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Lil'in of raison d'être/リルイン・オブ・レゾンデートル  作者: 沙原吏凜
第三章 愛紡ぐ月季/Chapter.3“yuèjì”
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[#46-あなたによる非愛]

『仮・アンリミング編』

[#46-あなたによる非愛]


私はハピネメルを連れて、夜の外食をした。私がオススメしている名店の異国情緒溢れたディナーがあるんだ。テクフルの各大陸が集めた選り取りみどりの食材を使った豪華なフルコースを提供している。ここは普段急遽な予約なんて取れない超人気店。だけど、私とここの料理長とはちょっとした関係があって急遽の予約でも対応してくれた。まぁ簡単に言うと、私がここを自身のSNSで紹介した事により沢山の来客を呼べたという。ここのスタッフさんは私にとても感謝してるんだって。特に人助けみたいにするつもりもなく、ただ単に美味しかったから投稿内容に店名も入れただけ。それが宣伝効果に繋がったんだ。この投稿への返信欄には、様々な意見が交わされた。媚びてる…だとか、行ってみるね!だとか、この両方の意見が両極端に分かれ、私のアカウントを戦場に熾烈なディベートへと発展していた。私のアカウントでそんな事をしてほしくない。

だから、この投稿を機に返信欄を閉鎖した。本当はみんなの反応とかを聞けるプラットフォームだから閉鎖なんてしたくない。意見交換とかもできる重要な拠点だとも思ってるからとても残念に思う。こういった事は、有名になった事で付加されるポイント。私の知らない所で、私が起点となって発生する他人同士の衝突は何回も見てきた。そんな事嫌だよ?そしたら、私、何にもできないじゃん…。みんなに今の私を知ってほしくて投稿とか行動に移してるだけなのに…。

発信場所を失う事が悔しい。

取り戻したいな…私の居場所。


「アンリミングさん…!!なんですか!ここは!」

「こういうとこ、来たことない??」

「来たことないですよ!すごい!えぇ…なんですかぁ…ここ…」

「大人のレストランだよ」

「アンリミングさん…ここ高いんじゃないですか?」

「大丈夫大丈夫!そんな事は気にしないでいいからさ。ここの店主と知り合いでね、予約も優先してくれるんだよ?」

「え、、すごい…アンリミングさんってなんかすごい人なんですか??」

「え、、、、、、あー、、まぁ、うん、そうだね…えーと、、うん…え?」

「んえ?」

さっきから思ってたんだけど、ハピネメルは私の事を知らないようだ。て言うことは校門での大観衆はただダンスステージで生まれたファン100%だと思っていたのか。だから余計にハピネメルを求めている。私が有名人と知らずに、ダンスステージを見て私へ感動した人なんだから。単純に私のステージに惚れてくれた…。そんな現実を笑み無しで受け入れられると思う?表現した立場の人間として、こんなに嬉しい事は無いだろう。

「そうだよ、すごい人なの。あんたが考えている以上に凄い女なんだよ?」

「へぇ〜!凄い人なんだ!じゃあもっとアンリミングさんに似合う男にならなきゃ!」

「ハピネメル?あのね、私19歳なの。ハピネメルは…」

「13歳ですよ?」

「そよね。中一って事よね?」

「…、、、、、はい、そスね…」

「あのね、ハピネメル?私を好いてくれるのは凄く嬉しいのよ?嬉しいんだけど、まだあなたには早い事なのよ。私と付き合うって言うのはね」

「なんでですか?」

ハピネメルは眉間に皺を寄せて、弱冠の怒り混じりで言う。

「なんでって…あなたはまだ、未成年でしょ?未成年と19歳が交際するなんて社会的におかしな事なのよ?」

「…、、、」

「ハピネメル?本当に嬉しいのよ、女として。だけど、今はあなたの気持ちを直ぐに受け入れるのは無理かもしれない。多分無理だと思う。だからね、今後こういった食事に行くのはできないと思う」

