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Lil'in of raison d'être/リルイン・オブ・レゾンデートル  作者: 沙原吏凜
第三章 愛紡ぐ月季/Chapter.3“yuèjì”
63/77

[#57.5-“praying for the lost”4119-00/38+7h]

「Lil'in of raison d'être:4119」EPISODE:2


[#57.5-“praying for the lost”4119-00/38+7hours]


「メティアと言ったか?」

「…、、、、、、」

「メティア、聞いてくれ──」

「名前で呼ばないで」

「…私はあの男とは違う」

「……、、、、」

「お願いだ、聞いてくれ…私は──」

「話しかけないで」

「いやあの…」

「あなたが考えてる事をこう。二人っきりになったタイミングで引き出そうとしている。だがどうやって話を聞こうか熟考しながら、私に話し掛けた。私のリアクションに動揺して見えない部位に汗をかき、動揺を浸隠そうとしている。今、それを私に暴露された所で再びの汗が吹き出した。今度の汗は中々に隠せるものじゃないみたいね。拭ったら?」

「君の力はセカンドとしては当たり前の力か?」

「そうだよ。私以外にも持っているのは多くいる。まだ習得出来ていない者もいるけど」

案外、彼女は質問には答えてくれるようだ。一切目線はこちらに向ける気は無いようだが…。

「君に、お願いがある」

「…、、、、、、」

「もうこれ以上の攻撃はやめてくれるよう、説得してくれ。君たちにはリーダーがいるんだろ?そいつに、コンタクトをとって話を持ち掛けてほしい」

「そんな事、出来ると思ってるの?」

「君はどうなんだ?現在の我々との争いをどう思っているんだ?」

「楽しいよ」

「楽しい?自分にはそう見えないんだが」

「はぁ?さっきっから何言ってんの?あんた。私に説教する気?」

「そのつもりは無い。メティアの回答によってはこちらも態度を変えさせてもらう」

「はぁ?マジキモイんだけど…あと名前呼びやめて」

「会話をしてはくれるんだな」

「…、、、、、」

「少しは私の事を認めてくれている…と思っていいのか?」

「別に、そんなんじゃない…やる事が何も無いから…あんたの臭そうな口から吐き出されている言葉に付き合ってあげてるだけ」

「面白い言葉を使うんだな君は」

「アァん?殺すよ」

「今の君には無理だろうな…そして、これからも。君がその態度を貫くならの話だ」

「私が態度を変えたら、これを外してくれるの?」

彼女の顔色が変わった。何かを悟ったのか、悪鬼迫った表情から表情筋を一切使わない顔を見せる。

「そうだな…まぁ君に攻撃の意思表示が完全に無くなった…と断言出来る時だが」

「じゃあ一生このままって事ね」

「さっき迄の威勢はどうしたんだ?」

「…、、、、なによ、話に付き合ってあげてるんだから、有難く思いなさいよジジイが」

「先程の…ティラントと言う男…あの男の発言には少々の不貞表現があった。それについては謝る。これじゃあ君達とやっている事は同じだ」

「はぁ?え、なにどゆこと??私達とあのゴミジジイの言ってる事が同じって言ってんの?」

「暴力と暴言は同等の力を持つ。あの男の発言は君達の暴力と同じカテゴリーに属す言動だということだ」

「へぇー、あんた、面白い考えあんじゃん。ただまぁ別にあのジジイが言ってたこと、あたしは何も思ってないから。そんな謝罪しなくていい。要らないから」

「そうか…わかった」

案外、彼女とのコミュケーションはスムーズに進行出来ている。セカンドステージチルドレンと対話するのは難しいことでは無いのかもしれない。やはりSSCの器は人間と同じ。人類との共生は不可能では無いと改めて思う。何故メティアがここまで普通に質問に対して、回答してくれるのか…バラードはその真意を問う。


「メティア──」

「名前で呼ばないでキモい」

バラードの対人接近を試みる名前呼びに、俯きながら早口で発言を制するメティア。

「君は、何故ここまで私の質問に答えてくれる?」

「暇だから」

「今、何もする事が無いから…と思っていいんだな?」

「“ヒマ”ってそういう意味でしょ?ねぇ?答えてあげてるんだから、バカを晒すのは勘弁してよ…“おじさん”」

メティア、この子の発言からして普通の人間の女の子だ。年齢も15歳ぐらいに見える。人間だと言われてもそう思うしか無い。とても悪魔だとは思えない。

「君は凄い人より人らしい性格を持ってるんだな。人格形成とかは何に影響を受けてるんだ?」

「別に、あんたらと同じなんじゃない?普通に親からだけど」

「親…子供が出来るシステムは、人類と同じか?」

「それ、女に聞く?変態じゃないの。あのゴミジジイとあんたも同じなのね。なーんかガッカリ」

どうやら、人間と同様の生殖機能もあるようだ。この38年間。セカンドステージチルドレンは繁殖し続け、子供に戦闘訓練を行ってきたのか。では、その教えた者達は…。

「この9年間、姿を消していたが、何をしていたんだ?」

「うーんとねー、、、ナイショ」

「無理はお題か?」

「うーん、、、まぁ、いいけど…、、私もよく覚えてないんだよねー、9年前なんて、私、ちっちゃい時だもん。まだ受精卵だったと思うよ」

「なに…?まだお腹の中にいたっていうのか?9年前は?」

「そうだけど…?なんなの?その迫り方。めっちゃキモい」

まさか…9歳…いや、信じられない。こんな容姿の整った9歳がSSCでは当然なのか…?成長速度が異常に早いんだ…。メティアとの会話、様々な秘密が解明されていく有意義な時間に出来る。この貴重な機会を逃すまいとバラードは次の質問を込める。

