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Lil'in of raison d'être/リルイン・オブ・レゾンデートル  作者: 沙原吏凜
第三章 愛紡ぐ月季/Chapter.3“yuèjì”
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[#57-甘美の血]

第三章 最終話

[#57-甘美の血]


ハピネメルが提供したケーキ。美味しかったは美味しかったけど、お腹パンパンになるかと言われたらそうでもなく、その後、二人で一緒に夕飯を作った。その時もハピネメルの技量がこれでもかと発揮されていた。

「スイーツを学びに行ったんだよね?」

「そうですよ、でもスイーツを学ぶにあたって他の料理の才能も開花したみたいです」

「へぇー、ハピネメルは天才だねー」

「えへへ」

嘘だ。スイーツと肉料理に関係することなんて“料理”という事だけでは無いだろうか。共有される調味料も違うし、調理器具だって全く違う物を使ってるじゃないか。単に潜在能力?本当にスイーツを三種作るマニュアルを手に入れたから他の料理にも応用できる…と?

そんな彼への不穏な幻憶に少しばかりの戦慄が流れる中、完成した肉料理に舌鼓をうつ。



一時間後。

食事の後片付けも済ませ、二人はソファに腰掛ける。

「改めてご馳走様でした。ハピありがと」

「ありがとうございます、そう思ってくれて僕はもう感激です」

「ねえ、ハピネメル」

「…、、、なんですか?」

ウットリとした妖艶な表情をハピネメルに向ける。代用の効かない美しさに惹き込まれたハピネメルは、アンリミングとの間に生まれていた少しの距離を急接近させる。二人の肌が身体全身で感じられるまでに。

「ハピネメルは、他に何ができるの?」

「他に?」

「ええ、“他に”。料理の腕前凄かったじゃん?だから他にもっと出来ることがあるんじゃないかなーって思ってさ」

私は料理中に憶えた彼への不穏に、柔らかい言葉で代替しながらハピネメルに伝えた。

「いや、僕は何も出来ないですよ…残念ながら今は。でも今回みたいにアンリミングさんが言ってくれたら、どんな事でも勉強しに行きますよ」

「ハピネメル、なんでそんなに私に尽くしてくれるの?」

「そんなの…当たり前じゃないですか。アンリミングさんの喜ぶ顔…その、何物にも代えられない唯一無二の表情を引き出すためです。それに結実するならどんな事だって僕には出来ます。あなたは僕の天使です。僕の人生に光差す適格者。アンリミングさんは僕を変えてくれた存在だから」

「もう…、、、なんか凝り固まった言葉ばかりで恥ずかしいな…でも、ありがと」

「アンリミングさん、僕になにか、言いたいことがあるんじゃないですか?」

「え、、?」

「何か言いたいことがある顔をずっとしてますよ?」

「え、、そ、そんな事無いよ」

「んんーー??ほんとですかぁー?」

「近いよ…」

「このぐらい近くにならないと偽りの仮面を取らせるのは厳しいですから」

「あなたが私の仮面を取れるとでも思ってるの?」

「僕はガキですけど、セカンドステージチルドレンなんで」

「フン、ハピネメルって本当に面白いね」

彼からその言葉を聞いて、一つの疑問が解消された気がした。彼の能力は未知数。いや、他に考えられない。

「アンリミングさん、僕は…“隠し事なんてしてませんよ”」

「…、、、…」

「僕に判らない事なんてありません。アンリミングさんが頭の中で作る虚像ですら、具現化する事ができるんですから」

「ごめんなさい。私はあなたの能力を見縊っていた」

「そのような言葉を使わないでください。僕が変態なだけです。女の子の頭の中を覗き込む事が出来るなんて…アンリミングさんのこの反応がおかしい方ですよ。普通なら引かれてる」

「ビックリし過ぎてるだけだよ。私があなたの事を何も知らない存在だったら、容赦無くビンタしてる」

「アンリミングさんのビンタは世界一痛そうだな…」

「私のは強いよ。特にあなたにはね。愛っていう別のオプションが付与されてるから」

「そのオプション、僕には美味しすぎますよ」

「うるさいんだから、子供に愛は早いのかな?」

「早くないですよ、僕はあなたと対等でいたい。アンリミングさんが愛を与えても与えなくても、愛を送り続けます。どんな形であっても、必ずそこにはアンリミングさんへの愛がこもっている…そう捉えてください」

「ハピネメル…?、、、今後、どうする?」

「今後…ですか?」

「ええ、そうよ、“今後”」

「アンリミングさんと結婚したいです、今すぐ」

ハッキリと言った。ハピネメルは一切の躊躇いも持たずに一点集中の強固な認識を私に見せた。待ち望んでいた言葉に嬉しくなる。

「ハピネメル、そりゃあ凄く嬉しいよ。でもね、現実的にはまだ無理なの…」

「直ぐはダメですか…」

「そうね、、、、」

「じゃあ…子供は…」

「こども?」

「はい、僕達の間に子供を産むんです」

「そうね、子供…欲しいね」

私は素直に彼の言葉を受け入れられなかった。セカンドステージチルドレンとの結婚、それに伴う子作りにはリスクしかないから。説明なんてされる前からそんな事は判っている。子供に間違いなく超越者の血が継がれる事を。

