閑話 王太子の独り言 武の公爵家の養女に良いところを見せようと必死に勉強したのに、更に上を行かれてしまいました
10万PV四日間連続記念閑話です
俺は運動能力も剣術も魔術も、絶対にアルトマイアーは元よりエックハルトにもユリアーナにも果てはフランツにさえ敵わなかった。
必死に訓練して、アルトマイアーに挑むも、いつも完敗だった。愛しのユリアーナにも全く敵わず、フランツにさえボコボコにされた。
俺は身も心もボロボロだった。
こんなので王太子としてやっていけるのか?
俺は本当に心配になってきた。
「何を絶望しておられるのですか、殿下? 相手は武の公爵家なのです。それも四人とも3歳の時に公爵家の試練を乗り越えているのです。武で対抗するのは難しいかもしれません」
俺の側近のランドルフが言い出したのだ。
何を言い出すのだ、こいつは?
俺が怒り出そうとした時だ。
「でも、殿下、もうじき殿下も学園に入学されます。そこでの勉学でなら、力を発揮されるのではないですか?」
俺は最初にランドルフの言っていることがよく判らなかった。
ランドルフの言うには、剣術や魔術の得意な奴らは往々にして外国語とか数学でつまずくのだそうだ。そこで勝てれば王太子の面目を保てるのではないか?
とランドルフは言いたかったらしい。
なるほど確かにそうだ。
剣術や魔術では勝てないかもしれないが、外国語も数学も小さい時から俺は教わっているのだ。それなら勝てるかもしれない。
そして、勉強の苦手なユリアーナに教えられるかもしれない。そうすれば
「クラウスは凄い」
とユリアーナも感激して俺に好意を見せてくれるかもしれない。
俺はそう思うと俄然やる気になったのだ。
俺はそれを機に剣術や魔術も練習したが、それ以上に勉学に力を入れたのだ。
それはもう必死に!
学園でユリアーナに判らないところを教えて感謝される俺の姿を夢見て、俺は必死に勉強した。
俺もやれば出来るはずだ。
俺はアルトマイアーの王立学園の入試の成績を見て確信した。
アルトマイアーはAクラスギリギリの40番だったのだ。
よし、これならいける。
俺は更にやる気になった。
でも、俺の自信が不安に変わったのは次のエックハルトの成績を見てからだった。
なんとエックハルトはダントツぶっちぎりのトップだったのだ。
ひょっとして脳筋なのはアルトマイアーだけかもしれない。
俺は少し不安になった。
いやいや、エックハルトはたまたまだ。
次は俺の番だ。絶対にフランツなんかには負けるはずはない。
でも、入試の結果を見て俺は唖然としたのだ。
なんとフランツが俺よりも10点も成績が上だったのだ。
俺がフランツに負けるなんて……
俺は母親にも怒られるし、最悪だった。
でも、待て! 俺はユリアーナにさえ、教えられたらそれで良いのだ。
ユリアーナは剣術と魔術は完璧だったが、後は食べることだけを楽しみにしているところがある。
絶対に勉強は出来ないはずだ。
悩んでいるユリアーナに
「そこはこうするんだよ」
俺はスマートに教えてあげて、感謝されるのだ。
「クラウス、凄い!」
ユリアーナに感激してもらうのだ。
俺は更に必死いに勉強しようとしたのだ。
そんな俺が帝国公用語の授業でフランツの教科書を見て唖然とした。
そこには本文の訳が本当に事細かに書かれていたのだ。
「フランツお前凄いな。こんなに予習してくるなんて」
俺は驚いてフランツを賞賛した。
「そうだろうと自慢したいところだが、種明かしをすると、これはユリアが翻訳してくれたんだ。あいつは帝国語が完璧だからな。何しろエック兄上も帝国語で判らないところがあるとユリアに聞くくらいだから。アルト兄上もいつもテスト前にユリアーナに教えてもらっているくらいだぞ」
俺はその言葉に唖然としたのだ。
ちょっと待て! フランツはこの学年の主席だ。そのフランツがユリアーナに外国語を教わっているだと……俺は外国語は一番得意だった。でも、フランツはその上だったのだ。そのフランツにユリアーナが教えているだと!
ユリアーナがそれ以上に得意なら教えられないじゃないか!
俺はとてもショックを受けていた。
そして、翌年俺の婚約者のリーゼロッテも主席だった。
さすがの俺の母も何も文句は言えなかった。
その代わりに俺がまた、フランツよりも下だと怒られたのだ。
そして、その翌年の四月になった。
ユリアーナが主席だった。それも帝国語が100点満点だったのだ。
俺はがっかりした。
運動能力、剣術、魔術、ユリアーナに勝てるものはなくて、挙げ句の果てに勉学まで勝てるものがないとは……
俺は茫然自失してしまった。
何で何で天はホフマン家に二物も三物も与えられるのですか?
俺は叫んでいたのだ。
呆然自失した俺様に
「そんなの兄上が怖いからに決まっているだろう」
フランツが教えてくれた。
そうか、アルトマイアーは兄妹たちに怖がられているのか? 確かにリーゼロッテもアルトマイアーを嫌っていたような気がした。
皆脅されて必死に勉強しているのか?
それでそこまで出来るようになったのか!
俺は納得した。
ユリアーナがアルトマイアーを恐れているなら、まだ、俺にもやりようはあるはずだ。
俺は逆にユリアーナに優しく接しよう。
そうすればユリアーナはいつか俺に目を向けてくれるはずだ。
そうだ。明日からまた頑張ろう!
俺は心に決めたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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