「君のグループはどうして──」

──

「ねぇ」

──

下を向いていた頭が、この言葉をきっかけに真正面へ。彼女から、5分ぶりの視線を受けた。

「今度はこっちから質問してもいい?おじさん」

「あ、ああ。いいよ」

少しの躊躇いもあったが、人類側からの一方的な質問は不平等。かと言って、彼女から人類に対して質問する内容があるとはあまり思えない。だがこの彼女の質問は、私を“対話の相手”として認識している…と解釈できる。

ここは迷わず、彼女からの質問に受けて立つとしよう。

「あんたら人間はさ、どうして諦めないのよ。いつもいつもあたし達が攻撃する所にやってきては、やられていき、やってはやられて…その繰り返しの日々じゃない。なんでそこまでしてセカンドステージチルドレンに抵抗するのよ…?なんでなのよ?凄い気になるんだけど。普通に。」

純粋無垢な顔の中に、抑え切れない殺意が芽生えている。彼女の瞳には紅く輝いたこの世のものとはとても思えない、敵意剥き出しの紅玉が嵌め込まれている。紅き眼球。バラードは戦慄した。この少しの対話で彼女とはほんの少し、微量ながらも打ち解けたような気がしていた。

だが彼女にはそんなもの1ミリも感じていなかった。

俺を殺そうとしている。

ハッキリと判った。

彼女はこの質問の回答によって、俺を裁くつもりだ。回答がどうであれ、殺すんだろうが…。質問をした意味が何なのかは不明。だからこの質問の回答と結び合わせて、気に入らなかったらフルパワーでこちらに迫るかもしれない。

自己再生能力を有するセカンドステージチルドレン。

アンチSゲノムブッシュ搭載の磔刑オブジェクトとは言っても、所詮はプロトタイプ。もしや、俺の気が休まる瞬間を狙って、この質問タイムを力の温存に当てていたのかもしれない。可能性は高い。

目を見開くわけで無い、紅玉となった眼球から繰り出される視線が、指向性レーザービームのようにバラードを突き刺す。

「これが、残された人類の宿命だからだよ」

「宿命ねぇ、それ果たす意味ないし、果たせないし、無謀だから諦めたら?」

「いや、諦めないよ。人類は諦めない。這いつくばって、最後の一人になっても、這い続ける。足を失おうと手をもぎ取られようと、舌を抜かれても──」

「目玉を抜かれても…??アッハハハッ!!何それー!実際そんなのにあったら、何も出来ないくせに何カッコつけてんの??やっぱりあんたはバカだね、大バカだよ、あんたは面白いからあたしの奴隷候補で留めといとあげる」

「どう思ってくれても構わない。だけど、君とは争いたくない」

「はァ??????」

「メティア」

「名前で呼ばないで何度言えばいいの」

「素直になったらどうだ?」

「はぁ?」

「メティアは、こんな事を望んでいないんだろう?」

「…、、、、」

「表情を見たら判る。それは偽りの仮面だ。激情するさまをあえて見せて、戦争から逃げろ…そう遠回しに伝えているんだろ?」

「、、、、、、」

「その無言はどういう意図があるんだ?」

「うーん、、、あたし…あなたの事を誤解していたのかもって…思ってる…」

「分かってくれたのか?」

「うん…あたし、、、人間って最悪な生き物だって教えられてきた…。先代からずっとそう言われてきたから、あたし、それ守ってた。でも、、あんたの顔みてると、そうでも無い気がしてきた。分かるんだよね、あたし達って。今のあんたの感情。読み解く事が出来んのよ」

「君は…この生活を続けたいと思っているのか?」

「続けたい…というか、本当にこう生きろ…としか言われてないから…あたしにはこの生き方しかないのよ」

敵意剥き出しの紅玉は消え、落ち着いた表情でこちらに視線を送る。突き刺すような鋭利な眼光はもう存在しない。普通の若い女の子が磔刑に晒されている異常な状態…という構造になってしまった。

