[#85-幼帝の審判]
第九章 最終話。
[#85-幼帝の審判]
目が覚めた。自分の中ではそう思っている。周りからみたら⋯、特に自分の目覚めを待っていた感は無い。アタシが盈虚ユメクイと邂逅を果たしていたなんて思いもしないだろう。
「アタシ、ヘリオローザなんだよね」
─────
「⋯⋯⋯⋯」
─────
シスターズ、教信者を始めとするヘリオローザを取り巻く近辺の子供達。ロウィースを始めとする大陸政府小評議会議員の連中らが、ヘリオローザの発言へ一気に注目した。
アタシの正体を探るような文言を掛けてきた一因でもある、デメテルは分かりやすく驚いた表情をしている。目えでもひん剥くぐらいに子供じみた可愛らしいオドロキリアクション。さっきアタシに陪審員のようなカマを掛けてきたデメテルはそこに居ない。アタシを追い詰めようと仕向けたデメテルはただの普通の子供。
「権天使ヴェフエル様⋯⋯何をそんなご冗談を⋯、、」
「冗談じゃないぞ?ゼスポナちゃん、アタシは嘘はつかない。うーん、ああ、ごめん。つくかもしれない⋯いや、、、つかないかもしれない。。⋯⋯えぇい!時と場合による!今回は嘘じゃない!アタシはヘリオローザだ!」
─────────
「⋯、、、、、、、」
─────────
誰がこの静寂に包み込まれた空気を切り開くのか。
「権天使ヴェフエル様⋯」
「誰?」
まっっっったく知らん、おじじが現れた。随分ともまぁ年の老いたおじじだこと⋯。さっきまで青年を対象に相手していたから、突然の“おじじ”にはコッチも驚いてしまった。
「⋯⋯⋯」
自身の特性をパフォーマンスしているのか、やたらとストロークが長い。この時間を有効的に使って欲しい⋯と強く思ったものだ。だが⋯如何にもおじじが本気なので、アタシはそんなおじじの行動を停止させまい⋯と、このまま眺める事にした。いや⋯“応援”した。
「⋯⋯⋯⋯⋯どうですかな?」
「ああ⋯」
いや、『どうですかな⋯』じゃナシに、自己紹介を先にしてほしいんですけど⋯。アンタの情報をさっさと提示してくんねぇとアンタの位階が分からんから、どこまで踏み込めばいい相手なんかが判断つかねぇんだよ。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯いや⋯何言ってんだよアタシ。“権天使ヴェフエル様”の立場なんて考えなくても良くねぇか?だってもうアタシ言ったじゃん。“ヘリオローザでーす”って言ったんだから、もういいんだよ。
────────
「ヘリオローザ様」
────────
「うっせぇおじじ!今、自分と取り込み中なの!」
「“花”⋯ですかな?」
「⋯⋯花⋯⋯おじじ⋯知ってんのか?アタシの中にあるモノ」
「ええ⋯知っておりますとも⋯。私は、カリウス・エレティアナ。ユレイノルド大陸の公爵をしていました」
「ユレイノルド大陸⋯へぇー」
「憶えていらっしゃいますか?」
「当然だ。あの頃の記憶は記憶保管庫の上位に置いてある。全ての記憶をアーカイブ化している中で、アタシの“上位”は特別な意味を持っているのだ。おじじ、何者?」
「突然、ヘリオローザ様の“花”について触れる始末⋯。特に目立った行動では無いかと思われます。何故なら⋯」
カリウスはヘリオローザの視線を“周り”へ向けるよう、促す。
「どうやら⋯ヘリオローザ様は自分の立場を軽んじていたようですな」
「カリウス、アタシって⋯結構やばい?有名??!」
「聞くまでもないことを⋯」
カリウスが微笑む。あと少しでデッドライン⋯“人を馬鹿にする時に使用する笑み”ではあった。そんなギリギリのラインを見せてくる魂胆⋯。アタシには分からない。
「大陸政府、そして七唇律聖教のシスターズ、教信者の子供達。この方を誰と心得る⋯この方こそ、権天使ヴェフエル様以上の存在で在られる、“薔薇の暴悪”、クィーンズ・ヘリオローザ様だ」
カリウスによるヘリオローザの紹介が終わった途端、ヘリオローザへ向ける態度・態様が変わった。更に分かりやすいのは、片膝を地面につき跪く者も現れた。一人が跪くと、それに呼応し、一人また一人と跪いていく。その流れが絶えることは無かった。
じゃあさぁ⋯最初っから跪くのが普通なんじゃないの?⋯と、無邪気な愚痴を吐こうと思ったが、そういう空気感では無い事が判った。
「ロウィースくん?」
「はい!⋯⋯」
「そんなにビビらなくてもいいんだよ?まぁそうだね、アタシの伝説を知ってるのならそんな態度になってもおかしくないよねーー」
「⋯⋯⋯⋯」
「無視?」
「んはあッ!!いえ!決して無視などするつもりはありません!」
「じゃあアタシの発言には直ぐに反応して。いい?」
「はい、左様でございます⋯」
「カリウスのおじじ」
「如何されましたか?」
「これから何すんの?生贄⋯とかどうたらこうたら言ってたよね?さっき、天根集合知で蚕繭亜空間を作り、超越者の成り損ないたちを投獄してたけど」
「あれはただの保管場所として機能したに過ぎないものです。故にそこまでの時間を置かずに、超越者との会合は出来ますよ」
「あ、そう」
「聞くところによると⋯ヘリオローザ様はセカンドステージチルドレンから執拗な責められを体験していた⋯なにかの資料・散見書を読んで知りましたが⋯」
「⋯⋯⋯」
「失礼しました⋯踏み込みすぎた質問、無礼の極みでございました。以後、注意します」
「さっさとその“祭壇”とやらを始めてくれ」
「もう少々お待ちください」
「アタシの意見が聞けないって言うわけ?」
ヘリオローザから発せられる驚異的な破壊衝動連鎖反応エネルギー。当該エネルギーを読み取れた者はここにはいない。だからこそここにいる大陸政府小評議会議員らは怖気付くしか無い。ここで暴れられては⋯またヘリオローザの暴走事件が起きてしまい、新たなシンギュラリティポイントの作成に加担する事となる。
現代に於いて、技術的特異点兆候を作成するのは危険が伴う。原世界からの世界戦争⋯“シェリアラージュ戦争”によって生まれたシェアワールド現象の同期産物“汚染物質”。この状態でシンギュラリティポイントを作成し、締結を強固なものにするのはより多くの汚染物質を蔓延させることにも繋がる。
ヘリオローザにはシンギュラリティポイントを作成する力がある。小評議会連中はヘリオローザという個体の恐ろしさを身に染みて感じているようだ。それなのにカリウスは、アタシの言葉を飲み込もうとしない。
「何?反逆すんの?」
「⋯待ってください!ヘリオローザ様!落ち着いてください!教皇が来てから祭壇は始まるんです!だから⋯まだ奴隷を引き抜く事は出来ません!出来ないんです!」
「教皇⋯?」
ヘリオローザが天根集合知の一部を発動しかけた中、その『教皇』という言葉を聞いて色々と朧気に思い出された記憶がある。
「教皇ね⋯教皇⋯⋯」
◈
