お兄様視点 可愛い妹の寝顔を見て、一生涯共にすると再度心に誓いました
「何だと、ツェッツイが、今回のサラマンダーの襲撃に噛んでいたというのか」
俺はエックからの報告を受けてショックを受けていた。
「兄上は、珍しく、ツェツィーリア様には他の令嬢方に対する塩対応と違ってきちんと対応していらっしゃいましたからね。ツェツィーリア様も少し勘違いされたのではありませんか?」
「まあ、ツェツィーリアはお前に気があったのだろう。昔からよくお前について回っていたからな」
エックと父に言われたが俺としてはピンとこなかった。
何しろ俺はツェッツイを女として意識したことなど無かったのだから。
子供の頃は新しくできた構ってやらないと死んでしまうとても弱い友達という認識しかなかった。当時俺に対して呼び捨てで呼んでくれる数少ない友人だった。俺はそれが嬉しくて結構構っていたと思う。俺自身がツェッツイは同性の友達という感覚が抜けてなかったのだろう。
「まあ、ツェッツイを女としてみたことは無かったからな」
「お前な、どう見ても女だろう」
「本当に兄上の感覚がわかりません」
父とエックに呆れられたけれど、自身、そう思っているのだから仕方が無い。
俺にとっては女とはユリア以外は必要ないのだから。
「まあ、兄上に気があるツェツィーリア様の前で、兄上はユリアにベタベタでしたからね」
「まあ、ユリアに酷い事をしたツェツィーリアは許すことは出来ないが、少し同情はする」
「ふん。他の男達に俺のユリアをやる気は無いからな」
エックと父は俺の言葉に呆れていたが、ユリアは人気が高いのだ。
他の男どもに立ち入る隙を与える気はなかった。
しかし、ユリアを亡き者にしようと画策するなど、例え幼なじみのツェッツイでも許す事は出来ない。
俺は決意を固めた。
「おい、ちょっと待て、アルト! お前まさかツェツィーリアを殺すつもりでは無いだろうな」
父が慌てだした。
「ユリアを殺そうとした奴を生かしておく価値などないでしょう。ツェッツイは良い奴でしたがやむを得ません」
俺がそう言うと、父とエックが俺を止めようと慌てだした。
果ては帝国と戦争になるからやめろと父は言いだしたが、帝国と戦争になっても一方的に負ける気はしなかった。
「判った。お前がツェツィーリアを殺さないと約束するならばお前とユリアの婚約をユリアの承認さえ得られれば認めよう」
父がめちゃくちゃ譲歩してきたのだ。
「うーん」
俺は考えた。
父がユリアとの婚約で出していた条件は、ユリアが卒業するまでに、一度でも良いから学年の主席になることと、剣術で父に勝つこと、それと本人の了承を得ることの3点だった。
学園で主席になるのは大変難しかった。それに父に勝つのも……
しかし、他の4弟妹が主席なのに、俺1人が主席で無いのはいくら俺が図太くとも、多少は気まずかった。
それにユリアをこれからも守って行くには、父は元より帝国の四天王に勝つくらいの力が無いと難しいだろう。それは絶対にやらねばならないことだった。
「アルト、お前、帝国と戦争になればユリアの安全も脅かされるんだぞ。それでもいいのか? ツェツィーリアには二度とユリアに手を出さないように帝国の皇帝に約束させるから」
父の必死の説得に俺は仕方なく認めたのだ。
もっともユリアを亡き者にしようとした者など積極的に守るつもりも毛頭なかったが……
馬鹿な魔術師が俺目がけて攻撃して来た時に、俺は場所を移動してユリアだけを守ったのだ。
俺の前にいたツェッツイとフローラは俺がいなくなったので、爆発に巻き込まれて吹っ飛ばされていた。
自分も死ぬような目に合えば二度とやらないだろう。
俺は怪我した2人をほっておいたのだ。
後で聖女に治させたが、ツェッツイもフローラも息も絶え絶えだった。
ここで抑えてやったのだ。感謝してほしい。
その後、今回の件で慌てて飛んで来た帝国の大使はとても尊大な態度だった。
ツェッツイは謹慎させるが、相手のユリアとリーゼも謹慎させろとか訳のわからない事を言い出したので、顔の真横に短剣を飛ばしてやった。
それからはよく言うことを聞いてくれた。
「お前は帝国と戦争をするつもりか?」
と後で父に怒られたが、我が家に喧嘩を売って来たのは帝国だ。
悪いのは帝国だろう。
俺は全然悪いとは思わなかった。
それよりもこれからも帝国はユリアに難癖をつけてくるかもしれない。
それに対抗するには俺達がもっともっと強くならないと駄目だ。
俺は自身の訓練は元より騎士団の訓練の量を増やした。
フランツが目を剥いていたが、我が公爵家はこのハンブルク王国の武の名門。例え帝国といえども負ける訳にはいかないのだ。
俺達は夏休みに領地に来ていた。
領地の方が訓練はしやすい。場所は広いし魔術ぶっ放し放題の荒れた荒野もたくさん存在した。
午前中は目一杯訓練に当てたのだ。そして、午後はできる限りユリアと過ごそうとした。
まあ、基本的にユリアは小さい時から鍛えているから、午前の訓練も週三回の野外訓練も俺の傍にいたし、ずっと一緒に過ごしているのに変わりはなかったが……
しかし、午後の方がユリアの傍にいられない事が多かった。
ピーちゃんとお散歩だとかリーゼとお買い物だとかいろんな予定が入ってくるのだ。
「ユリア、今日はこの後、遠乗りをしよう」
と訓練後に急に誘っても、
「ご免なさい。お兄様。今日はお姉様と領都に出て、買い物の予定が入っているの」
「じゃあ、明日だ」
「明日はニーナと一緒に孤児院に慰問に行くことになっているわ」
「じゃあ次の日は?」
「料理長と一緒ケーキを作ることになっているわ」
こんな風にユリアのスケジュールは一杯なのだ。
俺は面白くなかった。
どんどん顔が険しくなっているのが自分でも判った。
「ヒィィィィ」
なんかフランツが青ざめて俺から離れようとするし、これはフランツ相手に訓練をつけるしか無いか!
