閑話 王太子視点 母の騎士を一瞬で弾き飛ばしてくれたユリアーナに恋してしまいました
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バシーーーン!
俺は目の前で母上の近衞騎士が剣で吹っ飛ばされるのを唖然と見ていた。
相手は騎士団長のルードルフでも近衞騎士でもない。6歳の女の子のユリアーナにだ。
俺の目にはそれまで可愛いだけの銀髪の女の子だったユリアーナが、一瞬でプリッツだかフレクスだかいう名前の顔だけ騎士を叩きのめすのを見たのだ。
本当に一瞬だった。
どんなもんだ! と胸を張るユリアーナがとてもまぶしかった。
俺がユリアーナに恋に落ちた一瞬だった。
元々母上の見目麗しい騎士への愛着が子供の俺にはよく判らなかった。子供としては父と母は仲良くして欲しいのに、母は父よりもその騎士と仲良くしていたのだ。外聞という物もあるし、子供心に俺は母のその行動を嫌っていた。まあ、貴族としては見目麗しい騎士を侍らすのが流行っているらしいが……
何でも、帝国の皇后陛下もそうされておられるのだとか。
宗主国の皇后からして風紀がなっていないのだ。それでいいのかと俺は子供心に思っていた。
その顔だけ騎士を6歳のユリアーナが一瞬で弾き飛ばしてくれたのだ。俺も父も心の中で拍手喝采していた。
母だけはユリアーナを親の仇みたいに睨んでいたが……
今日は俺の婚約者選定のお茶会だ。俺はユリアーナと仲良くなりたいと思ったのだ。
でも、ユリアーナは俺なんて目もくれずに、一目散に食べ物のあるところに飛んで行ったのだ。
俺はというとユリアーナの姉のリーゼロッテや他の貴族の娘達にたちまち囲まれてしまった。
そんな中、ユリアーナは王宮の料理人が腕によりをかけて作ったデザートを本当に美味しそうに食べていたのだ。主役の俺を放っておいて……
本来ならば少しくらい俺の所に来ても良いではないか!
俺はそんなに魅力が無いのか?
俺は自分のプライドが粉々に砕け散るのを感じていた。
仕方なしに、俺はトイレに立つ振りをしてユリアーナの所に行った。
「王宮の料理人の作るデザートは美味しいだろう?」
俺がユリアーナに問いかけると、
「本当に!」
そうちらっと俺を見て言うと、ユリアーナは俺に全くお構いなしに、次のケーキに手を伸ばしていた。
公爵家では養子ということで虐められて食べさせられていないのか?
俺は一瞬そう勘ぐったが、でも、さっきは顔だけとはいえ大人の騎士をユリアーナは一瞬で弾き飛ばしていた。虐められていても、ユリアーナなら反撃できるはずだ。
でも、そんなユリアーナが一瞬ぎくりとして手を止めたのだ。
その視線の先にマイヤーがいたんだけど、マイヤーと何かあるのだろうか?
でも、俺は良く考えなかった。それよりもせっかくユリアーナが手を止めてくれたのだ。今聞いた方が良いだろう。
「ユリアーナ。毎日、このような料理が食べられたら嬉しくない?」
俺はユリアーナを誘ってみたのだ。俺の婚約者候補にどうだと。
一瞬ユリアーナは目を輝かせたが、マイヤーの方をちらっと見て、
「デザートは家でゆっくり食べられた方が良いです」
絶対に釣れると思ったのに、あっさりと断られてしまったのだった。
俺はショックだった。
その後すぐに女の子に囲まれてしまった俺はそれ以上その場にとどまれなくて、泣く泣く自分の席に戻った。
お茶会の後、両親にはダメ元でユリアーナが良いと言ってみたのだが、母が頑として聞いてくれずに、父にも、
「食べ物で釣ったのに振られていたではないか」
とあっさりと言われてしまった。
でも、俺としては顔だけ騎士を一瞬で弾き飛ばしたユリアーナの凜々しさと、デザートを本当に美味しそうに食べるそのユリアーナのかわいさが忘れられなかった。少しでも会う機会が増えればとユリアーナの姉のリーゼロッテを婚約者にしたのだ。
しかし、リーゼロッテと婚約しても、ユリアーナと会う機会は中々なかった。
リーゼロッテの家に遊びに行っても大概はユリアーナはいなかったのだ。
どこに行っているのかリーゼロッテに聞くと、アルトマイアー等とダンジョンに潜りに行っていると聞いて俺は唖然とした。ユリアーナはまだ6歳なのに!
俺も一度一緒に行きたいと父に頼むと、
「おまえではまだ、難しいのでは無いか」
「殿下、アルトマイアー等と一緒に行くのはちょっと……」
その父のルードルフからもやんわりと断られてしまった。
そこをなんとかして欲しいと頼むと、
「一度訓練を見てみますか?」
そう言われて俺は側近3人と見に行ったのだ。
そして、唖然とした。
運動の量も、その厳しさも、剣技の激しさも、自分の訓練が恥ずかしくなるほど、桁違いに厳しい訓練をしていたのだ。俺はその訓練に30分もついて行けなかったのだ。
「大丈夫、クラウス?」
ゼイゼイ息をして倒れ込んだ俺を2つも下のユリアーナに心配される始末だった。
同い年のフランツにしても平然とついて行っていたし、俺は自分の未熟さを身にしみたのだ。
それからだった。俺が訓練に力を入れるようになったのは。
俺は少しでもユリアーナに認められたくて、それから必死に訓練したのだ。
王太子の恋心でした