「はいはいはいはいはいはい⋯どうぞどうぞどうぞどうぞ⋯お好きなように座してもらって構わないですよ“薔薇の暴悪様”」
「ん?何この汚ったない声は」
「きったない声とは⋯まったく⋯先人達から伝わっている伝承は合っているようですね〜」
「恥ずかしいの?自分の顔に自信ない系男子?さっさとその姿、見せてごらんなさいよ。だいたいアンタのポジは予想がついたよ」
「それはそれはそれは⋯有難いですねーえ。流石は美しき可憐な花びらの舞姫」
「やぁだぁ〜花びらの舞姫だなぁんて〜。言ってくれるわね〜」
「お前達」
大陸政府小評議会議員らに、突然の声掛けが行われた。ヘリオローザとの会話を切り上げたのがあまりにもイキナリの行動。切り替えが早い⋯と言えば、良く聞こえるようなものだが⋯。
大陸政府小評議会議員らが、声掛けに応じる。
「今回の奴隷を出せい」
「御意に」
蚕繭亜空間を展開した天根集合知所持の七唇律聖教のゼスポナが、奴隷を現実に登臨。
「随分ともまぁ短い保護時間だったなぁ」
「この時間が大事なんですぞ?ヘリオローザ様」
「はぁ?なんでだよおじじ」
「一瞬でも、ゼスポナの持つ天根集合知に浸からせる事で、奴隷達に付着している穢らわしい遺伝子を上書きするのです。万が一、“虐殺王の血”が暴れでもしたら⋯乳蜜祭は中心を断じ得ません」
「べっつにさぁ、この奴隷全員が、虐殺王サリューラス・アルシオンの血を引いてる訳じゃないでしょお?まるでここにいる奴隷全員がアルシオンみたいな言い方じゃない」
「ヘリオローザ様、超越者の血盟なんて⋯所詮はアルシオンの始まりなのですぞよ?」
「全員がアルシオンの血を引いてるって言いたいわけ?」
「左様ですぞ?」
「へぇー、まっ、なんでもいいけど」
カリウスとの会話の最中にゼスポナが蚕繭亜空間を再展開。次々と奴隷がカナン城内に出現する。その出現方法は最初、奴隷らが歩行しながら突入したのとは種類が異なるものだった。
蚕繭亜空間を再展開したゼスポナは、中空に浮かせた状態のまま、奴隷の身体を粒子状物質にし、現実世界に素体を創成していく。突入時、一人一人が蚕繭亜空間へ入れさせるのはあまりにも時間が掛かったからなのか、蚕繭亜空間から出す際は、このような行動を取った。
「ゼスポナ」
「はい!“薔薇の暴悪様”!何か御用でしょうか?」
蚕繭亜空間は一回展開したら、展開者のコントロール制御は必要無い。ゼスポナはヘリオローザに呼び出され、急いで彼女の元に向かった。カリウスがヘリオローザと横並びの状態だ。
「⋯⋯」
ゼスポナが急いでヘリオローザの元にやって来た。ヘリオローザは隣にいるカリウスにジト目を効かせる。
「、、、、、、お邪魔ですかな?」
「遅せぇよ。ゼスポナちゃんとお話があるの。おじじはちょっとアッチに行ってて」
「⋯⋯」
カリウスがゼスポナの方、ヘリオローザの方、両者の姿に目を配らせる。なんとも気味の悪いジジイだ⋯とヘリオローザは思った。
「ゼスポナ、ヘリオローザ様に御無礼のないように」
「はい」
ヘリオローザに対する態度とは明らかに異なったダークな受け答えだった。
「なんでございましょう?ヘリオローザ様」
「教皇殺してもいい?」
ゼスポナに対する殺意では無いのに、ゼスポナは自分に言われているかのように反応してしまう。誰に構わず、人から『殺す』と脅されるのは怖いものだ。戦慄を覚える体験には違いない。更に発言した相手がヘリオローザともなると話は拡大され、より凶悪な
「そ!?それいけません!」
「あのジジイうぜぇんだけど」
「いや!そ、そそれは⋯耐えていただきたい⋯と⋯⋯⋯」
「はぁ⋯⋯今んとこあんただけだからね、こうして権力のある女は。だからこうやって話してるんだけど⋯ダメ?」
「はい⋯教皇様はテクフル四大陸の大陸政府機関を統括するお方。ヘリオローザ様の一択独裁で決定出来るものでは無いのです⋯」
「⋯アッソ。まぁいいけど。ンでぇ?全部出たようじゃない、奴隷さん達」
「では、始めましょうか⋯“幸せになりましょう”」
◈
午前11時──。
ガウフォン大聖堂。
現実に再現された権天使ヴェフエル改めヘリオローザ、教母様と別れ、“知らない教母”と警備艇試験を“受けられなかった”シスターズ、教信者で構成された班と帯同する事になったフラウドレス。自分がこの班に配属されて特筆して不安視するような事は無い。
最も今、心配なのはヘリオローザだ。ヘリオローザはあんな能天気な性格なので、なんの気が立ったのか急に怒りを込み上げ、力を屠る可能性だって有り得る。アスタリスとサンファイアへ与えた暴力のように。
私がこの班で何か戮世界の事について情報を聞き出せるとしたら⋯この教母か⋯。
知らない教母。さほど別に、話していた教母の事について関心や興味がある訳では無い。こう表現してしまうと“知っている教母”となるので、
“知らない教母”としてネーミングしているだけだ。名前も教えてもらえないし⋯。
ヘリオローザの班はいったいどこへ向かったのだろうか。
私は、警備艇試験なるものを“受けられなかったシスターズ、教信者”に話を伺う。
11名のシスターズ、教信者。バラバラになり、集団的な行動を取ろうとしない。団結力は無いように思える。心の中で通じ合える⋯⋯セカンドステージチルドレンの子孫なら考えられる能力だけど⋯どうなんだろう⋯。一人の男の子がこちらをみてきた。私はその一瞬見せた私への関心を逃さない。男の子は直ぐに視線を逸らしてしまったが、私は男の子の方に近づく。
接近する際に、少数名のシスターズ、教信者を横目に見た。全員が私に顔を向けない。唯一、男の子のみが私に顔を向けたんだ。
だから私は男の子とのコンタクトを試みた。男の子は私の接近を感じたのか、その場からほんの少しズレた。
「ん?」
逃げるならもっと本格的に逃げてもいいものだ。しかしこの男の子は、逃げる訳でも無く、ほんの少しだけの距離を置こうとした。これは⋯心理学的に言うなら、『本当は気づいてほしい⋯』『振り向いてほしい』
もっと言うなら⋯『助けてほしい』等と、助言・介助を求めているサインと捉える事が出来る心理行動。
言いたいけど言えない⋯。そんなもどかしい気持ちが彼の心を踊り狂っている。そんな君の力になれるなら、私は⋯力を貸したい。力を貸したいし、私も力を貸してほしい。
男の子に最接近。
男の子は逃げなかった。
「あのさぁ⋯ちょっと話をしたいんだけど⋯いい?」
「⋯⋯⋯⋯」
「君⋯警備艇試験を受けられなかったのって⋯」
「⋯⋯」
フラウドレスの言葉を途切れさすように、男の子⋯少年が、顔を上げ、睨みを利かせてきた。こちらを伺っていた時に見えていた表情とは異なった感情を乗せたもの。
『悲哀』だった。
内心、憤激の感情を外部に表出させたかったのだろう。しかし人間というのは正直な生き物。自分の中で、この感情を出したい⋯と思っても心の制御に反抗することは出来ない。人間の制御最終決定権は『心』にある。