「あのさぁ…分かったよ…あんたのそのさっきの願い。受け止めてあげる。そんで、なんだっけ…リーダーに争いをやめるよう伝えてほしいんでしょ?」

「ああ、やってくれるのか?」

「結果がどうなるか、わかんないけどね…。まぁでも取り敢えずやってみるよ。だからさ、これ、外してよ」

「これをか?」

「そうだよ、じゃなきゃあたし、これだと動けないもん…」

これには迷う。これを外せば彼女は自由の身となる。するとどうなるか…そのまま木っ端微塵に剣戟軍総合本部を吹き飛ばすか…?そうなったら確実に多くの犠牲者を生むことになる。更にここはゲッセマネプロトンの製造ラインも兵器開発と同時展開でプロジェクトが進行している。ここを破壊されるのは史上最悪の結果だ。折角発見したセカンドステージチルドレンへの対抗策を呆気なく損失する事になる。

「ねえ、外してよ。こっちに来て?」

メティアは、自身がいる部屋の方へバラードを誘う。

その表情は女の武器をフルに活用した、妖艶な様だった。

「…判った」

「来て」

彼女がいる方の面会室へ入室。

「もう痛かったんだよ…?あたし、死んじゃうかと思った…」

「すまないな…それは本当にすまないことをした…」

「ねぇ?こんな事してもいいのかな…?あなた…そういえば…名前聞いてなかった…なんて言うの??」

「私はバラードだ」

「バラード…うん、いい名前ね…ねぇ、バラード?あたしさ、最近シテないんだよね」

まだ磔刑の拘束は解いていない。

「ねぇ?こっち向いてよ…?ねぇ、この部屋って誰かが見てるの?」

「いや、誰も見ていない。監視カメラはあそこにあるが、おそらくこの時間は他の警備の方に向かっている」

「へぇー、セカンドステージチルドレンが捕まっているのに…甘いンじゃないの?あたしが暴れたらどうするつもり?」

「君はもう暴れない。私には分かる」

「へぇー、あん…バラードって、人生まだまだしょぼくれてんじゃない?」

「そんな甘々さじゃあ、、、あたしらには敵わないよ」

拘束を解いた。セカンドステージチルドレンが解放された。人間が目の前にいる対人状況で、二人っきりの空間で、隔離された独房のような無音の空間で。

「メティア、君はここから──」

「ねぇ…あたし、あんたの事、少しだけいいなって思えてきたんだよね」

「え…」

「そのナリ…案外嫌いじゃない。見た所、スタイルも良い、デブじゃないよね?着痩せっていうのはやめてよ」

「いや、、私はそこまで太ってはいない」

「ふぅーん、、、、ねえキスしようよ」

「、、、何を言ってるんだ…」

彼女は拘束が解かれたと共に、バラードへの肉体的接触を試みている。勿論、そんな事を許容する程、バラードは安直な兵士では無い。

「随分、鍛え抜かれた感じだね…あたし…そういう男に目がないの」

「…、、、、」

女の武器。仮にセカンドステージチルドレンが人間だとすると、メティアは類を見ない美しさを放っている。そんな異次元な美貌を駆使し、迫り続ける。彼女の言葉が紡がれるにつれ、距離を縮まる。バラードが離れようにもそれに呼応するようについてくる。

「ねぇ、、、、逃げないでよ…。なぁんだ…もうここ、結構熱いじゃん…」

「おい…やめてくれ…」

「やっぱり人間も私達と同じ。それもそうか…人間の器を借りてるに過ぎないんだから」

「…、、、、」

「ここ、最近いつ使ったの??」

「いい加減にしてくれ」

「今のあなたにあたしの力が制御出来ると思ってんの?」

「クソ…」

生憎、プロトタイプ作動装置は手元に無い。どうして所持せずにここまで来てしまったんだ…。悔いる。

「ねぇ、おっきくなってきてる…身体の方は答えてくれてる…はーいってしてる…かわいー」

「君は──」

「『メティア』…さっきそう言ってたよね?なにそっちが壁作り始めてんの??」

「本当に…いいのか…??こんな事をして…」

「女から攻めてるんだから、当たり前でしょ?、、、それとも、あたしじゃイヤ?」

「メティアは、セカンドステージチルドレンだ。こんな事、許されるわけない…」

「これでも本当に、セカンドなのかな…?」

バラードの手掴み、メティアは自らの胸へと誘った。

「ねえ、セカンドのおっぱい、どう?結構おっきくない?」

彼女の鼓動と共に、直接的に感じる性の暴力。彼女の行為を受け入れている現状を、満足してしまっている自分がいた。そんな自分が長く続くともなると…バラードは気づいた。己に課せられた宿命を。

相手はセカンドステージチルドレン。

人類を脅かす最大の敵。悪魔の末裔。

正史を狂わす危険因子。

絶滅させなければならない、根絶すべき生命。

彼女の快楽と、一瞬の愉悦に浸った10秒にも満たない亜空の時間。

そこからの脱却は、業に任せるしかないと悟った。

「、、、、、違う…これは、、、ダメだ!!」

メティアを突き放すバラード。何かを決心したかのような表情をみせ、自らのポジションを再確認した。

「はぁ、、、ちょっと遊ぼうかなって思ってただけなのに。本気になっちゃうんだぁ?」

「君とはこんな関係にはなれない。なれるはずが無い」

「何カッコつけてんの。一瞬でもあたしのおっぱい触って、興奮してたクセに。その時のアソコ、反り返ってたよ」

笑いながらも、小悪魔な表情でバラードへの接触を振り返る。

「なんなんだ…君は。どうして人間とこんな関係性を築こうとする?」

「うーん、したかったから。しただけ。それ以上でも以下でも無い。どうしようも無くしたかったから…っていう訳でもないし、あなたが特別な存在でも無い。ただ、したかっただけ。ただただ、私の性処理に付き合ってもらおうと思っっただけ」

