閑話 侍女の独り言 お嬢様と公子様の仲を見守っていこうと思いました
日間異世界転生完結ランキング第五位記念閑話です
本当にありがとございます。
私のお嬢様は凄い!
本当に凄いのよ!
まあ、三歳にして騎士の資格を取るくらいなんだから。
そのお陰で、私は千尋の谷に突き落とされるとか、爆裂魔術の攻撃を受けさせられるとか、死ぬような訓練を何回もさせられたけど……
本当に家令のセバスチャンは鬼よ!
ユリアーナ様は3歳で公爵家の試練を乗り越えると、調子に乗ったアルトマイアー様に連れられて、普通にダンジョンに潜らされるわ、死の特訓に付き合わされるわ、それはそれは大変だったと思う。でも、それを悉く笑顔で(顔はひきつっておられたけど)クリアしていかれたのだ。本当に信じられなかった。
おそらく、出来ないと公爵家から追い出されると、思われたのかもしれない。そんなわけないなのに! お陰で私の方が何回か死にかけたのよ!
それ以外にも六歳の時に王太子殿下の婚約者選びに参加すれば、王妃様のお気に入りの騎士を吹っ飛ばしてくるし、12歳で学園に入れば、 毎日のように礼儀作法の先生に呼び出されるしで、もう大変だった。
私はその度に公爵様から呼び出しを受けて、愚痴を言われるんだけど、私に言われても仕方がないと思う。ユリアーナ様に言って欲しい。最もユリアーナ様に言っても効果は無いみたいだけど……唯一ユリアーナ様が気にされるのは、公爵様でもアルトマイアー様でも王妃様でも無くて、礼儀作法のマイヤー先生だけだった。でも、その先生のことを気にしていても毎日呼び出されるんだから、言っても無駄なのは私にも判るわ。
そんなユリアーナ様だけど、12歳を超えて学園に通うようになると、とても可愛くなられた。
きれいになったとはまだ言えないけれど、大人になったら確実に絶世の美姫になるのは確実だと思ったわ。ユリアーナ様はリーゼロッテ様みたいに胸が無いと悩んでいらっしゃるけれど、それは好みの問題で、そんなのはおそらく全く関係は無いわ。
それを証拠に朴念仁のアルトマイアー様がそのユリアーナ様に髪飾りを買われたのだ。あのアルトマイアー様が髪飾りを買われたと公爵家の使用人一同はとても驚いたのよ。それもご自身の金髪と同じ金の髪飾りに瞳の青いサファイアのついてるのを買われるなんて信じられなかった……今まではユリアーナ様には防具とか剣とかいろんな武器は買われたけれど、装飾品は初めてだった。驚いたことにはアルトマイアー様は一緒にその姉のリーゼロッテ様にも髪飾りを買われたのよ。リーゼロッテ様はそれが地味だと文句をおっしゃられたけれど、私は忘れずにリーゼロッテ様に買われただけ凄い進歩だと思ったわ。それもリーゼロッテ様の婚約者のクラウス様の髪の色と同じ黒を買われるなんて……
恋とは縁遠いと思っていたアルトマイアー様が変わられたと家政婦長が涙を流して喜んでおられたんだけど……私はまだ、アルトマイアー様が恋に落ちたのか妹に過剰に干渉しているのか微妙だと思っていた。
だって、恋に落ちたら、相手にあんな危険な死の訓練をさせるなんてあり得なかった。本当にいつ死んでもおかしくないほど危険な訓練なんだから!
でも、そんな私も行き帰りの馬車の中でアルトマイアー様がユリアーナ様を膝の上に乗せているのを知って少し考えを改めた。いくら妹が可愛くても膝の上には置かないだろう。
そして、それは帝国からツェツィーリア様が留学してきて確信に変わったのよ。
なんとアルトマイアー様はあのおきれいなツェツィーリア様の事を男だと思っていたとか……普通に信じられなかった。
そして、そう思われていたと知って固まったツェツィーリア様を教室に運ぶのに、抱きかかえるのでは無くて、荷物のように肩に担いで運んでいったのだとか。どこに女の人を肩に担いでいく男がいるのよ? それも花よ蝶よと大切に育てられた帝国の皇女殿下をよ!
