の大軍に襲われていた。
お兄様が左横で戦っているが逆側からも山賊が襲っていた。乗っていた護衛騎士達が戦うが斬られていく。
私は一気に加速すると馬車に飛び乗ろうとした男を叩き斬っていた。
「ギャー」
男は落馬した。
そして、馬車に乗り込んでベティに襲いかかろうとしいてた男を一刀の下切り捨てた。
私は扉が外れた馬車の中に飛び込んだ。
「ベティーナ、大丈夫?」
ベティの上に倒れ込んでいた男を地面に捨てる。
「え、ええ!」
私は震えているベティーナが無事なのを見ると、後ろから斬りかかってこようとした山賊に爆裂魔術を叩き込む。
ドカーン
「ギャーーーー」
爆発音とともに馬諸共三人くらいの山賊が吹っ飛んでいた。
「おい、やばい」
「逃げろ!」
山賊達は慌てて逃げだそうとした。
そこへ私が爆裂魔術をお見舞いする。
「ギャーーーー」
これくらいで後は任せれば大丈夫だろう。
「フランツお兄様、後はお願い」
「お前な。面倒なことを」
私をむっとした顔で睨みつつ、フランツお兄様は逃げようとした山賊達を追いかけていったのだ。
「ベティーナ、大丈夫?」
私は震えているベティーナの傍によると
「ユリアーナ様」
ベティーナは私に抱きついてきたのだ。
「もう大丈夫だから」
「はい」
震えるベティーナはとても可愛かった。
私はそのベティーナを抱きしめてあげたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ハンブルク王国にいる賊に伝わる注意点。
「命が惜しければホフマン家の人間にだけは近付くな。見かけたら一目散に逃げろ」
その逆をした愚かな山賊達の運命でした……
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