『激高』を選択した少年の『心』による選択は『悲哀』。
『激高』と『悲哀』が入り混じった感情が表情に形作られ、フラウドレスに向けられた。
「ねぇ⋯⋯どうして⋯あなた達は⋯警備艇試験に受けられなかったの?」
「決まってるだろ⋯。用済みなんだよ⋯」
8歳ぐらいの男の子。随分ともまぁ威勢の良い態度でこちらの問いに返答して来た。
「用済み?用済みっていうのは、あなた達は要らない⋯と宣告されたのかな⋯?」
「あんた⋯なんなんだよ。権天使ヴェフエル様と一緒にいたからってあんたに権力なんて無いんだろ?」
「⋯うーん⋯そうなんだね」
「⋯はぁ?何それ⋯⋯僕に構うのはやめてください。嘲笑うつもりならどっかに消えてくださいよ」
「残念だけど、あちらの教母様にここに居ろって言われちゃったからねー。しばらくはこの班に居させてもらうよ?権天使ヴェフエル様にいてほしかった?」
「そりゃそうでしょ。先天使にプリンシパリティを持つヴェフエル様なんだから。何当たり前のこと聞いてんの、“お姉さん”」
「あんた、そんな態度でいいわけ?」
「嘲笑いに来たお姉さんにはこのぐらいの態度がちょうどいいんですよ」
「⋯ふーん、あっそ」
この子、可愛い顔して中々に調子に乗ったガキね。良くもまぁこんな子供が新興宗教なんかに加担出来てるな。ガバガバ⋯と言ったら、簡単に解釈の行くものだけど⋯どうなんだろう⋯。
“不良品”⋯。『用済み』という言葉を聞いてこのような表現が私の思考回路に出現した。今話していて分かったのは、性格に多少の難アリだと言えてしまう人間性だ。
ただしこれは、私の置かれた状況が非常に悪いものだとも言える。
『笑いに来たんでしょ』
“嘲笑い”の言葉を私の思考回路で強制的に変換した。嫌な言葉だからだ。
この子の背景を知らないので本質的な部分に立ち入ることが出来ない。だからどこまで介入出来るのか分からないし、介入出来る部分が⋯この子にとっての祝福だともあまり思えない。
周辺の子供達を見ても、この子同様の表情をしているのが多い。未来になんの希望も持たず、戦力外通告をされた子達。どうして⋯どうして子供達がこんな表情を作れる?
まるで⋯⋯私と同じみたいだ。私が⋯お母さんとお父さんを殺した時と同じような空気感⋯。
同じにしちゃダメだ⋯。私と同じなんて⋯⋯⋯決してこの子達を無下にしてはならない。
「ねぇ、教えてくれない?」
「⋯⋯」
少年は言葉を発さないが、問い掛けに反応はしてくれた。少しだけ私の方を向く。眼球もギョロりと動くのが確認出来た。
「“用済み”⋯これはどういう意味なの?」
「⋯⋯⋯⋯知らないの?」
「⋯⋯ごめん」
「大司祭さんなんでしょ?お姉さん」
「⋯うん⋯ごめんね、大司祭⋯今さっき聖職したばっかりだから、、、」
「いや⋯にしてもでしょ。常識だと思うんだけど」
あえて“知らない”という事実を全面的に押してみる。これで彼が私の事を罵倒するようなシチュエーションに持って行ければ、少年の性を小出しにする事が出来る。人間は腐ってもなにかの沸点に接触さえすれば、面白いほどに正直な生物となる。
「ごめんね。教えてくれない?」
「⋯⋯はぁ⋯⋯あなたってなんなんですか」
「うん?」
「なにか知ってるようで何も知らないそうな人⋯。御使い以外もみんなそう思ってるよ」
「“御使い”ね⋯⋯」
「奴隷だよ」
「⋯え?」
「奴隷。今から御使い達は奴隷になるの」
「奴隷⋯奴隷って昨日の乳蜜祭にあった?」
「そうだよ、その奴隷だよ。お姉さん、奴隷についてどれぐらい知ってるの?」
「⋯知ってるよ。原世界の世界戦争によって戮世界は汚染物質まみれになっちゃって、その汚染物質蔓延を防ぐ為に大陸神に捧げるんでしょ」
「その奴隷候補に御使い達が今なったんだよ。どう?笑えば?今日で御使いの生涯はおしまいさ。虐殺王の遺伝子を持つ人間らと同じ最期を辿る事になった⋯。どう?笑えば。さっさと笑えば?」
「⋯⋯あなたはそれでいいの?」
「⋯はぁ?良いわけ無いでしょ?御使いだって果たしたかった事があるんだ。ここにいる御使い全員にそれはあるよ」
「じゃあ抵抗すればいいじゃない」
「そんな簡単に言わないでくれる?乳蜜祭は大陸政府が絡んでいるだけじゃないんだ。教皇⋯さらにはその上の存在だって、“祭壇”の状況を監視している。そんな抵抗だなんて、言葉でどうにか出来る問題じゃない。神々の関与する聖域だ」
「その聖域に対して⋯反逆を示そうとは思わない?」
私は自分の人生と少年の人生を重ね合わせた。
私と少年の掛け合いはヒートアップし、警備艇試験を受けられなかった子供達=奴隷候補者は教導室中にバラバラになっていたが、徐々に私と少年に興味を持ち始める。私のこの言葉が放たれた際には、“奴隷候補者”全員がこちらに近づいていた。
「自分の人生、終わらせようとしてんの?」
近づいてきた子達に向けて、開放的な発生になるフラウドレス。
「バタイユ大司祭」
「うん?」
少年では無く、近づいてきた一人の少女が私の仮称名を言ってきた。
「なに?」
私は優しく、少女の呼び掛けに応じる。
「御使いは嫌です」
「あなたは⋯このまま、人生終わらせるの⋯嫌?」
「嫌です…⋯御使いは⋯もっと⋯いきたい⋯いきたいです…、、」
うずくまる少女。その少女の姿を見て、周辺にいる子供達の表情が変わる。それぞれが同じ面持ち⋯即ち、私への不安感を覚えていた表情は変貌。少女が切り開いた感情は、全員の心の深淵に眠っていた“本性”と呼ぶに相応しいものだ。
「御使い⋯⋯とても怖い⋯こわい⋯こわいです⋯バタイユ大司祭は⋯⋯これを⋯⋯回避する策をお持ちなんでしょうか⋯?」
「⋯⋯分からない。ごめんね、だけど⋯可能性は捨てちゃダメだ」
「可能性なんて⋯簡単に言わないでくれよ」
新たな声が聞こえた。私の前に姿を現してくれた第3の刺客。
「⋯教母さん」
「⋯?」
「さっきっから、私たちのこの状況を傍観してるだけ。あなたはこの子達を奴隷候補者にするつもりですか?」
「私の権限じゃないわ。私は⋯上の指示に従うのみ。上がそうお望みなのなら⋯そうする。しなければそうしない⋯。それだけの話よ。バタイユ大司祭、あなたが踏み込む界面ではないのよ」
先程から私と少年に続き、少女の切望を教導室の遠くから傍観していた教母。ヘリオローザと共に会話を果たした教母とは、明らかに放つオーラが違っていた。ダークなオーラエネルギーを放つのは同様なのだが、“白色”の遺伝子螺旋を感じる。ヘリオローザがついていった教母様には、そのような白色の遺伝子螺旋は感じられなかった。
この違いは⋯なんなんだろうか⋯。
感じられなかった⋯。いや⋯⋯あったんだ⋯遺伝子螺旋は教母様にもあったんだ。しかしそれは視覚的には感じ取れなかったもの⋯つまりは⋯⋯同色⋯?
