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Lil'in of raison d'être/リルイン・オブ・レゾンデートル  作者: 沙原吏凜
第四章 殉教のパトロネージュ/Chapter.4“Patron”
69/82

[#62-カタルシスアンビション]

第四章 最終話。

[#62-カタルシスアンビション]


律歴4078年8月28日 午前5時24分──。

フィルムレスストレージ──。


道中、またも沈黙が続いた。

道路交通ナビゲーションが速報で伝える港湾都市へのSSC襲撃。

『どうして沈黙が続くの?』という問いには最適な理由だろう。だがそれだけが原因では無い。

重い空気は襲撃前から訪れていた。

こんな時間でも反対車線からは大型トラック、バンといった運搬車が走っている。

特段、車の影響で音には困らなかったので、会話が無くてもそれぞれが思い思いに過ごした。

そして、フィルムレスストレージに帰還した。

「さ、話してもらおうか。ベヘリット、なんかずっと変だよ?軍港ら辺から。大丈夫なのか?」

トロイズが単刀直入に思った事をそのまま言い放つ。

その問い詰めに、ベヘリットは驚きもせず険しい表情を作り、次のように答えた。

「ラズマークから色々聞いたんだよ」

「色々って…何を聞いたんだ?」

「物資の内容だ」

「なぁんだ、そんな事かよ。施設グレードアップ資材だろ?」

一気にこの話からの興味が引くトロイズ。

「違うんだ。その内容物に問題がある」

「…?どういう事?」

「施設グレードアップ資材…その中身は、対セカンドステージチルドレン拘束兵器だ」

沈黙。2人は目線を合わせ、ベヘリットが放った言葉の意味を理解しようとする。だが、2人のみの思考では真意まで紐解く事が出来ない。続きを聞かなくては始まらないようだ。

「2人は…ニゼロアルカナを知っているな?」

「勿論だよ、強化人間隔離施設だよな」

テクフルで生きる人間としてニゼロアルカナの存在を知っているのは常識だ。その後に続き、トロイズも頷いた。

「そうだ、ニゼロアルカナはセカンドステージチルドレンを捕縛し、人体実験を行っている場所だ。SSCへの対抗策として現在は新たな特殊兵器も開発されている。恐らくさっき行われた襲撃でも使用されているだろう。あの爆発は多分、遺伝子攻撃がセカンドに直撃したんだ。きっとかなりのダメージを負わせられたと思う」

「て、いうことは港湾都市に現れたヤツらは死んだんだな?!」

悪魔に打ち勝った事を誇りに思うトロイズ。

「あの爆発から察するにそう思えるな」

「その特殊兵器って…まさかさっき言ってた拘束兵器と関係があるのか…?」

「そうなんだ…大いに関係がある。何せ、この拘束兵器は、戦闘兵器に使用しているSSC遺伝子細胞粒子が含有されているんだ」

「なんで…そんなモンがフィルムレスストレージに運搬されるんだよ…」

「フィルムレスストレージの収容者を、ニゼロアルカナに送るためだ…」

「は?」「…え、、」

「ごめん、詳しくは…“フィルムレスストレージの収容者から選ばれた者をニゼロアルカナへ送る際に使う”ものだ」

言い換えても意味が判らない。

子供達を…ニゼロアルカナに送る…?

「はぁ?ちょ、ちょっと待てよ…ニゼロアルカナだよな?ニゼロアルカナはセカンドステージチルドレン専用の施設のはずだ。フィルムレスストレージにいるのは普通の人間だぞ?なんでそんなとことこの施設が繋がってるみたいな感じになってんだよ」

「俺は今、ラズマークから聞かされたままの通り、話を進めるつもりだ。今日の物資調達、一見いつも通りに進行していたが、裏では様々な人間が俺達の調達のために動いていたんだ。そして、俺らは軍港にやってきた。言われるがままに。全部仕組まれていたとは露知らずにな」

「仕組まれていた…?」

「フィルムレスストレージに届ける拘束兵器、その目的は、フィルムレスストレージ収容者の自由を奪う事だ」

「それが意味わかんないんだよ。何で施設の子供に、SSCの遺伝子を制御する力を加えなきゃいけないんだよ」

「これから、セカンドステージチルドレンにするからだよ」

「はぁ?」

「するから…ってなんなの…?」

「その言葉の通りだよ。フィルムレスストレージに収容されてる子供を選定し、SSCへ強制進化させる。その際に暴走を未然に防ぐために使用されるのが今回、俺らが運搬した拘束兵器だ」

「ちょっと待ってよ…意味わかんない…強制的に…?子供をセカンドにするって…どういう事…」

「ホントだよ…どういう事なの…??」

2人は困惑する。このリアクションは当たり前だ。セカンドステージチルドレンを恐れているのに、わざわざ何故セカンドにさせるんだ…と。

「俺にも判らねぇよ…俺は聞いた事を言ってるだけだよ…こんな事実を知ってしまったら、もうどうしたらいいのか…周りに言うべき事なのか…もうどう処理したらいいのかわかんねぇんだよ…」

「ベヘリット、判ったよ。ごめんな。ありがとう、言ってくれて」

ファーブスは彼の苦労を思い知った。確かにこれは由々しき問題だ。こんな事許されていい訳が無い。

「収容…子供が、強制的に…身勝手すぎるな」

「子供の意見も無く、無慈悲に行われるらしい。SSCへの強制進化はSSC遺伝子を使用した特殊ワクチンによって引き起こされる」

「選定っていうのは…?」

「フィルムレスストレージでの課題を通して数値化されたパーソナルデータを考慮し、SSCへ最も近い数値をたたき出す…或いは希望的観測性がある…と見なされた者が、それに該当する。誰でも彼でもをSSC化させるというわけじゃない。SSC化させるには基準値がある。それを満たしていれば、施設の人間は容赦無く子供へ強制ワクチンを注射。《後天性セカンドステージチルドレン》の完成だ」

「時々、居なくなるのは…」

「間違いないな…強制ワクチンを注射するに相応しいと、施設、ニゼロアルカナが承諾したんだろう。その子達が、どうなったのかは知る由もないが…」

「そんな…」

愕然とした…。子供が…自分の意図しないにも関わらず、大人の身勝手な行動で、セカンドにさせられている…。俺はそれにずっと気づかずに、“親と再会出来た”…そんな感動じみた結果だと思っていた。蓋を開けてみればなんなんだよ…。

「今、セカンドステージチルドレンへの対抗策として、赤い鎖プロジェクトが最終段階に入ったらしい。最早、佳境とも言うべくシークエンスだ。だから一刻も早く完成させたい。そのためにはもっともっと多くの遺伝子情報が必要なんだ。だからSSCを多く捕まる必要性があった。だがそれには多くの労力と時間が必要視される。一回の戦闘にだって遺伝子攻撃は多分に使用される。エネルギーは有限だ。無限じゃない。頭を悩ませた結果、人間が編み出したのが子供のSSC化。通常の人間を拘束するなんて事は造作もない。それが子供だったら尚更だ。しかも、セカンドの素体は人間で言う所の7歳から20歳と青年まで。子供をSSC化させる以外に他の手段が無かった。人類は兵器の拡張を急いでいる。それが理由だ」

「でも、、何でフィルムレスストレージの、施設の子供が狙われてるんだ?」

「確かに…でも街中で“SSC化したい子供”なんている訳無いしな…」

「そうだよ、普通、親からしてみれば我が子をSSCになんてしたくは無いはずだ。でも中にはいるけどね。親の興味本位とか、無情な惨劇を生むことを知らずに惰性で実行したり…恐ろしい親も存在する。だけど、過半数を占めるのは家族であり続ける事を望むのが多い。じゃあどうするか。親からの愛を受けていない子供を狙うのが最適解なんだよ。だから児童養護施設の子供を狙うんだ。施設の子供は基本的には親から見捨てられた、虐待を受け生涯残り続ける裂傷を帯びた、精神面に於いて障害が発生していたり、何かと不純物を纏う子供が集っている」

「そんな子達だから、SSC化させてもいいだろ…そういう見解なんだな?」

ファーブスは怒りを混じらせながら、ベヘリットを問い質す。

「そうだとよ…。愛を知らない子供を追い込むのは簡単だ。現に俺らが相手をしているのは全く会話をしようとしない置物みたいな子供だ。唯一、お前の相手をしている子供は違うがな…」

「アンリミングの事か…」

「ああそうだ。彼女はお前に心を開いているんだろ?会話も遜色無く続けられている。感性が外界の子供と同じだ。障害が無い。それとは打って変わって、アンリミング以外の子供はどうだろうか。未来への希望が全く見られない。そんな人間をずっと生かしておく意味なんてあるのか?俺は正直に言うと、無駄だと思っている。毎回毎回授業をやってきてロクな授業をした事が無い。今までも何人かを経験してきたが、全てが意気消沈している植物人間のような子供ばかりだった。俺はやりがいを全然感じずに今までやってきた。俺は政府と剣戟軍の考えに賛成だよ。生きるに値しない人間は処理した方が絶対に良い。そしてどうせ処理するんだったら人間の役に立ってもらう。最後の最後は我々の希望となって勝利を収めるための副産物として機能してもらう。この回答の何が間違ってると思うんだ?」

