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[#44-クレメンスベイ大学 文化祭]

新章突入。

[#44-クレメンスベイ大学 文化祭]


律歴4089年10月31日──。


アンリミング、19歳。

この日は私が在学していた《クレメンスベイ大学》の文化祭だった。文化祭みたいな楽しいイベントが、私は好きだった。


皆で何かを作って、目的に向かって全力で取り組む。将来には何にも役に立たないことだけど、今を楽しめればそれでいい。うん?将来には何も役に立たないって、決めつけていいのかな…でも、そうだよね。結局、これが終わればまた次のストーリーが始まるし、文化祭っていう出来事は、この“大学”という名の大きな枠組の一つのパートにすぎないんだ。この文化祭の感動レベルによって、次の展開が分岐する可能性は有り得る。

でも私は、未来の事を特に考えていない。

今を最大限に楽しめればそれでいい。そんな人生だったから。マイナスを考えてちゃだめ。自分の人生に異物を放り込みたくない。

──

私が主人公だから。

──

私の人生を汚されたくない。誰からの、害を受けたくない。それに耐えるような仕草もしたくない。私が満足する人生を謳歌できればいいの。

友達。

沢山欲しい。友達って呼べる存在は、私の人生を多感なものにさせる。様々な刺激に満ちた世界を歩める。友達が進めるエピソードに、私が介入するシーンが私にとっての刺激的なスパイスの一つ。


私の行動の一部分のせいで、友達の運命が決まる事は容易にある。それを間近で見物できるのが嬉しい。こんな考え方を持っているけど、勿論、自分から相手のエピソードを地獄に持っていった事は無いよ。そのパーツになった事はある。その原因が私にあるのかは、判らない。個人的には、自分のせいだとは思ってない。

「いいんだよ?気にしないで」

いつもその言葉が、終幕になると掛けられる。

だから、気にしていない。


皆が、優しい。

人で溢れる世界が好き。でも他人には抵抗がある。それってどっちなんだろう。

────

人が好きなのに、人には抵抗がある。

────┨

それが、余日に出た出来事がこの文化祭。クレメンスベイ大学では毎年、ハロウィンとなるこの日に文化祭が開催される事が決まっている。



とても楽しみにしていた。

私が披露するのはコスプレ部によるダンスショー。この日のために練習してきた踊りを、みんなの前で披露する。元々、踊るのが好きだった上に、自分のプロポーションに少しだけ自信があった。だからこの部活を見つけた時に、直ぐに入部した。全くの考える時間無しに。先輩達はみんな優しい。私のナリをめっちゃ褒めてくれる。

「即戦力!」

「今年の文化祭凄いことになる!」


って、言ってくれた。

そんな励みもあって、今回の文化祭までに本気で練習をしていた。この部活にはSNSアカウントがある。この部活の動向を情報発信する目的でのアカウントだったが、私が入部したのをきっかけに私中心でサイクルするアカウントに変貌していた。私には重責だとは思い、「いや、私が入る前のアカウントの感じでいいんじゃないですか?」と言ってみたけど、「そうなんだけど…アンリミが映ったリールの伸びが凄いのよ!だからアンリミをもっとフォーカスさせたアカウントにしたいんだよね…ダメかな…?それでさ!もっとこのコスプレ部を知ってもらえるきっかけ作りになれば…と思ってるんだけどて…」


よかった…とりあえずは、私を数字として思ってはいないようで何よりだった。高校の時に経験した“数字稼ぎ”にはウンザリした。巷では評判になっていた。


“あの高校には可愛い子がいる”って。


嫌な気持ちにはならなかったけど、高校からの帰路で色んな男に絡まれた。その中には不審者もいたりして、逮捕された人物もいる。でもそれは稀で基本的には食事とか、一夜の関係とかを求めてくる男性が多くにある。一夜の関係は却下したけどランチ、ディナーまでの関係には、頷いた。私としては、そこまでマイナスに捉えるつもりは無くて、「私の興味を持ってくれてるんだ」ってなって、少し嬉しかった。

でもそれは違ったんだ。私の顔、身体を自身のアカウントに投稿したいだけ。「こんな女可愛すぎる!」「さっき飲んだ女の子可愛すぎたわ!」「飲み姿可愛すぎる」とか幼稚じみた言葉を使って、ビュー数を稼ぎたいだけ。私を道具としか思ってない。