「止めていなければ、あのまま誘おうとしていた…という事か?」

「あれ!ヤル気だった??ごめんね…!うん、あたしはそうだよ。そのまま挿れるまで。、、、する?」

「ふざけるな」

彼女は正気じゃない。セックスの関係値を低く見積もり過ぎだ。それにこんな場所でしようなんて、セカンドというものは、こういった奴らの集まりなのか?

「バラードさん!」

彼女が再び、距離を縮める。いや、再びなのか…?もう短時間で何回も行われた事を、また実行して来た。

「さっきはすみません…、、、もしかして…人間の世界では、セックスって結構な関係性を築かないと、ダメなんですか??」

しっかり“セックス”と言ってきた。繁殖文明は、共通なのか…。

「、、、、うん、それはそうだ。君の行動には驚いた」

「そうなんだ…じゃあ、謝るね。ごめんね」

吐息が伝わるぐらいに接近され、謝罪をした。彼女の艶やかな肌質はこの短時間で何度も見たが、決して飽きる事の無い高品質なものであるのは確かだ。

「いいんだ、さぁ、私の気が変わらない内に早く行ってくれ」

「え、、、?」

「どうした?行けと行っているんだ」

「なんでそうやって直ぐに解放してくれるの?」

なんでだろうな…おかしな話だな。恐らくこんな姿を見つかりさえすれば、私は首だ。脱退宣告待ったナシ。でも彼女を見ていると、信頼に値する人物かもしれない

…と思ってしまう。分かっている。相手は悪魔だ。悪魔を信用するなんて、狂ってるとしか説明出来ない。ただ…何故だろう…判らない。判らない。判らない。

「ねぇ、無言なのなんなの?へぇー、あっそ。まぁいいけど。変なの。じゃあさぁ!あたしと一緒に来る?」

「は、、、」

「あんたも、バラードさんも!あたしと!一緒に!出るの!ここを!」

「何を言ってるんだ君はほんとに」

「だって、あんたあたしを解放したなんて、見つかったら、もう助かりようが無いでしょ?」

───

見つからない。そんな事絶対にない。

───

「だからこれを機に、寝返るのよ!あたし達、セカンドステージチルドレンに!」

「そんな事できるわけ…」

「出来るから言ってんの!話はあたしがつけとくからさ」

「いや、、、」

「ねっ!バラードさん行こうよー…あたしの事、少しでも信用してくれたから、拘束解いてくれたんじゃないの?じゃあこんぐらい付き合ってくれるよね?」

「いや、、、それは、、、」

「あたし、さっきあんな事、言ったけど…バラードさんは良い人間かなって思ってるんだよ?」

「…、、」

「その困惑した顔はなんなの??あたしがエッチ好きな女だから引いた?もう大丈夫だから!バラードさんには、あんな対応はもうしません!はいこれ、誓いの挨拶」

「指切りげんまん…」

「そ、指切りげんまん。しよ?」

「本当に、いいのか?」

「うん、大丈夫」

「私は、人間なんだぞ?争い合っている敵だ」

「堅苦しい事、言わないでくれる?話はつけるから。もし、バラードさんが怪我するような事になれば、あたしが助けるから。守るから」

「…、、」

悩まされる。いや、悩んでいる時点でおかしな事だ。悩む事なんて無い。行っても殺されるだけだ。これは罠だ。罠に違いない。私を拘束して、尋問して、納得のいかない答えが続けば拷問を尽くすんだろう。

拷問を予測した思考の機転となったのは拘束時のメティアの表情だ。ティラントの煽りで、彼女は予想だにしていなかった悪鬼を露呈。セカンドステージチルドレンの文化がどんなものなのかを知る由は無い。だが、知る必要も無い。

暴悪を好き好んで実行に移す戦闘集団だ。拷問という考えに落ち着かないなんて、有り得ない。

だが、現在の彼女に、そんな暴悪は微塵も無い。普通の女の子。

出会った時、拘束時、解放時、快楽を求めた時。

どれも違った表情になるのは、感情が乗っているりゆうでもあるが、それ以上に彼女が“人間人間している”といった点を捨てる事が出来ずにいた。

上記のシチュエーションを人間が体験すれば、メティア同様の感情を露わにするだろう。

セカンドステージチルドレンは、人間?

