表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/230

国境で私が不審者だと言われてお兄様と一触即発の事態に陥りました

 馬車は順調に進んでいた。

 まあ、私達だけならば馬に乗って突っ走れば一週間で着けるけれど、馬車の旅はのんびりなのだ。

 王都から川を下って2日。そこから山越えに2日。そして、今日はやっと国境を越えて帝国に入るのだ。


 ハンブルク王国の国境審査はお兄様の顔パスであっさりと出国できたが、帝国の国境の警戒は厳重で例え貴族と言えども審査があった。


 長い列になっていたが、貴族はさすがに別物で別のところに馬車ごと案内された。

 国境審査の建物は小さいが一般用の機能重視と違って、貴族用になっていて少しこぎれいな建物になっていた。そして、その一室の真ん中に水晶が置かれていた。

 周りに帝国の騎士が見守る中で身分証を出して水晶に手をかざすのだ。

 お兄様が身分証を出して水晶に手をかざす。

 水晶は青く光った。

「宜しいです。次の方どうぞ」

 係官の言葉にお兄様の次に並んでいた私が向かった。

 身分証と書類を差し出す。ピーちゃんは胸に抱えていた。

「えっと、その黄色いのは子竜だと?」

 国境の審査官は唖然としていた。

「いや、そう見えるだけだろう。なんかの鳥だろう」

 その横にいた偉そうなおっちゃんが馬鹿にしたように言ってくれた。


「ピーちゃんは子竜なんですけど」

「はいはい」

 男は私も馬鹿にしたように見てくれた。

 私はむっとしてその男を睨み付けたが、

「ユリア、別に良いだろう。それで。ここで取り上げられたらどうするんだ」

 後ろからエックお兄様に言われて私ははっとした。

 竜なんて危険だから入国はならんとか言われたらしゃれにもならない。


「あっ、それで良いです」

 私は慌てて頷いた。

「うん? ホフマン公爵家には次女なんて載っていないが」

 大きな年鑑らしきものを見て偉そうな男が私を睨んできた。

「養女です。9年前にお父様と養子縁組したんです」

 私が言うと

「帝国にも届けてもらわないと判らないんだが」

 ブツブツ言いながら男は隣の審査官と目で合図していたが、

「まあ、良かろう。この水晶に触れてみろ」

 偉そうに男に言われて私はむっとしたが、ここは我慢だ。

 私は水晶に手をかざす。

 その瞬間だ。水晶が真っ赤に光ったのだ。


「えっ?」

 私は唖然とした。水晶が真っ赤に光って警報らしきものまでなりだしたのだ。


「おい、直ちにこの女を拘束しろ」

 男が騎士達に指示した。

 騎士達が私を拘束しようとした。

「ユリアに近付くな!」

 お兄様が戻って来て、騎士達の前に立ってくれた。

 私の後ろにはエッサクお兄様がいる。


「ええい、何をしている。この水晶が赤く光ったということは犯罪人ということだ」

 偉そうな男が叫んでいた。

「ふざけるな。ユリアはハンブルク王国のホフマン公爵家の次女だぞ。それを犯罪人にするなど、我が公爵家に喧嘩を売るのか?」

 お兄様が叫んでいた。今にも抜剣しそうだ。


「何を言っている。ハンブルク王国の公爵家だろうが何だろうが帝国の法は法だ。高々属国の公爵家風情が偉そうにするな」

 男が叫んでいた。

「何だと!」

「お、お兄様!」

 激高しているお兄様を私はなんとか止めようとした。お父様からはくれぐれも問題を起こさないようにと注意を受けているのだ。帝都に着く前の国境なんかで問題を起こしていたらしゃれにもならない。


「ほおおおお、我がホフマン公爵家は帝国では侯爵位を授かっているのですがそれでもそう言われるのですか?」

 後ろから不敵な笑みを浮かべて、エック兄様が言ってくれた。

「帝国の侯爵家だと」

 いきり立っていた騎士達が戸惑った。

「今回このユリアーナは恐れ多くも帝国の皇帝陛下から学園に留学するように推薦されてここにいるのです。貴方たちは皇帝陛下に逆らうと言われるのか?」

「へ、陛下の推薦だと」

 責任者らしい男と係官は驚いて私とエックお兄様を見比べた。

「信じられないのならば、問い合わせしてくれたらよかろう」

 お兄様が少し落ち着いて言ってくれた。

 良かったお兄様が落ち着いて。でないとこんなちゃちな国境警備の建物など一瞬で消滅するところだった。

「しばし待たれよ」

 係官はそう言うと、私達はそのまま別室に通されて待たされたのだ。


「どういう事だ? 何でユリアが犯罪者になるんだ」

「そんなの判らないわよ」

 お兄様に聞かれて私が答えた。

「本当よね。お兄様が凶暴だからとアラームが光るのは判るけれど」

「リーゼ。俺は凶暴では無い」

 したり顔で言うお姉様にお兄様が反論したが、

「何言っているのよ。今も周りの騎士達を吹っ飛ばす気満々だったでしょ。お父様からはくれぐれも問題を起こすな、大人しくしていろって注意を受けているのに、国境で問題を起こして送還されたなんて事になったら笑い話にもならないわよ」