フランツは我が公爵家の3兄弟の中でも一番弱いし、鍛える必要はあるだろう。このむしゃくしゃした俺の憂さを晴らすのにも丁度良いし……俺がそうしようと決めかけた時だ。
「ユリア、孤児院の慰問に兄上と一緒に行けばいいんじゃ無いか」
フランツが言い出してくれたのだ。自分の身の危険を感じたのかもしれない。
「えっ、お兄様も来てくれるの?」
ユリアがとても嬉しそうに聞いてきた。
そんなに嬉しそうにされたら断る訳には行かないではないか。
「その次の日にユリアが遠乗りに付いてきてくれたらな」
俺は条件を出してみた。
「うーん、まあ良いわよ。お兄様がお花畑に連れて行ってくれるなら」
まあ、仕方が無い。俺はフランツを鍛え直すのは今度の機会にした。
ユリアと一緒に慰問に行くのも良いだろう。
ガキの相手をするのは面倒だが。
孤児院の慰問は中々大変だった。
俺達が孤児院に行くと俺はたちまち男の子に囲まれて、剣術ごっこの相手をさせられたのだ。
子供達は元気で何回も俺に挑んできたが、俺は適当に剣で受けて相手をしてやったのだ。
いい加減に飽きてきたので、俺の護衛騎士のギルベルトに代わって孤児院の中に入るとユリアが俺が一番最初に読んでやった白馬の王子様の本を片手に皆にからかわれていたのだ。
何を子供にからかわれているんだ?
俺は少しむっとして、そのままユリアを抱き上げたのだ。
「えっ?」
驚いて赤くなるユリアが可愛い。
「ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはこの本の中の騎士様みたいにお姉ちゃんの騎士様なの?」
ませたガキが聞いてきて、俺は理解できた。
俺とユリアの仲を関われていたのか!
ここは俺をアピールできる場面だ。
「そうだよ。お兄ちゃんは昔、この絵本を読んだ時に、このお姉ちゃんの騎士になろうと心に決めたんだ」
「えっ、お兄様、子供達に何を言うのよ」
真っ赤になってユリアが文句を言ってくるがそんなユリアも可愛い!
「だって事実だからな。ユリアにもなってほしいって言われたし」
俺は笑ってユリアに言うと、
「キャーーー」
「凄い」
「熱々だ」
子供達が騒ぎ立ててユリアはますます赤くなっていた。
俺は降りたいというユリアを無視してユリアを抱き上げたまま馬車に連れて帰った。
帰りの馬車の中でもユリアを膝の上から降ろさなかったのだ。
「ちょっと、お兄様、私は降りるから……んぐ」
そう文句を言うユリアにビスケットを口の中に放り込んだのだ。
「もう、お兄様、また食べさせた!」
文句を言ったユリアが俺の手からビスケットを取り上げると俺の口の中に入れてくれたのだ。
俺たちはお互いに食べさせ合ったのだ。
「お兄様。少しだけ眠くなってきた」
少し経つと、今日の訓練で疲れていたのか、ユリアは俺の膝の上で居眠りを始めたのだ。
俺はユリアが落ちないように軽く抱きしめた。
俺の腕の中で眠るユリアはとても可愛かった。
「お兄様……」
ユリアが寝言で俺を呼んでくれた。
俺はその唇にそっと唇を当ててみた。
ユリアの唇はとても甘酸っぱかった。
ばれないようにすぐに離す。
最近ユリアはとても煩くなったのだ。
昔は自分から良く俺の頬とかにキスしてきたのに!
小さい時からずっと俺はこうしてユリアを守ってきた。
他の奴なんかに絶対にユリアを渡さない。
あと5年。絶対にユリアを俺の伴侶にする。
そして、一生涯ユリアは俺が守る。
俺はそう再度誓うとユリアをぎゅっと抱きしめたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
このまま二人で一緒に過ごしたいお兄様視点でした。
このまま帝国が黙っているのか?
続きをご期待下さい。
この後中編を書いた一ヶ月くらいしたら書く予定です
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