「いや…間違っ…」

「間違ってないな」

ファーブスの否定掻き消すように、トロイズは同意した。 「え…おい、、、トロイズ…おかしいだろ?お前全部聞いたのか!?」

「聞いたから述べたまでだ。俺もベヘリットと同じだよ。いつも相手をしていて腹が立っていた。こちらから近づいても全く心を通わせようとしない。ずっと、ずっと、永遠に無理され続けて地獄みたいな空気のまま時間を過ごし、授業を聞いてくれていたらいいのに、俺の事を怖がってなのか、その片鱗すら見せない…。大人に対して恐怖を抱いているのは理解してるつもりだ。だけど…だけど…だけど。俺は…近づこうとしているんだよ…なんで少しでも、顔を向けてくれないんだよ。なんで…視線を少し…ほんの少し上げてくれるだけでいいのに。お前が否定するのも無理は無い。楽しそうだからな。そんな子供は特別だ。恵まれてるよな」

「子供が…セカンドステージチルドレンさせられて、本人の意思はどうなるんだよ」

「言葉を選ばずに言うと、知ったこっちゃない…だな」

「ふざけるな!!」

ベヘリットの本性が露わになった狂気的な視線と口調。我慢の限界に達したファーブスは胸ぐらを掴み、建物へ押し飛ばす。

「お前ら…何言ってんだよ…ニゼロアルカナ?に送るだって…?あそこはセカンドの隔離施設だろうが…そんな所に子供の意見も無しに放り込むなんて、頭おかしいんじゃねぇのか…」

「その意見は至極真っ当だよ。でもね、今世界は混迷の真っ只中だ。このカオスを後何年間引き継いでいけばいいんだ?正攻法が見出されたんだ」

「こんなものは正攻法なんかじゃない!」

「正攻法だよ。これしか方法が無い。愛を受けてる子供を親から引き離すより、愛を受けず廃人と化した人間を扱った方が良い。有効的な利用の最高到達点だ」

「そんな…お前…ラズマークから…あの兵士から短時間で…本当に信じ切ってるつもりか…?」

「時間が解決してくれたよ。言うまでに時間がかかった。自分の中でもどう2人に話を展開したらいいのか、不安を覚えていた。だけど、こうして話すと気持ち悪いぐらいに気持ちが乗っているんだ。ていう事は、俺は政府の意見に同意しているという事になる。俺はテクフルの未来のために、子供を犠牲にして構わないと思った。これが聞いた話と、俺の見解だ」

「俺も、その意見には肯定できる。お前はアンリミングと仲良くなり過ぎだ。所詮は施設の子供と教育者の関係性。子供の将来なんか、端っから興味無いしな」

「お前…うそだろ…」

絶句した。2人は子供を見捨てようとしている。未来ある子供の命を棒に振った。

「お前は少し、頭を冷やせ」

「頭を冷やすのはお前らの方だろうが!」

壁に押し当てていたベヘリットの身体を今一度、壁へ打ち付ける。ベヘリットはもう俺の知ってる男じゃない。こんな非道な考えを受け入れる男だとは思えない。もっと他に吹き込まれた事があるんじゃないか。そう、、、思いたかった。思いたかった…。壁に押し当てていた力が自然に弱まる。弱体化した力がベヘリットを解放させる。

「分かったか?もういいだろ…」

「なぁ、ファーブス。ファーブスの想いは分かる。伝わってるよ。ベヘリットにも、俺にも。だけどこれが現実なんだよ。人類がセカンドに勝つには…これしか方法が無いんだよ。ベヘリットの言ってる事が正しい。正しいよ。ファーブス…」

「嫌だ…嫌だ…そんな事を受け入れられない…だって…そうなったら…順当に…アンリミングもニゼロアルカナに送られる…そうなんの嫌だ…!!絶対に嫌だ…!」

「ファーブス…」

「うるせぇ!!!俺は絶対に彼女を守る。絶対にニゼロアルカナへは送らせない」

「ファーブス、お前には無理だ。相手は大陸政府だ。傘下には剣戟軍がいる。こんなアルバイト風情の男一人でどうする事も出来やしない。抵抗なんて不可能だ」

「でも、でも、、、絶対に、、守りたいんだよ…かけがえのない存在なんだ。アンリミングが、今の俺の全てだ。彼女の存在を消す訳にはいかない。彼女には明るい、普通の女の子の人生を送ってほしいんだよ。無邪気に笑って、いっぱい食べて、時に泣いて、怒って哀しんで…。普遍的な、どこにでもいる普通の、本当に、普通の女の子になってほしい。俺はそう思ってる。彼女にはこの先の世界を歩む必要性がある。この世界は、アンリミング・マギールで成り立つぞ。あの子は特別だ。俺が保証する」

「あの子で…成り立つ…?」

ああ、そうだ。この世界は彼女で成り立つ。才覚だけが彼女の取り柄じゃない。言葉じゃ伝え切れない魅力。

世界は広い。そして危なっかしい。

危険に満ちた世界だけど、彼女には多角的で多方向を見据えた千里眼を持っている。きっと、上手くやっていく。今の俺なんかよりずっと幸せな環境を作れる。なんなら、家庭も築けるはずだ。

絵に書いたような、ファンタジーのような…美しい日々が訪れる。大変な事もあるだろうけど、それが人生。

その時は、俺に頼ればいい。俺はいつだってお前の味方だ。

どんな苦境に立たされようとも、近くには必ず俺がいる。困った時はまた2人で、一緒に、話そう。

悔しかったり、妬んだり、恨んだり、憎んだり、嫌になったり、投げ出したい時が来たら、俺に話してくれ。全てを受け止める。それで君の運命が変われるなら。

俺を使ってくれ。

俺をいつまでも使ってくれ。

君の声を届けてくれ。

君を死なせない。

ニゼロアルカナには、行かせない。

止めるから。

守るから。

守るから。

守るから。

君は、セカンドステージチルドレン。

“情報”じゃない。

人類に齎す“恩恵”なんかでも無い。

君は君だ。

君の情報は、自分のために使ってくれ。

誰であろうと、アンリミング・マギールの価値は漏らさせない。

こうして俺は、フィルムレスストレージにて働く目的が、自分のためでは無く、アンリミングを守るという守護監査にシフトした。

いつ、アンリミングが送られるか判らない。

不安と動揺と病的な脆さ。

守りたい…。

そう願うだけなら簡単な事だ。

だがいざ、彼女が送られる世界線を想像すると…、気が気じゃなくなる。

アンリミング・マギール。

君は、この世界とどう向き合っていくんだ。

預けていいのか?

俺の想いを、汲んでくれるか?

守る事は、君が良い方向に転がると信じているからだ。

アンリミング、君は何を望んでいるんだ?



律歴4080年8月30日──。


「センセー、あのさぁ」

「ん?どうした、今日の国語も相変わらず完璧だったぞ」

「そんなの言われなくても判ってる…もー」

なにかしたか…?不安が募る募る…。

「ねぇ、、、何回言えばいいのかなぁあああ…アアア!!」

「おい、どうした?早く言ってくれ、そんなんじゃ何も伝わんないぞ?」

「はぁ…、、、芸能界…」

「ダメだ」

「なんでダメなの!!」

「ダメなものはダメだ」

「なンっでよ!なりたいの!なりたいの!」

「ダメったらダメだ」

「どうして??」

「お前は芸能界に向いてないからだ」

「なんでよ…!こんなに可愛いのに」

「可愛くても芸能界に向いてる向いてないがあるの。アンリミングは可愛いけど後者の存在」

「なんで向いてないって決めつけるのよ。まだ入った事ないんですケドー?」

「俺がわかるの」

「わかりません」

「わかりますー」

「わかりませーーんー、決めつけないでくれる?オッサン!」

「アンリミング…俺はまだ…22歳だぞ!!」

「うわぁー!未成年を追いかけ回す変態男の再来だ!!もうこれで何回目ー??」

「こ、この、、、クソガキがぁ!待てー!!」

あれから2年が経過した。彼女は今の所この状態。スクスクと成長し、穏やかな施設生活を送っている。良かった。

この2年で俺は功績が讃えられ、指導者へと役職を変更する事になった。讃えられた…と言っても長期勤続を行っているだけ。休む事も無く、普通にいつも通り仕事に向かっているだけで、こんな栄誉を獲得出来るんだから、楽なもんだ。指導者となった事で、少しばかりかフィルムレスストレージについて知る事が可能になった。

ニゼロアルカナとの蜜月は、留まることを知らない。

この2年間でまた、多くの子供がいなくなっている。

赤い鎖プロジェクトという対超越者戦闘兵器。

この概要をもっと深く知りたいがために、俺は自ら名乗り出て物資調達の仕事にも就いている。これが合法的に政府関係機関に近づく方法だからだ。

ディーゼリングスカイノット。何度訪れたことか…。3桁は軽く超えている。親しい友人も出来たぐらいに数を重ねた。しかし、そんなお人好しな性格を他人に植え付けるために出向いてる訳じゃない。俺は政府が内密にしている、セカンドステージチルドレンへの対抗策を暴こうと画策している所だ。

こんな一人の男の意見に耳を貸してくれるのかどうか。それは発表した内容を確認すれば、時間の問題だ。

2年前。ベヘリットが暴露したニゼロアルカナとフィルムレスストレージの蜜月。そして、フィルムレスストレージの子供を使った軍事転用兵器への実験計画。

ベヘリットの口から出た言葉が虚実で無い事をこの2年間で知った。毎日フィルムレスストレージにいるだけではこれを、事実だとは断定出来ずにいた。物資調達の回を重ねるにつれ、軍港からの物資運搬応募要項が増していった。

これは偶然だと思っている。ラズマークの姿を何回も見ている。ベヘリット、トロイズと一緒に行った初見の時から、彼も俺と同様に役職が変更になったりと、以前の働きぶりと比較するとそういった背景が窺える。

