閑話 王太子視点 武では到底適わないので、勉学でユリアーナに良いところを見せようと努力することにしました
異世界転生完結ランク第四位達成記念閑話です。
俺はそれから必死に訓練に精を出したのだ。
でも、中々ユリアーナと一緒にダンジョンに潜らせてもらえなかった。ユリアーナの兄のアルトマイアーが中々許可をくれないのだ。アルトマイアーはいずれ彼の父の後を継いで近衛騎士団長になる予定だ。そう、国王になった俺をアルトマイアーが守ってくれるのだ。俺としてはその彼の気分を損ねるわけには行かない。
でも、中々許可してくれないアルトマイアーに俺の我慢は限界だった。
なんとしてでも連れて行ってほしいと頼み込んだのだ。
そして、父とアルトマイアーの父にも頼み込んでなんとか無理矢理連れて行ってもらった。
でも、彼らの進むスピードは凄かった。俺は死にもの狂いで訓練してきたはずなのに、全く彼らのスピードについて行けなかった。
「クラウス、やはり全然駄目じゃないか!」
へばって倒れ込んだ俺達四人にアルトマイアーは容赦の無い言葉をかけてくれた。俺のことも完全に呼び捨てだし、まあ、元々命がけのことだから呼び捨てにするとは言われていたけれど、これでは王太子の威厳も何もなかった。
「お兄様。それはクラウス達は初心者なんだから難しいわよ」
ユリアーナが援護してくれたけど、ユリアーナも呼び捨てだった。普通は好きな者に呼び捨てられたら嬉しいのかもしれないけれど、俺の方が年上なのに年上のお姉さんに庇われているような気がしたのは気のせいだろうか?
「大丈夫か、クラウス? だから難しいと言っただろう」
同い年のフランツにまで心配される始末だ。日頃のフランツの言動を見ているからフランツが参加できているのならば大丈夫だろうと思った俺が馬鹿だった。フランツも公爵家の男だったのだ。3歳の時に試練を突破しているだけのことはある。
「まあ、俺としてはお前らがいるから楽になっていいけど」
「これで楽なのかよ」
俺は呆れてしまった。
「最近ユリアーナがレベルアップしてきて、大変になりかけていたから、俺としては大助かりだよ」
フランツの声に俺は唖然とした。
ユリアーナは更に強くなっているのか?
これでは到底俺がユリアーナを守るなんて言えないじゃないか……
俺は唖然とした。
俺は付いていくのも大変だったが、アルトマイアー達はその移動スピードで魔物を狩っていくのだ。そして、俺より二歳も下のユリアーナも平然とついていけていたしたまに攻撃していたのだ。
俺は自分が情けなかった。
それにアルトマイアーのユリアーナに対する溺愛ぶりも凄かった。
リーゼロッテに対する塩対応とは全然違うのだ。
「これを食べろ」
と言って行動食を食べさすわ、
「ユリア、飲め」
自分の水筒から水を飲ますわ、俺たちに対する扱いと天地雲泥の差があった。
俺は一応王太子なのに、全く忖度してくれないのだ。
まあ、ユリアーナが唯一の女というのもあったと思うのだが……
「クラウス、さっさと立て」
「時間が無いぞ」
「そんなんだったら二度と連れて来ないぞ」
アルトマイアーは本当に俺に対して容赦が無かった。
でも、そんな俺に対してもユリアーナは優しかった。
「はい、これ」
アルトマイアーに隠れてチョコレートをくれたり、水をくれたりしたのだ。
倒れ込んだ俺に自らの水筒を飲ませたくれた時は、本当に嬉しかった。
ユリアーナと間接キスが出来たと喜んだのだ。
「ユリア、自分でついて来れない奴の事となど構うことは無い」
その俺のにやけた顔を見てアルトマイアーの機嫌が悪くなっていたが……
おい、俺は一応王太子なのに!