“ダークマターエネルギー”の同色は⋯“黒色”。ヘリオローザの班の教母様は“黒の遺伝子螺旋”。
こちらの教母は、“白の遺伝子螺旋”。
黒と白⋯。
「教母さん、この子達は⋯これから奴隷候補者として、乳蜜祭に連行するんですか?」
「そうです。変えることは断じて不可能です。シスターズ、教信者のシスターズランカー・マイントスの面々は奴隷候補者という位置づけで監視の対象にありました。驚きが最小限に抑えられているのは、これまでの感情抑制の賜物ですね」
「外道だな」
「ん?外道?失礼ですが、バタイユ大司祭は戮世界の住人でおられよう方ですよね?戮世界の現状を知った上でよくそのような言葉を吐けますね?これからは⋯この子供たちは大陸神への捧げとなるのです。大層な役目を担ってくれる訳ですよ。私も全力でバックアップ・フォローに転じるつもりです」
「この子達の将来が失われようとも⋯それがあんたの果たすべき事だと言うの?」
「⋯話を聞いておられましたか?これは⋯戮世界の未来を救済する為に、果たさなければならないセクションなんです。私ごときの意志などでは説明が付けられない狂気に満ちたレジスタンス」
「戮世界の未来よりも、子供達の未来が瞬殺される方が社会的にもダメージは大きいように思うけど?」
「それはあなたが戮世界を軽んじている。まるで原世界から来たかのような発言ですね」
この女とは気が合わないようだ。黒色の遺伝子螺旋を持つ教母様と違うのは、私を原世界の住人と認識出来ていないところ。これが演技の可能性も低くはない。可能性として有り得る。ただ⋯発言時の表情を見ても、そこまでの歪な変動性を感じないのだ。虚偽を働く人間に見られる言動として、弱冠の誤差というのが生じてしまう。私にはそれが分かる。ルケニアの特性だと判断してくれれば簡単に済むので、そう解釈してもらって構わない。
「いいですよ。バタイユ大司祭」
私が話し掛けた少年がそう言う。彼の方に顔を向けると、彼は私の方に視線を向けて“眼差し”とも呼べる程の確固たる信念を送っていた。
「あなたは⋯」
「“ビーレンビルト”⋯。御使いの名前は…ビーレンビルトと言います。御使いの生涯はこれまでにしてもらって問題はありません。御使いの命が戮世界の未来に永劫の灯火となる援助になるのであれば、御使いはどんな事だってやってみせます」
「⋯あなた…⋯⋯」
ビーレンビルトは決心したかのように高らかにこう述べた。本当は、そんなこと思ってもいないのに…。自身の未来が確実なまでに消された事を心に落とし込んだ。
私にはビーレンビルトの言葉が深く深く沁みる。
「御使いも構いません」
「あなた…」
『怖い怖い…』と恐怖心を開放していた少女が、ビーレンビルトの次に自分達に置かれた立場を受け入れる事を宣言した。
「“アベルトーネ”、それが御使いの名です、バタイユ大司祭。御使いもこうして自分の命がここからの戮世界生命の原種になるのなら、喜んで命を捧げます」
「アベルトーネ…あなた…さっきと言ってる事が違うじゃない…。どうしたのよ…⋯」
「⋯⋯⋯」
少女は、私からの問い掛けに応じようとしない。
教母の介入によって、人格が変わったかのように、先程とは異なった種類の文言が放たれていく。気持ちの悪い現象だ。
だって…教母は教導室内にずっと居たからだ。私とビーレンビルト、私とアベルトーネの会話だって聞こえていたはず。2人もそれが分かってて、私に打ち明けていた…はず。それがなんだ…なんなんだこの状況は…。
教母がこうして本格的に話に参加すると、シスターズ、教信者の子供達は洗脳されたかのように自分の意見を曲げる。
これが本来の意見だとはとても思えない。
「もうそろそろお時間です、では行きましょうか」
「…何処に行くの?」
「…カナンへ」
◈
午前12時──。
蚕繭亜空間から奴隷を再出現させたゼスポナ。奴隷は再び列を成し、自分達の役目を果たそうと純真無垢のままに行動を開始する。
「カリウス」
「教皇」
カリウスが“教皇”と呼ばれる者の近くへ行く。その際に瞬間転移を使用した事を記録しておく。
「外はどのような状況なんだい?」
「外界は依然としてパレード感に内包された状況です。教皇が一番に望んでいたものが形成されているかと思われます」
「そっかぁ…へぇー…、まぁ…それでいいんだけどさぁーあ…あの人………なに?」
「……アタシ?」
アタシの方へ指を指してきた…“ガキ”。これが本当に教皇…なのか?アタシが居た時代の戮世界ではそのような肩書きを持つ者はいなかった。教皇という位置づけに近い他名称の“カ神々”に連なる存在ならいた。教皇…こんなにものガキ…シスターズ、教信者の子供達と一緒ぐらいの年齢じゃないか。カリウスと並んで話している姿が、より印象的に感じる。ただのジジイと孫の戯れじゃねぇか。
「あの方は…」
「ヘリオローザ!」
「……」
アタシは…だろうな…と思った。教皇という大層な肩書きをつけられているのなら、アタシの身元がバレても当然だ。しかしこれでアタシはこのガキの存在を“只者では無い者”として認識するようになる。
教皇の“ヘリオローザ単体名称呼び捨て”にヒヤリ…と凍える風が吹くかの如く場が冷め切る。ロウィース、ゼスポナ、ティリウス、カリウスを始めとする大陸政府小評議会。ヘリオローザが帯同した教母様、シスターズ、教信者。それぞれが改めて“教皇”の存在の大きさを思い知った。
「だれ?キミ」
「ヘリオローザ様…!」
「あん?なに?」
ロウィース、ゼスポナ、ティリウスが、アタシの眼前に現れ、“正そうとする”。
「ヘリオローザ様、教皇です。そのような言葉の使いはおやめ下さい」
「ロウィース、黙って?」
「教皇は七唇律聖教の最有権者です。いくらヘリオローザ様とあろうお方でも、無礼・反逆の罪で“杭”の刑に処される可能性があります」
「ゼスポナちゃん、なんでアタシが“虐殺王”と同じ末路を辿ることになるわけ?てか、アタシを磔刑に処刑出来るとでも思ってんの?」
ティリウスはアタシの所に迫って来ただけ。何も言わずに、ただただこれ以上の言葉数を減らすよう促して来ただけだった。
そんなものがアタシに効くわけない。
「随分ともまぁ知れたガキだなぁ」
「……知れたガキ?“ソーゴ”のこと?」
「“ソーゴ”?なんだそれ、、、」
「ソーゴ!僕の名前!僕は“ソディウス・ド・ゴメインド”!七唇律聖教の教皇だよ!お姉ちゃん、ヘリオローザなんでしょーーー!?」
「………そうだけど??」
「うぇーーーーい!!!いぇーーーいいぇーーーーい!!!やったぁ!やったぁ!!うれしい!うれしいいいい!!!ソーゴ会えたあああ!やったぁやったぁ!やったっやったっやったっやったっやったっやったっ
……」
永遠に続きそうな程に、“教皇”の歓喜の舞が行われる。その様子に怯えている大陸政府と教母、シスターズ、教信者。そして列を成す奴隷改め、超越者の血盟。
