[#50-Love is Destructive]
「Lil'in of raison d'être」の根幹を少しだけ。
[#50-Love is Destructive]
「サレアさん、私は本当に…これでいいんでしょうか?私の選択は間違っていないんでしょうか?」
「あなた…もうボロボロ出てるよ?」
「…、、え、」
「愛。ハピネメルへの愛」
サレアの継続される図星攻めに、対応の術を失う。
「ハピネメルもあの感じだと、アンリミングの事を愛してるんだろ?」
「そうみたいです」
「あんな顔、初めて見たかもしれないよ。ハピネメルは特別な子なんだ。おかしいでしょ?養子なんてさ」
「ハピネメルに大きな出来事があったんですね」
「ああ、もうなんか凄かったな…これだったら話しても大丈夫だ。それにこれからパートナーになる男だからな。知っといた方が絶対にいい」
「お願いします」
傷だらけのケアは、サレアのSSC遺伝子能力で感知された。
───
「あの子は、愛を知らない」
───
「愛を…知らない…」
「そうさ、彼の名前は《ハピネメル・アルシオン》。セカンドステージチルドレンの純血を持つ家系の子供なんだ。親とは離れ離れになってしまったんだ」
「親と離れた…?」
「うん、ハピネメルは第六子として誕生した。だけどね、セカンドステージチルドレンの純血者が一つ屋根の下に集まりすぎる事に、父のニーディールは深き考えへと、陥る。
ハピネメルの母親・エレリアはそれに猛反発。『家族なのよ、絶対に一緒に居なきゃダメ!』って。でもニーディールは、その意見を汲み取らない。」
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『なんでなの!?なんでハピネメルを私達から離すのよ!』
『エレリア…頼む…お願いだよ…俺には考えがあるんだ』
『嫌よ!!私が育てたい!私も行く!ハピネメルを離すなら、私もハピネメルと一緒に離れるから!』
『ダメだ!それはダメなんだ!』
『なんでダメなのよ!!?』
『君が必要だからだ!!』
『ハピネメルも必要でしょ!?家族なのよ!!?たった一人の家族なの…!!なんでそんな事言えるの…ねぇ!!なんでよ…!!なんでそんなこと言えるのよ!!』
『エレリア…お願いだ…聞いてくれ…』
『なんでそんな、考えに至るのか判らない』
『《ディアスポラの内住》。知ってるだろ。セカンドステージチルドレンは一点に固まるわけにはいかない。超越者の血をほんの僅かでも残す事が、我々に与えられた使命なんだ!』
『あなた、約束と違うじゃない!絶やそう…そう言ってたよね…?ねえ!!言ってたよね…??なんで…しかもなんでよりによってハピネメルなのよ!!』
『ハピネメルは、セカンドの血が濃い。分散させるにはちょうどいいんだ』
『“分散”とか、“ちょうどいい”だとか…自分達の子供にそんな玩具みたいな言葉使う?、、、どうしたのよ、おかしいわあなた最近』
『何が?君の方がおかしいさ…』
『いいえ、私は普通。子供達と一緒に暮らしたい。勿論、あなたとも。それの何がおかしいって言うの?』
『現実を見るんだ』
『、、、はぁ?』
『もうすぐ、戦争が始まる。戦力を強化しないと』
『人間と?笑わせないで…そうなったら、私達が殺せばいいだけ。子供達もその時には立派になってる。あなたの考えに辿り着くまでに終息してるわ』
『いいや、人間達だけじゃないよ』
『もう一つ…二つ…それどころじゃない…マルチバース現象によって生まれた軸線の延長と伸縮で、“ヒトに近い万物の存在”が他世界に向けて混流し始めた』
『アルシオンで立ち向かえばいい。あの時みたいに…私達で脅かす敵をやっつけるのよ。私たちならやれる。そう…殺れるわ』
『だからだよ…殺戮になるのは極めて高い。その可能性をを考慮した上で、ハピネメルは遠方に行き、監視者としての任務を果たしてもらう』
『意味わかんない…何回も言わないで…!赤ちゃんなのよ!!』
『勿論、複数人のセカンドステージチルドレンを衛兵とした騎士団を編成するつもりだ。ハピネメルがセカンドステージチルドレンの能力を行使するまで、覚醒の兆候を発現させるまでは彼等が守護者として、ハピネメルを命に代えてでも守る。信頼できる友だ。私達との繋がりによって生まれた友情と絆を信じるんだ…』
『誰が守護者を担当するの?』
『《ウカバナ》、《モロシス》、《タクティカ》、サレア。この四人が中心メンバーとなった特殊任務部隊が、既存の騎士団に組み込まれた精鋭班だ。問題は無い』
『特別なの?』
『そうだ…ハピネメルは特殊個体だ』
『個体って…ハピネメルをなんだと思ってるのよ…』
『大切な家族だ…』
『だったら…!』
『何度も同じ事を言わせるな!!』
『…、、、!』
『…すまない…』
『あなたは変わった…変わってしまった…』
『…変わってない…』
『いいや、違う…だれ?…誰なの…?あなたはだれ?あなたの中にいるのは誰…?』
『…やめてくれ』
『これ以上犯さないで!これ以上、心を壊させないで!!これ以上、家族を追い込むのはやめて!!これ以上、“お兄ちゃん”が離れるのはやめて…』
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エレリアは慟哭とも言うべき、懇願の叫びでニーディールを責め立てた。
彼女はこの際、人格を疑うといった攻撃は一切行わなかった。
それは、原世界から戮世界にやってきた際に約束した事だ。
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「人格を否定したり、性格を歪めたり、個性を破滅に追い込むような言動はやめよう。絶対に。これを守らないと、俺らは完全に終わる。だから、お互いの境界を尊重し合って、感情の補填も行う。一人で抱え込まず、二人で答えを導き出そう。二人だ。全部二人で。」
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ディアスポラの内柱