そんな人間が大嫌いだ。

┨┨┨┨┨┨┨┨┨┨

本当の愛を知らない。

┨┨┨┨┨┨┨┨┨┨



誘ってくれた男の人。

私に対して、少なからずの愛を届けようとしてくれた人もいるとは思う。でもその中から本当の愛を見つけ出すのは、私にとって難しい事だった。面倒臭がり屋たと思ってもらって結構なんだけど、そんな事までしないと、私は幸せになれないのか…と思って自分自身を責めてしまう。

“そんな男の人、ばかりじゃないのに”

そんな事わかってる。この世界は広い。決して私が思い描くマイナスイメージの人って、全体的に見れば49%以下。人間なんて自分がされて嫌な事はしたくないタイプなんだから、これはそうだと思ってる。

私が行動に移さないだけかな。

怖いんだよね。

そうやって結局は、この人も私といる事で“数字稼ぎ”になってるんだって思う日が来るのかもしれない…。人間不信になるんだ…私は私が嫌になる。私を塞ぎ込む。このままでは私を信じてくれている友達に、悪影響を与えてしまうかもしれない。その果てが怖い。こんな性格のせいで、友達を失うことだって考える。このベクトルの内容を思考してしまうと、もう止まらなくなる。一度のマイナスを産出すると、その一本線から三本線が生まれる。マイナスから生まれた線なんて、マイナスに決まってる。そこからプラスを考える余裕なんて、私には無い。苦しい。辛い。悲しい。痛い。痛い。痛い。痛い。


《クレメンスベイ大学コスプレサークル》SNSアカウントのフォロワーは、私の活躍で日に日に増えていく。こんな言い方嫌だけど、真実だった。役に立ってるって考えれば、私の脳は収まりが着く。この状態だと物凄い人数が大学に集まるのは見えていた。だからと言う訳でも無いけど、本気でサークル活動に取り組んだ。

入学の4月から10月31日まで、有意義な時間を過ごせた。自分の中で今まで、経験したことの無いものと対峙するのは嬉しさと情熱が同時に現れる。自分を追い込む事で、まだ知らない私の余白を感じられるんだ。とても楽しい。本当に、そう思う。

先輩と同期のおかげもあって、私に足りないこのサークルで活躍していくに大事な表現を見つけた。

“人を信じる”

団体で一つの目的地まで達する努力は、どう足掻いても自分だけの力では無理。そんな時に心の助けになるのは、仲間と友達の力。自分では想像しえない志向と判断と洞察は、私の行動を何度も変えてきた。人の力でこうも、自身の人生を変えるのか…と。感動する。


それを真に受けるには、人を信頼しなければいけないと思った。今回はこうやって、私の知る人物達が活動をアシストしてくれた。これが、知らない人になるとどうだろう。また私は閉塞し、嫌悪に駆られた世界を歩むことになる。もうそれは嫌だ。

人を信じたい。信頼は私を熱くした。私が部活の人気を大きく引き上げたものの、結果的には自分の活躍なんてこれ以上の事は無い。みんなの力があってこその文化祭ロード。そして、文化祭が始まった。


文化祭ダンスステージはコスプレ部の他に、ダンス部、女子バレー部、女子テニス部、陸上部、この日だけの有志グループで競い合う大会要素のあるものでもある。パフォーマンスした上記のグループで、どれが一番良かったかを観客席に座る100名が審査。この審査員は事前に募集された在学生徒と一般客が混合した構成となっている。


それもそのはず、この大会で高評価を多く受け、一位になったグループは、トリカノン海域の豪華客船クルーズへの招待特典があるのだ。


皆がしのぎを削って繰り広げた80分にも及ぶダンス大会は、見事私達コスプレサークルが優勝。他グループは既存の楽曲をミックスさせたパフォーマンスにて、見る者を各グループが織り成す世界へ誘っていた。だが、私達は違う。一から作り上げた楽曲が観客の耳を奪った。

既存の楽曲と知らない楽曲。

既存は既存でメリットは沢山ある。「この曲使うのかぁ」と知っている曲が、どうやって踊りに組み込まれているのか、音の転調部分をある程度知っていると、この部分で踊りにも展開がある…と判る。