「そんな…、、、、、」

「うん、あなたは素直な子よ。でも、、少年すぎるもん…」

──╪ ──────

「愛に年齢なんて関係あるんですか?」

─────────

「、、、、無いよ…」

「じゃあ…!」

「ダメなものはダメなの。いい?受け止めきれないなら私、君とのこの時間、忘れたい記憶になるよ?」

「それは嫌です…」

「じゃあ、、いい?私との約束、はい」

指切りげんまんを差し出すアンリミング。

「これしたら、まだアンリミングさんとは繋がれるんですか?」

「うーーん、、、判った。一緒にいる権利…アゲる」

「はい!(可愛すぎる…)」

アンリミングの笑顔に満面の笑みで返すハピネメル。

「さ、さっきからずっと置いてけぼりだったね、お食事たち。食べて食べて!」


二時間たっぷりに楽しんだディナー。気づけばそんなに経っていた。時間を忘れるほど過ごしたという事は、ハピネメルとの会話が弾んだという事か。ハピネメルも常時、笑顔を絶やさずに自身の話を沢山してくれた。

彼の話には引き込まれるエピソードが多数あった。学校内で起きた珍事件怪事件、友人間で生まれた亀裂がひょんなことからいつの間にか無かったものになっていた話、家族内で昔からある謎の慣習。その慣習については深く掘り下げて話す事は無かった。中身を今思い出したかのように、その話を取り下げたハピネメル。家族の事だ。そりゃあ聞いちゃいけない事だったある。彼には今後、家族の事情について聞くのを気をつけよう。

「お腹いっぱいになれた?」

「はい!もうお腹満腹でスぅ…」

改めて、私は中学生といる事を思い知らされる程の育ち盛りの子の食いっぷり。好感しかなかった。

「アンリミングさん…あのぉ…」

「うん??どしたの?」

「これ、、、お会計って…」

思わぬ一言に私からは咳き込み後に人笑う漏らす。

「中学生に払わせるわけないでしょ??私が払うから!」

「すみません…本当に…」

「そんなの百も承知でここに来たんだから」

「ありがとうございます…!本当に、ご馳走様でした!」

「じゃあやってくるから、店前で待っててくれる?」

「はい!」


「すいませーん、あ!すいません、今日ほんとに急遽なのにこうやって席を設けてもらって…ご馳走様でした!」

メッサシアガーデンの店長。私とは二年前からの知り合いで、私の活躍を陰ながら応援してくれている優しいおじさん。こういう人が世の中に溢れたら、世界は平和なんだろうなぁと思える、愛嬌とお膳立ての使い方が上手い人。

「いやいや!アンリミングちゃんのおかげで、もう毎日大繁盛よ!ほんっとうに感謝してるよ!」

「ほんとですか!?ありがとうございます!」

「ごめんね!来た時に挨拶できなくってさ!」

「忙しいですもん!私も迷惑にならないように忍んで来たかったんですけど、、、」

「いやだって、ウチのスタッフが、“アンリミングさんが…彼氏と来店してます…”って言うからさぁあ…」

「…!!いや!あの…」

「大丈夫だから…!勿論どこにも言わないし、ここだけの話秘密にしとくからさ!」

「いや!違うんですよ!実はですね…甥っ子なんですよ…」

店長には一人っ子だというのを過去に話した事がある。だからこの場をどう切り抜けるかの方法で、一番早く真っ先に浮かんだのが、こんな状況に陥ったら誰もが思いつく答えだった。

「あー!そうかぁ!甥っ子さんか!そうかぁそうかぁ、確かに考えてみたら年齢近そうにも見えないなぁ…」

店長は、店前で私の会計を待っているハピネメルを見て言う。

「そ、そうなんですよ!また甥っ子連れてきて来るかもしれないんで、そん時はまた、お願いします!」

「おう!アンリミングちゃんのためなら、いつでもいつでもVIPルーム解放しておくからよ!」

「ありがとうございまーす!またです!」

あっぶねぇ…店長が私と深い関係性でよかった…いや、深い関係だからこそ、なんか悟られた…?いやまあ大丈夫だろう。そう言い聞かせた。


メッサシアガーデンの所在地は、複合施設プリンセススクエアの中にある。クローバーシーズでも有数の巨大ショッピングモールだ。ハピネメルは未だにルンルン気分で歩いているが、時刻は既に20時半。あと30分で閉館時間だ。