自身の事を“ソーゴ”と称しているガキ少年への強烈な畏怖を感じずにはいられない。このガキ少年が只者では無いのは確実だが、実際目の前で行われている内容を直視すると、アタシの思考が馬鹿げた妄想なのでは無いか…と思ってしまう。
「うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!うれしいっ!…」
「ソーゴくーん?」
「ソディウス・ド・ゴメインドだ!薔薇のナントカにそんな名前で言われたくない!」
アタシが『ソーゴくーん?』と言った瞬間に、一斉に向けられた大陸政府からの視線。それがどの類のものであるかは瞬時に判断出来たし、“教皇少年”の訂正からソーゴくんの言力がよく理解出来た。
「あー!いけないんだよーー!!そんなこと言っちゃあー!!ソーゴイチバンいっちばんに強いんだからね!薔薇ナンチャラよりもぜっええええったいにハンパなく強いんだから!」
「ヘリオローザ様!」
「うっさいなぁ蚕ちゃん。今から乳蜜祭なんでしょ?あんたはどんな権限を持ってんのさ」
「せつめえーせつめぇーめどくぜーーえ。なんでソーゴがオバサンのめいれぇーなんて聞かなきゃいけないのーーお
」
「おば、さん……」
このガキ……礼儀ってもんを知らねぇみたいだな。周りが放置してるんだ。いや…放置……その言葉よりももっと適した言葉がある…。“手に負えない”…これが適切だとアタシは思った。
単純だ。周りの取り巻きである大陸政府の顔色を見れば直ぐに分かる。教皇ソディウス・ド・ゴメインドに恐れを成している。何かをされたのか…何かをされかけた事があるのか…“強いおじじ”のイメージが形成されていたカリウスでさえも、教皇少年を前にした時には跪いて挨拶・会話を果たしていた。
「教皇、今回の奴隷はこのような内容となっております。いかがでしょうか?」
カリウスが教皇と話をする。それは公開的なものとなっており、まるでこちらにもあえて聞こえさせているかのようだった。
「薔薇のおネエちゃーん!ちょっと待っててね!ソーゴいま、いそがしいからぁー!」
「あーはいはいそうみたいだねー」
軽く流すアタシ。そんなアタシと教皇の会話が終わり、ゼスポナ、ロウィース、ティリウス他大陸政府関係者が、アタシの元に駆け寄る。駆け寄った理由に関しては先述したものとまっっっったく同じ概要なので全省略で完結させる事とする。
並べられた奴隷。カナン城内まで…蚕繭亜空間に取り込まれるまでは“一列”を形成していたが、今回の再出現以降…3列に分けられて列を作った。
「へえーーーーーーーーー!」
「お気持ち…いかがでございますかな?」
「弱いね…」
「…それは…大変誠に失礼しました…。ですが、どうでしょうか?あちらの方に在している男と、こちらの方に在している女、更にはこちらの方…あちらの方…」
『こちら』『あちら』『こちら』『あちら』…この列にどこどこ…とかもっと具体的に言えないものか?アタシ達に向けた言葉じゃないしな…ガキ向けには『こちら』『あちら』が良いんだろう…。どうも聞き心地の良くない言葉がさっきから掛けられている。アタシはこういう空間、嫌だな。場所に合わせた表現方法の変更、アタシには出来ない…不可能な行為だ。
アタシはアタシ。変えられない。どの場所においても、どんな凄惨な状況に置かれても…。
「こっち、ソーゴの左手があるほお」
つまりは…『右列』という事になる。
「ソーゴ、アイツきらーい」
教皇少年が右列の中央部分に位置している男を指し示し、嫌悪感を顕にした。
男へ向けられた嫌悪感の解放によって、独断と偏見の裁定が下される。これによって合計26名もの男女が指されることなる。
「今回は⋯この程度の者で宜しいですかな?」
「ちょっと待ってねえー、、、まだ居ないかなぁあああ、いるかなあああ…、、ばらのおねえちゃーん」
「ん?」
急にアタシにフォーカスを当ててきた。教皇ソーゴくんのことを注視していたのに、まったくその気配を感じさせていない。あまりにも突然過ぎた意思方向転換。だがアタシはそれに驚く素振りを表面化せずに内側で落とし込んだ。簡単にお前みたいなガキに蹂躙しない…。そんな意志の現れが思念となりアタシを抱擁したのだ。
「ばらのお姉ちゃんはどう思う?もっとさぁ、いけ好かないヤツがいてもいいんじゃないかなぁって思ったりするんじゃなーいの?」
「…お前……」
「んぐぶぶずぶぶぶず…お姉ちゃんにちょびっとイジワルしたいなぁっと思ってね!イロイロおー考えて見たんだけどー、どう?!今の…!?さぃっっこうに面白くなかった?!どう?!みんな!?てぇてぇだよね!てぇてぇだよてぇてぇ!」
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「………………………」
─────
教皇ソディウス・ド・ゴメインド、薔薇の暴悪ヘリオローザ。両社を支持する大陸政府小評議会からしてみれば、当該状況はかなりの劣悪性の高い事案になってしまった…と考えられるものだ。
教皇が普通に、薔薇の暴悪ヘリオローザの過去に触れた…。ヘリオローザが、“アルシオンに苦しめられた時代”がある事を知っている。大陸政府は決してその史実に触れることは無かったが、教皇は簡単にその領域へ足を踏み入れる。
教皇の行き過ぎた言動に大陸政府小評議会は反応出来ずに硬直してしまう。
「フン、みんななんなの…?ソーゴおもしろゴト言ったもん!おもしろゴト!言ったもん!『ユメクイ』にも負けないぐらいのゆーもああふれること言ったもん!ゆーもああったもん!あったもーーーおおおおおおおーーん?!!!!!!」
「…教皇…ヘリオローザ様がどのような過去を歩んできた事か…その歴史を知っているのなら、ヘリオローザ様に失礼な行動だとは思いませんか?」
「うーん?なに?キミ?」
大陸政府の伯爵であるセウェリアーナ家のサンバスカが、教皇に対して苦言を呈する。サンバスカからの苦言…大陸政府は当行為がどれだけの覚悟のいるものかを知っている。それを知らないのはヘリオローザのみ。
大陸政府、教母、シスターズ、教信者…更には今まで沈黙を貫き続けていた奴隷達でさえ、サンバスカの行動に反応を大きく示した。
「キミ…セウェリアーナ家だよね?」
「ヘリオローザ様の過去を知った上であの言葉を掛けられるのであれば、教皇の名に恥じた行動だと言えてしまいます。今すぐに七唇律の元に赦免をすべき事象かと」
「サンバスカ…! 」
「教皇に対してなんて口をお利きに!?」
大陸政府の子爵らがサンバスカの言動に待ったをかける。
その静止を振り払い、以降も教皇に対しての苦言を続行しかけた刹那…