港湾都市とフィルムレスストレージ。両者には、俺の行動に協力してくれる支援者がいる。

色々と支援者を作るにも多大な時間をかけてしまった。特に港湾都市からの情報は今後の俺の動きに、良い意味でも悪い意味でも影響を与える。赤い鎖プロジェクトの概要を教えてくれた支援者は、剣戟軍兵士の《サーベント》。度重なる施設グレードアップ資材の運搬で仲良くなり、その時に他の運搬物について話を引き出す事に成功した。

────────────

「ここで、SSCへの対抗策を作っているのは本当か?」

「何故、そんな事を知っている?」

「いいから、答えるんだ」

「ああ、そうだ。ここでは赤い鎖プロジェクトに該当する特殊兵器を開発・強化している」

「なぁ、取引をしないか?」

「取引?」

「そうだ、取引だ。金を渡す。その代わりにここで取り扱っている全ての特殊兵器について教えろ」

「…はぁ?一体なんでそんな事を知りたいんだ」

「興味があるんだよ。この世界の行く末がな。人間が絶対に勝つとは限らないだろ?」

「人類が必ず勝つさ」

「、、、、、そうか。頼む、教えてくれ」

「フン、まぁいいですよ。金は要りません。教えますよ。俺が知り得る限りの軍港の情報を」

「助かる。でも、何故そう簡単に教える?」

「俺も、あんたの言う世界の行く末が気になるから。一人でも多くの人物に現実を直視してほしくてね」

「判った。教えてくれ」

「何から知りたいんだ…?」

──────────────────

フィルムレスストレージの支援者は、トロイズだ。

2年前。トロイズはベヘリットの意見側だった。俺は猛反対し、そこから2人とは距離を置く関係性になってしまった。言い過ぎな気もしたが、自分に嘘をつきたくなかった。あれを受け入れる精神を持ち合わせていない。友人を失っても、俺は自分の意見を貫いた。

その後、数日経った日のこと。

トロイズの方から近づいて来た。

───────────────

「ファーブス、やっぱり…俺はファーブスの言ってる事が正しいと思う。施設の子供だって人間だ。生きる意義がある。簡単に命を代えて言い訳がない。判ったよ。俺はファーブスの味方だ」

「うん、ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ」

「うん、ファーブスが何をやろうとしているのかは理解してるつもりだが、一応聞かせてくれるか?」

「あ、ああ。俺はフィルムレスストレージとニゼロアルカナの蜜月を暴く。こんな薄汚れた大陸政府と剣戟軍の企みを世間に公表する。それが俺の目的だ。そのためにはどんな代償も払うつもりだ。アンリミングを…ニゼロアルカナへ絶対に送還させない」

「あのさ…アンリミングは、セカンドステージチルドレンなんだろ?じゃあ何故、ニゼロアルカナに送られないんだ?ニゼロアルカナが求めてる情報のはずだろ?」

「そうだな…俺にもよく分からない。だが他の子供と決定的に違う点を上げるなら、彼女は根っからのセカンドだと言う事だ」

「という事は、アンリミングにはワクチン投与をしなくてもいい…と?」

「可能性は十分に考えられる。だが、そうとなるとフィルムレスストレージ側がアンリミングをセカンドステージチルドレンだと把握しているというのが前提になる」

「親が…」

「それしかないな。親が送還した時に施設に言及していたんだ」

「ワクチンはやらなくていい…。もう既にセカンドだから…じゃあなんで送らない?」

「……、、、機会…機会を窺ってる…?」

「機会って…なんだよ、、、仮にだけど、フィルムレスストレージがアンリミングをSSCだと認識していた時。逆の立場になって考えてみよう。俺らがフィルムレスストレージの人間だったら」

「俺らがフィルムレスストレージの人間だったら」

「もっと可能性を引き出したい…そう思わないか?」

「うん…確かに…その線はある」

「それだよ。フィルムレスストレージは、彼女がまだ才能を隠していると判断している。十分な能力を引き出し後にニゼロアルカナへ引き渡す気なのかもしれない」

「その場合、ニゼロアルカナには話をつけてるのかな」

「それは…、、難しいところだな。これも仮定として、人身売買的なものが取引されているとしたら…」

「イカれてる事を提案するな…」

「可能性はゼロじゃないだろ?子供の人生を無下にしているクソ野郎共だ。考えとしては悪くない」

「だけどよ、、流石に人身売買はねぇだろ…あくまでも大陸政府が絡んでるんだからよ」

「俺には子供の未来を奪う行為と人身売買は同じランクに見える」

「そ、そうか…でも線としては…な…そんな事が裏で行われているなんて信じられねぇけど…」

「トロイズ、協力してくれ。フィルムレスストレージの闇を暴こう」

「ああ、勿論だ。ンで、何をすればいい?」

「取り敢えずは、片っ端から情報収集だ。2つの施設について詳細なデータを作って、一つの資料として纏め上げる。物理的な証拠として残しておくんだ。最悪の事態に発展しても、資料があれば俺らの遺物として残り続ける」

「“最悪の事態”って…」

「………殺されるかもな」

「…え、、、、」

「有り得ないことでは無いだろう…この世界の闇に触れるんだ。何か強大な力が動いた時、それぐらいの覚悟はしてるつもりだ」

「…そんな…、、」

「トロイズ、強要はしない。ただ、一人でも多く仲間がいるのは心強い。本当はもう一人にも判ってほしいんだが…」

「……はぁら判ったよ。てかそれもうほぼ、強要してるようなもんだし」

「ありがとう。改めて、トロイズは情報の収集を。なるべく施設の上の人間と会話を進めてくれ。俺らと同じランクの役職と話しても新しい情報は無に等しいだろう。施設の裏側を知っていそうな、《管理者》《執行者》《裁定者》クラスの人間とコンタクトを取るんだ」

「俺、この3つの人間と話した事なんて…最初の面接ぐらいなんじゃないかな…どうやって会えるんだ…?」

「それは一つ確定している答えがある」

「なんだ?」

「長く勤続する事」

「うん、、、確かに。それ一番の近道にして一番のダル険しい道だな」

「勿論、俺もここにしばらくはいるつもりだ。長期勤続すれば、自然にもあっちの方からしっぽを出すと思うからな」

「よし、俺やってみるよ。ファーブスは何をするんだ?」

「俺も、トロイズと同様に上の人間とコミュニケーション取るつもりだ。あと、物資調達に積極的に参加する」

「そうか…港湾都市か…」

「そうだ。合法的に潜り込むにはこれ以上無い方法だ。物資調達でも無い限り簡単には入れそうに無いからな」

「だけどよ、港湾都市に行けたとしても、絶対に軍事物資の調達依頼があるとは限らないよな…」

「……運だな」

「ガチャ的要素もあんのかよ…」

「だが港湾都市には行けるだけでいい。中に入るだけでも多くの新情報を入手出来るはずだ。まだ知らない事が沢山あるはずだ。その情報からニゼロアルカナに繋がるものもあるかもしれない」

「そうだな、判った。2人で頑張ろう」

「うん、この戦い、長くなりそうだ」

──────────────────

港湾都市とフィルムレスストレージ。2つの場所で支援者を獲得する事が出来た。そして、嫌でも目立ってしまうのがベヘリットの存在。2年前の物資調達で暴露した時以来、俺とベヘリットの間に亀裂が生じ、深い溝が出来てしまった。

ベヘリットとはあれ以来、話してない。

仲直りはしたいけど、多分無理だろう。無理だと思うし、今考えてみたら彼の意見も一つの意見として肯定する部分もあると解釈している。でも俺は肯定出来ない。

やっぱりダメだ。絶対にダメだよ。大人が身勝手すぎる。

この意見は何度でも言える。曲げたくない。

ベヘリットはあの日から、姿を消した。

行方も分からない。

トロイズに聞いても、「わからない」と答えた。

一人、仲間を失った。俺は今、そんな抵抗の物語を歩んでいる。そう、深く現実を捉えることが出来た。

逃げられない。もう止められない。

味方が敵に。敵と、こうも簡単に解釈してしまっていいのか。自分の滅裂な感情を呪いたくなる。

全ては、アンリミングのためだ。彼女の送還を阻止する。その名目のために俺はこの戦いに挑む。


律歴4080年8月31日──。


2年間、何変わらぬ日常を過ごしているアンリミング。変わらないのは日々の生活ルーティンだけ。身体と性格には大きな変化が現れ始めてきた。当たり前だ。彼女は…人間だから。セカンドステージチルドレンと言っても、彼女はどう見ても人間だ。普通の女の子。普通の子供のように成長を遂げている。

今日も授業を高速で終わらせ、俺との会話を楽しんでいる。こんな日常が突然奪われるかもしれない…そんな憑き物のような悪夢を抱えたまま2年間相対して来た。

忘れたい。彼女と過ごしている時間だけは現実を忘れたかった。


「センセ」

「そうだな、もう終わったな」

「先生は、なんでそこまで私が芸能界に行く事を拒むの??」

アンリミングは芸能界への道を志している。2年前からずっと俺に言ってきているが俺は「絶対にやめた方がいい」。そう言い続けている。彼女の想いは本物らしく、本気で叶えるつもりだ。だが、俺は否定する。芸能界になんて所を望む場所では無い。そう強く否を提言する理由。

それは紛れも無く、彼女が超越者だからだ。芸能界を目指すという事は必然的にも有名人になる事を指す。そうなると彼女のプライバシーが露呈し、自由の環境が奪われる。多くのファンを抱えながらも多くのアンチを生む。彼女の素性までもが調査をすれば、簡単にあぶり出されてしまう時代だ。セカンドステージチルドレンなんて事を世に知らしめてしまうと、とんでもない騒ぎになる。マスコミは彼女の元を執拗に訪れ、取材を行えるまで帰らない。芸能界の仕事も絶たれ、失意のどん底を味わう…。そんな地獄のような日々を経験するぐらいなら、目指さない方がいいに決まってる。なのに…彼女は、諦めきれていない様子。