こんなにも超越者と接近した人間は今までいない。

私を望んでいる。

彼女からのインビテーション。

受け取るにはそれなりの理由が必要だが、自分の中で固まった感がある。

セカンドステージチルドレンと我々の共通点。

それを通信で本部に伝え、赤い鎖プロジェクトの力にさせる。何かSSCに対抗出来るような策を傍受し、新たなる兵器製造への役に立つ。

奴らの住処に行くのは、赤い鎖プロジェクト最終段階への絶好のチャンスだ。これを逃す訳にはいかない。

行こう。決断しよう。

死んだら…もうそれは本望だ。致し方あるまい。

寝返った訳では無い。ここで私が居なくなると、剣戟軍はそう解釈するだろう。何せ、メティアの存在も居なくなるのだから。だが、分かってほしい。

通信で私のメッセージを受け取るまで、本部には私の処遇判断を保留にしといてほしい。

必ず、死なずに奴らの弱点を突き止めてみせる。

必ずだ。


◈───────────────◈

ねえ、なにやっているの?

ねぇ、どうしてひとといるの?

ていうか、なぜ、そんなにたあいもないはなしをしてるの?

やめて、そんなのといっしょにいないで

いちゃだめ

ぜったいに

にてる

わたしをおとしたのににてる

こんなものをめにうつしちゃだめよ

わたしとおなじめにあう

やめて

わたしのだいじなこどもなの

だいじなだいじなこども

ふたりもしんだわよ

あなたのだいじななかまが

ころされた

むくいをあたえるべきよ

はやく

そこからはなれて

やだ

こんなのといっしょにいるなんて

みとめない

やめて

はいじょして

はいじょしなさい

はやく

このおとこをころすのよ

さぁやって

はやくやって

はやくやるのよ!!

◈─────────────────◈

『はい、殺します』



メティアと共に忠誠を誓うリーダー達の元へ…と、意を決した刹那、バラードの身体を力強く壁に打ち付けるメティア。メティアの表情は再びの剥き出しの憤激を顕にしていた。

「ねぇ、、、、あんたマジでバカじゃないの?こんな事であたしを解放してさぁ??」

バラードの身体をドスンドスンと何度も打ち付ける。バラードは激痛のあまり声も出せずにいた。身体がめり込むぐらいに打ち付けのパワーは増す。壁の材質は石膏ボード。決して柔らかいとは言えない硬さ。そんな所に何度も何度も何度も、身体を打ち付けられる。バラードの肩を握り、最大の握力を込める。方法なんてなんでもいい。外敵が苦しむ姿を見られればそれで十分。技なんて何も無い。ただただ痛がる様、そして自身の発散になればそれでいい。メティアに先程の妖艶さは無い。バラードの視界に映っているのは、紛れも無い正真正銘の悪魔。9年前以前の人類が忘却する事の出来ない抹消したい記憶として伝承の域にならない、更新される悪魔の凶行。

「あんたさァ?7時間前いたよね?ねぇ?いたでしょ???良くも殺したな…よくも!!!あたしの仲間を殺したなぁァァァァ!!!ネシュロス、チュベッジ…。二人を無惨に殺しやがって…!!!死ねよ!死ねよ!シネよ!死ねよ!!死ね!!死ね!!死ね!!死ね!!死ねぇぇぇぇエエエエェえ!!!!」

今、バラードは9年ぶりに悪魔の姿を視認した。

壁への打ち付けは、背中から骨が突き出した絶命寸前まで行われた。バラードに意識は無い。部屋の中は彼の血で覆い尽くされ、面会に使用する透明壁には乱れた血液が、赤い薔薇を模様していた。飛び散った血は、当然の如く眼前にて虐殺を実行した張本人にも浴びせられている。ここまでの血を浴びたのは久々だ。彼女は途中から、この虐殺を、口角を上げることでより自身の肉を踊らせていた。

狂った心と、それを赦す肉の本懐。

全てのパーツが脳内から伝達された殺戮信号を許可し、行動に移される。そのようなシチュエーションを経験するのは久々だったので、彼女の気持ちよさも計り知れないものとなった。

「心音、脈拍、体温、血圧、基準値より大幅に下回る。バイタル指数低下。生命反応極大低下。胸骨破損、肩甲骨露出、肋骨実行者の腹部に命中するほどの露出。ふぅ、ちょっとやりすぎちゃった…。つーか、なぁんでこれ外してくれたんだろー?ンまぁいいや。帰ろー」


メティアは、隔離面会室のそれほどの高さには無かった天井を突き破り、外界へ。

「うおー、なんだここ」

視界に広がるのは巨大な大都市。

「あれ、、、ここって…、、、もしかして…ツインサイド!??へぇーー、、聞いてた噂通りの所じゃん…人間いいなー人間いいなー、、、あたしもここでオシャレしたい〜!!」


「非常事態発生、非常事態発生。拘束隔離面会室にて、《第94次》事案ターゲット拘束中のセカンドステージチルドレンが逃亡した模様。繰り返す、拘束隔離面会室にて、セカンドステージチルドレンが逃亡した模様。特殊作戦部隊隊長バラードが、死亡しました。至急、戦闘員はコンバットモジュールへ装備を移行してください」