知らない楽曲には、全てが新鮮。

新しい世界を観客に提供できる。後者にする事は、同期である一年の《リーネル》が提案した。かなり挑戦的なものであると、理解したが先輩達は決断した。


「こんな事するのは今まで絶対いない!やろう!」


功を奏し、まだ誰もやっていない新境地を開拓。ダンスの感動と共に、音楽の感動をも届けた。無知から生まれるメロディ、更に屋外という大音量のスピーカーを利用したステージならではのギミックも駆使し、感動は倍増。

ダンスステージは終了。大勢のパフォーマンスを見た観客に拍手喝采で部室まで送られた。

「やったーーー!!みんなやったねーー!!!」

先輩の大歓喜の声を皮切りに、私達ははしゃぎまくった。何せ、コスプレサークルがダンス大会を制したのは初めての経験だったからだ。この快挙には会場に集まる大観衆をも唸らせた。

「ダンスも完璧だったけど、やっぱりアンリミングが集客させてくれたのも成功に繋がったよ!」

「ほんとだね!もうアンリミングには感謝しかないよ!」

「うんうん!アンリミング無しにこのプロジェクトは絶対に成功しなかったね!」


身に余るほどの賛辞を受けた。

正直、ここまでの歓喜に到達するなんて夢にも思っていなかった。私に観客の視点ポイントが集中しすぎて、他のメンバーにパフォーマンスのスポットが当たらないんじゃないか…と不安になっていたからだ。でもその不安は大ハズレ。皆が期待以上のものに応えたおかげで、私へのスポットライトが集中すること無く、不平等の無い歓声で最終的には幕を閉じた。

実はこれには、私が大会前日に書き記した自身のアカウントから投稿した内容も影響している…考えている。注意喚起をしたのだ。

「私への応援の声も勿論いただきたいのですが、これは個人パフォーマンスではありません。集団パフォーマンスなんです。なのでファンの皆様には、サークルメンバー全員を応援する声掛けをしてほしいと願っています」

この文章、一見するとメンバーの怒りを買う内容になってしまっているのもよく理解している。だけど、こうしなければいけない…と思ったのだ。こんな事口が裂けてもメンバーの前で言うつもりは無いが、私と他のメンバーには、人気の差が見て取れた。こんな事を本当に本人達を前にして言うつもりは無い。でも事実なんだ。この事実を把握した上で、私は明日のパフォーマンスのために、支障をきたす事がないよう直前に“最低限のマナー”を“私のファン”へ注意喚起した。

この行動をとって、よかったと思っている。おかげでパフォーマンス中には私以外にも、ある程度のメンバーの名前を聞く事ができた。


「良かった…よかった…よかった…」

パフォーマンス中、断続的にこの思いが現れる。最高の舞台を作り上げれた…と、皆とは他の歓喜も入り交じっていたのだ。


──ЖЖЖЖЖ───

「ありがとうね、アンリミング。昨日の投稿」

──────────



知らないはずが無かった。私のSNSアカウントから投稿された事だから、この投稿がメンバーの目に止まるのは容易に想像できていた。大会の日、朝から集まって皆で大会に向けて最終調整をしている段階で、昨日の私の投稿の話をする時間は無かった。私は驚いた。何かメンバーが、私に対して“怒り”とも取れるような感情をぶつけてくるんじゃないか…と。

────

我慢してくれていた。

╪ ───

我慢。

この文章からして、我慢というのはあまり想像の範疇にないように思う。だが、この文章では読み取る事は難しい程に、険しい表情だった。

「アンリミング、昨日の投稿ありがとう。凄く嬉しいよ」

ごめんなさい。

「アンリミング?私達を思ってあーいうことやってくれたんだよね。嬉しいよ、ありがとう」

ごめんなさい。

「あの投稿無かったら、アンリミングに皆の目が行っちゃってたと思うから。感謝してるよ、ありがとう」

ごめんなさい。


ごめんなさい。

───

「もしかして、怒ってるんじゃないかと思ってる?」

───



「本当に気にしないで。私達、あなたが思ってる以上に感謝してるの。あなたが来る前に、昨日の投稿についても、パフォーマンス前には触れないでおこうって決めてたんだから。何か色々考えちゃうでしょ?わかってるもん、アンリミングの性格。物事を深く考えすぎちゃうせいで、考えなくていい事まで考える。隅々まで計算しようとする姿勢は、几帳面で良いなって思うけど、無理してるよね?自分を追い込む内に、自分の個性をぶち壊すきっかけにもなってるんだよ」


