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閑話 聖女視点 何故か王太子をその婚約者と喧嘩しながら看病することになってしまいました

 私は教会と帝国の言う通り、毒を飲んだ。


 ギャーーーー

 喉が痛い……何が楽勝なのよ!

 むちゃくちゃ苦しいじゃない!

 私はジュースのコップを地面に落としていた。

 喉を押えてもだえ苦しんだのよ。


「キャーーーー」

「聖女様!」

「何事だ?」

「大変だ」

「聖女様が毒を盛られたぞ」

 その声を聞いた途端に観客席の外から予定通り聖騎士がなだれ込んできた。


「動くな!」

 聖騎士達は剣を抜いて悪役令嬢等を取り囲んでくれた。

「ユリアーナ・ホフマン! その方、聖女アグネス様に毒を盛ったな」

 騎士の一人がユリアーナを指さして叫んでくれたのだ。

 これで断罪は成功したと私は苦しみながらほくそ笑んだのだ。少し苦しいのがましになった。

 今まで散々苦労させられたユリアーナもこれで終わりだ。


「ヒール!」

 私はやっと自らそう叫ぶと癒やし魔術の光で囲まれた。

 そして、次の瞬間、何とか立ち上がったのだ。


「せ、聖女様。大丈夫ですか?」

 そこにブッシュバウム枢機卿が駆け寄ってきてくれた。

「ありがとうございます。枢機卿」

 私はそう答えると、こんな毒を飲ませた枢機卿を思いっきり蹴り倒したかったのを精一杯のプライドで押えてニコリと微笑んだのだ。顔が少し歪んでいたかもしれないが、それは仕方がないだろう。

 いつか必ず同じ目に会わせてやると思いながら……


 本当にボケナスの枢機卿のお陰で苦しかった。でも、今から断罪劇だ。やっと今まで我が物顔で私を苦しめてくれたユリアーナを断罪できるのよ!


「聖女の私が毒を盛られるなんて、信じられません。これも私とクラウス様が仲良くしているのに嫉妬したリーゼロッテ様が、その妹のユリアーナさんに指示して毒を盛ってくれたに違いありませんわ」

 私はユリアーナを睨んで宣言した。


「な、何を言っているのよ! そんな訳はないでしょ」

 リーゼロッテが反論してくれた。

「そうだ。ユリアーナがむかついたら問答無用で魔術攻撃をするぞ。それにユリアーナなら毒殺なんて手の込んだややこしい事するくらいなら、その場で張り倒しているはずだ」

「「「そうだそうだ」」」

 その後をクラウス様が援護していたが、クラウス様はユリアーナに騙されているのだ。

 あいつは本当の悪役令嬢なんだから!


「まあ、皆様いかがなされたのですか?」

 そこにやっと帝国の皇弟の娘ツェツィーリアが来てくれた。

 来るのが遅いのよ! でも、これでやっとユリアーナも終わりだ。


「聖女アグネス様がユリアーナさんに毒殺されそうになられたって本当ですの?」

 ツェツィーリア様は不機嫌な顔のまま、私に予定通り尋ねてくれた。

「そうではないかと私は感じたのです」

 私が頷くと、

「まあ、本当に信じられませんわ。ユリアーナさんがそんなことをされるなんて」

「聖女様を毒殺しようとするなんて」

「可愛い顔をしてそんなことをするなんて」

「人は見かけによらないのですね」

 ツェツィーリアの言葉に周りの者が口々に言い出してくれた。いや、見かけ通りだろうと私は余計な突っ込みはしなかったけれど……

 皆がまた一斉にユリアーナを疑わしそうに見てくれた。そうそう、これで良い。


「私、前にユリアーナさんが仲良くしていらっしゃる聖女様と王太子殿下を水魔術で攻撃しているのを見ました」

「私も見たわ」

「普通は王太子殿下にそんなことしたら不敬になるのに、ユリアーナさんは主席だからか全く気にせずに攻撃していました」

「あの時は本当にユリアーナさんが怖かったです」

 私のB組の連中を中心に皆私を援護してくれたのだ。聖女様と王太子殿下を攻撃するのは本来は不敬なのよ! もっと言って!