ツインサイド剣戟軍総本部は騒然となる。

「おい!これは一体どういう事だ!」

「分かりません…セカンドステージチルドレンが逃亡したようです」

「何故、逃亡なんて事ができるんだ!レッドチェーンは?」

「外されていました。その近くにバラード隊長がいたようです」

「バラードが?何故セカンドステージチルドレンの部屋の方に入ったんだ?おい!!面会室の監視カメラをチェックしていた者は?!」

「いません、先程まで生産ラインの警備に全警備部隊が投入されていたためです!」

「全部隊!?」そんなに動員する必要がどこにあるんだ!誰だ!そんなクソジジイみたいな指令を出したのは!」

「バラード隊長です。全警備部隊への通信が可能な《オールサーバー》にチャット履歴も残っています。間違いありません」

「監視カメラ映像も残っていません!アーカイブ機能が何者かにより手動で停止されています!本映像もダミー画像が使用されていたようです」

「なにぃ?あの野郎…何をしていたんだ…」

「ツインサイド警戒巡視航空船団へ。こちら総合指令本部。拘束中のセカンドステージチルドレンが逃亡した。まだツインサイド周辺領域にいると思われる。絶対に逃がすな!!捕まえろ!いや、生死は問わん。殺せ。アンチSゲノムブッシュは?」

「大佐、事前に空軍にも手配されていました。先程、アタッカー部隊を最優先にアンチSゲノムブッシュの搭載作業を完了しております」

「よし…殺せ」

「了解」

ラティナパルルガ大陸剣戟空軍基地から攻撃特化部隊《対象物駆逐式全角方面隊》、別名“全角方”が出撃要請を受託。

4機の戦闘攻撃機ドットタイガーが基地を離陸。

1分後にツインサイドへ到着する。

「アタッカーフォーメーション展開。ツインサイドエアポート周辺を旋回中の全旅客機への領域外航行を要請」

「セカンドステージチルドレン反応は?」

「申し訳ありません…信号受信しません。まだ赤い鎖プロジェクトは完成形に至っていないようです」

「レッドチェーンの複製作業は?」

「レッドチェーン系統の開発作業は順調です。今は兎に角、時間が必要なだけです」


問題のセカンドステージチルドレン、逃亡したメティアは未だにツインサイド自治領域に滞空中。

ツインサイド剣戟空軍はその姿を確認出来ていない。

「うひょーー凄い所にいたんだなぁー、あん?なんかきてんの?」

ツインサイド滞空中のメティアが地上を視察する。行き交う人々、響音する警報音、電波塔から探知できるハイボルテージの鳴動、剣戟軍の兵士間で繋がれる発信信号と会話記録の乱打。セカンドステージチルドレンが大都市に放たれた事によって人間達は大パニックを起こしている。

「あたしに怖がってる!怖がってる!怖がってる!怖がってる!!!何これー!!すっごい楽しい!!空からみみてるとやっぱり人間の動きって単調なんだよなぁ…そんなんじゃあたしからは逃れられないのに…。ホントにダさいよね…」

どうしようもないぐらい、人々の怒号と悲鳴が飛び交う。メティアは地上から800m以上ものを距離を維持しながら滞空している。だが人の声というものは感情の沸点を超えると盛大な喧騒を表現する。大小様々な声色が混合し、男女ミックスの喧騒音は地獄から這い蹲る武者のようなカオスを形成。

「どうしよっかな…ここ一気に吹き飛ばしてもいいんだけどなぁ…でもまだ、ここをやるなって言われてたっけな…今が凄いチャンス到来!って感じなのに…、、もー」

「目標を肉眼で確認。目標は未だツインサイド直上を滞空中。行動停止状態にあります」

「攻撃開始」

「了解。全角方、攻撃開始」

「ドットタイガー、ファイアブラスト」

「オンターゲット」

「ファイヤー、コンプリート」

「ゆん?なに」

ドットタイガー全機による無制限ミサイルが目標であるメティアを集中砲火。

メティアは逃げる訳でもなく、その場から立ち去らず剣戟空軍の攻撃を直に受けた。爆発音が発生し、上空には突風と爆煙が発生。確実にセカンドステージチルドレンへ攻撃が直撃したと確信した。6秒間もの沈黙の後、直撃ポイントから爆煙を吹き荒らす衝撃の風が発生した。超長距離からの無制限ミサイル攻撃を決行したドットタイガー群にもその衝撃は緩く伝わる。

「これで終わるわけないか…」

「これで幕を閉じる程、我々が倒そうとしている敵は甘くありません」

「目標セカンドステージチルドレン、健在」

総合指令所にて、目標の生存反応を確認。全角方にも観測情報は全て伝達され、次の攻撃へとシフトする。多連装ミサイルを込めた先程の集中砲火よりも大幅な火力を外敵に与える事が可能な全角方の切り札と言える攻撃フェーズだ。

「ふぅ、、、ちょっと効いたかなぁ、、いたたたた。女の子には優しくしなさいよ。なにこれ…くっさ…はぁ?、、、うわ、、もうマジで嫌かも…うーん、、、どうしよっかな…、、、これ!やってみよ〜かな…」