“個性を壊す”。私が一番したくない言動だ。自分の性格がいつしか、己の個性を侵しているとは思ってもなかった。個性と性格。個性の中に性格があるのか、性格の中に個性があるのか。ただ判っているのは、どちらかが崩壊すると人間としての責務を放棄するという事。


みんなの声が、優しかった。私の判断は間違っていなかった。この思い損ねていたものが、みんなのおかげで蘇る。


プラスとして捉えられる声が、一つまた一つと集合知へと収束する。私の欠けた自我と責務をカバーしようと、欠片として収束した“声”が私を暗闇から救済した。

光。求めていた照らすなにか。なんでも良かった。なんでもよかったと思ってはいたけど、いざこういった状況に陥ると“なんでも”って言う訳にはいかないんだ。

───

友達、仲間からの救いの手。

───


幸せ者だ。私は。こんなのは当たり前じゃない。生きてるより難しい事かもしれない。幸福を掴み取れる人物なんて、世界の人口に比べたらほんの一握りだと。幸福を手に入れたらどんだけ、人生が華やかになるのか。

他人から見たら、私を多幸感に満ちた存在だと判断するかもしれない。そんなんじゃない。

抱擁。私は、みんなに甘えた。


ダンスステージは文化祭を彩る最後のプログラムだった。私達は部室へと戻り、歓喜の渦に浸った所で打ち上げに行く事になった。部室は3階。部室の窓からは、先程文化祭にて使用されたメインステージの解体作業が目下伺えた。その解体作業の中で、コスプレ部に向けて学校生徒と一般客のファンが、熱いメッセージを送っている。



「よかったよーーー!!!」

「最高だったぞ!!」

「また次のパフォーマンスも楽しみにしてる!!」

「可愛かったよ!」

「《カルミリア》先輩!最高でした!」

「《キルレック》ー!かっこよかったよ!」

「《ハウアース》先輩!こっち見てください!!」

「アンリミングちゃーーん!!」


この時、部室にはアンリミングと部長である3年のリンネルと2人っきりだった。他のメンバーは廊下でファン対応中。アンリミングとカルミリアには、そういった対応にはあまり不向きな性格だった。ファンはアンリミングがいないことに若干のどんより雰囲気を漂わせてはいたが、メンバーは気にしない。アンリミングとしては、申し訳なさもありつつ、私の代わりに対応をしてくれて有難いと思った。部室で部長と2人きり。こんな状況は半年間の中で初めての経験だ。



「凄いね…みんなの声が、コスプレ部の未来を変えるね」

「カルミリア先輩、私、この部に入ってよかったです」

「私も、こんなに支持を受ける日が来るなんて思わなかったから、入ってよかったって思ってる。でも、アンリミングが入ってきてくれた事が一番嬉しいかな」

「いや、そんな事言わないでください…」

「本当の事だよ??凄いありがたいよ…ありがとうね」

「はい!私もリンネル先輩達と関係を築けてよかったです!」

「私も!どうしようかね…これから」

「これから…?」

「うん…まぁね、コスプレ部ってさ、この文化祭が最高到達点みたいなもんなんだよね…」

「…え、、これ以上のイベントは無いんですか?」

「そうなのよ…前年まではね。でも!今日!こうして快挙を成し遂げた私達を、学校はどう思うよ!?」

「誇りですよ!」

「そう!てことは…」

「、、、、、、企画通せば考えてくれるんじゃないですか?!」

「そうだよね!きっとそうだよ!こんなに頑張ったんだよ!?こーーーんな盛り上がったダンス大会初めてだよ!これまで以上に、コスプレ部を学校の看板として、宣伝してくれる事間違いなし!」

「じゃあ!何か考えましょうよ!」

「実はね…アタシ、、やりたいことがあるの…」

「え!もう早速!なんなんですか??」

「それはね…、、、、“コスプレ”!!!」

「センパイ…それ当たり前ですよ…」

「アンリミ?聞いて。今、私達、何で評価されたのよ」

「…あー、確かに…」

「そうでしょ?コスプレ部なのよ?私達。なのに、踊りで評価されちゃったじゃない!!べつにさぁ、いいんだけどさぁ、なんかさぁ、うんさぁ、ねぇ、うん、、、、なんか、部長としてのプライドっつーかぁ?胸がムズムズするのよね」