「私はユリアーナさんが聖女様とクラウス様を雷撃で攻撃したのを見ました」

「まあ、雷撃するなんて、1つ間違えたら死んでいたかも知れませんわ」

 ツェツィーリアがユリアーナを冷たい視線で見てくれた。

「帝国の学園で皇族を雷撃で攻撃したら反逆罪が適用されますわ」

 フローラもここぞとばかりユリアーナを私を非難してくれた。

「まあ、そうなのですか?」

「それに比べて王国は反省文だけだったかと」

「王国の王立学園は処分が随分甘いのですね」

 フローラが傘にかかって言いはなった。もう一押しだ。

「お二人が亡くならなかったのは聖女様のお力のせいだと思います。聖女様がいらっしゃらなかったら、お二人とも亡くなっていたと思います」

 B組のモブの女も私を援護してくれた。


「本当に恐ろしいわ」

「だから魔術攻撃しても私が死なないから今度は毒を盛ろうとしたんだと思うんです」

 私は涙で目をうるうるさせて上目遣いで皆に訴えた。

「まあ、なんてお事なの。この大陸の至宝の聖女様を亡き者にしようとするなんて」

「あり得ないわ」

 ツェツィーリア様とフローラの言葉にその周りの者達が頷く。



「聖女様を亡き者にしようとするなど言語道断! 聖騎士達よ。直ちにユリアーナを拘束せよ」

 ブッシュバウムの声に、聖騎士達がユリアーナを捕まえようとしてくれた。

 これでユリアーナも終わりだ。私は心の中でほくそ笑んだのだ。

 ついに私の思い通りにユリアーナを断罪できるのだ。


「ユリアに触れるな!」

 しかし、その時だ。

 なんと、まだ目の覚めないアルトマイアー様がユリアーナを庇ってくれたのだ。

 雷撃が聖騎士達に襲いかかった。


「アルトマイアー殿。いくら妹御が大切だからと言って聖騎士に手を上げられるとはただではすみませんぞ」

 ブッシュバウム枢機卿が叫んでくれたんだけど……


 ズドーーーーーン

 そう叫んだ枢機卿の顔の横に火炎魔術が飛んでいた。

「ヒィィィィ」

 思わず、枢機卿はその場で腰を抜かしていた。顔の一部が切れていた。


 せっかく私達がここまできちんと準備したことが、強引なアルトマイアー様の登場によって崩れ去ったのだ。

 更に困ったことにお馬鹿なツェツィーリアは証拠の映像まで記録されていたのだ。

 ちょっと待ってよ。ここまで苦労した事が水の泡になるの?

 何のために私は苦しい目をして毒を飲んだのよ!


「関係者を全員拘束しろ」

 アルトマイアー様がそう命じた時だ。


 ドカーン

 いきなり爆発が起こった。


 魔術師が攻撃したみたいだが、何故かツェツィーリアがもろに喰らっていた。帝国は凄い。失敗したら皇女でも始末するんだ! 私は戦慄した。


「何をしているんだカスパル! 相手はアルトマイアーだぞ! ツェツィーリア様を攻撃してどうするんだ?」

 後ろから現れた影の男が叫んでいた。どうやら間違いだったみたいだ。


 でも、圧倒的にこちら輪は不利になった。

 もう最後だ。本当にこいつらは役に立たない!

 私は最後の手を使うことにした。


「全員動かないで!」

 私はリーゼロッテにナイフを突きつけたのよ。

「動かないで。動くとこの女の命がないわよ」

 私は大声で叫んでいた。


「リーゼ、大丈夫か?」

 クラウス様が思わず後ろを振り返って叫んでいた。


「甘い!」

 クラウス様が後ろから黒ずくめの男に斬られていたのだ。

 クラウス様がゆっくりと倒れる。

 えっ?

 クラウス様が……


「「クラウス様!」」

 私はその瞬間頭が真っ白になった。

「何するのよ。このボケナス!」

 怒り狂ったリーゼロッテがクラウス様を斬った影の男の股間を蹴り上げたのだ。

「ギャーーーー」

 男は悶絶していた。


「死ね!」

 私も負けじと悶絶している黒ずくめの男に魔力を叩きつけていたのだ。


「ギャーーーー」

 男はその魔術で吹っ飛ばされていた。学園の壁を越えて遙か彼方まで……



「おのれ、聖女アグネス、裏切るのか?」

 残された黒ずくめ男達が叫ぶが、

「クラウス様を傷つけたお前らは許さないわ」

 私は完全にキレていた。クラウス様を傷つける奴は例え味方でも許さなかった。

「死ねーー」

 キレていた私は何故かリーゼロッテと協力して残りの男達を叩き潰していたのよ。


 その後に私はクラウス様に駆け寄ったのだ。

「クラウス様!」

 私の前にリーゼロッテが抱きしめていたのだが、

「ええい、邪魔よ、退いて」

 私はそのリーゼロッテを押しのけたのだ。

「何するのよ!」

 リーゼロッテが叫ぶが、今はこいつはどうでも良いのだ。

 クラウス様を治さないと、

「ヒール」

 私は最大のヒールをクラウス様に向けて発したのだ。

 クラウス様は金色に光った。

 これで治ったはずだ。

「クラウス様、大丈夫ですか」

「ちょっとあなた退きなさいよ」

「あんたこそ退きなさいよ。クラウス様の看病は私がするわ」

「何言っているのよ。看病するのは婚約者の役目よ」

「ヒールもかけられない娘が何を言うのよ」

 私達は喧嘩しながら必死にクラウス様を看病したのだった。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

第2部開始まであと一週間です。


私の別のお話

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完結しました。

まだの方は是非お読みください。

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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第一部は書籍化の規約上3分の1残して後は他者視点で繋いでいます
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でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


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