毎度毎度、こう提言しているのに彼女の意志に揺らぐ兆しが見えない。強固な願い。夢。

彼女の夢を叶えてあげたい。だけど、同時に幸せな人生を送らせてあげたい。俺は後者を最優先事項と掲げている。

「アンリミング、お前は…」

「同じ事を言うのはごめんだからね。他の拒否する理由を

ちょうだい」

「他って…」

「無いの?」

「アンリミング…」

「無いのね?じゃあもう、先生の事大っ嫌い」

「おい、ちょっと待ってくれよ…」

「先生、私の事応援してくれるって言ってたよね?」

「言ったよ」

「じゃあ普通に応援してよ」

「お前はセカンドなんだぞ。セカンドまがいの能力を芸能界で露呈させてみろ。きっとネットでは話題沸騰だろうけど、大陸政府と剣戟軍は黙ってないだろうな。それに、施設はお前の素性を知っている。お前が、、、セカンドステージチルドレンだという事を…」

「私は…変えたいの…人生を変えたい。一時は地獄を見た。もうどうしようもないんだって…。でもこれからの事に決定権があるのは私自身。もう過去の呪縛を引っ張りながら生きるのは嫌なの」

「アンリミング、それは芸能界じゃなくても叶えられることだ。俺がバックアップする」

「先生。私は、、、芸能界に入りたいの。もっと広く見たい。私の…夢なんだよ」

怒りを交えた笑顔無き訴え。真っ直ぐな瞳が俺の心を抉るように突き刺さる。判ってる。判ってる…君の夢を叶える。だけど…次の返事は、物凄く大事だ。今、彼女は俺との決別宣言を放とうとしている。「もういい。本当に嫌い…」。関係が終わる直前まで来ている。蓄積した俺からの拒絶反応が、知らないうちに爆発寸前だったんだ。次の発言、容易に済ませることは出来ない。仕方無い…彼女の思いに一時的には汲み取ってあげるしかないか…。真正面から応援したいと思える日が来る事を、ほんの少し…微量ではあるが…未来の俺に託す。

「すまない…アンリミング。君の事を思う気持ちが欠けていた…。うん、そうだな。君の人生だ。君がやりたい事をやるのが一番良い。絶対にそうだ。応援する。アンリミングが芸能界に入って、色んなところで活躍するのが楽しみだ」

「先生…!ありがとう!」

アンリミングは俺に飛びついてきた。ファーブスをぶち飛ばす勢い。そんな彼女のアピールを受けてしまっては、自身の偽りが罪のように思えてくる。

俺は彼女に嘘をついている…。こんな事を望んではいない。ただ、彼女がここまで俺を信用してくれているなら、偽る事が正解なんだ。少なくとも今は。

「俺は、君の味方だ」

「ちょっと…強い…先生!」

「す、すまない…」

「もう、私の女の魅力に気づいた?」

「フン、そうだな。アンリミングも気づかぬうちに成長したな」

「もう2年だからね。それに私たちにとって2年はただの2年じゃない。もう5年ぐらいの年数なのかな…」

「そ、そんななのか!?」

「うん、セカンドステージチルドレンは成長が早いからね。だってほら、9歳だけどもうこんなに大人の女だよ」

「…、、、」

「先生、いやらしい目してる。本当にヘンタイになっちゃった??」

「おいおいおい…頼むよ…俺をいじめないでくれ…」

「アッハハハ、笑っちゃうぐらい先生がエッチな目してたから、いじめたくなっちゃった!」

理性がぶっ壊れそうな程に、彼女は大人への階段を歩んでいる。まだ9歳だよな…?信じられないレベルで、可愛い…。艶やかな茶髪のロングヘアに、整った顔のパーツ。口角を上げると綺麗な白い歯並びが見える。バカみたいに笑うと最高すぎる表情が完成する。男が一番好きな顔だ。笑ってくれる女の子が一番良い。9歳に鼻の下を伸ばすなんてな…ロリコンは趣味じゃないんだが…。彼女は…ロリ…なのか?ロリに該当する範囲の女の子なのか?

ロリって何?

どこまでがロリ?

どっからがロリ?

「センセー?何してんの??」

「あー、ごめんごめん。大丈夫大丈夫」

「なんかすっごい上の空って感じだったけど…」

「いやいや、大丈夫だよ。うん」

「ふーん」

やばい…彼女の領域が展開されたような追い込まれまくっている。彼女の言葉一つ一つの火力が男の理性を崩壊させる。これが見ず知らずの男だったら1発KOだな。

「でも、なんでそこまで芸能界に入りたいんだ?とても今まで言っていた…『夢を与えたい』以外にもありそうな気がするんだが…」

「お、先生いい読みだねー。そうだよ、あと複数あるんだ。芸能界に入りたい理由」

「ほう、それ、聞かせてくれないか?」

「一つならいいよ」

「判った。一つ教えてくれ」

「一つは…芸人から俳優になったあの人と会うこと!」

「ああ、言ってたな…それ」

「結局誰か分からなかったよね…そこまで多いはずは無いんだけどなぁ…調べても見つからない…だったら、こっちから会いに行こうと思ってさ!」

「それは思い切ったな…凄い目標だ。憧れの人に会う。うん、素晴らしいと思うよ」

「でしょ?私、今あの人が何をしているのかを知りたい。そして一緒に何かしたいの。テレビ共演でもラジオでも舞台でもなんでもいい。とにかく会って、感謝を伝えたい。それが私の芸能界を目指す目的の一つだよ」

「うん、それは本当に素晴らしい事だ。んでえ…」

「あとは教えなーい」

「なんで…まぁいい。気が向いたら教えてくれ」

「多分、先生には一生教えないよ?」

「ん?どういう事だ??」

「ンフフフ、ナーイショ」


律歴4080年9月2日──。


いつも通りの授業と施設での一日を終え、今夜は少し久々の物資調達の日だ。少しといってもに一週間とちょっとぶりぐらいだ。物資調達の任はもう慣れた。元々は港湾都市への合法的な潜入が目的ではあったのだが、やりがいと施設から運搬練度への高い評価を受け、様々な場所への物資調達に出向く事になっていた。

これは本望ではなかったが、何か疑われてしまうような事があった場合、二度と物資調達には行けなくなる。イコール、港湾都市にも行けなくなる。そう察した俺は、仕方なく施設からの高評価を真に受けて、調達を拡大させた。

嬉しくもあり、面倒くさくもあり、港湾都市へ行くチャンスを失ってしまったり…なんかグチャグチャな感情になる。

まぁでもこれで施設からの信頼度は固いものとなった。少しでも施設の内情を探っているような姿を見られても、言い訳が出来る。「すみません…次の物資調達の資料を一足早く確認したくて…」とかな。こんなのがまかり通るとはあまり思えないが…。素人が言うよりは味が出る。

新人育成のために、複数人数グループに組み込まれることがある多い。場所も様々だ。ラティナパルルガ大陸の北方、西方地区。近場である東方地区にはあまり出向いていない。フィルムレスストレージから近い場所には新人の班が向かうのが常だ。

信頼されてるから、遠出を任される。うん、嫌だな。あまり好んでやろうとは思わない。でもここで長く仕事をするためだ。しゃあない。

今日は久々の物資調達。そして港湾都市だ。

定刻23時──。

俺は新たにここで働く事になった若いのと3人で向かう。

「ファーブスさん、僕は《ネービス》と申します。よろしくお願いします!」

「ああ、よろしく」

「自分も新人の《プルマラス》です。よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」

若いな…高校生なのか…、聞こうと思ったが、業務に関係ない事だ。働ければそれでいい。2人のパーソナルな事に関しては触れず今夜の任務を遂行しよう。少し動けば大体の事は判る。この仕事に向いているかどうなのか。第1モーションで判断しよう。

「あの、、先輩」

ネービスか…。

「なんだ、ネービス」

「先輩はこの仕事結構やっていますか?」

やっている…もっと違う言葉があるだろう…。勤めているとか。まだ、子供だな。

「そうだな、もう2年以上は勤めているよ」

「じゃあ結構ベテランって感じですね!」

「まぁ、2人よりはな」

「いやでも2年間続ける人なんているんですねー!あまり長くは続けない仕事だと思っていました。やりがいとかがあるから長くやれているんですか??」

サラッと嫌な事を言いやがってこのクソガキが…。

「そうだな。“俺は”やりがいをとても感じる。人によるからな。こういう仕事は」

「そうですよねー運搬ですもんね…キツイですもんね…」

いちいち癪に障る事を言うな…コイツは…それにしても片方の男が全然喋らん…。もう一方のガキがベチャクチャ余計な事を喋るから、喋らない奴がいると逆に目立つ。こんな少数で、四人席のトラックだと更にだ。ネービスは喋らないプルマラスとどういった関係性なんだろうか。