「目標から高エネルギー反応!」

「なに…!」

総合指令所が滞空中の目標から体内から注数される収束物量を探知。当該エネルギーをシグナルしたのは、9年前以前の事。総合指令所の古参オペレーターは畏怖。この先に巻き起こる最悪の事態を予測した。

「これ、、まずいですよ」

「ツインサイドを吹き飛ばす気か?」


────

えっとー、どうしよっかなー〜

────

「おい…なんだ今のは…」

「はい、、、私にも聞こえました」

「私もです」

総合指令所、地上の退避作業防衛管区員と多角式陸上機動連隊、そして現在出撃している全角方。ツインサイドへの緊急オペレーションに対応している剣戟軍兵士に、謎の“ボイス”が脳に響く。

──

あーー、、聞こえてるんでしょ?

あのね、、、このまま加速管を維持し続けると暴発を起こして、私でも制御出来なくなるぐらいのエネルギーになる。これ、、止めて欲しい?どうするー?もうやばいよー!加速管もどうにも出来ないよー!あたしも早く手放したいんだよねー。あたしを倒せばいいんだよ。さっきのアレ、少し効いたよ。気持ちよかった…だけどあれは、ただのあたしの快楽にしか繋がらないなー。もっとやってほしいけど…。アレ以上の攻撃見せてくれたら、止めてあげる。あたしはそこまであんた達に恨みは無い派閥のセカンドだから。タイムリミットは二分後ぉ。よろPくねー。

──


「あの女の声だな…」

「間違いない…SSC遺伝子による波長神経通達だ」

セカンドステージチルドレンから選択を迫られた。

現在目標が発現している高エネルギー物量、SSCは“加速管”と呼称しているものが間もなく自らの制御下を離れ、ツインサイドを攻撃する。この加速管発現は以前、9年前に経験がある。ブラーフィ大陸に撒き散らされた汚染ウイルスの蔓延を数値情報化させていたが、その情報と今回の加速管が酷似しているのだ。汚染ウイルス事案の他にも多数の高エネルギー探知のケースは確認されている。

SSCの主力攻撃として、剣戟軍には認知されていた。当該高エネルギー反応を確認した際への剣戟軍の対抗策はゼロ。だったが、現状は違う。ゲッセマネプロトンをサルベージした今、赤い鎖プロジェクトが進行中だ。この赤い鎖プロジェクトから派生したアンチSゲノムブッシュ及び、既存兵器含有式と正規完成間近のレッドチェーンを対抗策として立案した“対セカンドステージチルドレン改正駆逐作戦”。この作戦が展開出来ればいいのだが、


目標から与えられた猶予はたったの二分。こんな時間では正式な完成には間に合う訳もなく、剣戟軍は路頭に昏れる。この時間、SSCからしてみれば本当に猶予を与えたに過ぎない。この時間でどうにかしてみろ…と言われているような、“挑戦状”解釈できるメッセージ。9年前以前ではこんな事は考えられなかった。

目標のSSCは人類と交信を許可した。これは偉大なる一歩と断定してもいい事象だ。この歩みが二分後の人類にどのような影響を与えるのかは、少なからず…いや大方予想が着く。多分、確実に、断言出来る…。

─────

律歴4038年2月20日。

王都ツインサイドは破滅する…。

───────────────────┨


この二分間、人々は思い思いの時を過ごした事だろう。家族、友人、仲間。それぞれの時代で交わされてきた人脈を掘り起こし、お互いが最期の言葉を紡ぐ。剣戟軍、大陸間政府にも作戦展開の文字は頭に無い。

終わる。

世界が終わる。

ツインサイドの破滅はテクフルを統括する最重要ポジションの崩壊を意味する。人類に抵抗は無かった。抵抗する力が残されているなら、彼等は過去を思い起こした。約束された未来の抹消。

虚構の無い、永く調和と繁栄を齎す現在への離別宣告。

光を失った光明な空から、一つの終局の扉が開かれる。

時が経つ。

無情にもその速度は感じたことも無い、無邪気な子供のように我々の意思とは反した素早い動きを全うする。

静止なきノールールの時の車輪。

止められるものなら、止めてみせたい。

そんな叶うはずも無い、悪魔への反乱。

悪魔が宙を舞う。

そんな光景を何度も見た。現代に於いて、彼等の凶行を見た事が無い者はいない。視界に入れたく無くても、どう視線を逸らしても必ずその時は訪れる。

この世界、時代に生まれた人間への生存継続必須条件。

この必須条件は難易度が高いもの…と認識されていたが、9年前でそれは潰えた。恐れる者は多くいた。眠れない日々を過ごす人類の過酷な悪夢は、“潰えた者”と“潰えなかった者”に二極される。

魂の根幹を揺さぶる時間は、今このときを持って、都市人類の思考を統一化させた。


────

二分経った。なんんにもして来ないんだね。なんかガッカリ。思う存分、やり合えると思ってたのに。抗う術なんて、まだまだあるはずでしょ。うーん、、、なんかあたし、疲れちゃった。無許可の破壊活動も禁止されてるし…。んじゃあ、帰るね。多分次はここ焼け野原かな。それまでに傾向と対策、しっかりしておくよーに