「セウェリアーナ家のみんなとはあんまり上手くいってなかったよね。わかるよ、、、ソーゴ、、分かるんだよ。おじちゃんの言いたいことも分かるんだよねー。ソーゴはパパマンとママンと違うから、そんな横暴じゃないから、、、でもねぇー…さっきのはいただけないかなあああ、ソーゴ、怒ったのかな…!コレ!おこっちゃったのかな、、、、カリウスー、ソーゴいま、このおじちゃんのこところそーとおもってるんだけど、いいかなぁ?」
「…教皇のお示しのままに…」
「わかった!じゃあ、キミ、おわりいい」
教皇ソディウス・ド・ゴメインドが、力を発揮する。バチッと決めていた赤黒の修道服。教皇の腹部と後背から、教母同様の鴉素エネルギー、蛾素エネルギーが同時に放出され、互いの干渉点を空中で高速的に模索する。サンバスカは逃げられずにいる。教皇が腹部、後背、そしてその2つよりも前に放出されていた鴉素エネルギーと蛾素エネルギーの融合体『ウプサラ』がサンバスカを拘束。目視不可能のウプサラだ。
教母は鴉素エネルギー、蛾素エネルギーを現実に放出し、融合シークエンスを行った事でウプサラを生み出していた。しかし、教皇ソディウス・ド・ゴメインドはシークエンスを一切挟まずに、ゼロで体現を遂げている。この差…というのは、『教皇』たる所以なのだろう。
鴉素と蛾素を放出する能力があったとしても、ウプサラを体内から放出する能力が無ければ、融合シークエンスを挟む形となる。だが大してそれに時間を割いていない気がする…。融合シークエンスはそこまでの時間のロスに繋がらない気さえするが、これに関しては“パフォーマンス面”も含めたものなのだろう。
教皇ソディウス・ド・ゴメインドには、初っ端からウプサラを出現させることが出来る。
これが大陸政府と教皇の権力以外の差の一つなのだ。
教皇が鴉素エネルギー、蛾素エネルギーを使用し、それぞれ一つずつの集合体を形成。その形成速度は凄まじい早さ。
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「『ヤタガラス』『レイソ』、トネリコ展開」
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『ヤタガラス』と呼んだ黒の粒子。
『レイソ』と呼んだ白の粒子。
2つが“異形の生命体”の形を作る。
「……あ、あ、、“キューンハイト”に…」
「“チルペガロール”だ……」
大陸政府、教母、シスターズ&教信者の子供達。ここから三者三様の表情が形成されていった。この光景に怯む者、慄く者、初見の者…。三者の感情を統合すると『驚愕』の表現へと結実する。
とにかくみんなが驚きを隠せない状況となった。
アタシは…見た事があった。憶えている。よく、憶えている。『キューンハイト』、『チルペガロール』という2つの名前に聞き覚えは無い。ヤタガラス、レイソ…この2つは回想が可能な程に、鮮明に思い出された記憶が掘り起こされた。
大陸政府のみんなが驚いてばっかりで全く仕事をしようとしないので、アタシが記録する事にしよう。
◈
“ニュートリノ・ヤタガラス”を搭載したキューンハイト。“ニュートリノ・レイソ”を搭載したチルペガロール。搭載という体裁を取るにはあまりにもな情報の少なくさが露呈しているが、アタシが感じ取った視覚情報と過去の記憶フォルダを遡行する事で埋めていくつもりである。
それにより、鴉素エネルギーはニュートリノ・ヤタガラスへ。蛾素エネルギーはニュートリノ・レイソへ上方修正。ウプサラシリーズの『異形生命体』を再現した各ニュートリノは、鴉素と蛾素の黒白特性をふんだんに使用した特殊エネルギーを含有。それが外部に表出され、教皇の命令のままに“異形生命体が誕生。
ニュートリノ・ヤタガラス“キューンハイト”は、黒の翼を広げる人型生命体。黒翼以外も全身は黒で塗り潰されており、顔と思われる部分すらも特定は難しい。“人型”と表記出来るのは、単純に腕、足が人間同様に“四肢”の構造を持っているから。戦闘能力は…
ニュートリノ・レイソ“チルペガロール”は、なんともその可愛らしい名前からして優しそうなイメージを想起させる事がねらいなのかもしれない。見た目はこちらも…人型で、真反対の白翼を広げている。構造がキューンハイトとまったくの同等なので説明は省略とする。
「キューンハイト、チルペガロール。ひさびさぁ?ソーゴはけっこう久しぶりだよねー!あのね、、あいつ、やっつけてほしいの。いまぁウプサラがガッチしとおさえてくれてるから、やっつけてほしいの!おねがいできる??」
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「さだめ」
「さだめ」
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サンバスカ・セウェリアーナの身動きがまったく取れなくなってから、幾数秒…。周辺では彼の生命活動を諦めたような不穏な雰囲気に包まれる。
『サンバスカは死ぬ』
教皇への無礼な態度は七唇律への反逆と見なされる。サンバスカの行動に関して、大陸政府はそれほどの驚きを見せていない。何故か…?…
サンバスカではない…他のセウェリアーナ家の者と教皇にはサイドストーリーがある。現代に生きるサンバスカは、かつての教皇と生まれた軋轢を未だに引きずっていた。それが今回、乳蜜祭2日目という晴れの日で爆発したのだ。しかもその相手というのが、自分よりも一回り半は年下。
少年クラスの教皇は戮世界テクフルの歴史においても前例が無い。それも相まってサンバスカは教皇への反逆を開始。サンバスカからしてみれば、これは勝ち戦では無い事は目に見えていた。
教皇の血を受け継ぐ者に力でやっても勝てるはずが無い。だけど…このまま乳蜜祭2日目での“奴隷祭贄人式”を迎えては時代が繰り返されるだけ…。自分が行動を起こさなければ、また次の時代もソディウス・ド・ゴメインドの政権力が振るわれる…。
サンバスカ・セウェリアーナはその輪廻に一矢報いたかったのだ。少しのズレでいい。今までの乳蜜祭の流れと違う行動を起こしさせすれば、後はなんでもいい。
“バグ”レベルで良いんだ。
いつもと違う行動を起こすだけでいい。
そう
そうそれでいい。
そうなればいい。
◈
結果としてサンバスカ・セウェリアーナは、キューンハイトとチルペガロールによって、この世から隔絶された世界…『多次元空間』の塵となっていった。キューンハイトとチルペガロールが、サンバスカを取り巻いた瞬間に出来事は始終した。接触する様子も一切確認出来ずに。速すぎて見えなかった…という訳でも無く、ただただ2体のティーガーデンが接近し、サンバスカとの間合いを詰めただけで彼はこの世から姿を消失されてしまう。周辺は彼の消失に言葉を失くす。だが皆の表情を見ているとこれが初めての出来事では無いことが明らかだった。
──────────
