とある子爵令嬢の独り言
私はマリアンネ・フルート、子爵家の令嬢よ。
私は何故か生まれた時から前世の記憶があったの。
前世では何が原因か忘れたが、中2から引きこもりだった。
学校にも行かずにただひたすらゲームをしていた。その中で嵌ったのが『ハンブルクのピンクの薔薇』だった。その乙女ゲームのヒロインアグネスは、孤児院出身のピンク色の髪の可愛い女の子で、聖女の力を発現させて男爵家の養女となって王立学園に入学して、攻略対象と仲良くなって行くゲームだった。
私は全てのルートを必死にクリアしようと寝る間も惜しんで頑張ったのよ。
いつ死んだかは記憶の中で定かでなかったけれど……
そして、私は物心ついた時にこの国がハンブルク王国だと聞いて驚いたわ。その上、王太子の名前がクラウス様だと聞いて本当にゲームの世界に転生出来たと知って歓喜したの。
私自身がヒロインじゃなかったけれど、この国の貴族の子爵令嬢に転生できたしだし、とても恵まれていた。それに例えヒロインに転生していても、ずっと引きこもっていた私にはヒロインを演じるなんて絶対に出来そうになかった。それにヒロインのアグネスは婚約者のいる攻略対象達を強奪するのよ。そんなことすれば普通は貴族社会の爪弾き者になるはずだった。気弱な私はそんなことは出来そうになかった。
でも、子爵令嬢に転生できたので、王立学園には行ける。目の前で乙女ゲームの世界を見れるのよ。私の一番の推しはクラウス殿下なので、クラウス殿下とヒロインが仲良くなっていく様子をしっかり見ようと心に決めたわ。
でも、その王立学園の入学式会場で私は唖然としたの。
悪役令嬢のユリアーナをゲームではユリアーナを憎みきっていた幾多の攻略対象の中では二番目に人気の高かったアルトマイアー様がエスコートならぬお手々を繋いで登場したのよ。
確か断罪の時に怒り狂ったアルトマイアー様がユリアーナを叩き斬るところもあったのに、何かとてもそんな雰囲気には見えなかった。
と言うかユリアーナの髪飾りが金色に青く輝くサファイアが付いた物で、これはどう見てもアルトマイアー様の色なんだけど……ええええ! アルトマイアー様がユリアーナを溺愛しているということなの?
アルトマイアー様は周りからユリアーナをチラチラ見る男達を威圧しているし……
確かゲームの設定ではユリアーナはホフマン家の隠し子でアルトマイアー様とは異母兄妹のはずなのに、これって禁断の愛なの?
それにゲームでは入学式の挨拶はクラウス様とアグネスのはずだった。二人は挨拶の時に初めて出会うのだ。そこでの簡単なやりとりでクラウス様がアグネスの事を気にし始める設定だった。なのに、何故かアルトマイアー様とユリアーナが挨拶をしているんだけど……絶対に変だった。
何か不具合でも合ったのだろうか?
でも、ユリアーナはやはり悪役令嬢だった。
その日の昼にいきなり、王太子殿下に抱きついていたアグネスを水魔術で頭の上から水を落としていたのだ。
そうそう、悪役令嬢はそれくらいでないと!
その後マイヤー先生に怒られていたけれど……
その次の日は何と雷撃していた。
それでこそ、悪役令嬢だわ。
悪役令嬢に虐められているアグネスをクラウス様が助けて、クラウス様とアグネスの仲が良くなって行くはずだと思ったけれど、この二人、このままユリアーナの怒りがエスカレートしたらユリアーナに殺されないんだろうか?
私が心配するほどだった。
でも、この凶悪悪役令嬢が私を助けてくれたのよ。
私には信じられなかった。
私は自分の前世の知識を使って化粧水を作ったのよ。それをお母様に貴族のお友達に配ってもらっていたら、商会で儲けているボーケナ伯爵に目をつけられてしまった。伯爵は私から格安でこの商品を手に入れようとしてきたのよ。
お父様が断ると今度は息子との婚約を盾に迫ってきたの。
私はボーケナ伯爵の息子を見た瞬間そのキザったらしいところが鼻について嫌いになったし、私から製法を聞き出したらあっさり婚約破棄されそうだった。
こんな男と婚約するのは嫌だと、どうしようかと悩んでいたら、ますますしつこく迫ってきたのよ。
ほとほと困っている私の前に悪役令嬢が出てきて庇ってくれたのだ。
「ちょっと、私のクラスメイトが嫌がっているじゃない! 止めてくれない」
「な、何だと! 小娘、貴様は……公爵家の……はああああ! 貴様はたまたま公爵家に養子に入れてもらっただけで、元々は平民だと父上からは聞いているぞ。俺は由緒正しきボーケナ伯爵家の嫡男だ。言葉には気をつけろ!」
私はボーケナ伯爵令息の言葉に目が点になった。
こいつ公爵家に喧嘩売っている。
それもアルトマイアー様が目に入れてもおかしくないほど溺愛していたのを入学式の時に見なかったんだろうか?
私がそう思った時だ。
「キャーーーー、痴漢よ!」
ユリアーナが思いっきり叫んだ時だ。アルトマイアー様が転移してきたのだ。
私は唖然としたわ。
ボーケナはアルトマイアー様に足蹴にされていた。
それから散々アルトマイアー様とマイヤー先生に叱責されていたけれど、いい気味だわと思ったのよ。
でも、教室に帰る時だ。
「ところでマリアンネさんは転生者よね」
私はそう言われてユリアも転生者だと判ったのよ。
まさか、悪役令嬢のユリアーナが転生者だとは思ってもいなかったわ。だからゲームの設定が色々変わってしまったんだわ。
私は納得したのよ。
その後も色々あって私はユリアーナの友人になったのよ。
でも、私は忘れていた。
その番外編に『帝国の銀の妖精』という乙女ゲームがあったことを!
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
もう間もなく第2部スタートです。
ブックマーク等して頂けたら幸いです。
第2部は帝国留学編です。
お楽しみに!
また、私の書籍等はこの15センチくらい下に表紙絵と一緒に載せています。
全ページにそのようになっているので、宜しければ是非とも実際に読んで頂けたら嬉しいです