「アンリミングさん、次はこの施設にある店舗全部制覇するってのは、どうでしょうか!」

「え、それぇ、めちゃくちゃ時間かかるよ…?何個あると思ってるのよ」

「じゃあ、、、いっぱい一緒にいれますねー!」

「はぁ、ほんとあんたって、顔に感情出まくりのタイプね、損するよ」

「なんででスか?」

「顔に出過ぎると相手に感情読み取られまくって、偽善者ぶってるの見え見えだよ?あんたもしかして嘘とかついたことない?」

「そうですね…ウソ…ついたことないと思います…」

「これは、、、嘘じゃないね」

「う、嘘じゃないですよ!アンリミングさんに嘘なんてつこうはずありません!」

「わかったから!もういいよ」

「本当に判ってくれてるんですか!?なんか、、、アンリミングさん、僕のことバカにしてません??」

「なにぃ?いじけてんの??」

「いじけてないです…」

「ふーーん…、、ま、いいけど」

「(近っ!!ほんとうに可愛いなぁこの人…)」

「次、ここで買いたい服あるんだよね。だから、、、それ、付き合ってくれる??」

「え!?つ、つ、付き合っ!!!」

「一緒に来てって言ってるだーけ。付き合ってってそういう意味じゃなーいぃ」

「あー…そですか…」

「んでぇ?来るの?来ないの?」

「行きます!!」

「よし、決まり!じゃあ明後日とかどう?」

「勿論行けます!」

「うん!じゃあ詳細は連絡しよーね。もう暗いから、ここら辺で終わりにしよっか」

「あの、、、もし良ければ…夜ご飯も一緒にどうですか?」

「うーーん、、、いいよ」

「やった!ありがとうございます!アンリミングさん、今度は僕が払いたいので、、その…リーズナブルな所で抑えて…もらえるところで食べませんか??そんぐらいなら僕も払えるので、、、、」

「ンフフフ、別にいいのにーそんなの」

「いいえ!良くはありません!男が女の子に何回も払わせるなんて、そんなの男失格ですよ!なので、今度は…僕が払います!」

「そ、そう、、、わかた…」

「こっちでお店とかも探しときますので、アンリミングさんは当日買うものだけをリサーチしといてくださいね!じゃ!また明後日です!」

「う、うん…ばいばーい!」

ふぅー、、、なんか今日は長かったなぁ…彼…良い子だなぁ…私の事…本気で好いてくれてるなぁ…これじゃあ、私…うん、、こっちだってその気になっちゃうよ…中学生相手に?うーん、、どうしよう…ヤバい…ハピネメル君…そういえば…私、彼の事、名前であんまり呼んでなかったかも…彼がどう思ってるか判らないけど、私が逆の立場なら気にしちゃうなぁ…ハピネメル…ハピネメル、ハピネメル、ハピネメル…言いづらかったのかな…言うシーンが無かったぁとか?いや、そんなこと無いよ…家族の話とかの時、彼が止まってたよね。そん時に彼の気持ちに寄り添う形で名前を呼んであげてもよかった。それ以外にも名前を呼ぶシーンは、幾らでもあった。まだ私…彼に壁を作ってるのかな…。だから、さっき校舎裏にいた事をハピネメルに問われた時、俯いて違う話に逸らしたのかな。

まだ彼にはそこまで言う関係性じゃないって、自分の心が私に言ってるのかな。

どうも私は、まだハピネメルのことを十分に信用していない事が判った。ほんと都合のいい女ね。あんなに笑顔で真摯に対応してくれたの、久々な気がする。有名人である私には、男は誰だって優しく接してくる。でもそれって、有名人フィルターが掛かってるからって事でしょ?

「この女と一緒にいるオレすごくね?」って自慢したいだけでしょ?それは、私と“本当に一緒にいたい”っていう想いには繋がらないよね。ハピネメルはそれに一切該当してない。本当に知らないんだ、私の事。

─────

「そこまで忍ぶ必要あるんでスか??」

─────

ベレー帽、マスク、サングラス。この三点セット。これを外して男と街中ウロウロなんて、何をすっぱ抜かれるかわかったもんじゃない。

さて、明後日…また会う…。てゆうか、文化祭休み明けに設定しちゃったんだ…私。まぁいいか。その日は私、学校休んでモデルの仕事だから。夕方迄には終わるってマネージャーが言ってたし、“何も無ければ”ハピネメルに直行できる。

ハピネメル。後ろの名前、聞いてないな…。

はい、まさかのディナーです。

「Lil'in of raison d'être」が男女2人のディナーを展開しています。とにかくチャプター3では、挑戦しまくってます。まだまだ沢山の弾を込めているのでよろしくお願いします。

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