『噂には聞いたことがあったけど…まさか本当に…』
『目の前で人が消えた…』
『コレで何回目なんだ…人が消える所を見るの…』
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それぞれの思いがぽっかり空白となった心を埋め尽くす。贄人式に挑む際、心は非常に不必要な身体のパーツとなる。人間本能を捨て、戮世界の未来をより正しき世界にするため…罪の無い人間を捨て払う。
虐殺王の血を受け継ぐアトリビュートを奴隷にすることに対し、半ば否定的な意見を持つ者もいる。ほとんどは賛成派が多い中で実際にこうした人間がいるのも事実。
そういう人間は乳蜜祭の奴隷祭壇贄人式の時、心は不要なパーツとなる。
余計な感情と自分に押し込まれる無駄な配慮。削ぐ必要性のあるものは排除しておかなければならない。
だから…教皇は事前にカナン城内に入った全ての人間から、心の尊厳の壁を排除する。鴉素エネルギー、蛾素エネルギーが上方修正された“ニュートリノバージョン”。
鴉素のヤタガラス『キューンハイト』。
蛾素のレイソ『チルペガロール』。
更に教皇は鴉素と蛾素の統合体、ウプサラを発現。
「みんなぁ、もうそろそろさぁ、ソーゴの世話になるのやめてよねぇ」
「申し訳ございません。未だにアトリビュートを奴隷にする事に反対派の人間がいるなんて⋯」
ロウィースがそう言う。だが、ここにいる大陸政府の人間はそのような顔色を示さない。表に出さないのだ。
分かっているから。アトリビュートを支持する⋯守ろうとしている事なんて世に出したらきっと、有り得ない⋯とか色々言われて最悪の場合、処刑される可能性だってある。
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『七唇律への反逆』
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この台詞はかなり多用されていくだろう。
「まぁいいよ!ソーゴおつよいから!すっごくすっごくつよいからぁー。いっぱいやってあげるよ!みんなの心がソーゴにあつまるの。すっごくうれしいから、もっともっとほしいの!ねぇねぇ!バラのお姉ちゃん!」
「なんだーい?ソーゴくん」
だんだんソーゴくんが可愛く見えて来た。まぁ容姿的にはただの小一のガキなんで、普通にしていれば可愛く見えるのは当たり前なのだが。こうやって喋りの立つガキがワーワーギャーギャーガーガーゲーゲーと、話されているのは性格的にもムカついてくる。
こういうガキを相手にしていると過去を思い出してしまうからだ。特定の人物と会う度にその現象は発動される。過去にアタシが出会ってきた人物と、現在目の前にしている人物が酷似していた場合、心が蝕まれるような感覚に包まれる。1000年以上生きているけど、これだけは克服できないんだよな。まぁ耐えればいいだけ⋯か。
「おねえちゃんはソーゴのちからいらなあーい?」
「うーん!だいじょーぶだよー!気にしなくていいからー!ありがとーーお!」
ソーゴくんのように声高らかに応えた。能天気だと思われてもしょうがないような口調。単純にふざけた言い方だったが、アタシにこんな感じで咎めてくる者は現れない。
権天使の器であるアタシに突っ込んでくる奴は現れないみたいだ。
「バラのおねえちゃん強いねぇー!⋯⋯⋯カリウス、あとはおねがい」
「⋯お待ちを」
教皇が消えた。黒と白のベールを上下に展開させ、その場から姿を消した。その瞬間、大陸政府から緊張の糸が切れる。
安堵。嘆息。
同一の感情はここにいる全員に表れたもの。
「サンバスカ、どこに行ったの?」
アタシは純真無垢な思いを胸にロウィースへ問い掛ける。
「⋯その者は、、幽閉されました。教皇のウプサラシリーズ⋯やはりとんでもない力を秘めています⋯。あ、ヘリオローザ⋯で、よろしかった⋯ですよね」
「あ、ああ⋯お好きなように」
自分で自分の存在を大っぴらにしていた事を忘れていた。これ⋯フラウドレスにバレたらおかんむりだよなぁ⋯。ああ⋯嫌だなぁ⋯⋯フラウドレス⋯割と怖いからなぁ⋯いつだったかな⋯あれは⋯マーチチャイルドにいた時⋯、フラウドレスの気が触れるような出来事が起きたんだ。
確か、何かしらの作品に触れていたんだ。マーチチャイルド内のどこかにあった本を、マインドベースで読んでいて⋯、気に食わないオチだったらめっちゃくちゃにキレ散らかしていた。
それが表に出ることがなかったから、特にマーチチャイルド施設員に問題視されることは無かった。
「ヘリオローザ様⋯怪訝なお顔になられていますけど、なにか思い出されましたか?」
「いや⋯べ、別に⋯アタシの事は気にしなくていいから。教皇が居なくなって、随分と気が楽になってるみたいだけど⋯。こっからが本題みたいなもんでしょ?」
「その通りです。今から乳蜜祭が本格的な始まりを迎えます。奴隷がこうして集まったのは久々ですよ」
「うん?“こうして”って変な言い方だね」
「さっき、見たでしょう?教皇の気に入らない奴隷が居ると、祭壇を待たずして教皇の手によって『処分』が下されるのですよ。今回は少なかった方だったので、安堵しました。これ以上、教皇の判断で生贄を少なくされるのは流石に困りますからね」
「じゃあ言やぁいいじゃない。あんなガキなんだから」
「ヘリオローザ様⋯見てませんでしたか?」
ゼスポナが迫る。
「ゼスポナちゃん、若いんだからもっとパァーっと弾けなさいよ!」
とか、言ってるけど今アタシが偽っている年齢は高校生ぐらい。ゼスポナちゃんは20歳前半。実年齢で計算してほしくない⋯とは思うな。
1000歳⋯なんて馬鹿げた話だけど、実際そうだしなぁ。
若いが一番。ピチピチのままでいれる。
「ハジケ⋯えぇ?ちょっと⋯ヘリオローザ様⋯なにか⋯どうしたんですか?」
「はぁ?何よ、アタシ⋯場違い?ここにいるの⋯場違いなんですか?」
「そういう訳じゃないですけど⋯ヘリオローザ様は、もっと戮世界の内情を知った上で発言を成された方がいいかと思われます」
なんともまぁ説教臭い台詞を投げられたものだ。
「ゼスポナちゃんどうしたのよ。なんでアタシにそんな口調出来るわけ?さっきと対応が激変してるんだけど?」
「あ、いや⋯すみません⋯申し訳ありません。“薔薇の暴悪”にそのような言葉をかけてしまいました⋯」
案外、直ぐに自我を取り戻してくれた。
いや⋯自我を取り戻したのではなく、偽りの自分を再生させただけなのかもしれない。