「気持ちはわかります」

「そでしょー?今回は踊りで評価受けてるけど、元々はこの部のコスプレはめちゃくちゃにゴージャスで素敵だったのよ!だからこれを機に、原点に立ち返るのよ」

「え、、そうだったんですか?」

「そうよ?言ってなかった?」

「はい、、、私、コスプレ好きでコスプレ部に入部したんですけど、入ったら入ったでダンスのレッスンから始まったのでビックリしたんです…踊りに関して苦では無かったので、何も言わなかったんですけど…」

「あ、ごめん、、、、コスプレしたかった…よね」

「でも全然いいんですよ!何かに没頭するの私は嫌いじゃないですから!」

「アンリミは優しいね…ありがと」

「コスプレはどういった類のものをやるつもりなんですか?」

「それもね、決めてるのよ…!」

「え、!なんですか?」

◈─────────────────────◈

「セカンドステージチルドレンよ!」

◈─────────────◈

「…、、、、え」

「セカンドステージチルドレン!知ってるでしょ?アンリミングも」

「はい、、もちろん、知ってますけど…」

「セカンドステージチルドレン、カッコよくない!?」

「…え、、、」

「あんな凄い能力、私も欲しいよー!人間じゃないって言われてるけど、人間だと思うよ私は。だからね、きっと分かり合えると思ってるのよ!セカンドステージチルドレンって、絶対に良い人達だと思ってる!それに、かっこいいじゃん!あの最近出てきた集団のフェーダ!」

「…カルミリア先輩…、、、」

「私も浮いたりしたいなー〜…セカンドステージチルドレンの良い男もいるのよねぇ…きっと私は彼等と良い関係性を築けると思うの!」

「先輩…」

「セカンドステージチルドレンって、、皆が恐れているだけなんだよ。皆が狂気の存在として認識してるから、それに怒ってるんだよあの人達は。だから、こっちから歩めばきっと、和解みたいな事も可能なんだよ!私はね、セカンドステージチルドレンと付き合いたい!」

「…先輩!!」

「うん?なに?」

「先輩…何言ってるんですか?」

「何って…セカンドステージチルドレンのことよ?」

「アイツらが何をやってきたか、分かってるんですか?」

「わかってるよ?」

「それを踏まえても、さっきの言葉、訂正しないんですか?」

「うん。そうよ、私がセカンドステージチルドレンに思ってる本音よ?」

「そんな…」

絶句するアンリミング。

「アンリミングは、嫌いなの?超越者を」

「嫌いも何も、滅べばいいと思ってますよ」

「どうして?」

「どうしてって…アイツらは、無差別殺人鬼なんですよ!!ニュース見てればそんなの判るでしょ!!?」

「アンリミングは何も見えてない」

「、、、、、は…?」

何かに取り憑かれたような、カルミリアの表情。忘却するには海馬を失う必要があるようだ。

「いい?アンリミング。セカンドステージチルドレンは、正義だよ。彼等は、この世界から不要な箇所を切り取っているんだよ。その結果、《テクフル》は新世界へと書き換えられるんだ!」

「先輩、やめてください。アイツらはただの犯罪者です。比類なき大犯罪者集団ですよ」

「違うよ、変革者だよ。この世界は誠あるべき方向に転換しているんだよ。セカンドステージチルドレンは、真実だ。世界の新味を探している。セカンドステージチルドレンがいないと一生、同じ世界なんだよ?この世界、延々と繰り返されるんだよ?嫌じゃない?だったら、セカンドに不必要な部分を切り取ってもらおうよ。そうすれば、この世界は繰り返されない。新たなる時間を刻めるんだ!」

「その不必要な部分に、私達人間も該当してるんだよ?」

「そうだよ?そんな事わかってるよ。言われなくても。でもその時はその時だよ、て言うか、本望だよ。セカンドステージチルドレンに、、、殺されるなんてさァー!!!」

「…、、、、あんた…正気なんですか?」

「こーーんなに幸せナことあるノかな???って感じダよーー!誰に殺されようかなぁ…名前わかんないからなぁ…あのプラチナブロンドの男の人!かっコよかったンだよね…!!」

