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Lil'in of raison d'être/リルイン・オブ・レゾンデートル  作者: 沙原吏凜
第五章 色情狂の醜美/Chapter.5“Karagül”
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[Chapter.4:introduction“Patron”]

アンリミング・マギール

ファーブス・マッキシュ

ダラノヴァ・アイゲリトス

セリュール・アイツリー


後悔と覚悟と、復讐と契約の物語。

[Chapter.4:introduction“Patron”]


【何物にも代えがたい大切な対象同士が紡ぐ、交錯の物語】


私は、愛を知らなかった。

私は、捨てられた…子供。

その現実を直視出来ずにいた。

親から捨てられていた事に気づかなった。いや、もしや、気づいていたのかもしれない。私自身どうやって噛み砕けばいいのか分からないだけだったのかも。

待ってる。

ずっと待ってたの。

『ちょっと待っててね、直ぐ迎えに来るから』

もうなんて言ったのか、断片的にしか覚えてないけど、これじみた事を言っていたのは事実。

だから、待ってた。

施設で待ってたんだよ?

他の子供は皆、親から正式に捨てられた子供。

私はこの子達とは違う。

捨てられた訳では無い。

捨てられたんじゃない。

まだ、愛を受けている。

他の子供より、圧倒的な差がある。

私はこの子達と同じじゃない。


来ない。

2人は来なかった。

何がきっかけなのか…どういったのがトリガーになったのか、これも覚えていないけど、2人がもう二度と私の前に現れない事を悟った。

いや、もしかしたらもうとっくの前に、そう思っていたんだよ。

ただ私がその現実から逃げたかっただけ。

周りと違うんだぞ…って言い聞かせたかっただけ。

嫌だったな。

そんときの私の中身。

嫌いだな。

何で直視出来なかったんだろう。

逃げても、絶対にいつかは訪れるのに。

絶対にいつかは、相対するのに。

逃げても、なんもいいことなんてないのに。

逃げたら、逃げたで、十字架を背負うだけなのに。

原世界の神様は、十字架で磔刑に処されて最後に脇腹に槍を刺されたという。

その後に、復活したっていうのは、凄いかっこいいなぁって思う。

私は、槍を刺された。

なのに、それを間違った類で捉えていた。

相手はそんなつもりない。

現実だ…って、私を救済する出来事だったんだよ。

私が次の人生を歩むきっかけを作ってくれたんだよ。

私は…振り払っちゃった。

私が、私を思ってやった事なのにね。

何だかどうしようも無く、どうしようもない。

私ってこれからどうしたらいいんだろう。

親が来るから。

2人が来るから。

施設の人とは全く仲良くなってない。

直ぐここから立ち去れると思ってたから。

こんなところに長く居続けるとは思ってなかったから。

何回も何回も同じようなコトバを書き連ねていく。

そういう表現の仕方でしか、他人を、自己を欺けない。

憐れで、脆弱で、儚く、切ない、瞬間瞬間を切り取るだけしか能のない。

血液という螺旋の循環。

私はこれからどうしたらいいのか。

そう、心の中で、最悪なフェーズを考え出した時、手を差し伸べてくれる人がいた。

ファーブス・マッキシュ。

私の担任の教育者として、就いたこの人。

最初は今まで担任してきた男と同様の対応を演じて来た。

そんな中でも、微量の助言を求めていたのも事実。

強がって、誤魔化して、都合の悪い状況を自らが演出していた。

そんな事をしても、なんの意味もないのに。

ただただ、意味の無い時間が流れれば、この世界が止まる。

私の意思で、この不完全な世界の歯車が止まる。

不平等を全員に分け与える事が出来る。

私は、自分の選択に迷いなんて無かったから、継続させていた。

他者を、信じない…という、簡単な現実からの逃避行動を。

でも、ファーブス先生は違った。

そう、違ったの。

私を見つけてくれた。

私を第一の優先事項として掲げてくれた。

私の生きがいになった。

他の男と決定的に違うのは、偽っていないところ。

教育者。この施設で働く理由は、単純だが経済面を担保する理由。これが、基盤としてワークライフは構築されている。そこを否定するつもりは毛頭無い。

だけど、今までの男は、私の事なんて微塵にも思ってない。

眼中にもない。

金のために、私と接していた。

それが普通なんだろうけど、私は嫌だった。

自分が壁を作っていたからなのかな。

私を見てほしかったのかな。

ファーブス先生。

あなたは私に、希望を与えてくれた。

光。

眩しくも無く、視力を奪う訳では無いけど、何だか光明なな世界が広がったんだ。

私はあなたが必要。

ね、一緒に行こうよ。

向こう側へ。

なのに…、、、なんで…そんな事を言うの…?