俺は2人をフィルムレスストレージで見た事は無い。

「君達は、どういった関係だ?知り合いかい?」

「いや、僕は知らないですね」

「自分は存じています」

「え、そ、そうなの?」

「はい。同期ですしね」

「え、マジ…?ごめん、全然知らなくて…ええっと…」

「プルマラスです」

「うん、わかった…プルマラスね。よろしく」

プルマラスの影が薄いのか、ネービスが失礼なのか、どっちなんだろうな。

「今日の調達リストは、初心者には優しい内容だ。見てみろ」

「はい!」

後部座席に座る2人へ、今夜の調達リストを渡す。

「木材、什器、施設から軍港貯蔵庫への届け物3点、それに…食糧…えぇ!」

「どした?」

「食糧…これ、多すぎないですか…??!」

「いいや、これが普通だ。今夜は俺らの他にも2班が港湾都市に向かっている。2班がいなければ、もっと増えていただろうが、この数は少ない方だ」

「す、凄い量だ…肉、野菜、果物、小麦粉、油、塩、胡椒、20kgボックス…」

「それは調味料だな。塩や胡椒等のが20kgのボックスに入っている」

「これ…一つ…ですよね…?」

「ああ、一人一つだ」

「え、、、ひとりひとつぅぅ!!?」

「なるほど…これは中々の量ですね」

ようやく喋ったよ…

「安心してくれ。軽量化牽引システムがあって運搬なんて容易いもんだ。素手で運ぶ訳が無いだろ」

「なんだ…良かったです…流石にそうですよね…」

「それに、港湾都市はこの時間、物資調達員ファーストだ。高架道路が優先的に使えるから全く問題ない」

「そですか!なら安心あんしん」


港湾都市ディーゼリングスカイノット──。


「初めて来ましたよ…港湾都市!噂には聞いてたけど…凄い所ですね…こんなに深い時間なのに、沢山の人が働いている…」

「港湾都市にとって、夜の方がメインタイムみたいなもんだからな」

「自分、一回来た事があります」

「え!プルマラスあるの?来たこと!?」

「うん、ある。工場見学だ。とても興味深い内容で充実した時間を過ごせました」

「へぇー、そんな企画があるのか…この時間にしか港湾都市には来ないから知らなかったよ」

「凄く良い体験が出来ました。ラティナパルルガ大陸の環境、生活を支えている重要な役割を果たしている彼等に敬意を表します」


食糧を始めとする調達を終え、ストランドの牽引システムが超荷重限界となったため一時、トラックに戻る事にした。

「重い…と思ったんですけど…これ、ストランド凄いですね!全然軽ぅ…くは無いけど…素手では絶対に持てないから最高の方法ですね」

「許諾取ってもいいくらいですね。自分はそう思います」

「よし、まだあるぞ」

「え、、、まだあるんですか…」

「あと大枠は2つのだな。でも安心しろ。次のやつを取りに行って、その次は届け物を港湾都市に持っていく」

「届け物…あ、軍港貯蔵庫ですね」

「そうだ」

「ちょっと待ってください。届け物…ですか?」

「そうだ」

「うん、、、?最初に持っていけば良かったんじゃないですか??」

「あ!!ホントだ!!先輩!計算ミスしましたね!?」

「プルマラス、よく気づけたな」

「自分はこの人と違ってデキる男です」

「はぁ?それどーいう意味?」

「しかし、その読みはハズレだ」

「??なにか理由があるんですね。後に回す理由が」

「そうだ。軍港には、この時間はまだ行けない。我々物資調達員が入校を許可されるのは26時から」

「あと、、1時間以上…」

「港湾都市をウロウロしているのもいいが、特にする事も無いだろ?お前らは」

「お前らは…?ファーブスさんは用があるんですか?」

「……まあな」

「ええー、先輩だけズルい!俺も連れてってくださいよ!」

「だめだ。お子ちゃまが介入する事じゃ無いんだ。大人が解決する問題だからな」

「えええええ」

「次の木材を取りに行って、2人はそのままトラックに向かえ。俺は港湾都市に用事があるから残る。25時40分にはトラックに戻って、一緒に港湾都市へ行こう」

「…分かりました…、、、」

「はい」


2人は残された物資調達リストの木材をトラックに運びにいった。そして俺は…港湾都市に一時的に残る。目的は、支援者サーベントからの進捗状況の報告だ。サーベントとは25時以降で空いてる時間を作ってもらい、会合の約束をしていた。事前の連絡ではかなりの催促があった。何か重大な出来事が発生したんだろう。

「今から会えるか?」

「ああ、今、2人を送った」

「では軍港に来い。ミリタリースクエアのバースポイントで待つ」

「判った」


1時12分──。


「待たせたな」

「いや、いいさ。いい時間に来てくれた」

「何かあったのか」

「じゃなきゃ俺から連絡しないさ。耳を貸せ」

軍港のゲートを入場し、俺とサーベントは2人で密会が出来そうな空間へと向かった。場所はサーベントが確保してくれた。

輸送船があるポートエリア。この時間帯はもう全ての物資が保管庫と貯蔵庫に運ばれ、閑散としていた。聞こえるのは凪音の海のみ。ブラーフィ大陸の都市がライトアップされた光景が綺麗に見える。ポートエリアも照明が無いわけでは無いが、少し薄暗い。だが今の状況だとこの光具合が丁度いい。

「これから話す内容だと、こんな感じの暗さでいい感じだろ」

「てことは、面白い話って事だな」

「お前さんの担当収容者に危険が迫っているかもしれない」

全く面白くない話だった。俺は一気に顔色を悪くした。鳥肌も身体全員に走り、電気のようなビリビリとした感覚にも包まれた。

「そんな…おい、、、なんだその話は…」

「9月1日の事だ。軍港にとある報が届いたんだ。それが、強化人間育成プロジェクトの概要だ。言うまでもなく、これは対SSCとして間違いない」

「強化人間育成プロジェクト…」

「セカンドステージチルドレンに対抗して、剣戟軍は人工的な強化人間の開発育成計画に着手しようとしている。詳細はまだ不明瞭だ。もしかすると水面下ではかなりの段階まで進んでいるのかもしれない」

「それ…剣戟軍だけで行える企画じゃないよな…」

「ああ、そうだな。もっとデカい所が協賛しているはずだ」

「大陸政府か?」

「政府もそうだし、各大陸政府と蜜月関係にある機関が取り巻いてる可能性もある。金的な部分でもそういったパーツは必要だ」

「セカンドステージチルドレンとやり合う存在を作る気なんだからな…資金源は潤沢にあった方がいい…」

「それと、言っていたアンリミングとの関連性についてなんだが…」

「言わなくても判る。そんな計画が始動しているなら、アンリミングのようなSSC遺伝子が必要になる。これまで以上に積極的な子供へのワクチン投与が開始される…そうだろ?」

「その通り。計画遂行の手順もスピードも判らない。だが、いち早く計画は終わらせるつもりだろう。ノロノロと完遂させるような緩い奴らじゃない。このように末端の俺でも把握出来るぐらい、明るみになった極秘計画だ」

「アンリミングが…危ない…、、そんな…」

「次の子供が送還される日も入手したぞ。次は10日だ」

「9月の10日…それまでにアンリミングをどうする?簡単にはあの監獄から脱出させるなんて出来ないぞ」

「判ってる。この2年間でフィルムレスストレージの内情は全て頭にインプットした。警備システム、巡視ドローン、高精細レンズ搭載の熱源探知カメラ。夜の脱出は不可能に近い」

「じゃあ…昼に決行か?」

「いや、夜にアンリミングを脱出させる」

「は?警備が手薄な時にやるのがベストだろ」

「言っただろ、この2年間俺はフィルムレスストレージのほぼ全てを理解したと」

「なにかあるのか…」

「ああ。夜、警備が極小数になるタイミングがある」

「なるほど…いつだ?」

「……、、、10日だ」

「10日って…」

「子供が送還される…表面上は親と再会している日だ」

「ちなみに9日はどうなんだ?」

「9日?前日は…きっと凄い数だろうな。送還当日はプロジェクトが表で発動している間に裏から回り込んでアンリミングを抜け出させる。脱出ルートも完全に頭に入れた。決行するには最高のタイミングだ」

「そうか…判った。気をつけろよ」

「ああ。今までありがとう。もしかしたら港湾都市にはもう二度と来ないかもしれないから。一応今、伝えとく」

「やめてくれ。また会おう。次会うときはアンリミングを、肉眼で見せてくれ。本物のセカンドステージチルドレン…人間に手を加えないタイプのやつを見てみたい」

「うん、きっと仲良くなれるよ。凄い良い子だ」

「じゃあ…」

「いや、軍港には元々、届け物があって来たんだ。今からそれを取りに行ってくる」

「そうだったな。悪い悪い、じゃあ改めてまた後で言おう。でも、取り敢えず今は、“本当に気をつけろよ”」

「うん、ありがとう、本当に」


トラックに戻り、軍港への届け物配達も完了。俺らは帰路に就いた。

翌日──。

トロイズに昨夜のサーベントとの会話内容を共有した。

「強化人間育成計画…、アンリミングがとうとうターゲットになるな」

「今までアンリミングが送られなかった理由も、俺の仮定通りかもしれない」

「才覚の最高到達点…。極限まで進化させた状態でニゼロアルカナへ引き渡す」

「次の送還日、10日なんだよな?」

「そうだ。裁定者の男と話をつける事に成功した」

「裁定者と?凄いな」

執行者、裁定者、管理者。俺らは教育者を通って、指導者というポジションにいる。裁定者は施設で上から2番目の存在。簡単には話をする事が出来ない中枢の人物だ。よく接触できたものだ。

「聞いたところによると次の10日に子供の送還が決定している。勿論、その情報が提供される際に、“ニゼロアルカナ”の単語は出て来てない。送還…とも言っていない。接触出来たとしても、施設側が俺のような存在に、軽い形で真実を話す訳は無いようだ」

