お兄様と帝国の赤い悪魔が決闘することになりました
ええええ!
帝国に留学しろって?
私が?
私は一瞬お父様に何を言われたかよく判らなかった。王宮に呼ばれたお父様が不機嫌そうな顔をして帰ってきて早々、私達は応接に呼ばれたのだ。
「ユリア、もう一度言うぞ。帝国からお前に是非とも帝国の学園に留学して欲しいと依頼が来た」
父が再度話してくれた。
「何を言っているのですか、父上! ユリアをそんな危険なところにやる訳には行かないでしょう!」
即座にお兄様が反論してくれた。
「何を言っているんだ、アルト! 皇帝陛下の依頼ということは命令ということだ。皇帝陛下の命令に逆らうわけには行かないだろう!」
お父様が怒りだしたんだけど……
「そんな……拒否できないの? 人見知りで知らないところ行ったら死んでしまう私には絶対に無理よ!」
「どこが人見知りなんだよ!」
「死ぬ訳ないでしょ。6歳の時に王妃様のお茶会でいきなり王妃様のお気に入りのフリッツ先生を張り倒したあなたが何を言うのよ!」
「お前にガン飛ばしてきたって男どもにいちゃもんをつけて張り倒しているユリアの未来しか見えないぞ」
何かエックお兄様達がいろいろ反論してくれたけれど、誰がなんと言おうと、帝国貴族って皆お高く止まっていそうだし、そんな中に入るのは私には無理なの!
「父上、何故ユリアが帝国に留学しなければならないのですか? 帝国から言って来たのならクラウス辺りを留学させれば良いでしょう」
「ちょっと、お兄様、何言ってくれているのよ。クラウス様はこの国の王太子殿下よ。勝手に留学させないで!」
「ユリアが行くより余程良いだろう。ユリアが帝国の学園なんかで生きていけるわけ無いだろう! プライドの高い帝国貴族の中で虐められる未来しか見えん」
お兄様が言ってくれた。そうだ。気の弱い私は絶対に耐えられないと思う。
「そんなわけないでしょ」
「そうだよ。兄上。逆だって」
「虐めようとした奴が反撃されて黒焦げになる未来しか見えないよ」
なんかお姉様もエック兄様も酷い。フランツお兄様なんて最低だ!
「お前ら何を言っている。か弱いユリアがそんなわけ無いだろう」
私がお兄様の言葉に頷くと、
「いやいや」
「やられたらやり返せって教育したの兄上でしょ」
「ユリアなら帝国の貴族を返り討ちにして子分にするのは時間の問題だと思うよ」
「今も一年A組のボスになっているし」
「現に帝国の伯爵家の令息を一人腰巾着にしているじゃない」
なんかお姉様もエックお兄様達もぼろくそに私をけなしてくれるんだけど……フランツお兄様なんてボスって何よ。それにゲオルクを腰巾着になんてしていないわよ! 私は何も言っていないのに、勝手についてきているだけじゃない!
「帝国の学園の番長になって帝国の皇子を顎で使っている未来しか見えないって」
フランツお兄様がまた酷い事を言いだしてくれた。
「番長って何なの?」
「最近、ちまたではやっている学園もののがあって、番長は影で学園を支配する者のことだよ」
「ああ、ユリアならやりかねないわね」
お姉様! 何でそこで頷くの?
「それはさすがにまずいだろう」
「お前らな、か弱いユリアがそんなことするわけ無いだろう」
私がお兄様の言葉に私が再び大きく頷くと、
「そう思っているのは兄上だけだろ」
「そうよ。か弱いっていうのは私みたいな女の子を言うのよ」
「それも少し違うと思うけど」
「フランツお兄様、何か言った?」
「いえ、何でも無いです」
お姉様に余計な事を言ったフランツお兄様が慌てて否定していたけど、そのお姉様にこき使われている私はもっとか弱いはずだ。
「お前ら、いいか!」
「良い訳ないでしょう、父上!」
「そうです。帝国の学園が崩壊します」
「ユリアが帝国の皇子達を顎で使うようになったらどうするんですか?」
「お前ら、そんなわけ無いだろう。ユリアが帝国で虐められたらどうするんだ」
「絶対にあり得ないですよ」
「そうだ。虐めた奴らが返り討ちに会う未来しかないんじゃないの」
「番長になるのは確実ですよ」
「そんな訳あるか」
「そう言うのは兄上だけですって」
お兄様達は私をのけて私のことで言い合ってくれているんだけど……
「ええい! 煩い!」
お父様が一喝してくれた。
「これは決定事項だ!」
お父様は私の意見も聞かずに宣言してくれたんだけど……
「そんな、父上、俺は納得できません」
兄上が激高しだした。
「帝国の学園は愚かな選択をするんですね」
「学園を潰すつもりなのかしら」
「番長ユリアーナの誕生か」
その下の三兄姉は好きなことを言ってくれるんだけど……
「あ、はっはっはっは。帝国の学園も舐められたものだな」
それまで黙ってお父様の隣に偉そうにふんぞり返って座っていた赤髪の大男が笑い出してくれた。
「誰だ?」
お兄様が不快そうに睨み付けた。
「小僧達の意見は面白く聞かせてもらったよ」
お兄様の視線を歯牙にもかけずに男は笑ってくれた。
「そんな弱そうな女が学園で番長になるなんてあり得んな。ハンブルク王国の学園は余程軟弱な男達しかおらんのか」
男は馬鹿にしてくれた。私はか弱いから事実なんだけど、その言い方にはカチンときた。
「何だと、貴様、聞いていればいい気になりやがって、表へ出ろ! 勝負だ!」
お兄様が激怒しだしたんだけど……これはまずい、抑えないと。
私が思った時だ。
「止めろ! アルト! 愚かなのはお前だ! バルヒェット様、ここは若気の至りと言うことでお許し下さい」
驚いたことにお父様が男に頭を下げていた。
ということはお父様よりも高位ということはこの男は帝国の高位貴族なんだ!
お父様の横で偉そうにしていたから誰なんだろうと不思議だったけれど、体もデカく強そうだった。
「バルヒェット? 帝国四天王の一人、赤い悪魔なのか」
お兄様が驚愕していた。
「ふんっ、小僧、その名前に怖じ気づいたか」
男は馬鹿にしたように笑ってくれた。
こいつは馬鹿なのか? お兄様に喧嘩を売るなんて!
「そんな訳あるか! 勝負だ」
「良かろう! 生意気な小僧に力の差を教えてやるわ」
バルヒェットが立ち上がったのだ。
その身長はお兄様よりも高かった。
私は知らなかったのだ。
その男が帝国四天王と呼ばれている大陸最強の男達の一人だと言うことを……
帝国四天王の一人とお兄様の決闘、果たしてお兄様は勝てるのか?
続きは今夜です。
お楽しみに!
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