しかし、まぁ…大変な子だな…。今までどんな大人が相手をして来たんだ…。でも、この状況を体験しているのは、恐らく…いや、俺だけなんだろうな。

俺が担任としてやってきて、彼女…アンリミング・マギールは変わったという。

まさか、そこまでオープンな性格だとは、思いもていなかったらしい。俺にはよく分からなかった。ただ、少しばかり頑張った部分もあったかな。最初は聞き耳も立てず、無情にも流れる時間を見るしか無かった。デジタル時計なのに、針の音が聞こえて来そうだ。

なんだろうな…。どんなきっかけだったのか、詳しく覚えていないんだが…、、、彼女が俺に興味を持ち始めてくれたんだ。俺はいつも通りに接していたと思っていたが、子供枯らしてみれば、色々と問題…壁をクリアしていたんだってさ。子供の相手というのは本当に難しいものだよな。何が正解で、何が不正解なのか…教育者として永遠のテーマだよ。

アンリミングは、俺に心を開いてくれた。

それからというもの、彼女との時間はかけがえのないものになっていった。

『私、セカンドステージチルドレンなんだ』

この言葉には、多少なりとも驚きはしたが、実際そうなんじゃないかって、思っていた節があった。こんなの後出しジャンケンみたいになってるけど、授業中の才覚面を間近で見ていたら、只者じゃない雰囲気はバンバン出していたからね。普通の子供では無いというのは判っていた。

そんな子と、一緒にいれる。そんな子の成長を一番、誰よりも近い存在で、眺められる…。教育者として、こんなに嬉しい事はあるのか。

俺は、アンリミング・マギールと不思議な関係を構築した。

施設での長い勤続を積み重ねていく中で、俺はこの施設…もっと拡大だ。この世界の歪な思考終着地点を見つけた。

そもそもこの2年間、勤続して来た理由は彼女の存在と共に、とある理由がある。

それは、仲間から聞いたテクフル政府の闇だ。

《後天性セカンドステージチルドレン》。

子供の意見を聞かず、強制的にセカンドステージチルドレンへと促進化させる下衆なの企画。これは、軍事転用に利用するSSC遺伝子を採血し、赤い鎖プロジェクトのシークエンスを次の展開へ進ませる際に使用するのが主。

俺はこれを聞き、真っ先に思ったのは…

──────────

元々、セカンドステージチルドレンであるアンリミングはどうなってしまうのか…。

──────────

それが脳を高速で巡った。

2年間、アンリミングはSSC隔離施設ニゼロアルカナへ送還される事は無かった。だが、いつその日が訪れるのか判らない。

身を震わせながら、俺はその日がやって来ない事を願っていた。祈願していただけでは無い。この2年の歳月で、俺は出来る限りの知識を植え付ける事に成功した。赤い鎖プロジェクトの概要を聞いた元の場所である、港湾都市・ディーゼリングスカイノットとフィルムレスストレージだ。

そして、2年間。判明した事で俺はフィルムレスストレージ脱出作戦を企てた。

9月10日。この日がニゼロアルカナに送還される後天性セカンドステージチルドレンを選別する日。そして、送還が開始される日でもある。後天性SSCは全員が対象では無い。ある一定の基準値をクリアしていると、ワクチン投与の対象者となる。

送還前日である9日を、脱出作戦決行日に指定。

アンリミングの子のことを話すのは…9月の8日。

もっと早くに伝えるべきだったとは思っていない。


「アンリミング、君だけで、ここを離れるんだ…」

その言葉を聞いた彼女は、しばらく身を固め、凍えるような視線を向けて来た。その刹那な嫌悪から発せられる言葉を、事前に聞いておきたくない。だから俺は、この直前に話す事にした。これが適切な言動なのかどうか。