「そうか、かなり警戒しながらトロイズと話していたのかもしれないな。言葉を上手く選びながら」

「言われてみたら、少したどたどしかったかも…、、んでじゃあ脱出の日は…」

「ああ、9日にするつもりだ」

「大丈夫か?それ、サーベントには…」

「うん、嘘をついた。アイツには10日に脱出する…と言っっておいた」

当たり前だ。あの男は剣戟軍の兵士。剣戟軍が言う事を信じるつもりは無かったが、この2年間サーベントが進言してきた事はほぼ全てが的中していた。経済の動向、セカンドの襲撃報告…後にニュースで知る事になっていたがそれより前にサーベントから聞いていた。彼が与える情報には精密さがあった。

赤い鎖プロジェクトの概要は信頼出来る。軍港への物資調達の際に、他の兵士からも話を聞く事に成功したからだ。直接話しをしたわけじゃない。

2年も同じ所に通っていたら、判らないでいいものも判るようになる。その時々で利用するに値しない情報がいつしか、自分の計画に大きな役割を果たす架け橋となる。

豆粒のような小さい小さい情報が集約され、赤い鎖プロジェクトにまで到達出来た。

塵も積もれば山となる。

言い慣れていない言葉を、記憶の倉庫から引っ張って来た。

積み重なった情報とサーベントから直接聞いた話には適合性がある。

だが、100%は信じない。サーベントは剣戟軍側の人間。

9日に脱出するという真実を伝え、サーベントがこれを鵜呑みにする…すると、どうなると思う。確実に殺られる。

彼女は脱出を試みようとした罪を着せられ、俺は処罰を受ける。真実なんて、絶対に教えない。誰にも…。

2年の歳月が無駄となる。

9日だ。9日に脱出作戦を決行する。

内容はサーベントに伝えた通り。少し違うのは、10日の送還実施前日、9日に脱出を決行するという事。

警備が手薄になるのは事実だ。送還前夜という事もあり、必要以上の労力は割きたいらしい。送還当日はフィルムレスストレージとニゼロアルカナの直轄混成警備部隊が警備を張る。当該部隊に剣戟軍は関与していない。2つの施設が絡んでいるという事は大陸政府の関連は否めない。その日だけ施設ではなく、“監獄”と化す。

サーモグラフィーカメラ等の警戒システムをオフラインにする準備も完了した。電圧室と指令室に潜り込み、施設配線の正規ルートに、ダミールートを埋め込んだ。配線状況は規定のまま現状を維持している状態だが、一つのスイッチを起動させると、俺が仕組んだダミーの回線が作動。警戒システムがオフラインへ繋がる、ブラックウイルスで変電させる。これで施設脱出へと問題無く形に繋がる。

一応、確認しておこう。

9月10日に実施される収容者送還。その送還でほぼ確実にアンリミングが送還対象に選定されるだろう。赤い鎖プロジェクト最終段階、そして、強化人間育成プロジェクトの前段階に使用される遺伝子情報の精製。それを阻止するために俺はアンリミングの脱出作戦を図る。

決行日は9日。送還前夜だ。警戒システムを最低レベルに落とすための準備は事前に成功している。

よし。後は…アンリミングにこの事を伝えよう。

もっと前に伝えた方が良かったとは思うが、これも彼女のためだ。余計な心配をかけたくないからな。彼女には決行直前に伝えようと思っていた。トロイズも、その方がいい…と合意してくれた。

アンリミングに…どう説明すればいいんだ。

普通に…受け入れてくれる…よな?

何でなのか…よく自分の事が判らないが、アンリミングの心情を何も考えずに走り出している事に、少しの罪悪感がある。

おかしいよな。今から彼女を救おうとしているのに、何で悪い方向に考える事があるんだろう。

アンリミングは…ここに…いたい??

まさかな…。ンなバカな。

いや…この感情は…違うな…、、、俺が…彼女から離れる事を危惧しているのか?

まさかな。そこまで彼女が俺を大事な存在として位置づけているとは…情けないが思えない。

アンリミングが居なくなったと同時に、俺がその日からいなくなってしまえば真っ先に、疑いの目は俺へと向かれる。アンリミングの担当だしな。アンリミングと同じ日に施設から離れるのは危険だ。

だから暫くは彼女と離れる事になる。最低でも…、、半年…いや、2年間ビッシリと働いて何も文句も不満も垂らさずに勤続して来て、半年で辞める…。もっと歳月を掛けた方がいいかもしれない。

1年か…。向こう1年、彼女と会えない日が続く。

これは彼女のためだ。俺がこうも深く考えることでは無い。話そう。アンリミングに全てを。


9月8日──。


日が経ってしまった。

ここ数日、立て込んでしまって彼女との時間が作れずにいた。施設から仕事の依頼が殺到した。

物資調達の増加。

日勤シフトの仕事内容が9月から大幅に変更。施設運営と管理の仕事を任される事に。

これが予想以上に厳しい仕事。その影響は大きく、アンリミングとの対面授業の機会が全て白紙に。

こんな事は初めてだ。

施設で長く務めた者の宿命か。こんなタイミングで訪れるとはな…。作戦の準備が整っている今、もうこの施設の概要を知ろうとはこれっぽっちも思ってない。やる気も無い。早く彼女に会いたい。早く話さきゃならない。そんな願いを聞いてくれるほど、優しい勤務場所では無く…。1週間が経過した。

今日、1週間ぶりにアンリミングと再会する。

………忘れて…、、ないよな……?


「おはよう…ございます…」

9時──。

アンリミングの部屋をノックし、部屋に入る。

こんなにも恐る恐る入室するのは2年ぶりだ。

授業前、子供達へは、部屋に完備されている放送機器で、事前に本日の授業内容がアナウンスされる。内容と共に、本日の担当教育者も伝えられる。殆どが“担当”、つまりは固定という事もあり、このアナウンスにはほぼ意味は無いのだが、アンリミングと俺のようなシフトが急遽変更されるパターンも存在する。収容者にはパニックにならないよう、事前の報告が成されている。

アンリミングはここ1週間、俺の名前を部屋で聴いていない。放送機器から伝えられていない。

部屋に入ると、そこには頭を下に、黒のオーラを充満させた原体のアンリミングが着座していた。

「アンリミング…?久々だな…。1週間ぶりだよ…」

「………」

「アンリミング…なぁ、、久々だよな?……大丈夫か??」

顔をあげない。彼女の表情を確認出来ない。

「アンリミング…??」

俺の発言は合っているのか。彼女がどうすれば俺に応えてくれるのか。ただただ彼女の気をこちらに向けてほしい。その一心で俺は彼女への問い掛けを続ける。

「せんせい…」

「アンリミング…??」

「……私のこと…きらいなったの?」

顔を上げてくれた。言葉が弱い。強くて逞しくて子供とは思えない美しい姿は消失。別人のような姿を視認した。

「違うんだよ…」

「なにが違うの…、、、、私と急に会わなくなっちゃって、、、、せんせい、きらいになったの?」

「ちがうんだよ…!仕事が立て込んでな…、、それでアンリミングとの時間を作れずにいたんだ」

「2年間、そんなこと一回もなかったよね?急にそんなのって、、、あるの?」

「いや、、俺も驚いたんだよ…まさか1週間空けることになるなんてな…でも1週間だよ。1週間空けただけだよ」

「だけ…?“だけ”って…なに」

「アンリミング…」

「わたしは…先生を待ってた…この1週間、先生の名前を待ち続けていた。なのに全然聴こえてこない…。全然知らない男が入って来て、気にも乗らない時間が無情に流れていく。わたしは…先生の授業を受けたかったのに…。何で先生は私の元を離れたの…」

「アンリミングだから…」

「私のこと嫌いになったんでしょ…鬱陶しいと感じるようになったんでしょ…どうでもいいと思うようになったんでしょ?過剰な接触が嫌になったんでしょ…変化が欲しかったんでしょ?私じゃない人といた方がいいと気づいたんでしょ?いつも私と距離を置きたいと思っていたんでしょ…」

「違う!俺はお前のことを第1に考えている」

「じゃあなんでこの1週間私から離れたのよ!!」

「…!!」

「怖いの…」

彼女は俺の頬を殴り、身体を俺の胸に預けた。冷え切った身体が、俺の感覚神経を研ぎ澄ます。部屋はそんな冷気状態が蔓延している訳じゃ無い。身体は嘘をつかない。己の感情を読み解くにはこれ以上の無い証明だ。彼女が広げる手が、俺の胴体を巻き付ける。強く、強く、強く。

だがそれでも苦しくはならない。彼女は激高している中でも、俺の身体を優先的に考えている。感情に身を任せていない…。彼女が、普通の子供なんかじゃない、特別な存在である事を物語っていた。

「怖いの…また、私の傍から好きな人がいなくなるのが…苦しいの…切ないの…哀しいの…嫌なの…私が…先生に…なにか、、、、嫌な気持ちになることをしたなら…謝る…謝るよ…謝るから…、、、、……だから、、、私の傍から離れないで…、、私、、もう……誰も失いたくない…」