 お姉様がブツブツ文句を言う。

「本当ですよ。兄上。少しは押えてください」

 エックお兄様まで言いだした。

「本当だよ。兄上。国境で暴力事件を起こして帰されたなんてなったら恥ずかしくて誰にも言えないよ」

「お前が言うな」

 調子に乗ってそう言ったフランツお兄様はお兄様に頭を叩かれていた。

「痛いよ、兄上」

 フランツお兄様は涙目だ。私みたいに黙っていたら良かったのに!

 口は災いの元なのだ。


「ホフマン公爵家のアルト様ですよね?」

 そこへ扉の前で私達を見ていた一人の騎士が声をかけてきた。

「そうだが」

 不機嫌そうな声でお兄様が返事をすると、

「私、トム・ドンモリーと申します。曾祖父が西部のドンモリー男爵家の出身でして」

「ああ、我が公爵家の配下にいる」

 エックお兄様が横から教えてくれた。

 確かホフマン公爵家の西部にある男爵家だ。代々騎士の家柄だ。

「そうか、今は帝国にいるのか?」

「はい。我が曾祖父は次男でしたので、家から出るしか無く、王都の騎士学校から推薦を受けて帝国の騎士学校に入って帝国の騎士になったのです。私はアルトマイアー様には昔里帰りした時に、訓練をつけて頂いたことがあります」

 トムが話し出した。

「そうだったか。何年前だ?」

「3年前の夏です。その時はコテンパンにやられまして、ユリアーナ様になら勝てるだろうと挑戦して、一撃でやられました」

 騎士は笑って言ってくれた。

「ああ、あの夏の異様に暑い日の時だろう」

 横からフランツお兄様が言いだした。

「はい。フランツ様には1分間粘りましたが、力及ばず弾き飛ばされてしまいました。さすが試練をくぐり抜けられている方々は違うと実感した次第です」

 男は懐かしそうに言ってくれた。


「そうそう、普通は試練をくぐり抜けるのも大変だからな。くぐり抜けられたら凄いことなんだぞ」

 フランツお兄様がそう言って自慢するが、

「何を言っているんだ。公爵家の男なら当たり前だろう」

「当然の事を自慢するな」

「女のユリアでも通っているのよ」

「フランツお兄様の相手はゴブリンだったじゃない!」

 フランツお兄様は私達四人の集中砲火を浴びていた。


「あ、あのな。ユリアの相手はピーちゃんだろ。ゴブリンと変わらないじゃないか」

「何言っているのよ。ピーちゃんは強いんだから」

「ピーーーー」

 怒ったピーちゃんが私の胸から飛び出して嘴でフランツお兄様をつつきだした。


「痛い、痛いから」

 フランツお兄様は必死にピーちゃんから逃げ回っていたのだ。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

無事に一同は国境を通れるのか?

続きは今夜の予定です。

お楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

新作

『モブですらない小さい聖女に転生したので、小説の世界を堪能しようとしたら、何故かヒロインになっていました』https://ncode.syosetu.com/n4848kz/


私の今一番熱い人気の作品はこちら

『【電子書籍化】王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』https://ncode.syosetu.com/n9991iq/


表紙画像
1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■【3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
2巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/

3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

アルファポリスのレジーナブックスにて

【書籍化】

しました!
2023年6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク

■楽天ブックスへのリンク

■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

なろうの掲載ページ『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

第一部は書籍化の規約上3分の1残して後は他者視点で繋いでいます
「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


私の

3番人気の作品はこちら

『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』https://ncode.syosetu.com/n8311hq/

私の

4番人気で100万文字の大作の作品はこちら

『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』https://ncode.syosetu.com/n8911gf/



最新の短編作品はこちら

『婚約破棄されやけ酒飲んでると軽い男が声かけてきたので張り倒したら、何故か執着されました』https://ncode.syosetu.com/n2191kg/

このお話の前の話

『悪役令嬢に転生させられた地味令嬢ですが、ヒロインの方が強くて虐められているんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n7240kb/

新作

『恋に破れた転生王女はツアコンを目指します』https://ncode.syosetu.com/n7707kp/


この前の作品はこちら

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