判っても意味の無い事だ。



【抵抗が奏す…その果てに、幻夢が見せる開闢の物語】


律歴4078年8月27日──。


逃避夢、ドリームランドからのシンクロテキストを受信した。集団行動を避けていた私だったが、今回のメッセージ内容を確認し、意を決した。

私…ダラノヴァ・アイゲリトスは、二人の男、セリュール・アイツリーとパルティア・スクローチと共にメッセージに書かれていた座標『16.04RP222265』へ。

この場所はラティナパルルガ大陸の港湾都市であるディーゼリングスカイノットの座標番号だった。

シンクロテキストが今まで以上に過剰な文書だった理由、それはこの港湾都市を見た時に把握出来た。ここには、私達セカンドステージチルドレンの力を制する程の危険な軍事兵器が備わっている。

私達と同じ遺伝子信号だ。

これを破壊しろ…

そう言ってるんだね。

だけど…分からないよ。

どこにあるのかが、判らない。

ドリームランドも、港湾都市のどこにあるかまでは突き止めきれなかったようだ。

とにかくここにある。

そんな事を言い続けている。

私らがこれを見つければいいのね…。

見つける…。そんな容易い言動で人間の地に足を踏み入れられる訳も無く、私達は攻撃を開始した。所構わず、攻撃をしていいと思ったが、ターゲットを肉眼で確認したい。

こんな制圧物、どうやって企画製造まで着手出来たのか。

だから、港湾都市を吹っ飛ばす瞬間的な爆散攻撃は避けた。

私達は浮遊能力で、上空からの攻撃と捜索を行った。

だが、どこにも目標物が無い。

このまま浮遊能力を有したままだと、SSC遺伝子エネルギーのオーバーヒートで落下、行動を制限された私達は、袋のネズミ…集中砲火で殺される。

早く、目標物を見つけなくては…。

「僕、リサーチャータイプなんだ!」

セカンドステージチルドレンにはそれぞれが特出した能力を持っている。様々な系統が存在し、場を掻き回したり、コントロールしたり、唯一無二のスキルを駆使したり…そんなこの現状で、一番に必要なリサーチャータイプがパルティアには備わっていた。だが、この特殊スキルを使用してしまうと遺伝子エネルギーポイントが大幅に減り、浮遊能力が奪われてしまう。

浮遊能力が失われる代わりに、パルティアにリサーチャー機能を使ってもらい、目標物を特定してもらう。

私はこの選択が、間違っていると嘆いた。

パルティアが真っ逆さまに落下するよりも、自力で見つけた方が良い。誰も失わずに、ここから退避する。

セカンドステージチルドレンなら、簡単な行動だ。

私の意見、セリュールは否定した。

今すぐにリサーチャーを発動させ、目標物への対処を高速で済ませればいい。セリュールにも判っていた。あと、私達が動ける範囲の行動が、激減している事を。

だから早く済ませたい。

なのに、何故この女は時間を食わせる議題を持ち込んでくるのか。

私に怒りをぶちまいた。

パルティアは、私とセリュールのヒートアップする言い合いを傍観す立場だった。

「僕は…どうすればいいの…?」

自分で解決に漕ぎ着けない、他人任せな性格。

そんな3人の元に、一つの弾道弾が直撃した。

それは単なるミサイル攻撃では無かった。

身体が…壊れる…、、、制御が…、、、おかしい…。

そう、、遺伝子攻撃だ。私達が目標としていた遺伝子情報を書き加えた特殊な弾道弾。

それが私達へ向けられた。

その被害を最も受けたのは、直撃元のパルティア。

私達はそのままどうする事も出来ず、落下。真っ逆さまに落下。辛うじて意識を取り戻した私は、瀕死状態のセリュールを落下したまま救出。パルティアは…、、、もう助かりそうにない惨い姿だった。

私とセリュールは、こんな目に遭わせた人間への復讐を誓う。そして、私たちを導いた逃避夢。ドリームランドの住人には一つや二つ、文句を言っておきたい。

私達はドリームランドの正体を探る旅に出る事を決意。

二つの心を溶け合わせながら…。

第五章 始動。

兎に角…

よろしくお願いいたします。

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