俺は、強く彼女を抱擁した。何ものにも変えられない。彼女という存在。

「すまない…まさかそこまで思っているとは、、、俺の落ち度だ…本当にすまない…」

「先生…言い訳なんて要らない…、、、私と一緒にいて…これからもずっと…わたしは先生が好き」

「ありがとう…参ったな…9歳の女の子に告白されちゃったよ…」

「…、、、、バカ、先生のバカ。嫌いじゃ…無いよね??」

「当然だろ。本当にすまない…」

「もう、絶対に離れないで…私…先生と一緒に、外の世界を旅したい」

「うん、その相手が俺でいいなら、大歓迎だよ」

「告白までしたんだから、先生でいいの。先生以外に好きな人なんて、金輪際出来ないだろうし」

「いや、実際、そんな事は無いと思うぞ」

「えぇ?そうかな…」

「ああそうだよ。この世界は広い。まだアンリミングの知らない面白い事で満ち満ちている。だから、思いっきり楽しむんだぞ」

「うん…先生がそう言うなら…でも!わたしは先生と付き合うまで他の男とは付き合わないから!」

「ありがとう…、、、」

「泣いてるの??」

「………やめてくれ」

「先生の心を、私が、撃ち抜く。ばーん」

「アンリミング、授業を始めようか」

「はい!ファーブス先生」


1週間ぶりのファーブスによるマンツーマン授業。アンリミングの顔が“歓喜”をこれでもかと表していた。いつも通り俺の授業は短時間で終了、余った時間は2人の特別な、変え難い時間に要した。1週間ぶりのファーブスとの対人で、気分が高揚しているアンリミング。マシンガントークが止まらない止まらない。

「でね、その夢っていうのが、なんかね、私の事を凄く判ったように物を言ってくるの」

「判ったように…?」

「うん、私もどう説明したらいいのか、わかんないんだけど、この1週間を見透かされてるようにも感じたの。現実で起きた出来事を間近で誰かが覗いていた。その傍観者みたいな奴が、夢の中でヒソヒソと語り掛けてきた。まるで誰かのストーリーかのようにさ。私だっていうのに、それを体験したのは」

「アンリミングのストーリーを語ってくる、夢の中の住人…」

「夢の住人か…、、、先生、良い表現だね!それ」

「ああ、だが、夢というのは怖いものだぞ」

「怖い?そうかな?夢だよ?、少し不気味な感じがしただけだよ?」

「悪夢だってあるじゃないか」

「あー、確かに…悪夢はちょと…コワイ…かも、、、」

「アンリミングに語りかけてきた住人、どんな想いをもって近づいたんだろうな」

「なんだろうね…私の事を必要としていたのかも…」

「うん、俺はそうだと思うよ」

「えぇえー?フハハハ!夢の中で私を求めても、どうする事も出来ないじゃーん」

「夢の中に行く…可能性はゼロじゃないと思うぞ」

「もう、、、先生、この1週間何してたの??頭おかしくなっちゃったぁ??」

「この世界に不可能な事なんてないよ。現に俺の目の前には、人智を超えた存在がいる。君のような不可能を可能に出来る者がいる世界。そしてその能力を、下劣に扱う非道な者がいるのも現実だ。こんな世界、本だけの世界だと思うだろう。誰かが創作した戦記的な叙事詩だ…とね。でもこれは起きている。実際に起きている事だ。夢の中へ行くことだって、不可能では無いと思うけどな」

「ふーーーーん、まぁわたしは興味無いかな。あ、あとね、夢の中で夢らしい夢を見たよ」

「夢だからな。それが普通だ。どんな夢を見たんだ?」

「世界が途切れていく夢。溝が出来て、広大な世界が、切り取られていって、孤島みたいになってた。私はその孤島の中にいた。上空から黒い霧が発生してたの」

「何とも薄気味悪い夢だな…その後は?」

「切り取られてね、でっかい都市だったのが物凄く小さくなっていったの。まな板にある複数の野菜を、包丁で一変に切っていくように。まとめてまとめて、5種類の野菜を重ねて切った。面倒くさがっていたように感じた。自分の意思とは反していたのか、自分の制御が上手くいかなかったのか、終始ぎこちない身体の使い方だった」

「人か、セカンドステージチルドレンみたいな者と捉えていいのかな」

「仮でそう捉えてもいいかもね。でも、多分もっと凄い存在。だって、大地を切り取っていたんだよ?こんなのセカンドには出来ないよ」

「君がそう言うなら…不可能なのかもしれないな…」

「っていうね、夢を見てた。綺麗な夢も見てたよ。宇宙の夢」

「宇宙か。それは非現実的なことでは無いな」

「そうだよ。私、宇宙大好きだから。私の能力使えば宇宙って行けるのかなぁって思ってる」

「俺も宇宙は興味あるな。知ってるか?宇宙での生命反応の兆候を」

「知ってるも何も、宇宙人はいると思ってるからね」

「それが、本当に証明されつつあるんだよ」

「えぇ!いるいる派といないいない派の会話にやっと終止符が打たれるの!?しかも、いるの方で!?!」

「ああ、そうだ。原世界で発生したとある事件がデスターズセインを通してシェアワールド現象として同期された。その時に同期されたのは、月に落ちた遺物と太陽系外惑星での生命兆候だ」

「ホッホォ〜〜!私、そういうの大好き!宇宙人いるんだァ…で、前者の月の遺物ってなに?」

「この月の遺物だが、原世界の住人はこの事実を長年にわたって隠蔽していたらしい」

「んえ?なんで??」

「わからん…だが隠蔽するぐらいに世界を震撼させる内容と推測出来る」

「世界を変えるかもしれない…原世界からその情報が共有されたなら、何かこっちにも意味があるものだと思うんだよね」

「確かに…その考えは有り得るな…」

「うん、たとえば…セカンドステージチルドレンとか?」

「セカンドステージチルドレン?SSCと月がなんの関係が……、、、!!」

「先生、セカンドステージチルドレンが発生した原因って、小惑星の落下って言ってたよね?」

「ああ、そうだ…まさか…、、、、」

「考えられない事では無いんじゃないかな。月にも同様の小惑星体が落下しているっていうのは」

「かなり有力だと思う」

「ね?また私、天才の片鱗見せちゃった?」

「ああ!これは凄いことを答えに辿り着いたかもしれないぞ」

「ねぇねぇ先生、太陽系外惑星の生命反応も、結び付けられない?」

「俺もそう思っていたところだ。なんだか出来すぎている気もするが、セカンドステージチルドレンが頭の中で夢に出てくる世界観だ。意味が無い事は無いと思っている」

「それに、私だしね。セカンドステージチルドレンの中でも完全な“良い子”だからね。心が清らかな者の夢に出てくるシナリオ。信じてみる価値、大アリだよ!」

「ああ、アンリミングの夢は正夢。いや、もしかしたら、過去に起きている事かもしれない」

「えぇ!!先生、それはちと考察し過ぎじゃない??」

「未来の起きる事より、過去に起きていた事のほうが、説明のしようがある」

「んんー、そう?」

「セカンドステージチルドレンの存在とうまいように合致させる事が出来れば、良い論文が完成する。未来への提唱論文はただの予言じみたものと認識されるのが常だ。どっかの施設の教育者のファンタジー脳みそなんて、話を聞いてくれるとは思えない。だが、過去はそうもいかない。こうして、人と同じ姿をした危険な生命体が存在する今、超次元的な世界を信じる他無いと思うんだ」

「んんーー、だったら未来の事でも信じてくれるんじゃない?超次元的なんだし」

「未来は誇大妄想だ。大人はそう簡単に乗ってくれない」

「へぇー…」

「アンリミング、夢で見たシナリオをもっと教えてくれないか?」

「ごめーん、もう私、覚えない。あくまでも夢だからね。原体験だったら忘れることは無いけど」

「そうだな、、、あくまでも夢だもんな…」

「ごめんね、先生。私、先生の想いに応えたい」

「どうした急に」

「私、先生の事、好きだから…先生が言うことは全部応えていくつもり。それがどんなに儚い願いであっても」

「アンリミング、判ったよ。だけど、この光景を見られたら、俺は完全にアウトなんだよ」

「見られてる…?カメラのこと?」

「そうだよ。今カメラに映ってるのは、教育者の男に抱きついている収容者の女の子。誰がどう見たって、深い関係性である事は言うまでもない」

「先生、私がそんな脅しで動きを止めると思ってんの??」

「…なにか仕組んだな?」

「ピンポーン、あのカメラに流れているのはダミー映像です。1週間ぶりにファーブス・マッキシュと相対した私は、ファーブス先生への想いが薄れて、お利口さんにしっかり授業を受けている…そう、カメラ映像には流しておいたの」

「本当か?」

「うん!」

「アンリミング、、、凄すぎるな…」

「私に出来ない事は…、、、多分ない!電子機器のサイバーハックなんて余裕も余裕。多分今ね、私の部屋を監視している連中は…」

『1週間ぶりにあったからな…もう気持ちも晴れたか…』

『ドンマイだったなー!ファーブスぅ、収容者に嫌われちまってよ〜』

「なぁーんて事を抜かしてるに違いない!私はそんな簡単に先生の一途な想いから離れないよーだぁ」

「アンリミング、だからといって…」

「わぁーってる、うっさいな。付き合ってくれないんでしょ。わあってるよ。こんな可愛い女の子、他にいるはずないんだから、言っちゃえばいいのに。強がらずにさ」

「まだ、教え子と教師の関係性でいさせてくれ。じゃなきゃ…」

「じゃなきゃ…??」

「本気で好きになってしまうから…」

「先生…その回りくどい告白、、、私は…キライ」

「す、すまない…でもしょうがないだろ?教育者としての威厳は保たないと…」

「センセ、今、ダミーが走ってる。それが何を意味するのか、、分かる?」

「意味…?」

「私、この1週間でも、凄く成長したんだよね。ほら、見てよ」

アンリミングは、着ていた上着を1枚脱ぎ、肌の露出をし出した。ファーブスの男としての本能を覚醒させに来ている。汚いやり口なのは彼女自身も承知の上。でもこんな事をしたいぐらい、ファーブスと一つになりたかった。