「アタシさぁ、楽しみなんだけど。今からぁさ、セカンドいっぱい死ぬんでしょ?アタシ⋯セカンドには恨みしか無いから嬉しいんだよね。たとえ子孫であっても、セカンドの血が流れている事には変わりない。アタシは楽しみにしてるよ。この祭りがどんな終局を迎えるのか⋯。意外とそうでも無い人間がカナン城の中にはいるって事が信じられない。今ここでセカンドの奴隷制度を反対する人間は、素直に手を挙げなさい。手を挙げて、アタシの目の前に来なさい。その腐った性根を改革差し上げましょう。さぁ、来なさい。正直に申せば、それでいい。それがいい。絶対的に⋯それがいい」
ヘリオローザの言葉に戦慄を覚える大陸政府のメンバー。
23秒が経つ。
その時、挙手を果たす者が現れた。その者はヘリオローザから少し離れた場所にいた。そのため、ヘリオローザは挙手した者の近くに転移。それは“速度的”とは表現出来ない、空間転移に等しい行動だった。ヘリオローザの当該行動に、身震いをするものが続出する。中でも最もその震えを体現させていたのは挙手を果たした、この女と言えよう。
「素直だね。どうして奴隷制度に反対なの?」
「⋯⋯私は⋯⋯超越者だって生きてる⋯から⋯、、、だから私は生贄なんて反対なんです⋯⋯⋯虐殺の時代⋯“王朝帝政時代”が築かれていたのなんて500年近く前なんですよ。そんな⋯今の時代の人達には⋯まったく関係ないじゃないですか⋯だから⋯私は⋯⋯助けたい、んです⋯はい⋯たすけたい⋯だけど、それは叶う事じゃない⋯わかってます⋯だけどこれは私だけじゃないんです。私以外にも反対派の人間はいます。私だけだと思わないでください。ヘリオローザ様が過去、戮世界テクフルで何を行われたのか⋯重々承知の上で⋯⋯⋯⋯」
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「黙れ。黙ってくれよ⋯。黙ってくれないと⋯。こういう時は⋯やっぱり、花の力に限るなぁ。ありがとうね、フラウドレス」
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ヘリオローザは女の腹に穴を開ける。それも複数箇所の穴を腹部に。ヘリオローザの身体からは複数の棘が触手のように発生し、うねるように女の腹部に最速接近。女は回避行動を取れずにそのまままともに食らってしまう。
何本もの触手が貫通し、貫通先の後背からは大量の血液が噴出。突き刺した側である腹部からの流出は確認されない。服に染み渡る血液のみで、本格的な出血は貫通側の後背からであった。
女は一瞬にして意識を失い、触手の意のままに倒れ掛けてしまう。しかしヘリオローザが発現させた触手によって地面に倒れ伏せる事は無かった。触手が女を貫通している限りは、このまま斜めの姿勢が継続される。
「ヘリオローザ様!なんてことを⋯⋯⋯」
ロウィースの言葉はヘリオローザに失望する直前の音色を醸していた。だがロウィースは自分の言葉を恥じる事になる。
『これだ⋯これが⋯ヘリオローザなんだ⋯。これは⋯⋯知っているヘリオローザ⋯薔薇の暴悪だ。ヘリオローザとして、普通の行動だ。ヘリオローザがヘリオローザとして動いて何が悪いと言うんだ。ヘリオローザが行動する事がヘリオローザの行動の正解なのだ。それ今回の行動なんてヘリオローザたる所以の一つ。ヘリオローザがカナンに居ることを証明しているだけじゃないか。挙手をしてしまった“メルドレア”が、、、、悪いんだ。自分に正直になり過ぎだ。人には嘘をついていい場面がある。メルドレアは選択を誤った。そう、、誤った⋯』
「うーん?なんか言った?」
「いえ⋯⋯あ、、あ⋯⋯⋯」
「うーん??ああ、ごめんね、せっかくのお城がドビュッシャーって深紅になっちゃった。色んなところに飛び散ってる訳じゃないしさ⋯。ほ、ほら!みてよみんな!ここだけだよ?!ここだけ!この女ァの背中の後ろにしか出てないよ!ポタポタ落ちてないよ」
触手がようやくメルドレアから抜かれる。支えを失ったメルドレアの死骸は、地面に落ちる。その音が鈍くドスン⋯と響き渡った。
「⋯なんか⋯この女の子⋯太ってた?普通、ここまでドスン⋯って響くものかな⋯。あ、そうだよ、みんなが驚いちゃってたからだよ!他の音が無かったから、この音が目立っちゃったんだよ!」
大陸政府はヘリオローザに畏怖している。ウプサラの魔女でも体内にいなければ、あんな猟奇的なパフォーマンスは通常の人間には不可能だ。
しかし大陸政府が今、目の前にしているのは“薔薇の暴悪・ヘリオローザ”。人間の常識とは掛け離れた世界をビジョンする存在。ヘリオローザを理解をする事なんて人間には到底不可能だし、ヘリオローザの究明すらも存命に深く関係していく。
「みんな、ごめんね。そんな目で見ないで。アタシの事、知ってるんでしょ?」
ヘリオローザは大陸政府を一つのポイントに集結させる。奴隷以外のカナン城に存在する人間を全て、自身の“支配下”に置いた。
「なんでそんな驚くの?なんでそこまで怖がってるの?おかしいくない?おかしいよね?知ってたらさぁ、免疫あってもいいはずだよね?そうやってさ、初めてじゃないものを初めてみたいに自分を表現するの、良くないと思うよ。アタシは、こんなんだけど、ちゃんと生きてる人間だもん。『ニンゲン』!ニンゲンだもん!ヘリオローザは、ニンゲンだもん。みんなと同じニンゲンだから、セカンドステージチルドレンが赦せない。奴隷、今すぐに、全部消すよ。アタシにはそれが出来る」
「待ってください!」
「ロウィース。キミは良い子だよね。凄く良い子。アタシの男になってほしい。アタシの全部を上げたいくらいなんだあ」
「、、、あ、ああ⋯それは、、有難き御言葉なのですが⋯奴隷を全部消す⋯というのは、“生贄の対象物のまま”との意味ですよね⋯?」
「ちがうよ。別にアタシは戮世界にもうなんの未練も無いから。戮世界を救おうとも思ってない」
「ヘリオローザ様⋯それは⋯⋯」
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「戮世界、滅んじゃえばいいよ」
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先程のヘリオローザからは考えられない言葉が次々と投げられる。それは冒頭に近いものだった。戮世界を全否定するかのような文言に、大陸政府は恐慄く。そしてこれが新たなる時代の号砲となった事を、この時は誰も知らない。
◈
「───ヘリオローザ!」
「⋯⋯はぁ、もう何?“母体様”?」
虧沙吏歓楼です。随分と間が空いてしまいました。色々と忙しい日々と、中々に険しいシナリオの継ぎ接ぎで大きくタイムロスを生みました。これは大変にもうシワけない⋯。もっと早くやりたかったです。
Lil'in of raison d'êtreのオチが決まりました。オチのある最終章。これも大体は決まりました。とはいってもまだまだシナリオは続きます。多分⋯三年後⋯とかかな完結。もっとかな⋯どうだろ。
生命線なので、これからも執筆続けていきます。
虧沙吏歓楼




