ピンク頭の聖女がまたしても王太子に胸を押しつけていたので、今度は雷撃でお灸を据えました
結局その後、延々と2時間、マイヤー先生に怒られてしまった。
本当に最悪だった。それで結局食事抜きになったのだ。
「ユリア、王立学園はどうだった?」
「とても楽しかったです」
「そうか、何も問題は起こさなかったんだな」
「はい……」
「嘘つけ!」
夕食の時にお父様から聞かれて、せっかくその件は黙っておこうと思ったのに、私の行動を陰から見ていたフランツお兄様に洗いざらい全てばらされたのだ。
酷い!
婚約者がいるにもかかわらず、王太子に抱きついていたピンク頭は反省文、王太子も婚約者がいるにもかかわらず、女の子に抱きつかれていた件で反省文だった。私は注意するだけならまだしも水を2人にぶっかけたということで反省文を書けとのことだった。
「私は何も悪いことはしていないと思うのに、マイヤー先生ったら殿下と同罪だっていうのよ! 酷くない?」
私がお父様に言うと、
「普通頭からいきなり水はかけないでしょ。友達から『あなたの妹は凄いわ』って言われて本当に恥ずかしかったんだから」
お姉様が言ってくれるんだけど……
「酷いお姉様。私はお姉様の名誉のためにやって上げたのに」
「あなたはやり過ぎなのよ」
「そんなことないわよね。ねえ、お兄様」
「まあ、そうだな。ユリアはよく水で我慢したと思うぞ。俺なら殿下を燃やしていたかもしれないからな」
「でしょう」
私はお兄様に頷いてもらって喜んだ。
「ああんもう、我が家の二大トラブルメーカーで褒め合わないでよ。クラウス殿下は私の婚約者なんだから、私がやるわ」
お姉様がそう言ってくれたんだけど。
「でもお姉様。あのピンク頭、優しくするとつけあがるわよ」
「そうだ。リーゼ。殿下がこれ以上そのピンク頭なるものを近づけるなら、俺からも釘を刺しておこうか」
「えっ、もう、余計な事をしないでよ」
私とお兄様の言葉にお姉様は慌てだしたんだけど……
「しかし、我が公爵家が舐められることになってはまずいだろう」
「そうよ、お姉様」
お兄様と私はやる気満々だった。
「まあ、2人ともあまり動いてリーゼを困らせるな。陛下には俺からちゃんと話をしておくから」
お父様が私達2人を押さえようと言い出してくれたンだけど、陛下に言いつけるって……
「えっ、それってお父様が一番きついじゃない」
私には陛下に叱られて青くなるクラウスの顔が想像できた。
「何を言う。俺の大切な娘を蔑ろにするなんて許さん。聖女かなんか知らんが、教会にも釘を刺しておかんとな」
「いや、待って、お父様。お父様が一番酷いから。陛下に話すのは私が殿下にお話しして駄目だった場合にして。お兄様もユリアも良いわね」
お姉様が私達に動くなって言うんだけど。
うーん、あのクラウスは流されやすいからな。お姉様だけで大丈夫なんだろうか?