「下品な女…?私って…」

「そんな事は無い。俺が全身全霊でそう言える」

「ありがと…。先生と一緒にいたい。会えない日が続く中で、私はそんな想いが大きく大きく肥大化していったの。私にはファーブスさんが必要」

ファーブスさん…。彼女は初めて、名前にさん付けで読んだ。これがファーブスの心にどう響いたのか。それは表情を見れば容易に理解が出来た。

「何でそんな変な笑い方してるの??」

「アンリミング、今俺の事を初めて“さん呼び”してくれたね」

「あ、気づいちゃった?」

「どう考えても狙ってるとしか思えないんだが」

「あったりー!これは私が子供じゃなくなって、ファーブス先生と交際してる時の呼び方。さん呼びって悪くないよね」

「うん、最高だよ」

「でしょでしょ!男って、こうも簡単にオチちゃうからね、ホント、簡単な生き物。先生も簡単な生き物」

「アンリミング、今は気持ちだけ受け取っておくから…取り敢えず、服は着てくれ」

本気の顔だ。“ふざけないでくれ”。そうと感じ取ることが出来そうな、真っ直ぐ視線。アンリミングは、口を尖らせながらも、ファーブスに応えた。

「うん、判った…」

少し、静寂が訪れる。どっちが次の会話を始めていいのか、牽制し合う空気が流れる。漂う。

本来だったら、大人から仕掛けた方がいいとは思うが、アンリミングは普通じゃない。急に突飛なトークテーマを放り込んでくる。

壁の向こうに屍がいて、その群体の所へ手榴弾を投げ込むかのように。インパクトのある話題をかますのは、アンリミング取扱説明書の初歩中の初歩。

そんなアンリミングがダンマリを決め込んでしまう。相当にファーブスのガチの視線が心にぶっ刺さったんだろう。ファーブス自身、怒りを交えたつもりは無いのだが、急な感情の起伏を“怒り”と捉えられるのは妥当とも言える。

アンリミングは、先生に怒られた…と噛み砕いてしまった。

1週間という長いようで短い時間は、両者の仲にほんの少しの溝を生じさせている。いや、これが大人と子供の関係性なのかもしれない。

これが本来の形。子供は大人の元を離れていく。子供は大人へと変わる。生きている者が通るべく黄金律が、両者間でも訪れた。来るべくして現れる対人関係の発展ポイント。

特異なのは血縁関係では無いというところ。普通、アンリミングの現在の人間年齢だと親の元にいるのがこの世界のアベレージ。だが彼女は親から捨てられた存在。その反動で受けた精神面への波及的ダメージは大きい。

今や、ファーブスを血縁者以上の存在だと認識している。

ファーブスとしては嬉しい反面、彼女の今後、一人で社会に飛び立つ際の遮蔽物となってしまわないか…社会性の欠如の要因にファーブスが一役買ってしまっているのではないか…。

俺は考えている。巡らせている。言うなら今しかない。この空白となった今がチャンスだ。彼女の心の境界は今、瓦礫の牙城となっている。決してジャンプなんかでは届かない長城だ。この《マインドウォール》を越えようとは思わない。壊そうとも思わない。クレバーな思考を巡らせて意地でもこの壁をどうにかしてやろう…とも思わない。全ての思考が、彼女との決着地点では無駄になる行為だ。

話そう。


「アンリミング、ちょっといいか?」

「うん?なに…?」

「あのな…今日は…8日だ」

「うん、そうだよ…9月の8日。それがどうかしたの?」

「この施設では…10日になると子供が外の世界に送られる事は覚えているな?」

「うん…、、、、覚えているよ」

覚えている…というか、知っている。私は先生からの話以前から子供達が外界を経験する旅にでていることを知っている。私は先生から、『旅をしている』と聞いた。

子供達はフィルムレスストレージから出て、旅をしている。

子供達はフィルムレスストレージから出て、旅をしている。

子供達はフィルムレスストレージから出て、旅をしている。

バカバカしい。先生は私に嘘をついている。私は知っている。この施設が、クソ最低の施設と繋がっている事を。先生は何で大胆な嘘をつくんだろう。私がこの事実を受け止められないとでも…?

「先生、旅をしに行くんだっけ?」

「うん、そうだ」

「でも、帰って来てないよね?」

「そうだな…帰って来てない。だけど少数の子供は帰って来てるんだよ」

「あそうなの…。見た事無いけど」

「そりゃあそうだろ?皆は個人の自室でいる事が義務付けられてる。アンリミングみたいに、施設内に興味を持つ子供なんて普通はいないんだよ。だから、他の子供の姿を確認出来ないだけ。本当は帰って来ているんだ」

「私、外の世界に行けるの?」

「ああ、そうなんだ。実はな、外の世界に行けるんだが…今回、アンリミングは9日に出る事が決定したんだ」

「一日早いんだ。なんで?」

「何で…うん、、それは…施設が決めた事なんだ。だから…すまん判らない」

「2年間も施設で働いて来て、まだ分からない事があるんだね」

「あ、ああ。結構まだ秘密にされてる事が多い。結構頑張って来たつもりなんだけどな…」

「私の他には何人が出れるの?」

「少人数で構成されると聞いた。アンリミングが知っているのは多分いないと思うぞ。アンリミングと同じ時期に施設にきた子供はもういないからな。全員が後から入って来た子供だ」

「そんな子達と、外界に出るの?」

「ああ、仲良くするんだぞ」

「時間は?」

「、、、、うん?」

「いつ?何時に出るの?」

「夜だよ…」

「夜?ヤケに怖い時間帯から旅に出れるんだね」

「そうだな…かなりの遠出をする事になるんじゃないかな…北側とかな。もっと言ってしまえば、ユレイノルド大陸に行ってしまうかもしれないな…。こりゃあ大冒険の始まりだな」

何その顔。不気味で不安定、感情の変化もぐっちゃぐちゃ。一貫性が無い。本当にそう思ってるんだったら、一つの感情を貫き通すはず。彼から露呈しているのは、複雑さを兼ね備えたコミュニーケーション障害の典型。

「気持ち悪い」

私は吐き捨てた。

「…え、、、」

「気持ち悪い…そう言ったのよ」

「どういう事だ?アンリミング。急にそんな言葉を投げるなんて」

「先生、今の先生、マジでリアルにガチでキモい」

「…、、、、、」

眉間に皺を寄せて、私が吐き飛ばした罵詈雑言に対して不快感を覚えた。

「……先生、もういい加減、嘘つくのやめてよ」

「…、、、、、、」

「ねぇ、嘘なんでしょ?旅なんて。そんな明るい言葉を使えるようなもんじゃないでしょ?」

「、、、」

「先生、今の先生とセックスしたいなんか全く思えない」

「……アンリミング…、、」

「分かってるよ。私、ニゼロアルカナに送られるんでしょ?」

「…そんな…、、、どうして…それを…、、」

「舐めないでよね私を。私、送還されるの?ニゼロアルカナに」

「違う」

「違う?先生はニゼロアルカナに私を送りたいと思っていたんじゃないの?」

「違う!!違うんだ!!聞いてくれ…」

「なに?いいよ、私、先生がニゼロアルカナに行った方がいいって言うんだったらそれに従う」

もう少し、押してみる。

「私は…先生にとってはそんなちっぽけな存在だった?私、、、先生にとっては直ぐに離せるぐらいのどうでもいい存在だった?」

「違うんだ」

「じゃあ、なに?」

声を荒らげた。その方が、もっとこの場を支配出来るから。私色が濃厚に反映されたフィールドで、先生の本性をあぶり出す。上辺だけでものを言わせず、先生にとって私がどの程度の存在なのかを、この機会に知りたいから。送る送らない…そして、私を脱出させる…とかそんな事はどうでもいい。

彼の心を、曝け出させる。抉ってやるよ。

ねぇ、先生。

私を脱出させるつもりだよね。

それはとても嬉しいことだよ。だってそうすれば、もっといっぱい先生と一緒に居れるんだから。

私は先生と一緒に新世界を創造する。

先生のバックアップが私の生きがいになる。

先生が私の全て。

私の人生を変えた、恩人。

これまでも、これからも。

ずっと一緒だよ。


「アンリミング、君だけで、ここを離れるんだ…」

「───え?」


──── ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━─── ━ ━

「Lil'in of raison d'être:Chapter.4 Patron」

If I have sex with you, will you stay forever?

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終わりました。前回にひきつづき、シリーズ最長の3万文字です。もうこれ以上増やすエピソードは辞めます。というか、もうちょい小刻みでもいい気がします。

はい。ニゼロアルカナ送還阻止編と言います。その前夜で幕を閉じました第四章。この先は…いつになるのか…まだ不透明ではありますが、必ず執筆に入ります。プロットは完成済み。シナリオも大まかな流れは完成しています。物凄く良いです。ファーブスとアンリミングの距離はどうなるんでしょうか。そこら辺がポイントですよね。書く側としても。頑張ります。

第四章終わりました。本当に大変でした。寝る間を惜しんで挑みました。何より楽しかったから続けれてます。誰も読んでない。そんな事はわかってます。でも、これが僕の生きがいなんです。リルイン・オブ・レゾンデートルがあるから、僕は生きてます。完結はまだ一切考えていませんが、先日最終章のプロット制作に入りました。壮大過ぎて、今の自分の執筆表現ではとてもじゃないけど不可能。そのぐらいのスペクタクル。絶対に書いてみせます。

さて、第五章です。さすがにこのペースは乱れます。ゆっくりと書いていきます。次は…久々の黒薔薇のストーリーが始まります。

それでは…、、、あとがきって楽しいね。

パーソナルな部分も書いてしまいそうになる。

ありがとうございました。

第五章もお願いいたします。


著者:1A13Dec7/沙原吏凜

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