あの何でも雑なアルトマイアー様でも、ユリアーナ様を運ぶ時はいつも片手に抱きかかえられていた。ユリアーナ様を肩に担いだことは一度も無かったのよ。訓練の時もダンジョンに潜る時も!
可哀相に帝国の皇女殿下はアルトマイアー様に恋心があったみたいだけれど、アルトマイアー様にとってツェツィーリア様との関係は所詮そんな感じだったのよ。
でも、ユリアーナ様はアルトマイアー様の幼なじみのツェツィーリア様が留学してこられたと聞いてとても警戒しておられた。最もユリアーナ様はまだお子ちゃまだから、色恋というよりも大切なお兄様を取られたらどうしようという感じだったけれど……私からしたら荷物と同等に扱われるツェツィーリア様にアルトマイアー様が惹かれる訳は無いと判っていたけれど、何故かユリアーナ様は気にしていた。
そんな中、そのユリアーナ様が怒って家出されたのだ。友達のところを泊まり歩かれるようになっただけなんだけど、帰ってこないと知った時、アルトマイアー様はとても不機嫌になられたとか。
「あんたはいなかったから判らなかったと思うけれど、本当に最悪だったのよ。昔ユリアーナ様がいらっしゃる前に戻った感じよ」
私より少し年上のティナが教えてくれたけれど、その時は学生だったから私はあまり知らないのよね。何でも当時は食事の時もとても静かでアルトマイアー様を気にしてフランツ様がとてもおどおどされていたとか聞いたことがあるけれど、今は食べることに生きがいを感じていらっしゃるリアーナ様を中心にわいわいがやがやしていらっしゃるのしか知らない私には信じられなかった。
「あなたからユリアーナ様に友達のところに泊まり歩くのは自粛していただけるようにうまく頼んでみてよ」
ティナを始め皆に頼まれたけれど……その後で行われたサマーパーティーで、ユリアーナ様をアルトマイアー様がエスコートされて機嫌が良かったから取りあえず良いだろう。
今も領地に帰ってきたけれど、アルトマイアー様の機嫌を損ねないためにも、ユリアーナ様にアルトマイアー様と一緒に行動してもらうようにうまくやってくれとフランツ様はじめ皆から頼まれるんだけど……兄なんだからフランツ様からもうまく話して欲しい。ユリアーナ様も難しい年頃で、私がお話しても中々思うようには動いて頂けないのよ。まあ、ユリアーナ様は単純なので、簡単にある物で釣れるんだけど……
今日は一緒に孤児院に行って良いことがあったみたいで、アルトマイアー様はとてもご機嫌だった。
逆にユリアーナ様はなんか機嫌が悪いけれど……おそらくアルトマイアー様がまたユリアーナ様に執着するか何かしたんだと思う。
でも、アルトマイアー様にデザートを譲ってもらって機嫌を直していた……
うーん、しかし、アルトマイアー様はユリアーナ様が学園に主席で入学できたら1年分デザートを渡すと約束していたと思うんだけど、違うんだろうか?
まあ、元々デザートはいつもアルトマイアー様の分はアルトマイアー様がユリアーナ様に食べさせていたから、いつものことなんだけど。
本当にユリアーナ様は幸せそうにデザートを食べさせられていた。食べさせられているユリアーナ様を見つめるアルトマイアー様の表情は獲物を見つめる猛禽類って感じだったけれど……
美少女と野獣って感じだろうか?
天真爛漫で食べている時が一番幸せというユリアーナ様がいずれはアルトマイアー様に捕まる未来しか見えないんだけど……下手したらデザート一生涯分で釣られるユリアーナ様のお姿が脳裏に浮かんできた。
アルトマイアー様にはせめて男らしく決めてもらいたい。
ユリアーナ様とアルトマイアー様のお二人の仲をこれからも暖かく見守っていこうと私は心に誓ったのよ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この週末から新しいお話進めます。ツアコン目指す王女になる予定です。
お楽しみに!
2020年のコロナ禍から本格的に書き出して5年が経過しました。
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』(この遙か下に表紙絵とリンク張っています)で書籍化デビューしてまもなく2年です。
全書籍はこの10センチくらい下に表紙絵付きで載せています。
ここまで頑張って来れたのは応援頂けた読者の方々のお陰です。本当にありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。








