一人で留学しなければいけないと寂しく思っていたら、兄姉が皆付いてきてくれることになって号泣しました
お兄様は私達が止めるのを無視して訓練に入った。
最初は手加減していたお兄様だが、あっという間に通常のメニューに戻っていた。
「フランツ、なんだ貴様のその動きは? 貴様、俺が倒れている間、訓練をサボっていたな」
「そんなこと無いよ、兄上! お兄様が倒れたから俺も色々やることがあって」
フランツお兄様はやばいと思ったのか必死に言い訳した。
「何があるというのだ? 俺の面倒はユリアが一人で見ていてくれていたそうではないか?」
「えっ、一人で? 確か、リーゼも侍女長も手伝っていたんじゃ」
「フランツお兄様。今は私の事よりも自分のことでしょ」
私はフランツお兄様を黙らせるためにそう叫んでいた。
もうお兄様と一緒にいる時間も少ないんだから、お兄様への良い想い出にしてくれても良いじゃない!
夏休みが終わったら私は一人寂しく帝国の学園に留学するのだ。ここで余計な事をばらす必要はないと思う。私は気の利かないフランツお兄様を睨み付けた。
フランツお兄様は激怒したお兄様によっていつもの倍のメニューになっていた。
私は夏休みの終わりには留学の為に帝国に行かないといけない。私は午前は訓練、午後は礼儀作法と宿題と留学準備に明け暮れた。
でも、クラスの友達にはなんて言おう?
前世病弱な私は友達のもほとんどいなかったけれど、今世はせっかく出来た友達だった。だけど会って話すと辛くなるし……
私は転生仲間のマリアだけには事前に話すことにしたのだ。
「えっ、あなた帝国に留学するの? 何で?」
マリアは驚いて聞いてくれた。
私は結果的にツェツィーリアを謹慎処分にしたので、帝国の皇帝に目をつけられて云々の話をしたのだ。
「えっ、そうなの? あなた帝国の四天王には気をつけなさいよ。何するか判らないって話だから」
マリアが注意してくれたけど、
「もう、お兄様が赤い悪魔にボコボコにされたわ」
私は驚くマリアにその時の事を話したのだ。
「相変わらず、あなたは蛮勇よね。アルトマイアー様が勝てなかった赤い悪魔のバルヒェット様に立ち向かうなんて、殺してくれって言っているようなものよ」
マリアが呆れてくれた。
「だってお兄様が殺されたんだと思ったのよ。その時は無我夢中だったわ」
「止めてくれたあなたのお父様に感謝しておくのよ」
「そうよね」
私はマリアの言葉に頷いておいた。
もっとも、あの場ならお父様が赤い悪魔とは互角だと思ったし、いざとなったらなんとかしてくれるだろうと心の片隅で思ったのは内緒だ。
「帝国への留学はいつまでなの?」
「それがよく判らないのよ。取りあえず1学期間は確実に行っているわ」
「そうなんだ。帝国か。私もいつか行ってみたかったのよね。お父様と相談して私も留学出来ないかどうか聞いてみるわ」
「えっ、本当に! お友達とか知り合いがほとんどいないからめちゃくちゃ嬉しいわ!」
私がマリアの言葉に喜ぶと、
「急な話だからどうなるかは判らないわよ」
そうマリアは釘を刺してくれたけれど、そこまで言ってくれたのだ。おそらく少し遅れても来てくれるはずだ。知り合いが一人もいない状態での留学とマリアがいてくれる留学では全く違う。私は最悪だったテンションが少し上がった。
私が一人で色々と帝国への留学準備しているのに、お兄様達は普通だった。
もう少しは別れを寂しがってくれるのではないかと期待していたのに、全然そんなことはなかった。
まあ、私は所詮養子だし、元々平民のでなのだ。お兄様やお姉様達に取って私がいなくなるのはどうってことはないみたいだ。
私は少し落ち込んでしまった。
そんな中、お姉様達が旅行の準備を始めてくれた。
また、領地でも行くんだろうか?
私がもうじき帝国に行くのに、遊びに行くなんて! 行くなら私の帝国に来てほしかった。
食堂で皆で食事している時だ。
もう少しでこの食堂での食事も終わりだ。
感慨にふけっている私は皆が騒ぐのを言葉少なめに聞いていた。
「そうだ。ユリア、この本をお前の荷物にの中に入れてくれ」
フランツお兄様が本の山を私に見せてくれた。一番上の表紙には魔物大全とか書かれていた。
こんなのもらってもあまり役に立たないと思いつつ、
「えっ、フランツお兄様。こんなに沢山の本を私にくれるの?」
私はもらってもそんなに嬉しくないという感情を押し殺して、喜びを表そうとした。これだけの量の本を買おうとしたらとても大金がいるはずだ。
「何言っているんだ。やる訳ないだろう。俺の荷物が一杯だからユリアの荷物がまだ空いていると聞いたから入れてもらおうと思ったんだよ」
「ちょっとフランツお兄様。自分の馬車に入らないからってユリアに頼むのはずるいわよ。ユリア、そんな本よりも私のドレスを入れてよ」
「えっ?」
私はフランツお兄様とお姉様が何を言っているか判らなかった。
「ちょっと待て! ユリア余裕があるのならば帝国人名目録を入れてくれ」
エックお兄様が言い出してくれたんだけど……
「えっ、皆、どこに行くつもりなの?」
「何言っているんだ。帝国に留学するに決まっているだろう」
「そうよ。あなた一人帝国なんかに行かせたら何しでかすか判ったものじゃ無いから」
「俺達がちゃんとユリアを見ていないと、碌な事にならないからな」
「えっ、嘘!」
私は兄姉の言葉に驚いた。
その言葉を聞いて目に熱いものが溢れてきた。
「ちょっと、ユリア、どうしたのよ? いきなり泣きだして」
「そうだぞ、どうしたんだ?」
気付いたら私は目から涙が流れていた。
慌てたお兄様が私の頭を撫でてくれたんだけど。
「だって、お兄様達が一緒に来てくれるなんて思ってもいなかったのよ。一人寂しく帝国に行くと思っていたから」
「何を言っているんだ。俺がユリアの傍を離れる訳無いだろう!」
「そうよ。あなた一人で帝国に行かしたら、何しでかすか判らないじゃ無い」
「帝国の王子相手に喧嘩売りかねないしな」
「俺達四人がお前をカバーした方が良いだろう」
一人で帝国にで行かなければいけないと思い詰めていた私には兄姉達が一緒に来てくれると聞いて、私はいつの間にか号泣していたのだ。
憎まれ口をきいてくれながら一緒に来てくれるこの兄姉と兄妹になれて良かった。
私はお兄様達に背中を撫でられながらそう心から思ったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ほっとしたユリアーナでした。
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帝国の学園にこの五人兄妹で乗り込みます。
果たして学園で無事に過ごせるのか?
続きは今夜です。
お楽しみに!