────


加速管が消失。高エネルギー反応も危険レベルからダウン。並びに滞空中だったSSCも姿を消した。

「何が起きたんだ…」

「今の声…生かした…と受け取っていいのか?」

「セカンドステージチルドレンが、人類を生かした?」

「なんてお人好しな女なんだ」

「でも…最悪の事態を免れました…」

「信じられないがな…」

「やはり、この9年間で奴らの考えに変化が現れたんでしょうか」

「それは無い。根幹の部分にあたる性格はどうなろうが変わる事は無い。セカンドが人と酷似している点に於いて、性格概念は同等と確証されている」

「攻撃対象物を見失った全角方への指令をお願いします」

「…、、、作戦展開終了。全角方は空軍基地へ撤退だ」

「了解」


剣戟軍観測サイトからセカンドステージチルドレンが消えた。肉眼でも確認する事が出来ず、剣戟軍は“逃亡”と改めて判断した。しかし、これは誤った判断となる。

メティアはまだ、ツインサイド領域内にいる。


「メティア」

「あー、ごめんなさーい。さっきっから連絡してた?」

「ああ、心配したぞ。その様子だと、戦闘を行ったようだが…ネシュロスとチュベッジの生命反応が確認できない。一時期はお前の生命反応も薄かった。どういう事だ?」

「殺されたよ」

「なに?」

「人間達に殺されたよ」

「そんな馬鹿な…人間に我々が殺せるはずがない」

「私だけ生き残った…人間はSSC遺伝子を保有している。入手経路は分からない」

「人類が我々を脅かす兵器を開発した…という事か?」

「そう、もう痛かったんだから…」

「自己再生は?」

「したから、今こうやってあんたと話してんでしょうが」

「現在の座標は?」

「座標とかじゃなくて地名を言えば直ぐに分かるとこ。ツインサイドよ」

「ツインサイド?ラティナパルルガの都市か」

「そうよ」

「そこは…」

「分かってるって…止めたよ。何にもやってないから」

「そうか…ならいい。ツインサイドを破壊するのは次の世代だ。我々が果たす事項では無い」

「ハイハイ」

「では早急にポーターズウェッジ島へ帰還しろ」

「えぇー、早く戻らなきゃダメ〜?」

「当然だ。お前は今、人類を脅威に曝した。許可の無い攻撃表示は禁止している」

「帰ったら、絶対説教じゃん…ねぇ、、、《ドレージャー》からも言ってよー」

「私には無理だ」

「ぶぅー、ケチ」

「早く戻って来い。お前を心配して言ってるんだ」

「なにそれー、あんたらしくないじゃん」

「早く帰って来い」

「あ、切られた…」


「うーん…なんか折角こんな所来たんだしなー。地上歩きたいなぁ…いっぱい人いるけど…。なんかこれ逃したら、もう来れない気がするしなぁ。多分次来る時はここぶっ壊す時だもんなぁ…。うーん、、、よしっ!ちと歩いて回ってみるか!でもこの姿じゃなぁ、、、まーたさっきの食らって嫌な目にあう事なるしな。あ、そうだ。こーいうときに役に立つのが!!《Mr.グロピウス博士》の変装キット!諜報活動の時に役に立つって言ってたけど、まさかこんな“日常を送ろうとしている時”に役に立つなんてね。まぁいいや、グロピウス博士使わせてもらうよ」

グロピウス博士から受け取っていた変装キットは、今まで黒の様式を統一させていた戦闘服から一変。夏服から冬服まで、男女のカテゴライズも搭載されており、数十種類の衣装パターンが含まれていた。腰に巻き付けるポーチの中からありとあらゆる多様な様式へと着装が可能。更には音声認識機能で発言内容に沿った衣装をAIが査定し、提供する。

「ウーン、、、“人間が着る可愛い感じの冬服”、、お願い」

メティアの音声は直ぐに反映された。

自己処理を行い、着装が実行。

「こ、こんな感じで…いいのかな…」

ツインサイドの路地裏へ移動。誰にも気づかれる事無く、ツインサイドへの侵入を完了した。未だ警戒レベルは落とされていない。平民の避難命令も解除されたばかりで、メティアが起こした騒動は終息していないのが現状にある。メティアがいる路地裏など、人が来る理由の無いところだ。

普段は、危なっかしい奴らが集うアングラな場所みたいだけど、今ではこんなにも閑散としている。壁に落書きもあるし、かなり嫌な匂いが漂う。ゴミ袋もあちらこちらに無造作に置かれており、清掃するとなると心が蝕まれるぐらいズタボロになるだろう。メティアはこの状況に対して、嫌な顔一つせず──

───────

「ンなわけ、ねぇだろーーがーああああー!!!!」

───────

メティアに聞こえた声、久しぶりですね。

4119シリーズは多展開にシフトできるストーリーを考案中。というかほぼ出来ています。今後、どこかしこに差し込みます。

よろしくお願いいたします。

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