でも、そんなのはアルトマイアーには通用しないのだ。
俺に対する対応が更に雑になってくるんだけど……
ユリアーナが取りなしてくれなかったら本当に俺は死んでいた。
俺が父に文句を言ったら、
「お前は何を言っている。元々ホフマン家は帝国の皇弟の出だ。公爵家の初代は皇弟にもかかわらず、我が始祖を助けて頂けたのだ。我が国が建国できたのは皇弟だったホフマン家の初代が助けてくれたからだ。それに帝国においてはホフマン家は形だけだが未だに侯爵家の扱いだ。下手したら我が家と同等なのだ。王太子と公爵家の嫡男という単純な問題ではあるまい」
それに、何でも、アルトマイアーの実の母が帝国の皇女の孫だそうで、アルトマイアーには帝国の皇位継承権もあるそうなのだ。
ホフマン家自体はこのハンブルク王国の中でも別格らしい。でも、ホフマン侯爵本人は父に忠誠を誓ってくれているし、その娘を俺の婚約者にしてくれているのだ。最も俺は相手がその妹のユリアーナの方が良いのだが。
「ユリアーナは公爵家の養女だから帝国の皇位継承権はないが、リーゼロッテはアルトマイアーと同じ母で帝国の皇位継承権があるからお前との子にも帝国の皇位継承権が与えられる。だから今後の我がハンブルク王国の立ち位置から考えてもリーゼロッテの方が良いのだ」
そう父は言ってくれるが、王国内にはキンメル侯爵家のようにホフマン公爵家を敵視する勢力も多く、そう簡単な問題でもない。我が母もホフマン公爵家に良い印象は持っていなかった。リーゼロッテにも辛く当たることは多かった。最も母が嫌っているのは自分の護衛騎士をユリアーナがボコボコにしてくれた事を恨みに思っているようだったが……
ユリアーナの兄は俺に対して塩対応だし、ユリアーナも俺を出来ない弟分としか見ていないかもしれないが、俺としてはユリアーナの笑顔が忘れられなかった。
ホフマン家は武のホフマン家だ。13歳になる時から学園も始まる。我が王立学園は帝国及びその属国の中ではレベルが高くて有名だった。こうなれば俺は勉学でユリアーナを助けよう。武のホフマンは往々にして勉学は苦手のはずだろうと俺は考えてたのだ。
それからは俺は必死に頑張って勉強したのだ。まさか、アルトマイアー以外の4兄妹が主席を取るなんて思ってもいなかったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
王太子の恋第2段でした。
新作始めました
『恋に破れた転生王女はツアコンを目指します』
https://ncode.syosetu.com/n7707kp/
前世、夢見ていた旅行会社に就職出来て今から初添乗に出ようとした時に事故に遭って、この世界の王女に転生したリーゼだが、王女になったのだからと自分の夢を諦めて、きちんとした相手と結婚して子孫を残していこうと決心した。しかし、一人目は真実の愛に芽生えて婚約破棄され、二人目は隣国のデカパイ淫乱女に略奪されて、果ては帝国の皇子と見合いしたらペチャパイは嫌だと宣われて、ジュースを頭からぶっかけてしまった。
もう良い! 親や兄のためにやるだけはやった。ここからは自分の人生を自由にさせてもらいますと異世界旅行社のツアコン・リーゼとして生きていこうと決めたのだ。しかし、初めての添乗が自国の迷宮ツアーになって喜ぶリーゼだが、その客が一癖も二癖もある客達で。挙げ句の果ては自分をペチャパイと罵ったロンバウトまでいる始末。更には迷宮で事故が起こって果たして、リーゼは全員をきちんと連れて帰ってこれるのか?
過保護な父と兄に黙って仕事を続けられるのか?
仕事に生きる王女リーゼの物語です。
1日二更新目指して頑張ります
よろしくお願いします。
リンクはこの10センチ下にも張っています。