「イカれてる…」

「はぁ?」

「イカれてるよ…あなたって、、なんでそんなこと言えるの?今までどれだけの人が死んだか!!!分かってるの!?いいえ、わかってるんでしょうね。わかっててもそんなバカみたいな事言えてるわけだし」

「なんか随分と上から目線になったね。あなたの中で形成されてる論理と私の論理が違ったら、そういう感じになるの?」

「…、、、」

「無言は何なの?無言って一番私、ムカつくんだよね。その何かを言いたげな雰囲気を出しておいて、口を噤んでいる表情も凄いムカつくなぁ…アンリミングってそういう女だったのね。ショックだよ」

「私の方がショックです。まさか身近な存在にセカンドステージチルドレンを正当化している人物がいるなんて、思いもしませんでした」

「そ、まぁいいけど。いいわ、もう出てって」

「そのつもりです。あんたみたいな人の下にいたくありません」


こんな事になるなんて。明日からの予定が空白になった。セカンドステージチルドレンを美化する。許される訳がないのに。どうしてそんな人間がいるんだ。信じられない。恐ろしい目をしていた。“セカンドステージチルドレンの殉教者”。私は部室を急いで退出した。

扉を開けるとメンバーがいた。聞こえていたんだ。今の会話。

「ちょっと!アンリミングー?」

「どうしちゃったの?」

「カルミリア、今、何してたんだ?」

慌ただしく開いた扉。扉の向こうで罵声ともとれる言い合いがあったのは、幾ら防音効果を有している扉と言っても、それを察知し耳を傾けようとすれば部屋の音は微かに把握できた。ファンとの対応を終えて部室に戻ろうとしていた時、この異変を確認してしまったのだ。



時の流れに異変が生じる。私に振れる秒針が不規則な行動をする。早く進んだり、遅く進んだり、一時的な停止をしていたり、自分に反した時間を流している。壊れそう。人とぶつかりたくない。畏怖。衝突をした時、私だってある程度の内容を反論はしたい。でも、そこからどうやって関係を修復すればいいのか判らない。修復をする必要性が無い人物には該当しないのだが、考えてみれば惜しい事をしたと思っている。先輩と同期の声。足早で部室を後にした私は彼女らの声を無視した。そんな事は初めて。“人の優しく寄り添う”が私のモットーとして掲げている事だから。まさかセカンドステージチルドレンを肯定する人がいるなんて…。恐怖の対象でしか無いじゃないか…。なんで…なんでそんな事を口に出して言う人がいるのよ…折角仲間、友達だと思ってた相手がたったこんだけの理由で失う事になってしまった。

まだ、遅くない?もう遅いと思う。遅いというか修復するには題材があまりにも重すぎる。私には到底ここからの回復は不可能に思える内容。それにまず人間関係の再構築なんてした事が無い。だからどうやって辿り着くのか。まずそもそも、切り口はどこから打てばいいのか。私から率先して関係修復に持っていけばいいのか。相手の動向を待てばいいのか。

顔色、表情、醸し出される負のオーラ、空気感。その全てが私にとって、制覇したことの無い感情に関連する事項。

「あのー、」

一体ここから先どうすればいいの?

部室になんか、こんな状況で戻れるはずがない。

次会えるの?

学校行けんの?

あんな人外すぎる理念を持った相手と一緒の学校に登校しろっていうの?

「あ、あ、あのー、、、、」

私には無理…、、絶対無理…だめだ、、頭がおかしくなりそう。あんなイカれた考え方を持った相手と対等な関係を、以前と同じような会話なんてできようが無い。私には無理…。ほんとうに、、、、ここからどうすればいいの…

─────┨┨┨─

「あ!、あのー、、、」

─────────

という事でリルイン・オブ・レゾンデートル、新章突入です。

『????』タイトルは言えません。

ティザーエル、ロストージャ兄弟の母・アンリミング・マギールの大学時代を描くまさかの学園モノに展開。

戦争、戦争、戦争…ちょっと寄り道しますよ。

「同じ作品なの!?」と思ってしまうような新展開だらけのリルインにご期待ください。

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