心配事は色々出てきましたが、取りあえず、テストに集中しました
あの後、先生らと警備の騎士達が飛んできた。
果ては近衛騎士団長のお父様と王都騎士団長のキンメル侯爵までやってきて、本当に大変だった。
「そもそも貴様の娘がいろいろ余計な事をやるからこんなことになるのだ!」
「何だと、うちの娘が何をしたというのだ?」
「聖女様を聖女様とも思わずに嫉妬に狂って魔術攻撃をしたというではないか」
「何を言っている。その件は王太子殿下にその聖女様とやらが不敬にも抱きついたから、やったと申していたが……」
「王太子殿下もろとも魔術攻撃したその方の娘こそが不敬だろう」
「ふんっ、学園にいる間は生徒は皆平等だ」
「何を言う。それでも限度があるだろうが」
私のことで言い合う、二人に私は少し青くなった。
少し考えなしにやり過ぎたのかもしれない。
「何を言うか。今回の件はそもそも不審者を学園内に入れた貴様の手落ちだろうが。人手が足りないのならば我が騎士団から貸し出そうか」
「何だと。人手は足りているわ!」
二人の言い合いは終わりそうに無かった。
「いい加減にしなさい!」
そこに業を煮やしたマイヤー先生が雷を落としたのだ。
私は唖然とした。この二人を怒鳴りつけるなんてなんて無謀なことをと思ったのに、
「「はい」」
二人は大人しくなったのだ。
ええええ! お父様達よりもマイヤー先生は強いの?
ひょっとしてこの国最強?
私はまさか、お父様達がマイヤー先生の教え子で学園在学中は散々怒られていたのを知らなかったのだ。
マイヤー先生っていくつなんだろう? と思ったのは内緒だ。
「考えたら、ユリアってゲームの中の悪役令嬢ユリアーナよりも過激なのよね」
翌日、休み時間にマリアに指摘されたんだけど、
「えっ、そうなの?」
私は初耳だった。
「ゲームの中の悪役令嬢のユリアーナは婚約者の王太子殿下と仲良くなった聖女にいろんないじめをしていじめ抜いたんだけど、雷撃したっていうのは無いんだけど」
そうマリアに教えてもらって私はやり過ぎていたのを知ったのだ。
そんなつもりは全くなかったんだけど、悪役令嬢ユリアーナよりも酷い事をしていたらしい。
「このままいったらあなた、サマーパーティーで断罪されるかもしれないわよ」
マリアに指摘されて私は青くなった。
「えっ、そうなの? でも、そんなのもっと前に教えてよ」
「教えるも何も、あなた私が言う前に既に攻撃していたじゃない」
マリアに言われて何も言い返せなかった。
「でも、マリア、私クラウスの婚約者じゃ無いわよ」
「うーん、聖女を虐めた悪役令嬢リーゼロッテ様の取り巻き令嬢筆頭ということで一緒に断罪されるんじゃない」
マリアが話してくれたけれど、
「悪役令嬢から格下げされたのね」
「何を言っているのよ!」
私はマリアに呆れられた。
「まあ、今回の件、あなたに手を出そうとするなんて命知らずのことをするのは、あなたの家に反発するキンメル侯爵か、聖女を抱える教会か、それともあなたのお兄様にアプローチしてあなたに邪魔されているツェツィーリア様の帝国よ」
マリアが指折り数えてくれた。
「えっ、私、ツェツィーリア様の邪魔なんてしていないわよ」
私がそう反論したらマリアは頭を抱えていた。
「あなたね。どう見てもあなたのお兄様はあなたにべったりじゃない」
「それは昔から過保護だし、シスコンなのよね」
私がマリアに言い訳したら、更にマリアは呆れた顔をして私を見つめてくれたんだけど。
「そう思っているのはあなただけよ」
「どういう意味よ」
「問題は帝国よね。まあ、でも、あなたのお兄様がいる限り問題は無いと思うんだけど」
私を無視してマリアは考え出した。
「ユリアーナ様。昨日は大丈夫でしたか?」
そこにゲオルクがやってきて尋ねてくれた。
「貴様、俺が聞く前に」
慌ててダミアンが飛んで来たんだけど。
その後ろにボンズとニールも付き従っていた。
私はサラマンダー退治で、この3人の剣を壊してしまったので、ダンジョンで拾っていた剣を適当に渡したのだ。それまでブツブツ文句を言っていた3人だが、その瞬間、
「こ、このような剣をもらっても良いのですか」
「さすがユリアーナ様」
「死ぬまでついて行きます」
あっという間に3人の態度が変わってしまったんだけど……
「ユリアーナ様。このような高価な剣を渡しても良いのですか?」
ゲオルクが聞いてきたが、
「えっ、そんな高価なの?」
私はよく知らなかったのだ。
「下手したら金貨千枚以上の値がつきますが」
ゲオルクの声に私は青くなった。失敗した。金貨千枚って言えば平民が一生涯食べていける値段だ。最悪公爵家を追い出された時の資金に取っておけば良かった。そう後悔したが、もう遅い。
「良いのよ良いのよ。またダンジョンで取ってくれば良いんだから」
私は愛想笑いをした。最悪宝物庫からお父様に言ってもらえば良いだろう。
私は無理矢理納得したのだ。
「私は大丈夫よ。お兄様のお守りもあったし」
「何かあれば命に代えて俺が守りますから」
「何を言う、ユリアーナ様の一の子分は俺だ」
ゲオルクの言葉にダミアンが横から声を出してきた。
「俺達も遠くから身守ります」
ボンズ等は平常運転だ。
まあ、自分の身は自分で守れるし、下手に傍にいられてお兄様のお守りで攻撃されたらまずいんだけど……
「それよりもゲオルク、あなた、ユリアを守っても良いの?」
マリアが変なことを聞いてきた。
「マリア、何を言うんだ。俺はユリアーナ様の家臣だ」
「でも、あなた帝国の人間じゃない」
「ふんっ、ユリアーナ様の銀髪は帝国の高貴な印。俺が守ったとしても問題ない」
「あなた、ツェツィーリア様がユリアを斬れって言ってもそう言えるの?」
更にマリアはとんでもないことを言い出したんだけど……
「はああああ? ツェツィーリア様がそんなこと言われる訳はないだろう。例え言われても、俺はユリアーナ様に忠誠を誓ったのだ。裏切ることはない」
頼もしくもゲオルクは言い切ってくれたんだけど、本当に良いんだろうか?
帝国の人間なのに?
私は心配したけれど、そう言われて悪い気はしなかった。
「なら良いけれど」
疑い深そうにマリアはゲオルクを見た。
「はあ? 騎士は忠誠が全てだ。問題ないぞ」
ゲオルクがマリアを睨み返していた
「まあ、何でもいいわ」
私はそう言うと二人の間に入ったのだ。そして、こちらを見ていたクラスの皆を見回した。
「それよりも皆、テストまであと少しよ。色々あったけれど、テストでB組なんかに負けたら許さないから。絶対に勝つわよ。良いわね」
「「「おおおお!」」」
クラスの皆が叫んでくれた。
そう、前期の終わりのテストまであと少し、色々と心配事が出てきたけれど、取りあえず、私はテストに集中したのだ。
陰謀渦巻く中、テストに集中するユリアでした。
続きは今夜です。