私は不安に思ってお兄様を見たら、お兄様も頷いてくれた。
そうだ。私が動く段には問題ないだろう。既に釘は刺しておいたし、次は頭を燃やすのが良いのかもしれない。
私はお姉様のために頑張るのだ。
今日は王立学園が始まって2日目だ。昨日は午後の授業をマイヤー先生のお小言で終わらせてしまって、私はまだ友達という者が出来ていなかった。
前世病弱だった私は同年代の友達もほとんどいなかったし。今世は何としても同年代の友達を作ると心に決めていたのだ。
騎士仲間というかお兄様達の関連の知り合いは多いので、今回は女の子の友達がまずは欲しい。
私は絶対に転生仲間だと思った青髪の女の子と友達になろうと思っていた。
でも、朝の始業前の時間を使って親しくなろうと思ったのに、お姉様が化粧に時間がかかって学園に着くのがギリギリになってしまった。
王太子に振り向いてもらおうと必死に化粧に凝ったらしい。お姉様はきれいなんだから、そんなことに手間暇かけ無くても良いのに! と思ったけれど、懸命にも私は黙っていたのだ。
「化粧なんてしてもしなくても同じだろう」
馬鹿なフランツお兄様は余計な事を言ってお姉様に思いっきり足を叩かれて涙目になっていた。
口に出してはいけない言葉もあるのよ。
私は出来たら青髪の転生者と思えるマリアンネと話したかったんだけど、中々話す機会はなかった。
お昼休みこそはと思ったのだに、歴史の先生が私の家庭教師だった関係で、資料運びを手伝わされて帰ってきたら、また皆お昼に行って誰も残っていなかった。
私は慌てて食堂に向かった。
そうしたら、性懲りもなく、ピンク頭がクラウスに胸を押し付けていた。ピンク頭はこの人の多いのに日傘なんかさしていた。周りの皆は傘のせいで少し間を開けていた。本当にはた迷惑な奴だ。
まあ、そのお陰で遠くからも見えるけれど。
お姉様はどうしたんだろうとみると、2人の様子を近くで見ていた。
見ていてどうするのよ! 注意しなさいよ!
私が出ていこうとしたらやっと動き出したみたいで、
「クラウス様。私という婚約者がいながら、別の女性をエスコートしているのはおかしいですわ」
何か遠回しすぎるんじゃないかと私は危惧したのだが、
「ああ、リーゼ。だが、聖女の面倒は私ができる限り見るようにと母上に言われているんだ」
クラウスはのらりくらりと躱すんだけど、そんな甘い言葉では駄目よ、もっとストレートに言わないと!
「そうですか。でも、婚約者以外の女性の胸を手に抱きつかれて喜んでいるとユリアが聞いたらどう思うか」
ちょっとお姉様! 何故そこに私が出てくるのよ! 婚約者のあなたが切れなさいよ。私には平気で切れるくせに、クラウス相手に弱すぎるわよ!
私がそう思った時だ。
「ユリアか、またどこかで見ているのか」
周りをクラウスが気にしだしたんだけど……
「クラウス様、この傘があればいくら銀髪脳筋女が水魔術で攻撃してきても大丈夫ですわ」
ピンク頭は何か訳の判らないことを叫んでいるんだけど……
私は別に水魔術が得意なわけではないんだけど……
被害が一番少ないと思ったから水魔術にしただけで、火魔術で頭を燃やされたいんだろうか?
いや、雷魔術なら、ひょっとして誰がやったか判らないかもしれない。直撃するのが悪いのならばすぐ傍に雷撃して脅すのもありだろうと私が思った時だ。
一応、クラウスもまずいと思ったのか、抱きついているピンク頭を離そうとしたのか胸に手が当たっていた。
「まあ、クラウス様も大胆です事。私の胸にお触りになるなんて」
ピンク頭の大きな声が学職の前の中庭中に響き渡ったのだ。
皆ぎょっとして王太子とピンク頭を見ていた。
「ちょっと、殿下!」
お姉様の目が見開かれた。
「いや、リーゼ、これはわざとでなくて」
「さあ、遠慮なさらないで、あの銀髪脳筋女は胸も平坦ですからね」
私はそのピンク頭の声にピキッと頭が切れてしまったのだ。
「誰が平坦なのよ!」
ピカピカドカーーーーーン
次の瞬間だ。凄まじい大音響と共に特大の雷がピンク頭とクラウスを直撃したのだった。
「「ギャーーーー」」
凄まじいピンク頭の悲鳴が学園中に響き渡った。
そして、雷撃が消えた跡には 黒焦げになってピクピク震えている王太子とピンク頭の淫乱聖女が倒れていた。
ユリアの怒りを買って黒焦げにされた二人でした。
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