ハピネメルは好き。結婚もしたい。ただその先…将来を見据えると、現在の私にはうまく処理し切れない。

でもこれは誰かに相談する事では無いと思っている。出来ないし。

「ハピネメル…」

「わかってます、イヤ…なんですよね…セカンドステージチルドレンの子供が産まれることが」

「違うの…!ちが──」

「アンリミングさん、いい加減僕に“隠し事”するのはやめてください」

「ハピネメル…、、、」

「十二分に理解してます。それを踏まえた上で僕は、あなたに結婚の誓いを立てます。あなたと一緒にいたいから。ここから先、あなた以外の人物なんて考えられない。あなたが私の全て。我が血盟の月、《ロストージャ》の血筋を持つあなたと僕は、繋がる運命にあったんです」

「ハピネメル…ロストージャを…」

「アンリミング・ロストージャ。それがあなたの本当の名ですよね」

「私…何も知らないの…ロストージャの名前について…昔、親に聞いた事があるだけ。その名前を。でもそこからは追求するなって言われてた…ハピネメルなら判るの?」

「いや、実際は僕にもロストージャについては不明な点ばかりです。断定できることとするならば、ロストージャ一族は、セカンドの中でもかなり特異なポジションについていたらしい。その詳細も一切不明だ」

「私…セカンドなの?」

「その可能性は高いです」

「そんな…私…そんな事知らされずに生きてきたっていうの?」

失望した。そんな大事なことを伝えてくれなかった親達を。

─────

私を施設に送ったのはそれが原因?

─────

「私、親に捨てられたの。その後は施設で育った。違うよ、普通の施設。児童養護施設。親のいない子供とか、親からの虐待を受けて人間性を破壊された者が集う人生の救済拠点。人によってはそう捉えない人もいるかもね。小さい時だったよ。4歳だったかな。その時の記憶として唯一覚えてるのが、“ロストージャ”という言葉。何故か親はそれを言い残して施設を後にした。私は理解出来ずそのままにしてた。私は何か秘密があるんだと思う。ハピネメルにも何か関連しているかもしれないんだ」

「僕にも…ですか?」

「ええ、そうよ。ハピネメルと出会う前まで、ロストージャを考える事なんて、あの日以降一度も無かった。更にロストージャという名前を呼び起こす度に、身体に電気が走るような感覚になる。心が何か答えようとしている。訴えかけてる。でもそれに答えるまでには至らないの。今の私のままじゃいつまで経っても回答を見送りにしたまま。心に蓋をした状態は気分も良くない。主軸となる時間にプラスアルファで、フラッシュバックされる。日常生活に支障をきたす程では無いけれど、もうスッキリとさせたいの。これもハピネメルとの出会いをきっかけとしか思えない」

「アンリミングさん…ごめんなさ──」

「謝らないでいいの。私もあなたといたい。だから振り払いたい。ロストージャの秘密を知りたい。セカンドステージチルドレンとなんの関係性があるのかを知りたい。だから…ハピネメルとの子供が欲しい。ゆくゆくは、結婚もしよ」

「いいんですか…?本当に…。ロストージャを追い求めるのは危険な気がします…」

「多分そうなんだろうね。だから異物のように感じる時もあるんだ…だったら尚更知りたい。私の本当の血統を」

「アンリミングさん、判りました!」

「、、、、ていうか、どさくさに紛れて、プロポーズしちゃった…」

「あ、す、、すみません!こういうのって男の方からするんでしたよね…、、、」

「アハハハハ、女に言わせるなんて、まだまだハピネメルは子供ね。でも、子供に結婚しましょうなんて言われるの、なんか複雑な気持ちだな…」


┠───┨

「アンリミングさん、結婚しましょう」


「…、、、、、はい」

┠───┨


私達は結婚を前提にした交際関係となった。彼の現在の年齢で婚姻は不可能。大きな壁となる法律に逆らうつもりは無い。

だから…


「ハピネメル、セックスしよ──?」



情欲に溺れた。

現実を欺き、無関心に回帰するルートにはウンザリになった。私が求めると、彼はそれ以上のモノを返してくれる。リズミカルな動きに私は火照る。裏切りも失望もない、暗黒とは真逆の私達だけが正義を貫ける。ここに悪は無い。流れる時間全てに互いの心から発現される、嫌気という負のオーラを感じさせない人間性の流動。彼の身体が急接近する度に、私は抑制し切れない快感に出会う。どうにかなりそうな、刹那的な癒し。これを瞬間瞬間のモノにしないがために、彼には再びの快楽を要請。


これが本当の私。

誰にも見せる事の無い、愛した人にしか見せない本来の姿。


きたない。

これが大人。

私がなりたくなかった大人。

でも仕方無いじゃない。

彼が望んでるんだから。

こういう形でも私を表現できてるんだから。






「きたない──」


━━ ━ ━ ━ ━ ━ ━──━━━━━━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

「Lil'in of raison d'être: Chapter.3“yuèjì”-第三章:愛紡ぐ月季」

“what! after all this time,now you're lonely!”

━ ━ ━━━━━━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━━━━━ ━ ━ ━

御読了、ありがとうございます。

コンクール応募のため、一気に更新しました。

ここからは一週間にひとエピソード更新出来たらいいなと思います。

少しだけ…

リルイン・オブ・レゾンデートルは、今の自分を投影している全てです。この作品が刺さる方がいましたら、僕と同じ境遇を味わってると思います。一緒に人生頑張りましょう。本当に。生きましょう。死ぬのだけはやめましょう。僕はまだまだやりたい事沢山あります。

リルインも完結まで書きたいし、ヤマトよ永遠に3199も見たいし、よう実も3年生編も読みたいし、ゲームもやりたいし、エヴァ30周年も楽しみだし、HOTDも見たいし、ラスアスドラマも見たいし…。趣味見つけましょ。僕は独りです。だからリルイン書けてます。生き甲斐です。では、第四章で。ありがとうございました。長くなっちゃった。。

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